2008年08月02日

CO2の温室効果は飽和する?

(以前の「温室効果」関連の記事は
「CO2はすでに飽和説&水蒸気が主要因説への解説がでています」
「水蒸気の方が温室効果が大きい?ならば対策を講じなくては」
「光・熱ふく射のエントロピー理論について」
「「温室効果は熱力学第二法則に反するトンデモ論」説」 です。)

 これは「温室効果は熱力学第二法則に反するトンデモ論」のコメント欄での沈思黙考さんとのやり取り(別記事に添付)に応えるべくまとめたものです。

 「大気の窓」という概念はつまづきの石になっているのかもしれないな、と思いました。これは現在の温室効果ガス組成の構成によって成立している(地表だけの)局所的な概念です。
この大気の窓以外の、温室効果ガスの吸収帯域においても、ふく射熱伝達は行われています。

 すべての赤外ふく射帯域で平均して、大気の光学厚さは3程度、つまり、地表から放射された赤外線は3回程度の放射と吸収を繰り返して宇宙空間へ逃げ出す程度の透過率だと言われていたかと思います。
これが特に大気の窓の帯域では、(ベースラインの状態では)光学厚さは1以下となっていますが、CO2以外のフロンなど微量温室効果ガスはその大気の窓の帯域に吸収スペクトルを持つため微量な増加でも光学厚さが増加する=透過率が下がる変化が起こるわけです。

 ですが(ニンバスデータなど)人工衛星から地球表面を観測したふく射スペクトルから分かるように、さまざまな波長帯ごとに(黒体と想定した場合の温度の)異なる赤外ふく射が、大気の窓以外の波長帯からも放射されています。

 では大気中のCO2濃度の増加によって、このニンバスデータスペクトルの何がベースラインと比べて変わるか、を考えて見ましょう。

 特にCO2の吸収=ふく射スペクトル15ミクロンあたりのくぼみを見てみれば、特定の(黒体温度(220K=-53℃))をもっています。
 大気中CO2濃度の増加によって、より大気の外側(上側)の、より気圧が低い空間でのCO2濃度も比例して増加します。このことにより、CO2のこの波長での光学厚さは厚くなります。宇宙空間から見て、光学厚さが0から1までの高度のCO2からの赤外ふく射が最終的に宇宙空間に出て行きますから、より高度の高い空間のCO2からの赤外放射だけが宇宙空間から観測されるように変わります。成層圏よりも低い高度の対流圏では、高度が高くなればなるほど気温が低下していますから、より高度の高いCO2の(黒体温度)はより低くなます。
 結果として、ニンバスデータのCO2の吸収(=ふく射)スペクトル15ミクロンあたりのくぼみは「瞬間的にはさらに」深くなってしまいます。
 ニンバスデータの赤外放射量を全スペクトルについて積分したものが、宇宙空間に逃げていく熱量であり、この積分量は(本来)入射する太陽光のスペクトルの積分量(但しそれぞれ全球についても積分したもの)と等しく、一定な値であるわけです
したがって
CO2濃度の増加によって、この波長でのくぼみが深くなった(放射量が減った)分は、スペクトルの他の波長での放射量が増加する、つまりスペクトルの形が変わることで補われなければなりません。

 ではどう形は変わるのか?
一部は地表面からの大気の窓を通るふく射の(黒体温度)が上がる(この場合はダイレクトな地表面の温暖化を意味します)寄与もあるでしょうし、
他の波長での平均的な(黒体温度)の増加という寄与も起こるでしょうし、
もう一つはより高度の高いCO2の温度が変化前に近づく方向での対流圏の気温分布の再編という現象も起こるでしょう。
 それらの再編が厳密にどう起こるかは知りません。ベースラインと比べて、全体が微妙に変わるのでしょう。
ですが、宇宙空間からみた全スペクトルを積分して得られる熱量は、CO2の増加の前後で等しいという想定をおくことで、上記のいずれの寄与が大半を占めているとしても、CO2の大気中濃度の増加が、十二単の一番外側の一枚の衣を増す効果をもたらす、ということがわかります。


 そしてこのCO2濃度の増加の効果が「飽和」するということはありません。
 また水蒸気はこのような高高度にはほぼ存在しませんから、水蒸気の吸収スペクトルがCO2のと重なっているのでキャンセル(飽和)される、という主張も当てはまりません。

(ニンバスデータの図のリンクはこちら。)
http://www.geocities.jp/obkdshiroshige/ondanka3/ninbus4s.jpg
ninbus4s.png
この図の一番上、サハラ砂漠でのスペクトルの、波数680当たりのくぼみが波長15ミクロンに相当します。
(この横軸の単位は波数、単位は[1/cm]となっていますので、10000ミクロンあたりに680波で、波長は10000/680=15ミクロンとなります。)
 解説の方は紹介する気もあまりないんですが、出所は、懐疑派の方のHPの、
今回のお題 『CO2による赤外吸収は未飽和なのか?』
http://www.geocities.jp/obkdshiroshige/ondanka3/skg1.html
より。

 現在の認識はこうですが、懐疑派の方と言わず正統?派の方も気が向きましたら突っ込みをよろしくお願いします。続きを読む
posted by おぐおぐ at 01:59| 温室効果の理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月01日

「温室効果は熱力学第二法則に反するトンデモ論」説

「通りすがり」さんのコメントが熱いので、せっかくですので、記事へと転載させていただいて、これに後日、色をつけた字でコメントを加えていくことにします。
 なお、僕自身はTheorySurgery氏のブログ「The Black Crowes−疑似科学の行方を追跡するブログ−」へのコメント(SGW)の中ですでに趣旨の一部については応えているつもりで、同趣旨のコメントをお返ししましたが、「通りすがり」さんはこの方ではないようです。

 以下はブログ主SGW本人のコメントです。(改)

●通りすがりさんは放射による熱伝達のことを、余り物理的な意味を考えずにイメージしているようです。

★高温・平均15度cの地表から上空ー18度Cの低温に流れたはずの
>{熱}・・放射ではない・・が、放射によって再度高温部の地表
>に流れる・・これは熱の不可逆性(熱力学第二法則・・エントロ
>ピー増大則)にはんすることですね。

1.熱伝導や対流の場合には相手側の温度が影響しますが、放射による熱伝達においては、吸収する相手側の物体の熱平衡や温度条件などにはおかまいなしに赤外線が放出されます。この状況は伝導や対流とは状況が違うのです。
 ある物体からの放射量が、放射光を受ける側の物体の状態(温度)によって変わる、という主張でしたら、それはタダのトンデモ説です。そうではなくて、その低温側の物体の温度が下がると低温側物体から高温側物体へ放射される量が小さくなることから、(この反対向きの放射量と差し引きした)正味での熱の移動量が変わるという主張が正しいです。
「放射・・熱にあらず・・は低い方から高いほうへの熱流もある」ということが放射(ふく射熱伝達)の基本です。
 放射によって低い方から高い方にも熱が流れるという現象は、地球から宇宙空間に放射で熱が逃げる際にも成立しています。(絶対温度2.7Kの黒体に相当する「宇宙背景放射」が地球から観測されていますから、深宇宙からも熱が本当にわずかですが入ってきています。

2.温室効果は単なる吸収放出の方位角問題で語れてしまう話です。
 通りすがりさん、再放射=放射と読み替えていただいて結構です。
 つまりCO2の分子が一旦吸収した赤外線のエネルギーを等方的に(上下方向の2つの半球方向に分けると上下均等に)放射することのうちの下向きの半球分を、CO2の地表方向への再放射と呼んでいるだけのことです。
 んでまあ、吸収量と同じ量を再度ふく射するとしても、上方向の熱流は、温室効果ガスで吸収されなかった場合の半分となります。以前吸収した赤外線の方向についての「記憶」を分子は持っていませんから、宇宙空間(上)方向と地表(下)方向に均等にふく射の熱流は分配されます。
(批判されているような熱力学の第二法則に違反するような恣意的な操作(いわゆるマックスウェルの悪魔)があることを前提としているわけではありません。)

3.さて、真空の宇宙空間に向かって熱を逃がすメカニズムは放射以外にはありません。
 そしてまた大気中の温室効果ガス以外の気体は(赤外線を吸収もしないけれども)放射もしていません。(一部雲を構成する固体、液体が上空部分で可視光の反射&散乱&赤外光の放射&吸収に関わっていますが、ここでは置いておきます。)

 一旦吸収されて分子の運動に変わったエネルギーは、再びCO2すべての温室効果ガスの励起スペクトルの窓からふく射の形で逃げ出す以外に逃げ場はないんだ、ということが重要です。

 一部の懐疑派の人(Theory Surgery氏など)は、温室効果ガスを含む大気が一旦吸収した赤外線のエネルギーをひたすら溜め込む、と考えているようです。(つまり吸収励起した分子運動は周囲のほかのガスとの衝突運動を通じて熱となり消散して蓄えられると)ですがそうではなく、ある波長の赤外線の吸収スペクトルの「窓」にマックスウェルの悪魔が住みついていて、赤外線を吸収し熱に変える一方で、逆にそのスペクトルの赤外光を放出させることがない、なんてことはありえません。
 つまり、上のように考えている一部の懐疑派の人たちこそが、マックスウェルの悪魔がいると想定しており、熱力学の第二法則に違反しているのです。
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GW.jpg

通りすがりさんのコメントはここから。続きを読む
posted by おぐおぐ at 10:59 | TrackBack(0) | 温室効果の理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月19日

光・熱ふく射のエントロピー理論について

 先日から小林ゼミのオンライン聴講生として、エコロジー/エントロピー経済ゼミに参加させていただいています。
 2回ほど話の流れを聞くのもうつろに、まあ槌田エントロピー論の意味について考えてました。

 恥ずかしながらちゃんとこれまで考えたことがなかったのですが、温室効果ガスのふく射についての理解がまともに出来ていないあの槌田氏が果たしてどこまで説得力のある物質循環のモデルを構築できているだろうか、と考えると疑問が沸々とわいて来たわけです。

 槌田氏は地球の物質循環の中で、特に水循環の果たす役割を高く評価しています。地表で太陽光により水/植物が熱を受けて水蒸気を放出し、その水蒸気がはるか何千メートルもの上空まで(はるばる)移動して、そこで(断熱膨張もしていて温度もマイナス何十度まで下がっているというのに)宇宙空間へ熱を放出して自らは再凝縮して地上に雨や雪として戻ってくる、これを循環だ、と言っているわけです。
槌田エントロピー論のこの説明におかしな表現がありましたらツッコミをよろしく。詳細に読むともっと変な主張ですね、末尾で訂正版を紹介しておきます)続きを読む
posted by おぐおぐ at 01:10 | TrackBack(0) | 温室効果の理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月30日

CO2はすでに飽和説&水蒸気が主要因説への解説がでています

アメリカ物理学協会の物理学史センター所長のワート氏他による懐疑派向けの解説がRealClimateブログに載っていますね。
http://www.realclimate.org/index.php/archives/2007/06/a-saturated-gassy-argument/#more-455

途中の要約部分だけ仮訳しておきます。
−−−
”ということで、懐疑派の友人が”飽和説”にもとづく温暖化への反論を持ち出してきたなら、こう言いさえすればよいのです。

(a) 仮に大気が飽和していたとしても、温室効果ガスによる温暖化の増加をさせることは可能です。なぜなら、気圧が薄い(ため未飽和の)上層の大気での吸収こそが影響を及ぼすからです。

(b) CO2の吸収に関して言えば、大気中で飽和しているという説すら正しくありません。

(c) 水蒸気はCO2の効果を圧倒することはありません。なぜなら、赤外線が放出される上空の冷たい空域ではほとんど水蒸気は存在せず、水蒸気の蒸気圧自体も低いため波長ごとの吸収帯の間の漏れが現れており、そこではより多くの赤外線が通過するからです。

そして最後に(d)これらの問題は物理学者が50年も前に十分議論しつくしておりその物理プロセスはすべての気候モデルに組み込まれているのです。

−−−
 ということで過去の高層大気の赤外線計測の歴史を紹介してくれている解説文となっています。

 まあ、複雑な解説で分かりにくいとは思いますが。
 一言で言えば、ニンバス何号だかでサハラ砂漠を眺めて得た有名な赤外スペクトルデータは、必ずしも砂漠の地表から直接出た赤外線ばかりではなく、とくに15μmの吸収域のスペクトルは、上空の低層中層高層大気からのCO2の再放射を含めて出てきた赤外線の重なりを眺めたものなので、ほとんど地表からのデータの特徴を示すものではないんだよ、という言い方になるでしょうか。

 どこぞではエントロピー増大則に違反する、などという馬鹿馬鹿しい批判まで出ているようですが、そんな高等な話ではなく、単純に上空でのCO2分子からの再放射の際には、宇宙空間向きと地表向きの放射がそれぞれ統計的に半々の確率で起こるということだけから温室効果は導かれるものです。
posted by おぐおぐ at 11:25 | TrackBack(1) | 温室効果の理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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