2009年02月13日

注目の社説その9

各紙の社説を紹介します。

日経:社説1 国の理念と志が問われる排出削減目標(2/13)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20090212AS1K1200412022009.html

 地球温暖化防止のポスト京都の枠組み交渉で日本が示す温暖化ガスの排出削減の中期目標について、政府は4分類6案を軸に検討することを決めた。中期目標は国際交渉での日本の発言力を左右する。日本の低炭素社会の方向も決める。説得力と志のある目標を求めたい。

 6案は2020年に1990年比で7%増から25%減まで幅がある。選択肢として様々な案があるのはよいが、削減でなく排出増の案まであるのは驚くしかない。場合によっては国際社会に背を向けるつもりというメッセージなのか。世界が削減を議論するなかで排出増の選択肢を残した感覚は疑わざるを得ない。

 素案は首相直轄の懇談会の下部にある検討会で議論してきた。そこで多様な意見がかわされるのはいいが、数値の議論に終始しているのは極めて残念である。日本は地球の温度上昇を何度以下で抑えるつもりなのか。その原点を明確にしなければ中期目標に魂がこもるまい。

 温暖化防止はそもそも、将来の子孫にどんな地球を残すのか、という問題である。欧州は2100年に産業革命以来の温度上昇を2度以下に抑えるとし、究極目標を明確にしている。では日本はどうなのか。そこが議論の出発点のはずである。

 高い温度上昇を許容するのであれば、それによって生ずる被害拡大への責任も日本が負うという意思が示されなければならない。

 枠組み交渉は国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第四次報告書を前提にしている。報告書に書かれた、先進国が20年までに90年比で 25―40%削減するというシナリオの採用も合意している。目標の議論ではこの前提の軽視が散見されるが、国際合意の重みを十分に認識する必要がある。

 欧米では景気対策として温暖化防止に絡めた「グリーン・ニューディール」政策に力を入れている。太陽電池や風力など新エネルギーの投資で雇用を創出し、低炭素社会への移行を早める決意は固い。

 日本でも遅ればせながら景気刺激に同様の政策が検討されている。だが、この政策は高い削減目標があってこそ成り立つ。目標が低ければ、温暖化防止の投資拡大の理由付けが苦しい。低炭素社会への決意が見えぬ目標なら、国民も高額な太陽電池の設置などに動いてくれまい。

 中期目標の議論はとかく、欧米との駆け引きという視点に陥りがちだ。だが、この国の低炭素社会づくり、環境立国、そして地球のあるべき姿に思いをはせた議論が重要だ。

つづく おー、珍しくも、産経新聞より。
【主張】米排ガス規制 新政権の本気度問われる
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/216554
 オバマ米大統領が、自動車の排ガス規制強化など新たな環境政策を示した大統領令に署名した。就任後初めての具体的な環境政策で、大統領が公約に掲げた地球温暖化対策と景気浮揚を両立させる「グリーン・ニューディール」の第一歩でもある。

 経済危機克服の鍵を握る総額8250億ドルの景気対策法案をめぐって、オバマ政権と議会との調整が本格化している。

 大統領には矢継ぎ早に政策を打ち出してリーダーシップを印象付ける狙いもあるのだろう。景気対策の上からもスピード感を持って公約実現に取り組んでほしい。

 今回の排ガス規制では、ブッシュ前政権が認可しなかったカリフォルニア州の独自規制を認め、前政権との違いを明確にした。新車の排ガスに含まれる温室効果ガスを2016年までに3割削減するなどの内容で、これが全米基準になっていく可能性がある。

 米国では、米自動車大手3社(ビッグスリー)の経営再建が課題となっている。排ガス規制強化は、経営が悪化している3社にとっては大きな重荷であろう。

 大統領令には昨年末に実施したつなぎ融資に続いて、環境対策の名目で資金支援を継続する狙いも見え隠れする。ビッグスリーには、経営再建と厳しい排ガス規制を両立させてこそ、売れる車が造れることを認識してほしい。

 今回の政策は、米国の地球温暖化対策の転換点になる可能性が指摘されている。米国が参加せず、世界一の排出国とされる中国が削減義務を負わない京都議定書の実効性が問われる中で、それに続く13年以降の「ポスト京都議定書」が今年末までにまとめられることになっている。

 今後、オバマ政権が環境対策に積極的に動くのであれば、先進国と途上国が対立する交渉を進展させるはずみになろう。

 ただ、オバマ大統領が掲げる「20年までに温室効果ガスの排出量を1990年の水準まで削減」という中期目標はまだ消極的だ。地球温暖化の深刻さを見据えれば、目標水準はもっと高くてもいいだろう。

 オバマ大統領は、「米国が地球温暖化対策をリードするときがきた」と語った。本当にそうするためには、さらなる具体策が必要だ。グリーン・ニューディール政策の具体化とあわせ、新政権の本気度が問われている。

日経:社説1 排出削減目標、内向き議論の危うさ(1/26)
 温暖化ガスの排出削減義務を定めた京都議定書の第一約束期間は、2012年で終わる。その次、ポスト京都の枠組みは、今年の年末にコペンハーゲンで開く国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP15)で決まる。難航が予想される国際交渉の焦点は20年までの国別排出削減目標、いわゆる中期目標である。日本でもようやくその検討が始まったが、内向きな議論が目に付き、強い既視感と危機感を覚える。

 ちょうど12年前の丑(うし)年、1997年の年末に京都で国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP3)が開かれ、先進国全体で12年までに90年比で5%削減する京都議定書が採択された。

 このときは削減幅について0%から5%まで政府部内でもまとまらず、一連の国際会議で決まった交渉の方向、先進国がまず差異ある責任を果たすために義務を負うという流れも見誤って、結果的に欧州と米国に交渉の主導権を握られた。

 今回も中期目標の決定は他の先進国に比べて遅れている。さらに、昨年のCOP14でも確認され、一昨年のCOP13で国際合意した交渉の行程、バリ・ロードマップを無視するような議論が行き交っている。

 バリ・ロードマップは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第四次報告書が示す、カテゴリー1と呼ぶシナリオを採用している。20年までに先進国は90年比25―40%減という数字である。

 地球の温度上昇を何度以内に抑えるかで、IPCCは厳しい順にカテゴリー1から6まで六つのシナリオを提示している。1は産業革命からの気温上昇がセ氏2.0から2.4度で、6だと最大6.1度上昇する。欧州は1を採用している。オバマ新大統領の就任前の演説では、米国は20年までは次に厳しい2のシナリオに沿って削減し、50年までには1のシナリオに復帰するよう削減ペースを上げるという計画だ。

 削減計画の目標に、絶対的な正義や正解があるわけではない。ただ、科学的な根拠と、国際社会を納得させる合理性と説得性は不可欠だ。昨年来、国際交渉の場では国別総量目標にはふさわしくないと何回も明確に否定された、セクターごとの削減可能量の積み上げが、いまだに日本の選択肢として検討対象になっているのは、不可解というしかない。

 排出削減は経済の重荷という発想を変えないと、意欲的な目標は作れず、環境立国も成立しない。技術だけでなく、経営も社会も政治も、文明史的転換の縁にいる。

朝日:温暖化防止―「緑の日本」担える政治を
http://www.asahi.com/paper/editorial20090104.html?ref=any#Edit1
 地球温暖化の防止に向けた節目の年が明けた。

 温室効果ガスをどう削減していくのか。京都議定書に続く新たな国際的枠組みが年末に決まる。不況の暗雲が世界を覆っているが、それでも脱温暖化への歩みを後退させてはならない。

 一筋の光はある。太陽光や風力のように二酸化炭素(CO2)を出さない再生可能エネルギーの利用を広げ、それを新たな成長の糧にする「グリーン経済」への転換である。

 エコ住宅を普及させたり、太陽光発電の施設を増やしたりすれば、CO2を減らしつつ新たな雇用をつくることができる。温暖化防止と景気回復を同時にねらう発想だ。

 世界は動いている。ドイツやスペインなど欧州の国々は、社会や産業のグリーン化を進めてきた。米国のオバマ次期大統領も、グリーン・ニューディール政策で内需の拡大をめざす。

 さて日本はどうか。残念だが、政府の及び腰の対応に不安が膨らむ。

 たとえば、今月下旬にも誕生する国際再生可能エネルギー機関(IRENA)への参加問題がある。

 昨年10月、太陽光や風力の利用を広げようと、英仏独伊やインド、韓国、オーストラリアなど51カ国が設立協定を結んだ。だが、日本は米ロなどとともに参加を表明していない。

 日本が使う1次エネルギーのうち、再生可能エネルギーは2%だけだ。これを増やすには、太陽光発電などの電気を電力会社が高く買い取るといった思い切った施策が必要だが、経産省や電力業界は消極的だ。IRENA不参加の背景にそんなことがある。

 ほかにも、CO2の国内排出量取引は、産業界の一部に配慮して強制力のない中途半端なものになった。温室効果ガス削減の2020年ごろの中期目標では、欧州が意欲的な数字を出しているのに日本はまだだ。

 従来型の産業に固執して足踏みしていると、グリーン経済に出遅れてしまう。政治のリーダーシップを発揮し、早急に社会や産業のグリーン化へかじを切らねばならない。

 対応が遅れると、国際政治の場でも発言力を失ってしまう。「日本は脱温暖化に後ろ向きだ」というイメージが定着すれば、ポスト京都議定書をめぐる国際交渉で、誰も日本の主張に耳を傾けてはくれまい。不本意な条件をのまされるようでは困る。

 そもそも日本は、けっして脱温暖化に後ろ向きではない。エコカーや太陽電池、省エネなど世界トップ級の環境技術がある。国や自治体の様々な技術援助は海外で高く評価されている。国民の環境意識も高い。

 世界へ向けて「緑の日本」というメッセージをいかに発信するのか。そうした戦略が問われている。

朝日:温暖化防止―「南北共益」の道はある
http://www.asahi.com/paper/editorial20081216.html?ref=any#Edit2
 地球温暖化を防ぐための京都議定書は、2012年で期限が切れる。その後の枠組みは来年末に決める予定だが、なかなか国際社会の意見が一致しない。ポーランドで開かれた気候変動枠組み条約の締約国会議(COP14)では、多くの課題が先送りになった。

 残り、あと1年。豊かさを追い続けるあまり、将来世代に地球環境の破壊というツケは回せない。集中的に交渉を進め、後世に恥じない合意を生み出す責任が、どの国にもある。

 もちろん、これまで大量の二酸化炭素(CO2)を出してきた先進諸国の責任がもっとも大きい。だが、今後は中国、インドなどの新興経済国や途上国による排出も増える。京都議定書は先進諸国だけに排出削減を義務づけたが、ポスト京都では世界全体で削減していかなければならない。

 最大の焦点は、こうした南北問題にどう対処するかである。

 今年の洞爺湖サミットで、主要先進国は「温室効果ガスを50年までに世界全体で半減させる」ことで一致した。だが、中印などの首脳を加えた16カ国会合では物別れに終わった。COP14も同様で、途上国の多くが、先進国は20年までの中期的な削減目標を先に示すべきだと切り返した。

 新興国や途上国をポスト京都の枠組みに引き入れるには、中期的な削減目標の設定が不可避である。そのことが決定的なまでに明らかになった。むしろ、この点がCOP14の成果と考えるべきだろう。

 欧州連合は、20年までに1990年水準より20%削減する中期目標をすでに示しているが、日本はまだ示していない。オバマ米次期大統領の公約は20年までに90年水準に戻すというもので、これでは不十分だ。米欧日がそろって新興国や途上国を説得できる中期目標を明確にする必要がある。

 温暖化防止策が、経済成長と貧困対策の足かせになるのは避けたい。しかも、この世界的な経済危機のさなかである。新興国、途上国とも将来に不安を抱くのは当然だろう。

 そんな中で注目したいのが、国連環境計画(UNEP)の「グリーン経済イニシアチブ」である。革新的なエネルギー技術などへの投資を拡大し、雇用機会を増やしながらCO2の排出削減も進めるビジョンだ。

 オバマ次期大統領は、クリーンエネルギー投資で新たな雇用を創出する方針だ。UNEPの構想はこうした投資を世界規模で進めることをめざしている。北側から南側への経済支援と技術移転が進めば、「50年までに世界で半減」という目標が双方の利益にかなう現実的なものになるだろう。

 ひとつしかない地球の住人として、未来を共有するための接点をさぐる。これからの1年が、決断の時だ。

日経:社説2 難題先送りのポズナニ会議(12/16)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20081215AS1K1300115122008.html
 ポーランドのポズナニで開かれていた国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP14)は、地球温暖化防止の次期枠組みづくりをわずかに進展させただけで閉幕した。

 会議での合意は発展途上国に対する資金援助、森林保全支援など一部だ。核心の温暖化ガスの排出削減目標も新興国の排出抑制も議論は進展しなかった。ただし、今回のペースダウンは、年明けから交渉が急速に動き出す前兆とみられている。米国のオバマ政権誕生まであえて難題を持ち越したというのが実情だ。

 交渉期限である来年末までに、約190カ国の複雑に入り組んだ利害を調整しながら合意にまとめあげる作業はそう簡単ではない。ただ、環境問題に背を向けてきたブッシュ政権の退場で交渉は加速する。オバマ政権では問題を熟知した専門家が交渉を担当するとされており、政権発足早々に方針が明確になるだろう。

 今夏の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)では、50年に世界で排出半減という長期目標を掲げ、各国に認識の共有を求めることを決めた。しかし、議長国日本が、COP14ではその働きかけに動かなかった。中期目標の提出期限の明記にも抵抗し、腰の引けた姿勢をみせつけた。

 中期目標の決断が遅くなればなるほど発言力は落ちる。哲学を欠くと交渉力も危うい。政府は環境外交を早急に立て直すべきである。

 枠組み交渉には景気減速が微妙な影を落としている。実際、欧州連合(EU)では景気対策に絡んで温暖化対策の不協和音が表面化し、首脳会議で調整せざるを得なかった。途上国は先進国から支援資金が細ることを心配し始めている。

 ただ欧米では、景気減速で温暖化防止が後退したり、排出量取引など経済的手法による排出削減が足踏みしたりすることはあるまい。むしろ需要喚起や雇用創出を狙い低炭素社会への転換を促す動きが加速するだろう。温暖化対策を理由にした産業てこ入れ策も増えてくる。排出削減は産業の構造転換も促すはずだ。

 政府や産業界が排出削減に消極的では、景気対策は限定されてしまう。景気刺激のためにも、日本は中期目標を早く決め、低炭素社会に向け政策を動員すべきではないか。

毎日:社説:COP14閉幕 環境と経済の両立日本が示せ
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20081216ddm005070129000c.html
 京都議定書以降(ポスト京都)の枠組み作りを終えるまで、残すところ1年。重要な通過地点である国連の「気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)」が閉幕した。

 来年の作業計画では一致したものの、具体的中身では進展に乏しい。先進国も途上国も、あと1年で互いの溝を埋め、地球の気候安定に向けて協力し合う覚悟が要る。

 会議の焦点となったのは、2050年ごろまでの長期目標、20年ごろまでの中期目標、新興国の責任分担などだ。

 長期目標については、日本などが「50年までに世界全体で温室効果ガスの排出量を半減させる」との合意をめざしていた。しかし、削減義務を課せられることを警戒する途上国の反対で削減幅は盛り込まれずに終わった。

 先進国の中期目標については、まだ数値を公表していない日本などが「時期尚早」と反対した。結果的に「20年までに90年比で25〜40%の削減が必要」という国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の指摘を認識するという表現にとどまった。

 これは、1年前のCOP13と同じ表現で前進はみられない。途上国への資金援助でも、目立った進展はなかった。

 こうした議論の中で改めて浮き彫りになったのが、先進国と途上国の対立だ。現在の京都議定書では、温室効果ガスの削減義務を負っているのは先進国だけだ。これまで経済発展を享受し、温室効果ガスを排出してきた先進国が責任を果たすのは当然だ。

 しかし、中国やインドをはじめ、経済発展とともに大量のガスを排出している国がある。そうした新興国の排出抑制を実現しない限り、地球規模の対策は意味をなさない。

 にもかかわらず、互いに相手が果たすべき義務を求めることを優先し、歩み寄りは進まなかった。

 「環境先進国」のドイツをはじめ、これまで温暖化交渉で主導権を握ってきた欧州連合(EU)も今回は存在感が薄かった。金融危機による景気後退が影響したためとみられるが、EUに限らず、経済状況の悪化ですぐに腰が引けてしまうようでは、ポスト京都の長期的な対策は望めない。

 むしろ、景気対策を温暖化対策と結び付けていく知恵が必要だ。経済と環境の両立が相反しないことを示せなければ、途上国を説得することも難しい。

 今回の会議は、オバマ次期米大統領の登場を待つ姿勢も見られた。確かに、オバマ政権の出方は世界の温暖化対策に大きな影響を与える。だが、それを漫然と待っていては交渉の最終段階で混乱が起きる。EUが及び腰になっている今、景気対策と連動させた温暖化対策の方向性を日本が打ち出す時ではないか。

朝日:温暖化会議―来年の合意へ向け前進を
http://www.asahi.com/paper/editorial20081207.html?ref=any#Edit2
 地球温暖化を防ぐため、京都議定書に続く2013年以降の枠組みをどんな内容にするか――。192カ国が参加する国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の締約国会議(COP14)がポーランドで開かれている。

 世界的な経済危機のせいで、「温暖化防止どころではない」という空気が漂うなかでの会議である。UNFCCCのデブア事務局長は開幕にあたり、「温暖化防止をいかに経済の回復につなげるかに目を向けよう」と各国の代表団に発想の転換を求めた。

 ここで不況を理由に温室効果ガス削減の歩みを鈍らせてしまうと、地球規模の災厄が避けられなくなる。そんな危機感を世界が共有し、低炭素ビジネスを活発にさせれば景気回復にも効果があるという発想で、来年末の合意へ向け議論を加速させたい。

 合意への道は平らではない。どんな長期的な削減目標を世界で共有するか。中国やインドなど新興国の協力をどう取りつけるか。各国の利害が複雑に絡み合う難問ばかりだ。

 残された時間は1年しかない。今回の会議で各国の主張をもとに論点を整理し、合意への道筋をつけておかないと間に合わなくなる。

 ところが、会議の序盤から、先進国と新興国・発展途上国の鋭い対立が早くもあらわになっている。

 たとえば、世界が共有するべき長期的な削減目標について、日本は「50年までに世界全体の排出量を半減する」とした北海道洞爺湖サミットの合意を柱にすえるよう提案した。米国や欧州連合(EU)も、これに同調する姿勢を見せている。

 だが、痛みを共有するよう求められた途上国側は、「先進国が20年までの中期削減目標を示すのが先だ」と強く反発している。ここはまず、先進国側が率先して削減する覚悟を示すことが、説得の糸口となろう。

 会議終盤には閣僚級会合がある。途上国への資金援助や省エネ技術の移転など、さまざまな課題を通じて互いに歩み寄る努力をするべきだ。

 追い風も吹いている。世界最大の温室効果ガス排出国である米国で来月、温暖化防止に熱心なオバマ新政権がいよいよ誕生することである。

 米国の代表団は、京都議定書に背を向け続けたブッシュ政権が送り込んでいるものの、オバマ氏は現地へ入る米議会関係者を通じて情報収集する方針だ。「死に体のブッシュ政権では話にならない」と議論を手控えるのではなく、「オバマの米国」をにらんで建設的に議論してほしい。

 温暖化防止に熱心な欧州と、新政権発足を控えた米国がどう連携して、途上国との距離を縮めるか。洞爺湖サミットの延長線ともいえる交渉であり、日本の環境外交も改めて試される。

日経社説1 温暖化防止会議、様子見でなく前進を(12/2)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20081201AS1K0100901122008.html

 京都議定書に続く次期枠組みを詰める国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP14)がポーランドのポズナニで始まった。交渉のカギを握る米国はオバマ次期政権への移行期にあり、議論が様子見に終始する懸念もある。少なくとも来年末の交渉期限をにらみ、合意までの段取りにメドをつけなければならない。

 枠組み交渉はオバマ米次期大統領が温暖化ガスの排出削減に積極姿勢を明確にしたことで展望が開けつつある。今回の会議で米国は表舞台には排出削減に消極的なブッシュ現政権が立つが、次期政権担当者もオブザーバー参加するから、実質的な交渉は水面下で進められる。

 最大の焦点である排出削減の中期目標は、交渉期限の来年末の締約国会議(COP15)までもつれ込む見通しだ。しかし、今年の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)で掲げた2050年に世界の排出半減という長期目標や、排出増加が著しい中国やインドなど新興国の排出抑制については、今回の会議で少しでも合意に近づけるべきだろう。

 50年の排出半減について中印は先進国がまず高い目標を示すよう求めてきた。これにオバマ次期大統領は50年に1990年比で80%削減と応え、欧州連合(EU)も同60―80%減を再確認して、中印説得に足並みをそろえた。

 洞爺湖サミットで議長を務めた日本は50年までに60―80%減としながら、基準年を90年にせず、現状比でと逃げている。日本の排出量は90年比で 7―8%増えているから、目標は米国やEUより低い。これでは中印などの説得の足を引っ張りかねず、サミット議長国として国際合意形成に貢献できまい。

 日本は中期目標についても産業分野ごとの削減可能量を積み上げるセクター別アプローチを主張したり、基準年を90年ではなく複数提案したりするなど高い目標を避ける細工に走ってきた。

 だが、オバマ次期政権はセクター別の積み上げ方式も基準年変更も採用の考えがないことを明確にした。オバマ次期政権は排出量取引導入でもEUに歩み寄っており、日本が腰の引けた交渉姿勢を早く改めなければ、国際的に孤立しかねない。

 欧米では温暖化防止をテコにした景気対策や産業強化策が目立つ。高い削減目標を掲げて社会や産業構造の転換を促す意図ははっきりしている。これが枠組み交渉の流れも決する。世界の動きは速い。日本が交渉はまだ半ばと悠長に構えていると、世界の潮流から取り残される。

注目の社説その8 へ続く
posted by おぐおぐ at 22:04 | TrackBack(0) | 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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