2008年09月05日

アメリカ大統領選:オバマvsマケインの争点

 このブログの常として暫定的な記述を積み上げていく形になりますがご容赦を。

 8月下旬と9月上旬にアメリカでは民主党と共和党のそれぞれの党大会が終わり、いよいよ熾烈な宣伝や相手候補攻撃の争いとなり、数回の候補者討論会を経て11月の大統領選挙になだれ込んでいくことになります。

【背景】
 共和党のブッシュ現政権の温暖化に関する政策は、ほんとにひどい出来でした。
・2000年の選挙キャンペーンの際には、ブッシュは火力発電所からのCO2を汚染物質として排出規制をする、ということを環境政策の目玉として掲げて、民主党のアル・ゴア候補のお株をうばっていました。
・当選早々の2001年3月〜7月に掛けて、京都議定書からの離脱を表明し、温暖化が人為的なものかどうかについても疑問視をし、アメリカ経済にとって悪いから、と火力発電所のCO2規制もなしにしてしまいました。
・ほかにも、「思いやりのある保守主義」だとか、「同盟国との連携を重視する外交」だとか、本人が腹を抱えて笑っていただろう膏薬ならぬ公約を連発して当選してから、ブッシュ大統領がアメリカを駄目にしてしまったからこそ、8年経ってオバマ候補が「チェンジ」を掲げて彗星のように、旋風のように民主党側の大統領候補となれたのだろうと思います。

・共和党のマケイン候補にしても、2006年の中間選挙では共和党が大敗を喫して上院も少数与党に転落したこともあり、ブッシュ政権とは距離を置いた一匹狼候補である、として党の予備選をのし上がってきたのだと言えます。

【民主党大会】
 さて、ヒラリー候補との予備選で熾烈な戦いが行われ、党内融和のための演出が続いた、と報道されていましたが、オバマ候補のエネルギー政策、温暖化対策についてみていきましょう。

 1500億ドルを中東原油へのエネルギー依存をなくすため、再生可能エネルギーに投資する、などの点は、
JanJan:オバマ候補の経済政策と「ネクスト ニュー・ディール」
http://www.news.janjan.jp/world/0809/0808315895/1.phpでも紹介されています。
 これはまた(アル・ゴアのエネルギー提案−大統領選への働きかけ)にも反応をしたメッセージなのでしょう、ゴアも民主党大会でマケインは温暖化の挑戦に応える用意が出来ていないがオバマは出来ている、と讃えていました。

 他の党大会参加者の感想の中には、「背景」の党員の会話やレセプションと、スピーチ本体のあいだにはグリーン度に乖離があることを指摘していました。
Where climate/energy issues stand in the Democratic Party
http://gristmill.grist.org/story/2008/9/1/3127/50921
 つまり会場に参加した人にとってはグリーン度は十分だったんだけれども、スピーチ自体にはグリーンこそが経済を救うんだ、という期待を持たせるものが足りなかった、オバマ民主党員たちはまだ党員に対して確信をもって伝えようとしていないという結論になっています。

【共和党大会】
 マケイン上院議員は元々キャップ&トレード型排出権取引を中心とした温暖化対策の法案の立案者でもあり、温暖化対策に前向きな、共和党に珍しい候補として、温暖化対策の規模はあまり大きな争点ではない、とこれまでは見られてきました。

 この党大会でお披露目をした、サラ・ペイリンアラスカ州知事を副大統領候補に据えたマケイン候補の決定は、この構図を一変させました。
 アラスカは石油産業に頼るモノカルチャー州であること、ペイリン知事自体が、これまで石油開発から長年保護されてきたアラスカ北極湾岸自然保護区(アンワールANWR)の開発推進派でもあること、そしてなにより彼女が、地球温暖化は人間活動のせいではないと考える立場だと公言したからです。
New York Times:And Then There Was One
http://www.nytimes.com/2008/09/03/opinion/03friedman.html?_r=1&oref=slogin
Thomas L. Friedman
”With his choice of Sarah Palin - the Alaska governor who has advocated drilling in the Arctic National Wildlife Refuge and does not believe mankind is playing any role in climate change - for vice president, John McCain has completed his makeover from the greenest Republican to run for president to just another representative of big oil.”

 この問題は共和党大会そのものでは深く追及されることはありませんでした。
 が、もし共和党マケイン候補が勝利すれば、ペイリン女史は副大統領つまり上院議長の役職に就き、仲間の上院議員たちに条約の批准についての大きな影響力を及ぼす(決定的な1票も行使する)ことになります。(条約の批准は上院の仕事)

 それは、「ポスト京都」=COP15コペンハーゲン合意の成果を米国が批准しない、という抜本的な国際温暖化対策スキームの崩壊につながる決定であった、と歴史家は後になってから振り返るかもしれません。

 米大統領選から目が離せなくなってきました。なんとしてもオバマに勝ってもらわなければなりません。

 マケインがなんと説明しようが、石油産業と現ブッシュ政権がペイリン女史を副大統領候補に、とねじ込んだのかもしれませんね。

参考:
U.N. Foundation's Detchon talks conventions, prominence of energy and climate (OnPoint, 09/03/2008)
http://www.eenews.net/tv/transcript/856
 ここでは、国連基金の人が両党大会を評しています。
”But I think it's an important question for McCain, because what, after all, is the sole, statutory duty of the vice president is to preside over the Senate. And, in effect, an able vice president can be an important force in the Senate and that will be the cockpit of action on climate change over the next two years if either president is elected. But if McCain is elected one would expect that he would want Vice President Palin to be carrying his message to the Republican caucus in the Senate and reaching a deal on cap-and-trade legislation. That will be quite a stretch from her current position.”

WorldWatch:Sarah Palin’s Record on Climate Change
http://www.worldwatch.org/node/5879?emc=el&m=143201&l=5&v=a7b7f76cf0
”Palin's stance on climate change is summarized in an August interview with conservative magazine Newsmax. In response to a question about her "take on global warming," Palin said, "A changing environment will affect Alaska more than any other state, because of our location. I'm not one, though, who would attribute it to being man-made." Neither Palin's communications director nor the McCain campaign responded to requests for clarity on her views of whether recent climate change is human-caused - a trend that has been affirmed by international scientific consensus.”続き
ABC: Palin lied about global warming record
http://rawstory.com/news/2008/ABC_Palin_lied_about_global_warming_0912.html
ここでは、マケイン候補の考えにあわせて発言を変えているのではないか、と記者に突っ込まれています。

CBS:Palin's Global-warming Skepticism
"But Palin's record is Palin's record, and the fact remains that she's so far out there, she's rejected the connection between global warming and human activity. Indeed, she's done so more than once. This not only tells us something important about Palin's understanding of public policy, it also tells us a great deal about how she perceives and considers evidence that runs counter to her ideology."

後日記:
ワシントンポスト:
Palin, McCain Disagree on Causes of Global Warming
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/09/22/AR2008092202894.html?hpid=topnews


10月4日記
Sarah Palin on Climate Change: The Causes Don’t Matter
http://redgreenandblue.org/2008/10/03/sarah-palin-on-climate-change-the-causes-dont-matter/に、副大統領候補討論会でのペイリン女史の立場が紹介されています。原因がなんだろうと対策はやる?というようなあいまいな立場のようです。
 いずれにしても、金融危機を招いたブッシュ経済失政のせいで共和党の不人気は決定的なようです。すんなりオバマが勝利するんでしょうか?

別記:
 枝論になりますが、海底油田の開発を30年ぶりに再開するかどうかも大統領選の争点になっています。

 海底油田の開発モラトリアムは、確か9月末にちょうど切れることから、米国連邦上院では再度延長なり解除なりの法案が審議されているところで、実際には大統領選よりも先に決まるようですが。
por_sept_8_commentary.png
(ブッシュ政権と共和党のマケイン候補は、米国周辺の海底油田をこれからどんどん開発を進めようとしていますが、実際にあるのはハリケーンの通り道であるテキサス州、ルイジアナ州が大半のようです。アラスカの北極側の開発(ANWR)は、なかなか進まないでしょう。
 共和党の「ここ掘れワンワン」政策は、果たして第三次石油ショックの対応として役に立つのかどうか、という議論がハリケーン・アイクによる米石油ショックを受けて始まるでしょう。)
posted by おぐおぐ at 13:38| 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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