2008年08月10日

北極の海氷の減少は「オゾンホール発見」物語のようなものか?

 グラフは、全米雪氷データセンターのページより
(8/26、8/30、9/15、10/7に最新版に差し替え。)
ティッピングポイントの一つとして指摘されている北極の海氷の減少ですが、今年もひどいもののようです。

Observer誌:Meltdown in the Arctic is speeding up
Scientists warn that the North Pole could be free of ice in just five years' time instead of 60
http://www.guardian.co.uk/environment/2008/aug/10/climatechange.arctic
”'It is a neck-and-neck race between 2007 and this year over the issue of ice loss,' said Mark Serreze, of the US National Snow and Ice Data Centre in Boulder, Colorado. 'We thought Arctic ice cover might recover after last year's unprecedented melting - and indeed the picture didn't look too bad last month. Cover was significantly below normal, but at least it was up on last year.

'But the Beaufort Sea storms triggered steep ice losses and it now looks as if it will be a very close call indeed whether 2007 or 2008 is the worst year on record for ice cover over the Arctic. We will only find out when the cover reaches its minimum in mid-September.'”
 ここ一週間で?北極の海氷の溶け方が加速しているとのことで、2007年よりも面積が小さくなるかもしれない、という報告になっています。
 実際には面積は一番小さくなるのは9月半ばのことですので、今年についてはまだ途中経過の状態です。

8/30記:
今年の北極の海氷は2005年の面積を抜いて、2007年に次ぐ小さな海氷になったそうです。史上最低面積は更新できなさそうですが、それでも続いての変化となりました。


 拙ブログではこれまでいろいろ記事にしていました。
北極圏の温暖化4題噺
http://sgw1.seesaa.net/article/127880073.html
北極の海氷の減少
http://sgw1.seesaa.net/article/127880141.html
続・北極の海氷の減少
http://sgw1.seesaa.net/article/127880405.html
「もうカナリアは死んでしまった、炭坑から逃げ出すときだ」
http://sgw1.seesaa.net/article/127880465.html

 さて、昨年のJAXAの発表の中ではこちら、
「北極海での海氷面積が観測史上最小に
今後さらに予測モデルを大幅に上回る減少の見込み」
http://www.jaxa.jp/press/2007/08/20070816_arctic_j.html
 の中から、
−−−
 この海氷の減少は、IPCC第4次報告書で予測されている北極海での海氷の減少を大幅に上回るもので、このような観測と予測の大きな差は、予測モデルでは北極海で起こっている現象が十分に表現されていないことの現れであると考えられます。・・・
 このままのペースで減少が続けば、IPCCの予測を大幅に上回り、2040-2050年の予測値に達する可能性があることが判明しました。・・・
−−−
 となっています。

一方、以前の記事
「北極海海氷減少と北極振動が相互に影響しあっていることを発見」
http://www.jaxa.jp/press/nasda/2001/arctic_010330_j.html
 の文章を読んでみると、
−−−−
背景

 従来、北極海の海氷面積の減少は、炭酸ガス増加による地球温暖化にともない北極圏の気温が上昇し、いったん海氷が減少すると、夏に太陽放射を吸収して海水温度が上昇することで、さらに海氷が減少するというのが定説であった(図1)。

成果および考察

 池田プログラムディレクター等は、ボックスモデル(図2)を用いてシミュレーション計算を行った結果、強い極渦と海氷の減少(あるいは逆に弱い極渦と海氷の増加)の間で相互に影響しあい、海氷が増減しながら減少していく中で、極渦が北極振動しながら強化していくことを発見しました(図3、図4)。
 北極振動が北日本の寒暖に大きな影響を与えていることは従来から知られており、その周期性と将来の状態を予測できれば我が国の国民生活に大変役立つことが期待されるところであり、地球規模環境変化の理解とも合わせて、北極圏における大気モデル、海氷・海洋モデルによる地球変動予測の研究を引き続き進めていくことが極めて重要と考えられます。

今後の研究課題

 海氷が薄くなると極渦・海氷・表層水(大西洋水)の間に正のフィードバックがはたらき、北極海海氷が極端に減少し、それにともない極渦が強化する可能性が示唆されました。この正のフィードバックで重要になるのが海氷面積の減少に対する極渦強化率であり、これをさらに正確に見積もる大気モデル研究が必要と考えられます。また、同時に北極海から大西洋に流出する海流の流量をモニターすることが必要です。海氷面積と移動速度については人工衛星による観測が可能ですが、海流流量については現場での観測を実施することが必要となります。
−−−−
 と、いうことで、定説で主張されていたのは「氷−アルベド」フィードバックですが、一方、JAXAの研究者らが主張している新たなメカニズムとは、勝手に名づければ、「海氷減少−北極振動」フィードバックという正のフィードバックがあるという主張です。

 従来の定説に「追加して」正のフィードバックを新たに提案することで、現在の異常な観測値(温暖化の激化)を説明するという趣旨の発表がされていたと言ってよいでしょう。

後日記:
島田浩ニのページ
http://www2.kaiyodai.ac.jp/~koji/
に別の研究成果があります。
2008年春季 気象学会シンポジウム要旨(北極海のカタストロフ的な変化)
http://www2.kaiyodai.ac.jp/~koji/1.pdf
を読むと、相当複雑な各種要因が組み合わさったもののようです。やっぱり深い科学者同士の議論があって、次第にコンセンサスが形成されていくというものでしょう。

コメント:
 ここから先は勝手な思い込みですが。

 オゾン層破壊の研究でもこのような科学者による予測以上の激化という現象はありました。ほかならぬ南極の春先のオゾンホールの発生です。
 南極の極渦崩壊による春先の微粒子上での固体化学反応によって後付けでこのオゾンホールについての説明は付きましたが、そのことが人為的なCFCの放出によるオゾン層破壊という仮説を覆すものにはなりませんでした。

 この「オゾンホール発見」に匹敵するサプライズが、温暖化についての、早い予測では2013年に夏の北極から海氷が消えるかもしれない、という北極の温暖化問題なのだろうと思います。

 果たして、この物語が、オゾン層破壊問題に関するモントリオール議定書の修正版と同じ政治的な新たな合意をもたらすことになるのかどうかは分かりませんが。
 モントリオール議定書の修正版はたまたま「コペンハーゲン修正(Amendment)」と呼ばれていましたっけ。
 京都議定書&ポストキョウトについても来年末の、COP15(コペンハーゲン)での合意内容が注目されることになります。
posted by おぐおぐ at 18:45| 温暖化の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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