2008年11月25日

注目の社説その8

各紙の社説を紹介します。

朝日:不況と温暖化―「緑の内需」の出番だ
http://www.asahi.com/paper/editorial20081125.html?ref=any#Edit1
 世界はいま、100年に1度ともいわれる経済危機に直面している。不況から脱出するのが最優先だ。何十年も先の地球温暖化を防ぐため、大金を注ぐ余裕があるのか?

 そんな疑問をはね返すように、米国のオバマ次期大統領は新たな発想で不況に挑もうとしている。

■オバマ政権で転換へ

 道路やダムをつくる従来型の公共事業ではなく、脱温暖化ビジネスを広げていくことで環境と経済の危機を同時に克服する、というのである。

 太陽光や風力など再生可能エネルギーの拡大、食用ではない植物によるバイオ燃料の開発、家庭のコンセントから充電できるハイブリッド車の普及……。エネルギー分野だけで10年間に1500億ドル(約15兆円)の国費を投じてグリーン内需を拡大し、500万人の雇用を生むと訴えてきた。

 こうした脱温暖化への投資を他の分野へも広げれば、経済への波及効果もさらに高まるだろう。

 オバマ氏の政策は「グリーン・ニューディール」とも呼ばれる。1930年代にフランクリン・ルーズベルト大統領が公共投資によるニューディール政策で大恐慌を乗り切ったように、こんどは環境への投資で危機を打開したい。そんな期待がこもる。

 温暖化防止のためのさまざまな取り組みに対して、「経済成長を妨げる」と背を向け続けたブッシュ路線から、百八十度の転換である。

 世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国が「チェンジ」を決断すれば、13年以降の排出削減策の枠組みをつくる国際交渉に弾みがつく。

 主要8カ国は「温室効果ガスを50年までに少なくとも半減する」という目標を世界で共有しようと呼びかけている。コンサルタントの米マッキンゼー社は6月にまとめた報告書で、「それには炭素生産性を現在の10倍にしなければならない」と指摘した。

 炭素生産性とは、CO2排出1トン当たりの経済規模のことだ。生活水準を下げずに目標を達成するには、再生可能エネルギーへ大転換し、化石燃料の効率も飛躍的に高めないといけない。

■「炭素生産性」を競う

 米国にとどまらず、世界各国がグリーン・ニューディールを実践するべき時代に入った、といえる。

 まず、先進諸国が低炭素化と経済成長を両立させる政策に乗り出し、経済が拡大する中国やインドなどの新興国や途上国にも同様の政策をとるよう促し、支援していくべきだ。

 世界経済は、少しずつグリーン化の方向に動き始めている。

 国連環境計画(UNEP)などが9月に出した報告書によると、再生可能エネルギーへの投資が98年の100億ドルから07年には660億ドルへ増えた。これが20年に3400億ドルを超え、30年には6300億ドルへふくらむ見通しだ。「すでに、脱温暖化にあわせた投資パターンの変化が雇用を生み出しつつある」と報告書はいう。

 たとえば再生可能エネルギーの分野に限っても、ここ数年間に世界で230万人が働き口を得た。太陽光発電が急速に広がるドイツでは、26万人の雇用が生まれている。

 オバマ政権の米国がこの流れを加速させれば、遠からず、低炭素型の産業構造が世界標準となろう。新たなビジネス環境の下で各国の企業が技術開発に取り組み、炭素生産性の高い商品やサービスで競い合う時代がくる。

■チェンジの後押しを

 日本では先月、CO2の国内排出量取引の試行に参加する企業の募集が始まった。CO2を多く出せば損をし、減らせば得をするシステムをつくり、低炭素化を促すものだ。

 だが、「企業活動の妨げになる」と反対する産業界に妥協したため強制力に乏しく、実効性に疑問符がつく。不況の荒波が予想されるなかでは勇気がいるが、炭素生産性を競う時代の到来を見越して一歩を踏み出そう。

 先進国はどこも経済が成熟し、成長のタネを見つけにくくなった。脱炭素は経済の制約どころか、貴重なビジネスチャンスになるだろう。

 日本の環境・エネルギー技術は世界トップレベルだ。「チェンジ」の試みも数多い。足りないのは、それを促し後押しする仕組みである。

 たとえば、自動車メーカーは、電気自動車や水素を使う燃料電池車を市場に送り出しつつある。ただし、これら次世代車を普及させるには、充電施設や水素スタンドといった社会的な条件整備が欠かせない。

 地域レベルの挑戦もある。群馬県東吾妻町では8月、東京ガスなどが出資するバイオマス発電所の建設が始まった。木の枝や廃材を砕いたチップを燃やして発電する。石油や石炭を燃やすのとは違い、CO2を新たには排出しないとみなされる。

 出力1万3600キロワットで、2万3千世帯の電力をまかなえる。木くずは群馬県周辺の20社が供給する。規模は小さくても、雇用が生まれ地方経済の活性化に役立つ。こうした事業が各地に育つよう支援したい。

 CO2の排出量を大きく減らしながら、同時に経済成長を続けられる、と国立環境研究所などは分析している。「チェンジ」が早ければ早いほど、少ない投資で大きな効果が期待できる。政府はその先頭に立たねばならない。

社説1 温暖化防止、米の変化に日本の覚悟は(11/24)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20081123AS1K2200223112008.html

 オバマ米次期大統領は、CO2など温暖化ガスの排出削減に背を向けてきたブッシュ現政権の政策を180度転換することを宣言した。増え続ける排出量を 2020年には1990年レベルまで減らし、50年には90年比で80%を削減する。国が企業にキャップ(排出上限)を割り当て、達成の過不足分を市場で取引する排出量取引、キャップ・アンド・トレード(C&T)を連邦政府が導入する方針も明らかにした。

 米国の次期政権が具体的な総量削減の中期と長期の目標を明示し、排出量取引の導入も宣言したことで、日本の温暖化対策は本源的な問題を突きつけられた。日本政府は、50年に現状に比べて60―80%減という長期目標を決めたものの、京都議定書後の枠組み交渉でいま最大の焦点になっている20年をめどとした中期目標は定まっていない。

 今回、EU(20年に90年比20%減)に続いて、米国も90年比で0%という大甘の水準とはいえ、90年を基準年に中期目標を打ち出した。温暖化防止では周回遅れの米国にも日本は抜かれてしまった。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が先進国に求めているのは、20年までに90年比25―40%減である。科学の要請と経済社会の持続可能性を見極め、日本も早く合理的な目標を示すべきである。洞爺湖サミットなど一連の国際会議で、目標設定の手段としては明確に否定された「セクターごとの積み上げ」に固執しても、意味はない。

 日本は経団連と経産省の反対でC&Tを導入していない。試行的な取引も企業の自主参加と自主目標という不可思議な制度だ。キャップの無い制度は国際炭素市場とリンクしにくい。このままだと、日本は排出量取引に関する「国際炭素取引協定」(ICAP)に正式加盟できない唯一の先進国になってしまう。

 今月発表された昨年度の日本の温暖化ガス排出量はその前の年度を2.3%上回った。京都議定書では90年比6%の削減が必要だが、逆に8.7%も上回った。地震による原発の停止という要因もあるが、これはキャップを課さずに自主行動計画で進めてきた結果でもある。

 ブッシュ後は米国が方針を大転換し、米欧協調に中印などの新興国も絡んで、日本が置いてきぼりをくう可能性を、私たちは何度も指摘してきた。日本の環境技術力を生かすなら、国際社会には通じない、一部の業界団体のいう内向きの日本被害者論は、卒業するときである。幸い制度設計は緒に就いたばかりだ。
つづく すっかりご無沙汰しています。
 それにしても、『成長の限界』から30年以上経って、いまだに枯渇(最後の一滴がなくなる)の瞬間までは問題が起こらないと思っているとは…「ん」のカーブを知らないんでしょうか。It's Peak, stupid。

朝日:太陽光発電―「得だ」感を出せないか
http://www.asahi.com/paper/editorial20081116.html?ref=any#Edit2
 石油や石炭はいずれ枯渇する。それに頼りっきりでは地球の温暖化も防げない。これからの時代、太陽光をどんどん使うべきだ。この考え方に異論はあるまい。

 地上に届く太陽エネルギーは、1時間で世界の年間エネルギー消費量に匹敵する。限られた場所にしかない化石燃料とは違い、太陽光は日本にもたくさん降り注ぐ。エネルギー自給の面からも望ましい。

 なのに日本では、太陽光発電は全発電量の0.1〜0・2%でしかない。太陽光発電をしている住宅は全国に40万戸ほどである。これをもっと増やそうという政策が、今年度補正予算で3年ぶりに復活した。

 発電設備を取りつける際、1キロワットあたり7万円を国が補助する。二百数十万円かかる一般的な設備だと20万〜25万円ほど割安になる。

 94年度に始まった補助が05年度で廃止されたことを、私たちは「政策の失敗だ」として復活を求めてきた。今回、経済産業省は5年間は続けるという。効果に期待したい。

 政府はほかにも、太陽光発電などを取りつける費用の一部を所得税から控除したり、太陽光発電付きの新築住宅を住宅ローン減税で優遇したりすることも検討している。あの手この手で普及をめざすのは結構なことだ。

 全国に目を向ければ、300を超える自治体に、国と同じように普及を後押しする制度がある。

 来年度から設置費の補助を始める東京都の場合、一部の市や区にはすでに同様の制度がある。国、都、区から計70万〜80万円ほどがもらえるケースも考えられる。こうした補助の上乗せは普及に弾みをつけるだろう。

 ただ、設置の際の補助だけでは不十分だ。取りつけてからも「太陽光発電は得だ」と感じられるような施策を工夫してつくれないか。

 欧州で太陽光発電が爆発的に広がったのは、家庭などで自然エネルギーからつくられた電気を、電力会社に高く買い取らせているからだ。

 この制度をいち早く導入したドイツは05年、発電設備量で日本を抜いて世界一になった。スペインは今年末には180万キロワットに迫る勢いで、ぐんぐん日本を追い上げている。

 高値での買い取りを義務づける制度のない日本では、電力会社は、欧州に比べて低い単価でしか太陽光発電の電気を買い取っていない。欧州のような制度を導入するべきだ。

 こうした普及策の費用は、国や自治体、電力会社が引き受け、最終的には税金や電気料金の形で、社会全体が広く薄く負担することになる。

 温暖化を防ぐために、みんなで太陽光発電の普及を支える。そんな意識をもちたいものだ。

朝日:地球温暖化と総選挙―「環境」だって票になる10月6日
http://www.asahi.com/paper/editorial20081006.html?ref=any
 政権選択の総選挙が近づいているのに、国会では地球温暖化防止の政策論争がいっこうに盛り上がらない。まるで、「洞爺湖サミットで温暖化論議は一段落」といった静けさである。地球温暖化への対応は、21世紀の経済と社会の発展のあり方を決める重要な選択であるにもかかわらずだ。

 先進諸国の選挙では、党派を問わず温暖化防止対策を示すのが当たり前になっている。ブッシュ政権下で温暖化防止に後ろ向きだった米国では、大統領選を戦うオバマ氏(民主党)とマケイン氏(共和党)が、それぞれ二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス削減の数値目標を公約に掲げている。

 昨年11月のオーストラリアの総選挙で保守連合から政権を奪った労働党の勝因の一つは、温暖化防止を前面に掲げたことだった。

 こうした国々の指導者の視線の先には「ポスト京都」がある。先進国に温室効果ガス削減を義務づけた京都議定書の2012年までの第1約束期間が今年、始まった。「ポスト京都」とは13年以降の新たな枠組みのことで、来年末にデンマークである交渉会議で基本的枠組みの合意をめざしている。

 ■ポスト京都を見据えて

 洞爺湖サミットで主要8カ国は「50年に温室効果ガスの排出量半減という目標をすべての国々が共有する」ことで一致した。この長期目標を「ポスト京都」でどう取り扱うのか。20〜30年ごろの中期的な目標をどう設定するのか。残り1年余りの間、中国やインドなどの新興経済国や開発途上国を巻き込んだ駆け引きが本格化する。

 「ポスト京都」の新たな枠組みはこの先、何十年も参加国を縛る。だからこそ、低炭素社会のビジョンや経済発展のあり方をめぐって、欧米で政策論争が盛んなのだ。

 国内の意見をまとめるのは容易ではない。排出量取引や環境税などは社会や経済の変化をもたらす。産業界や国民には負担増の「痛み」を引き受けてもらわねばならない。さまざまな意見や利害が交錯するなかで、方向を定めるのは政治の仕事である。

 福田前首相が6月に出した温暖化対策の包括提案(福田ビジョン)は「温室効果ガス削減の長期目標は現状比60〜80%削減」と数字を示し、国別の削減目標設定も打ち出した。だが、中期目標には触れておらず、低炭素社会への道筋ははっきりしない。

 麻生首相は所信表明演説で「成長と両立する低炭素社会を世界に先駆けて実現する」「世界で先頭をゆく環境・省エネ国家として国際的なルールづくりを主導していく」と述べたが、福田ビジョンをどう発展させるのかのシナリオは見えない。具体的な数字の約束もいっさいなく、説得力が乏しい。

 ■雇用も生む技術開発

 一方、民主党は地球温暖化対策基本法案を国会に提出済みで、9月にまとめた党環境政策大綱で「20年までに90年比25%削減」「50年より早い段階で60%削減」という中長期の目標を掲げた。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの割合を現在の2%程度から20年までに10%に増やすことをめざすほか、国内排出量取引や地球温暖化対策税も明記している。

 だが、新税の税率や導入時期は示されておらず、どのような国内排出量取引制度にするかもあいまいだ。

 地球環境を守りつつ、経済成長や暮らしの安定をどう実現していくのか。自民党は数値目標を含めた新たな提案を出し、民主党は約束を実現する具体策を示したうえで、本格的な政策論争を展開してほしい。

 その際に忘れてならないのは、「低炭素社会への転換が遅れると損をする」という視点だ。温暖化防止には技術の開発競争という側面がある。目先のコストを嫌って温暖化対策から逃げているとビジネスチャンスを逃す。

 「環境・エネルギー技術には新たな需要と雇用を生む力がある」(麻生首相)、「環境負荷の少ない技術や商品の開発で雇用を確保する」(民主党)といったプラス面を生かす政策を具体的に示してもらいたい。

 低炭素社会への転換に伴う「痛み」の中身も率直に語ってほしい。

 ドイツは、再生可能エネルギーによる電気を20年にわたりすべて買い取るよう電力会社に義務づけた。それが追い風になり、太陽光発電の設備量で日本を抜いて世界一になった。買い取りに伴うコストは電気料金に上乗せされ、利用者が広く負担している。

 こうしたコストの分担について国民の理解を求めなければならない。

 ■「痛み」への目配りを

 「痛み」に対するセーフティーネットの議論も必要だ。

 今年、米上院で審議され、採決寸前までいった温暖化防止法案は、温暖化対策に伴って電力料金が上がったり、エネルギー多消費型産業の縮小で失業者が出たりすることを想定し、貧困層への支援や失業者の職業訓練まで考慮する内容だ。こうした目配りのきいた対策が日本でも求められる。

 地球環境は日々の暮らしからは遠い問題で、票になりにくい。そんな思いに政治家がとらわれているとすれば、時代遅れもはなはだしい。

 気候変動というピンチを、経済や社会の発展のチャンスに変える構想力と指導力――。現代の政治家のだれもが備えているべき資質である。

日経:排出量取引、試行で終えずに(9/26)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080925AS1K2500325092008.html
 二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出枠を売買する国内排出量取引の実験が、10月から始まる。福田康夫前首相が主導して7月末に10月の「試行的実施」が閣議決定された。制度設計は未熟なまま、実験に突入することになる。

 私たちは、低炭素社会を実現するため、経済成長と排出削減を両立させる1つの手段として、排出量取引の早期導入を強く主張してきた。本来なら、試行的実施は歓迎すべき事態なのだが、残念ながら今回政府が示した制度は、本質を大きく逸脱している。福田前首相が意図した「国際的なルール作りの場でリーダーシップをとる」水準にはほど遠い。

 最大の問題点は、排出上限(キャップ)という総量枠を課さず、削減目標も企業の自主目標で、参加も義務ではなく自主判断である点だ。日本の産業界は政府による直接規制を嫌って、業界ごとに目標を立てる自主行動計画で、排出削減に取り組んできた。その延長線上の制度だが、総量削減の実効には疑問がある。

 国や州政府、地方自治体などが課すキャップがあるから、余剰に削減した分をクレジットとして取引(トレード)できる。欧州連合(EU)が3年前に始め、米国・カナダの諸州、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェーなどが続々合流を始めているのが、キャップ・アンド・トレード方式の排出量取引だ。

 EUに従う必要はない。日本の事情に即した、技術水準の評価や業界の到達点などを組み込んだ制度設計で、堂々と渡り合えばいい。ただ、キャップを回避したままでは、制度の合理性は生まれない。逆に国際炭素市場での孤立が心配される。

 経済産業省と環境省がそれぞれ運営する性質の違う制度をひとまとめにしてしまうこの「国内統合市場」は、ほかにも矛盾や問題点を抱えている。しかし、日本全体のCO2直接排出量の約4割を占め、キャップには反対し続けてきた電力と鉄鋼業界が参加するというなら、試行的実施にも一定の意味はある。

 食わず嫌いを直すには、まず市場の雰囲気に慣れることだ。取引を導入しない理由を見つけるための試行では意味がない。経験を糧に優れた新制度の構築を進めよう。

日経:社説1 サミットは歴史的合意へ政治決断を(7/6)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080705AS1K0400104072008.html

 これだけ深刻な複合危機に直面した主要国首脳会議(サミット)は初めてではなかろうか。7日からの洞爺湖サミットのことである。

 世界中が原油、食料の価格高騰、その結果としての消費物資の値上がりに悲鳴を上げ、個人や企業、そして、一部では国すらも行き詰まる可能性に直面しているのだ。

 特に国家の場合は問題である。「破綻国家」はテロの温床となり、世界の安全保障を左右しかねないからだ。原油、食料の問題は同時に政治、外交の問題なのである。金融市場もなお不安定で、物価高とともに終わりが見えない。地球温暖化問題への対応は待ったなしである。

 洞爺湖に集う首脳たちのやるべきことは明らかである。危機意識を深く共有し、そのことによって、行動をより積極化させることである。

 もちろん、1回のサミットで、すべての課題に対応できるわけではない。サミットに幻想を持つべきではなかろう。とはいえ主要国の首脳による合意はやはり重いのだ。それは世界的な影響を持つはずである。

 各国首脳には求めたい。まずはインフレ抑制と地球温暖化防止について強力なメッセージを発することである。環境については「2050年までの温暖化ガス半減」で合意するだけでは不十分だ。それに至る道筋、中期目標も明らかにしなければならない。食料価格高騰には緊急な対応が求められる。早急に具体策を提示すべきであろう。緊急支援はもちろん、食糧増産への援助も重要だ。

 今回のサミットに関して特筆すべきは、参加国が最多だということである。アフリカ首脳との会合、主要経済国との会合等が予定されており、主要8カ国を含め計22カ国の首脳が洞爺湖を訪れることになる。サルコジ仏大統領が中国、インドなど5カ国をサミット・メンバーに加えG13とすべきだとの議論を展開しているが、すでにG13の会合はサミットの一部に組み込まれ、さらに広く、排出ガスの80%を占める主要経済国会合(MEM)も存在感を増している。

 歴史的好機である。これだけ多くの首脳が世界の経済運営と安全保障についてある程度の共通認識を持ち、そのことによって、大きな一歩を記せるかもしれないからだ。議長国の日本にとっても存在感を印象付ける大きなチャンスである。

 各国首脳は歴史的役割に思いを巡らせるべきである。今行動しなければ、次の世代は我々の不作為を非難するであろう。首脳たちは未来を見据えた決断をすべきときである。

毎日新聞 2008年6月24日
社説:原油高対策 大量消費からの脱却が基本だ
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080624ddm005070098000c.html

 原油価格の高騰が人々の暮らしを圧迫している。痛みを訴える業者や市民らによる抗議行動が世界各地で活発化しており、政府に救済や対応策を求める声は高まる一方だ。

 そうした中、世界最大の産油国、サウジアラビアの国王が呼びかけて、主要産油国と消費国の閣僚らによる異例の会合が開かれた。1バレルが140ドルに迫った価格水準を「世界経済に有害だ」と声明で訴え、サウジは盟主の威信をかけて増産の意向を表明した。

 しかし、サウジが短期間で増やす量は、世界の消費量の0・2%程度で、先物市場の相場反転を望むには力不足だ。サウジは生産能力を今後10年間で最大5割拡大することも検討するというが、既存の大規模油田が老朽化する中で生産能力を大幅に引き上げることは容易ではない。

 会合では、原油高の元凶としてしばしばやり玉に挙げられる投機資金も話題になった。原油先物市場の実態を把握するためのデータ集めなどで合意が見られた点は一定の意味がある。ただし、資金の流れ自体を制限することは市場の機能を損ねることにもなり、現実的には望めそうにない。

 となれば、先物市場で主要な買い材料となっている需給の逼迫(ひっぱく)懸念に対処する必要が出てくる。供給の大幅増加は物理的に難しく、環境配慮という点からも、消費の削減に取り組むことを基本とすべきだろう。

 すでに先進国では価格高騰が石油の消費にブレーキをかけている。特にガソリンを大量に消費してきた米国で、無駄な運転を控えたり小型車に乗り換える動きが広がっているのは注目に値する。地球温暖化防止を声高に叫んでもなかなか変わらなかった消費パターンが変化を始めたのだ。先進国の指導者は、政治的な人気狙いで、ガソリン税の軽減など節約機運と逆行する策に走ってはならない。

 先進国で需要が減少に転じる半面、新興国や途上国では先進国の減少分を上回る増加が続く。こうした国の多くは、政府が補助金などで国内の石油製品価格を低く抑えており、国際市場で原油が値上がりしても、国内の販売価格に直接反映されない。このため、原油価格が上がれば消費が減るという原理が働きにくい。

 財政負担がかさむことから、最近になって価格を引き上げる動きがアジアを中心に出始めた。望ましい方向である。貧困層の暮らしに配慮する必要があるが、補助金で国内価格全般を抑えるより、特定世帯への所得支援に切り替えた方が弊害は小さくて済むだろう。

 地球温暖化防止を唱えながら、石油の大量消費をやめない、というのは矛盾する。原油価格の高騰は、消費が増えるだけ生産を増やしてきた拡大均衡路線に限界が来たことを示すシグナルでもある。

朝日:第3次石油危機―投資資金を新エネへ導け
http://www.asahi.com/paper/editorial20080617.html?ref=any#Edit2
 天井知らずの原油高騰を「第3次石油危機」(ブラウン英首相)と呼ぶ声が出始めた。ニューヨークの先物相場は年初から4割も上がり、1バレル=140ドルに迫っている。

 途上国で石油製品値上げに反対する暴動やデモが起き、航空・運輸産業などがリストラに乗り出した。国内でもガソリンの高騰が家計や企業を圧迫している。漁業団体は燃料高に悲鳴をあげて大規模な休漁を検討中だ。

 原油需給だけにもとづく本来の相場は「60ドル程度」(経済産業省)とも言われる。それをマネーゲームがここまであおったのだ、と各国政府は苦々しい思いでみている。

 だが、米国の金融大手には「相場は近く150ドルに達する」との予測もあり、高騰はまだ続くとの見方が広がっている。というのも最近は、逃げ足の速いヘッジファンドだけでなく、巨額の資金を長期的な視点で運用する米国などの年金ファンドが原油投資に乗り出しているからだ。

 さすがに産油国側も懸念しはじめたようだ。石油輸出国機構(OPEC)の盟主サウジアラビアの呼びかけで、産油国と消費国の緊急首脳会議を22日に開くことになった。

 とはいえ、OPECの増産余力にも陰りが出ている。一方で、中国やインドなど新興大国の需要が今後も大きく膨らむのはまちがいない。年金ファンドが参入したのは、需給を長期的にそう見ているからだろう。

 70〜80年代の2回の石油危機は、中東産油国による生産制限や値上げによって引き起こされた。このとき、世界の原油供給力は十分にあった。今回の危機は、将来の供給力不足に市場が警告を与えたものと言ってもいい。

 それでも、エネルギー不足に陥ってしまうと悲観ばかりする必要はないかもしれない。超原油高が続けば、これまで採算がとれずに投資できなかったオイルサンドや深海油田の大規模開発が始まるとみられるからだ。

 問題は、地球温暖化という難題を同時に解決する必要があることだ。

 国際エネルギー機関は最近、2050年に温室効果ガスを半減させるための試算を発表した。

 世界で32基の原子力発電所、1万7500基の風力発電、約2億平方メートル分の太陽光発電パネル、それに実用化をめざしている二酸化炭素の回収・貯留装置つき発電所55基を、毎年導入する必要があるという。電気自動車、燃料電池車も合計10億台がそれまでに普及するのが条件だ。50年までの世界の総投資額は5千兆円近くにのぼる。

 年金マネーのような長期投資が、こうした分野へこそ向かうよう誘導すべきだ。原油高が世界経済を壊す前に、洞爺湖サミットなどの場でその方策を打ち出していく必要がある。
posted by おぐおぐ at 14:17| 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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