2008年06月02日

世界食糧サミット−食の安全保障と気候変動、バイオ燃料

 単なるFAO主催の一国際会議程度のはずだったものが、世界食糧サミット(といっても5年に一回あるようなやつとは違うのですが)という名前に変わって、世界の注目を集めています。
われらが福田首相も外遊でイタリアを含む欧州諸国に出かけました。

High-Level Conference on World Food Security: the Challenges of Climate Change and Bioenergy
http://www.fao.org/foodclimate/hlc-home/en/

訳すと、「世界の食糧安全保障に対する気候変動とバイオ燃料という挑戦に関するハイレベル会議」とでもなるんでしょうか。
6月3日〜5日に掛けて開催されます。
中にはWebcastもありますので覗いてみてください。

 異例なことですが、会議の最終日に発表する声明のドラフト案がすでに出来上がっています。
DRAFT TEXT, AS REVIEWED BY THE INFORMAL OPEN-ENDED CONTACT
GROUP ON 30 MAY 2008
DECLARATION OF THE HIGH-LEVEL CONFERENCE ON WORLD FOOD
SECURITY: THE CHALLENGES OF CLIMATE CHANGE AND BIOENERGY
http://www.fao.org/fileadmin/user_upload/foodclimate/HLCdocs/HLC08-3-E.pdf
 中身は本会議に入ってから大幅な修正があってもおかしくはないでしょうが…。

 NGOであるIISDによる交渉速報−LINKAGEでも特集を組んでスタンバイをしています。
http://www.iisd.ca/ymb/wfs/その後:
 早速初日の3日に福田首相の発言が行われました。
DSC03951full.png
Yasuo Fukuda, Prime Minister of Japan, announced US$100 million in emergency food aid, to be dispersed by July.
Photo Cortesy:IISD Linkage
外務省:FAO主催「世界の食料安全保障に関するハイレベル会合:
気候変動とバイオエネルギーがもたらす課題」における福田総理演説
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/20/efuk_0603.html
”4年後の1972年、ローマ・クラブは、資源の枯渇や環境破壊に対する警告を鳴らす報告書「成長の限界」を発表しました。この報告書は、発表当時に大きな反響を呼びました。

しかし、当時のわれわれの中でこの預言の正しさに気付く者は多く有りませんでした。その結果、大量生産、大量消費、大量廃棄のライフスタイルを省みること無く化石燃料への依存を続け、温室効果ガスの排出量を増やし続けて来ました。

ローマ・クラブの報告書から30年。われわれは漸く地球が上げる悲鳴に気付きました。本日われわれは、地球規模の課題を解決する仲間として一堂に会したわけです。”
 福田首相にとっては、前の石油ショックでは石油会社の調達係として苦労した感慨があるのではないでしょうか?

”第一に、温暖化対策に真剣に取り組む必要があります。同時に、途上国の農業が気候変動に適応していくための取組みが必要です。私は、1月のダボス会議におきまして100億ドル規模の新たな資金メカニズム(クールアース・パートナーシップ)を発表し、途上国を支援することといたしました。

第二に、バイオ燃料のために世界の食料安全保障が脅かされることがないよう、原料を食料作物に求めない第二世代のバイオ燃料の研究と実用化を急ぐことによって、その生産を持続可能なものとする必要があります。我が国としてもこれに積極的に取り組む考えです。”
 うーん、もう一声ないと、コーン由来のバイオエタノール規制には役立たずでしょうね。

後日記:
 結局、コーンやサトウキビ由来のバイオエタノールについても規制の話にはならずに、両論併記で終わったようです。
日本政府が求めていた食糧の輸出規制の撤廃も、輸入側規制と相打ちのような形で努力する、というようなうやむやで、中期的な対応にはならずじまいでした。
結局のところ、国際会議を開いて問題を焦点化しました、ということが成果のようになってしまったようです。残念なことです。

ガーディアン紙より
Food summit fails to agree on biofuels食糧サミットはバイオ燃料についての合意に失敗
http://www.guardian.co.uk/environment/2008/jun/06/food.biofuels
”しかし、「気候変動とバイオエネルギーという挑戦」を扱うためのサミットだったが、どちらについてもほとんど語るべきものはなかった。
エタノール生産についてどんな評価もしないよう求める米国とブラジルの反対を受け、あいまいな文言「私たちはバイオ燃料の生産と使用が持続可能であることを保証するために深い研究が必要であると確信している」だけに終わった。”

わずかな肯定的なコメントは、
”欧州の担当者は「サミットは宣言の文言だけで判断すべきではない、農業に対する投資不足の数十年を逆転させる必要性について、コンセンサスが高まったことはある。」と語った。”ということです。

毎日新聞の特集
クローズアップ2008:食糧サミット 価格抑制、道筋示せず 各国の思惑が優先

上杉隆氏:
「食糧サミット」で大合唱される“バイオ燃料悪玉論”の欺瞞
http://diamond.jp/series/uesugi/10031/
という指摘もあります。
 たしかに、EROEIを考えれば、ブラジルのサトウキビ由来のエタノールと米国のコーン由来のエタノールは同列には語れないでしょうし、インドネシアのパームオイル由来のBDFが持つ環境問題(CO2他の温室効果ガスの排出量)も個別に重みの異なる問題です。
 とはいえ、レスター・ブラウンは、NHKの5日の報道特集の中で、米国のバイオエタノール供給の増加量は世界の食糧需要増加量の2倍だった、現在の食糧高騰の非常に大きな要因だと指摘しています。これを無視するのは、石油メジャーならぬアグロビジネスの肩を持つだけということになるでしょう。
(7日の共同通信配信記事にもでかでかとでていますね。)

きたきつねの雑記帳:レスター・ブラウンPLAN B3.0
http://northfox.cocolog-nifty.com/zakkichou/2008/06/plan_b30_6b03.html


●福田首相の訪欧外交の成果はありや

 駆け足で6月1日〜6月5日まで福田首相は欧州各国の首脳と会談をし、G8サミットの準備としての初顔合わせをしていました。
 先日の東京で開かれたTICAD42日間にアフリカ各国の首脳数十人と15分ずつの顔合わせを行ったというお義理な態度とはある意味対照的に、それぞれの首脳との会談に時間を掛けています。

外務省:福田総理のドイツ、英国、イタリア訪問(概要と評価)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_fukuda/gui_08/gh.html
 ドイツメルケル首相、イギリスブラウン首相、イタリアベルルスコーニ首相、フランスサルコジ大統領(ローマFAOの食糧サミット会場にて)、パンギムン国連事務総長、その他スリランカ大統領とも。

 温暖化対策の緊急性、重要性については各首脳との会談で重々認識を深めたはずと思いますが、原油高騰問題、食糧危機の背後にあるピークオイル問題についてはどうでしょう?

 食糧サミットで、「ローマクラブ」についてわざわざ言及したことが、ピークオイルの認識に基づいたものであるならば、もしかすると期待してよいのかもしれません。


リンク:
自動車よりも食糧に−バイオエタノールの見直し
「バイオ燃料に関する市民社会からG8環境大臣会合へのメッセージ」

洞爺湖サミットの前に緊急の食糧サミットの準備
海外の食糧問題記事
オンライン署名:制御不能な食糧危機
バイオ燃料短信(Energy Bulletin)その1
途上国では食糧危機、先進国では第3次石油ショック


ブログ意見集 by Good↑or Bad↓ 食糧サミットで穀物高騰は収まるか
posted by おぐおぐ at 22:58 | TrackBack(1) | バイオ燃料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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