2008年03月23日

もう一つの排出権取引システム−TEQ

もう一つの排出権取引システム−TEQ。
Tradable Energy Quota(TEQ)については、
http://www.teqs.net/
に詳しく書かれています。

ブログ:経済ニュースゼミ の中でも紹介をしていただいています。
気候変動への対応
http://blog.livedoor.jp/columnistseiji/archives/50559515.html

 ここでは取引可能エネルギー割当てと訳しています。


ジョージ・モンビオの本「地球を冷ませ!」
http://sgw1.seesaa.net/article/127880522.html
の中でもTEQを紹介していますので、以下に引用しておきます。

P.102 
第3章 「炭素排出」という自由の配給
−−− 税に代わる方法としては、国民の一挙手一投足を管理する新しい法律の立案がある。理論的には法の前には男も女も誰もかもが平等だ。照明をつける時間帯や旅行できる距離を法律によって規制することもできるのである。しかし、多くの人は魅力的な選択肢だとは思わないだろう。第二次世界大戦中に連合軍の経済計画者が見いだしたように、そこまで強制的ではなく、しかもその公正さがすぐにはっきりするシステムが存在する。それが「配給制」(Rationing)である。…

 配給を実施するにはまず、世界が毎年排出できる炭素の総量を決定することから始める。
たとえば…
(以下「縮小と収束」(Contraction & Convergence)
http://sgw1.seesaa.net/article/127880089.htmlについて説明した後、)

 もっと単純なシステムを開発したのがマイヤー・ヒルマンで、それをデイヴィッド・フレミングという独創的な考えの持ち主が洗練した。このシステムなら企業でも個人でも炭素の計算をするのはたった二種類の商品、燃料と電力を購入するときだけでいい。
 たとえば国民が直接消費する燃料と電力を合計してその炭素排出量が国の総炭素排出量の40%になるとすれば、国民には国の「炭素予算」の40%が与えられることになる。誰でも同じ割り当てを受けその代金を支払う必要はない。

 こうして与えられた割り当てを使う必要があるのは、電気料金やガス料金の支払いあるいは車に給油するときだけだ(フレミングの枠組をもう少し拡張すれば、航空機や列車による移動にも適用できる)。

 そうすると、2012年に世界の炭素割当量が一人当たり800キログラムだとすると、そのうち40%つまり320キログラムまで利用する権利がいわば「炭素デビットカード」のような形で一人ひとりに与えられることになる。

 …国の炭素予算のうち残りの60%は政府の持ち分だ。一部は政府用に確保するが、残りは燃料や電力を購入したい企業や炭素ブローカーに競売する。さらに炭素ブローカーはこの排出権を他の企業や、排出量が自分の予算に収まりきらない個人に売る。このときの価格は他の商品と同じように、この「資源」の獲得競争や、さらには資源の希少性に左右される。

 …しかしこうした炭素配給システムを構築するには、最終的には新しい通貨も発行することになる。現在のお金のように汚染の権利についても口座を開き、貯蓄し、使い、両替をできるようにするのである。…この新しい通貨を「アイスキャップ」と呼ぶことにする。…
 個人に与えられたアイスキャップは他人と売買ができる。年末になっても配給分を使いきれなかった場合は、残った分を他人に売却できるのである。また使いすぎた場合にも、必要な分のアイスキャップを購入できる。

 …このシステムは、たとえばEUの「排出権取引枠組み」よりずっと公正な計画である。EUの排出権取引は、2005年1月から行われているが、二酸化炭素排出許可をヨーロッパの大企業に無料で分配することで始まった。しかし全体的にみると、炭素を最も多く排出している者が最も多くの排出許可を配分されたことになる。つまり汚染者が支払いを受けているのである。

 世界中のすべての人々のものであるべき権利、排出権利取引枠組の場合なら一定量の二酸化炭素を排出する権利ということになるが、この権利をこの枠組が奪い取った上で、それを企業に分け与えているのである。

−−−
 この個人向け配給型の排出枠については、日本でも松尾直樹氏がIGES在籍中の論文「日本の国内政策措置ポートフォリオ提案」の中で提案をしています。こちらは複雑すぎて実用的ではないと思いますが。
http://www.climate-experts.info/New_Publications.html

 このようなシステム、C&Cの概念も含めて、一人当たり平等な大気へのアクセス権を直接一人一人に配分するシステムは本来あるべき排出権取引システムなのでしょう。消費者からの排出権の委任を受けて初めて、個別企業が生産をするシステムこそがあるべき姿です。
 しかしこれらは、経済的手法としては現実的ではない、というような趣旨で、企業に基準年ベースの既得権を基にした初期配分をしてきたわけでしょう。TEQがその煩雑さをどの程度抑えることができるシステムなのかは、ちゃんと評価をする必要があります。

 日本の財界の一部が批判するように、企業に対して、はなから「公正」な初期配分というのはありえないのはその通りだということ、だからといって機能するシステムを作れないとは限らないということを覚えておきましょう。

 株式会社という組織に自然人と同等の法人という権利を付与したのは、それほど遠い過去のことではありません。
 ですから企業が当然無料で排出権を持つのが当然、というような前提には眉につばをつけていきましょう。

後日記:
EU-ETSに対する米本昌平氏の批判への批評をしたブログがありました。
http://d.hatena.ne.jp/euro-envi/20080325

「3-2. 世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較」
zuhyou_13_1.JPG
の図表を、全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)ウェブサイト(http://www.jccca.org/)より、すぐ使える素材集/図表集から取ってきました。

各国の総排出量の棒グラフの右側についている人形の背の高さが、人口一人当たりの排出量の比較となります。

 現状では米国人ばかりか日本人を含む先進国もCO2を大量に吐き出す巨人となっているのですが、これを途上国の人並みにググッと大幅に減らそうとすれば、配給される排出の権利が一人当たりどれだけあるのか、こそが公正についての評価の基本とならざるをえないでしょう。
posted by おぐおぐ at 20:14 | TrackBack(0) | 排出枠/排出権取引 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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