2008年03月09日

欧州の排出権(量)取引=自由市場戦略

姉妹ブログ「京都議定書の次のステップは何だろう」
より以前作った記事をコピーしておきます。

初出2005年11月2日

欧州の排出権取引=自由市場戦略

 豪キャンベル環境相の長い長い回り道ではない道についての欧州の方針を紹介します(あまり明確ではないですが)。
 
 排出量取引については以前、
ロシア政府、排出量取引でホットエアを売却しないと言明 と
「米北東部9州に排出権市場協定導入」in NY Times で紹介したことがあります。

 半月ほど前の記事になりますが、2つ部分訳をして紹介します。
Europe adopts free-market strategy on global warming「欧州は地球温暖化対策に自由市場戦略を採用」
http://www.montereyherald.com/mld/montereyherald/news/world/12983598.htm
http://www.grandforks.com/mld/grandforks/news/world/12983598.htm
BY KEN DILANIAN Knight Ridder Newspapers
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ロ−マ発
 発効から7ヶ月経ち、欧州は温室効果ガス排出を削減するというキョウト条約の要求を満たすように経済を転換しつつある。その努力の中心には、当初欧州が抵抗した、米国発の自由市場アプローチ(汚染する権利の売買)が用いられている。
 クリントン前大統領がキョウト条約の中に導入した"キャップ&トレ−ド"システムとして知られる取引は当初酸性雨対策に米国で用いられた。
(…ブッシュ政権成立で米国が退いたのは皮肉なことだ云々…)

 本年1月のEU域内排出枠取引開始から9ヶ月たち、アムステルダムにある欧州炭素取引所は、累計5千万トンの取引が成立したと発表した。1トンの炭素を排出する権利の価格は当初約10$だったが最近は27.6$と健康的な市場となっていると言われる。(ポイントカーボン社の10月31日付け発表

によると、EUAの価格は22.05ユーロだそうです)

 EUのプログラムはキョウト排出量取引システムのさきがけとなっている。

 米国のビジネスリーダーを含む多くの専門家は、一旦米国も気候変動対策に関わることになれば、強制的な排出権取引が米国の生活の一部となるだろうと信じている。すでにいくつかの米国企業とニューメキシコ州が自主的市場に参加している。
 8月には北東部の9つの州政府が目標値の緩い別のキャップ&トレードシステムに合意している。
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EurActiv.com:EU calls for "global carbon market" after 2012「欧州、2012年以降は"グローバルな炭素市場を"求める」
http://www.sustain-online.org/plugins/DocSearch/details.asp?MenuId=ODQ&ClickMenu=RightMenu&doOpen=1&type=DocDet&ObjectId=MTY4MTY
http://www.euractiv.com/Article?tcmuri=tcm:29-146011-16&type=News
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 10月17日、EU環境大臣はポスト2012(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください。)の地球温暖化のグローバルな対話の戦略会議を持った。現在ある政策を用いて公約を達成すると繰り返したが、2012年以降の行動のための方針を決めることはできなかった。
 大臣たちは「地球規模の将来の気候変動戦略は、技術革新を推し進めるプッシュ(技術R&Dと投資)とプル(炭素市場など)の政策の最適なミックスであるべきだ」と語った。
 CDMを効率的に行なえるようにする合意をする議長の努力への支持では合意している(CDMは先進国企業の途上国への省エネ投資にクレジットを付けるもの)。
しかし2050年はおろか、3月の首脳会議で合意した2020年の削減目標についてもEU25カ国の大臣たちは言及していない。
しかし彼らは気候変動に対処し、地球平均気温を工業化以前のレベルから2℃上昇未満に抑えるという公約を再確認した。この野心的な目標のためにはより多くの行動が必要だ、といい、飛行機燃料の排出を欧州排出枠取引スキーム(EU ETS)に含めるとの欧州委員会による提案について言及した。

 グリーンピースは「欧州の気候変動に取り組むとの公約を裏書した」環境理事会の「多くの前向きな要素」を歓迎したが、「ポスト2012についての文書はあいまいで、完了の明確な期限付きで交渉を進めることの緊急性を無視している…」と付け加えた。
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 この同じ話について、日経エコロジーの記事でも紹介されていました。
EU、ポスト京都に世界規模の「炭素市場」提案の方針
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/eco/404996


後日注:
 いかにも、説明が不十分ですので、京都議定書の中で作られた国際排出量取引(IET)とEU域内排出枠取引(EU-ETS)、さらに一般的な国内排出量取引(DET)の3者の関係について説明を補足しておきます。▲DETとは
 一般的なキャップ&トレード方式の国内排出枠取引(現在の米国の酸性雨規制はこのタイプ)では、国が法律によって国内の排出総枠(Cap)を定め、それを国内の関連企業に初期配分し、その個別企業向けの割当以上に排出した場合に、企業が排出枠を余剰のある他企業から買う(trade)ように仕向けるものです。
(よく、間違えて個別企業向けの初期割当のことをCapと言う人がいますが、そうではなく規制対象全体の総枠がCapです。)

 国が規制当局であり、個別企業(あるいは工場)が売買主体となります。
 実際の削減は、他の企業と比較して自社なら安価に対策をできるだろうと考えた企業が大規模に行い、余剰枠を売りに出す形となります。

(後日記:国際環境NGO、WWFジャパンのWebサイトに、国内排出量取引についてのページ「温室効果ガス排出量取引/入門編」ができています。)

▲IETとは
 これに対して国際排出量取引(IET)では、京都議定書そのものが規制当局となり、Capの量は90年比で付属書B国の総計の約5%減、各国の削減公約が初期割当であり、各国政府が売買主体となります。
 またこの売買が実際に行われるのはおそらく2012年末に、目標を達成できるかどうか、ぎりぎりのところで売買に入る、いわば清算のための取引という形になります。
 つまり、議定書に加盟している各国が再度自国内の企業に排出権を配分し取引をさせることで、削減対策に価格をつけるようするのか、つまり国内にDETを導入するかどうかは各国の主権に委ねられています。
(多くの国はそれは国家主権の侵害であるといって、共通の政策を議定書で策定するというアプローチには批判的であったためです。)

▲EU-ETSとは
 欧州は、域内国間での共同達成という概念を京都議定書の中で認めさせました。複数の国で共同して削減目標を達成するということです。域内の配分は15カ国間で相談をして決めました。
そしてさらに今年1月から、自由貿易協定による自由貿易圏と同様な域内共通の排出枠市場を立ち上げると決めたわけです。
 つまりここでは国が規制当局であり、個別企業(あるいは工場)が売買主体となります。各国政府が定められた自国の配分の内の一定比率をCapとし、この取引に参加すべき業種の個別企業に初期配分する権限を持っています。この初期配分の計画NAPを各国政府が作った後、EU(欧州連合)の審査を受けることで、ある国の企業が過剰な初期割当を受ける危険性がないことを保証しています。

 つまり、EU-ETS自体は京都議定書の構成に適合する形で始めているものですが、将来は京都議定書がコケた場合にそれを代替することもありうるボトムアップ型のシステムとなっていることが特徴です。
 EU域外の先進国が自主的にこの市場にどんどん参加していくことで、将来的にグローバルな共通炭素市場となる見込みがないわけではありません。

 が、いずれにしてもちゃんとぐいぐい収縮を続ける全体のCap総枠を本当に設定できるかどうか、という問題がありますから、実は将来の見込みという点では京都議定書とまるで別の提案というわけではありません。

 とは言うものの、これはEUが持っている一つの重要なカードだと言えるでしょう。EUが今回行ったような、他のどの国も単独では対抗不可能な、多国間の規範を先行して作れるということが一つの交渉上のパワーだといえます。

転載時の追記:
・実際にはEUETSは初期配分が過剰であったことから、2007年までの第一期の排出権はそれが分かった瞬間から順次、ゼロに近い価格に下落してしまっています。当時書いた「ある国の企業が過剰な初期割当を受ける危険性がないことを保証されています」は大間違いでした。
実際に第二期つまり、京都議定書の第一約束期間である2008-12年の間については、これに懲りてより厳しい初期割当としたことにより、企業側が国を訴える訴訟が頻発しているということです。

・なお、CDMのクレジットと国際排出量取引他との関係については、
排出権入門
〜結局、温室効果ガス排出量は減ってるの?〜
http://www.jri.co.jp/consul/column/data/654-miki.html
このあたりが分かりやすい説明になっているかと思います。

詳しい紹介はIGESの資料があると思います。
図解京都メカニズム
http://www.iges.or.jp/jp/cdm/pdf/kyomecha.pdf
posted by おぐおぐ at 17:35 | TrackBack(0) | 排出枠/排出権取引 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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