2008年03月06日

(国内)排出量取引のBasics−諸富氏

 経産大臣の記者会見でも出てきたり、
読売3/5:排出量取引の是非議論、地球温暖化懇談会が初会合
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080305-OYT1T00329.htm
Japan torn on carbon trading
http://www.financeasia.com/article.aspx?CIaNID=71457

筋金入りの反対派・三村明夫社長
http://blog.livedoor.jp/columnistseiji/archives/50599848.html

 などなど、国内排出量取引は新聞記事にもなって注目されています。

2月25日参議院行政監視委員会
http://www.webtv.sangiin.go.jp/generator/meta_generator_wmv.php?sin=2509&on=1204725906&si=c08ccce2a8236f1bd3339410c29cf6e42&ch=y&mode=LIBRARY&un=53f3be2ce87801610544fbede2c1b24e&pars=0.24770566982282904

での諸富徹京大准教授のプレゼンが分かりやすい説明だったので、テープ起しをしておきます。

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加藤修一委員長:
参考人の出席要求に関する件について。
本日の委員会に参考人として、京都大学准教授諸富徹
気候ネットワーク代表浅岡美恵
ノンフィクション作家山根一真
の3名を。
一人20分、その後質問に答えていただく。

諸富参考人
 京都大学諸富です。今日はよろしくお願いします。今から排出量取引制度について、ということで20分の時間、お話させていただきます。
パワーポイントを中心にお話を。手元には雑誌論文のコピー、日経新聞の経済教室のコピーを配布いただいている。

 ここしばらくの数日の報道で、排出量取引制度というものが非常に注目を浴びるようになってきておりますが、今日の話は、なぜ排出量取引制度というものを我々は考える必要があるのか、ということをまず最初に話しをしまして、そして途中で具体的にですね、もしこういったものを日本で導入するとすればこういった形で導入できるのではないか、という一種の我々の提案です。

 これ元々、WWFJapanから私たち京都大学が受託しました研究成果に基づくお話ですけれども、その話をしまして、そして今後日本が低炭素社会に向かっていくにはどういうことを考えていけばよいのか、というお話をさせていただいて終わりたい。 さて、今日私自身の話は排出量取引一本に絞ってお話をさせていただくわけですけれども、背後にある問題意識としては、やはりなかなか日本の温室効果ガスの排出量が減らないということがあります。

もちろんいろんな形ですでに努力がなされているわけですが、有効な仕組みが残念ながら日本にはまだないのではないか。
CO2排出量の約6割を占める産業・エネルギー転換部門の排出量というのが、90年以降すでに約10%増加していますし、日本全体でもここでお示ししますように7.8%増ですね、2005年の時点でですね。

 それから、産業界は自主行動計画というのを実施していることはすでに先生方ご存知の通りですが、これは原発の稼働停止等によって、実は本来見込まれていた対策量に充分ではないということが判明しまして、不足量をどうするのか、ということが問題になってきています。

これはまあCDMも含めて海外からクレジットを買ってくる、購入によってまかないということが現在議論されている。

 ここに現在お示ししているのは、主要7業種、右に書いていますが、こういった業種からのですね、排出量を、これはいわゆる直接排出という統計ですけれども。

 間接排出というのは例えば電力セクターの排出というのを各過程部門や産業部門に割り振ってですね、実際に電気を使った人の責任である、という考え方を元にCO2の排出量を計算しているんですが、これ直接排出といいまして、電力セクターの排出しているものはそのまま電力セクターの排出とみなし、産業セクターとしてカウントしていくという基準ですけれども、これを見ましても増加している。

この中で一番増加している、一番責任、寄与度が大きいのは電力セクターでして、ご存知のように石炭火力が非常に増えているということが大きな原因となっていまして、よく言われるようにこれは、炭素に価格がついていない、つまり石炭に、もし地球温暖化のことを考えれば本来支払うべき価格というものをきちんと支払われていない。そのために相対的に安くなっていることがこれを引き起こしている。

 実は、問題意識Aとしまして、確かに産業界が主張するように、家庭や交通部門というものも増加をしています。しかしですね、国際比較をしてみますと、家庭や交通部門からの排出というのは実は日本はそれほど大きくはないわけです。

よく言われますように、ウサギ小屋に住んで、満員の通勤電車で揺られて通勤している。日本は非常に東京を含めて公共交通機関がきちっと整備されていることがこういったことに寄与しているのではないかというふうに思いますが。

 私はいま、直接排出の64%を占める、やはり産業部門が日本の温暖化対策の鍵であると考えております。

 しかしなぜこういった産業セクターでなかなかドラスティックに対策が進んでいかないのか、ということは、第一はやはり燃料転換がなかなか進まない。さきほど言いましたように炭素に価格付け、つまり化石燃料の燃焼が地球温暖化にどれだけ寄与しているのかということをちゃんと考慮して価格をつけていく必要があるんじゃないかということですね。

 やはりエネルギー効率を改善していくためのインセンティブをもっとつけていく必要があるのではないかということですね。
残念ながら自主行動計画の場合には、よく言われていますキャップというものが掛けられておらずに、原単位で目標を設定していることが多いですから、生産量が増えれば簡単に排出量が増加してしまうという構造になっていることが一番問題です。

 それに対してなぜ排出量取引かということなんですが、一番のポイントはやはり総量をコントロールできるということです。

京都議定書の時にEUはどちらかといえばこの排出量取引制度に対しては懐疑的であったわけですが、なぜその後転換していったか、それはやはりこれから総量をやっぱりコントロールしていく、それから減らしていくということを考えた場合に、どうしても他の手段ではそこの点が不確かになってしまう。
排出量取引はやはりそこに一番の強みを持つことができるということだと思います。

 しかもまあ総量さえきちっとコントロールできれば実は後はマーケットメカニズムを使えるわけですから、市場メカニズムを使って、しかし総量はコントロールできるという意味で現在の市場経済システムにも実はフィットするわけですね。

 こういったシステムを私なんかはなぜ、もっと日本は有効に使わないのか、というふうに思いますけれども現在のところは非常に反発が強い、そういった程度でございます。

 あとはですね、各事業所の排出削減目標これは浅岡先生からもひょっとしたら詳しい説明あるかと思いますが、現在の自主行動計画の下では、4種類の目標を各企業がしかも自主的に設定できるという構造になっています。

原単位と絶対量。それからCO2なのか、エネルギー使用量なのか。という形で2×2で4通りあるわけですけれども、これがですね、各企業がどれだけ削減をしているのか、と比較可能性を失わせているという風に思います。

 排出量取引が導入されれば、これはもう完全に量タームで完全に統一されるということになります。

 まああと、3つ目は飛ばしまして費用効率性、これも非常に重要な点です。これから低炭素社会に向かうということで、2050年に向けて日本がまだどういう目標を設定するのか、自体が対象になっていますけれども、世界の出来つつある合意としては、やはり現在よりもCO2の、温室効果ガスの排出量を世界規模で半減していくというようなことですから、そういうことになりますと、相当な痛みを伴うことも事実です。そうであればあるほど、その痛みはできるだけ小さい方がいいわけでして、そういう意味では少しでも費用効率的に削減を進めていける社会制度を入れルべきではないかという風に考えます。

 現在自主行動計画というのはですね、自主が自主たるゆえんとはどこにあるのか、ということですね。

特徴の1としましてはやはりそもそもマクロ的に経団連全体として設定している目標事態が、日本における排出削減目標と整合的な形、ブレークダウンする形で家庭部門はこれだけ、運輸部門、業務部門はこれだけ、だから産業部門はこれだけ、という形で、それを足し合わせたときにちょうど日本の京都議定書で達成しなければいけない目標とちょうど合致していますよね、という風にはなっていないわけですね。
まさに自分たちはこれだけやります、というその宣言があるわけですね。

 特徴の2としましては先ほど言いました指標自体、目標設定自体の自主性、選べるという意味での自主性。

3番目、参加するかしないかの自主性ですね。もちろん業種自体がまとまって経団連の自主行動計画に入りますから、業種で参加を決定すれば業種としては強制になるんでしょうが、業種として参加するかどうか判断が自主的になっていると。

 それから実は自主行動計画の中で、さらに業種の中で、各企業ごとに排出削減努力をどうやって割り振っているか、これ自体が非常に実は不透明でして、少なくともここのルールを透明化していく必要があるのではないかという風に思います。
 そうでなければフリーライド問題というものが発生していく可能性があるというふうに思います。

 それから最後に、一番自主の自主たるゆえんは、仮に目標が達成できなかったとしても、有効なペナルティはないということですね。

現在EUETSヨーロッパで行われている排出量取引制の場合で言いますと、トンカーボン当たり100ユーロの罰金というものが、不遵守の場合には課せられます。
大体現在のEUETSにおけるマーケットの価格はトンカーボン当たり20ユーロ前後ですから、5倍の罰金が掛けられる。
これでは不遵守の場合には割に合わないという経済合理的にみて当然の判断がなりたつような水準でペナルティが課せられている。
これが自主行動計画にはないということがあります。

 こういう中ではなかなか、利潤の最大化を目指して国際競争でしのぎ合っている企業に温暖化対策の方へ力を振り向けてくださいといってもなかなか難しいというふうに思います。

 諸外国の事例ではすでにEUETSの例やオーストラリア、それからアメリカで検討が進んでおり、将来的にはこれらの各国でですねいま進んでいる排出量取引制度が世界的に連結をしていきまして、グローバルなカーボンマーケットと呼ばれるものが、おそらく立ち上がってくるであろう。そして今EUとアメリカの間でその国際ルール作りというものも進んでいるということになっております。

 さて、今から、そうしますと排出量取引制度がなぜ必要かということをお話してきたんですが、じゃあ具体的に制度を設計する場合のポイントとしてどのような点に留意することが重要なのかというお話を今からさせていただきたいという風に思います。

 もしこの排出量制度を入れるとすれば、一番問題になるのが、まずそのエネルギーの流れの中で上流に行くのか下流でやるのか、という点です。

上流というのは、石油の輸入段階、精製?段階ですからここの段階でもしつかまえて設計すれば、日本の場合にはほとんど100%近く化石燃料を輸入しているだので、ほとんど確実にコントロールできるだろうというふうに思われるわけですが。

しかし実際にエネルギーを燃焼させている段階ではないわけですね。
そうするとこの上流でやってしまいますと、確かに数は少ないですね、精製業者と輸入業者の間で小規模に取引がおそらく散発的に起こなわれるという姿が想定できるわけですね。

そのコストは下流に転嫁されてくる、こういう形でインセンティブが出てくると、ほとんど環境税に限りなく近いようなスタイルになってきます。

 私自身は下流で、実際にエネルギーを使用していて、そしてその生産技術を持っていてどこでどういう風にすれば実はCO2を削減できるのかという情報と技術をちゃんと持っている、下流企業ですね、ここにきちっと測定ポイントをつくり、排出量取引をやってもらうべきだ、という風に考えております。

 一番最大のポイントはキャップというものをどういう風に設定するか、だと思います。

私たちの提案というのは、京都議定書をまずは遵守するということを想定しておりましたので、まさに京都議定書の日本の目標というものからブレークダウンして、産業がそのうちいくらを受け持つべきかという形で、上からこうトップダウンで物事を考えていくという考え方を取るべきと考えております。

 これとは逆で現在、あのー、経済産業省や経団連が主張されているのはボトムアップ型で、積み上げという言葉が日本語でよく使われていますが実際にどれだけ可能か、ということをまず計算し、それを積み上げていった結果総量でいくらになったか、という考え方。トップダウンとボトムアップはかなり違うわけですね。

ですから同じ総量目標とか絶対量という言葉が使われていてもどっちの考え方を取るのかによって全然違うということはご注意いただきたいという風に思います。

 私たち自身のあの導出というのはこういう形で京都議定書の目標をブレークダウンしていきながら、産業セクターに割り振るべき努力はどの分になるか、ということを割り出していくということですね。

 考え方は非常に単純でして、過去の平均排出量というものを参考情報にすればよいのではないかということです。

つまりエネルギー転換部門と産業部門と工業プロセス、ここで出て来ておりますが、過去の比率というものを割り出しますと、エネルギー部門が例えば過去2000年から2004年の平均排出率は29%、産業は30、工業プロセスは4と出ているんですね。

この比率に応じて、これから課されるキャップに対しても同じ比率で排出削減努力を求めていきましょう、という考え方になります。

こうして産業部門が決まれば、鉄鋼にはさらに同じように過去に40%の責任を持つのであれば、40%の削減努力、40%分まで削減努力をお願いしますということになるわけです。

さらにこの鉄鋼が決まれば、次にこの新日鉄がその内4割を占めているならばやはり4割、を割り当てていくというようなことになります。そういう風にしていけば、実は事業所にまで下りていくことが理論上は可能になります。

 ただ、実はEUETSということでヨーロッパですでに行われている排出権取引を見ますといくつか問題があります。

いまお話をしましたのはグランドファザリングと呼ばれる方式であります。これは実は非常に良いと思われている点は、つまり導入しやすさでありまして、今お話しましたように過去の平均排出量に基づいて、無償でもう排出権を配ってしまおう、という考え方です。

但し、これをやりますとですね、過去に沢山出している人が逆に言えば次の期は沢山排出権をもらえるということになってしまいまして、企業の行動が、それじゃあ枠一杯排出しようではないか、と誤ったインセンティブが働いてしまうという問題が起きます。

これを克服するためには、今日は詳しくはお話ができないのですが、オークション方式やベンチマーク方式というものになるかと思います。

 その、日本でこういった形で排出量取引制度の形、骨子のみお話しをいたしましたけれども、これがなぜ日本で非常な反対を浴びるか、という風に言いますと、それは産業の国際競争力を失わせる、というポイントです。

これはヨーロッパでも数多く行われた議論ですが、私自身は実は必ずしもそうでないのではないかという風に考えております。

日本はまず、中長期目標の設定を行い、そしてそれと整合的な形で今日お話したようなキャップ&トレード型を入れることで、むしろ実は、このスライドの3点目に書いていますように、実は長期の見通しがむしろ企業の側に生まれるわけです。

将来設備更新や技術開発を考えておられる企業は、スケジュールを20年30年先まで示されると、それを前提として行動するようになります。

 こういった形で見通しを示した上で企業はむしろそれに向けて投資計画を行っていくだろうという風に私自身は思います。

それからなによりも、これからはマーケットにおける公平な競争とは何か、公正競争とはなにか、その概念がやはり環境を織り込んだ形で市場の公正競争の概念というものが生まれてくると思うんですね。

これまでは環境に対して悪いことをやっていても、それはコストを節約できるからいいというそういう競争概念で来たんですけれども、これからは、労働規制や衛生に関する規制と同じような水準に、環境に関する規制が強まってくるという風に思います。
環境に配慮した形で利潤の最大化を行ってこそフェアな競争であるという社会に入っていくと思います。

最後に時間もなくなりましたのでこちらの点ですね、日本にとって実は低炭素社会への移行は、マイナスなんじゃないんだと。むしろ実は日本は化石燃料への依存を減らしながらそして新しい技術革新をおこなっで、新しい産業革命と言っていいかと思いますが、そういう担い手になっていくんだという風な形で低炭素社会への移行を積極的に捉えて、むしろチャンスだというふうに捉えるべきだと考えます。

排出量取引はそのための非常に中核となることは間違いないと思います。

 以上で私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。
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後日記:
Videonews.comの丸激トークオンデマンド:
これでいいのか、日本の排出量取引
にも諸富徹准教授のインタビューが掲載されています。


ブログ意見集 by Good↑or Bad↓ 排出量取引で地球温暖化を防ぐ?
posted by おぐおぐ at 01:47 | TrackBack(2) | 排出枠/排出権取引 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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