2008年04月07日

注目の社説その6

 各紙の社説を紹介します。

日経:ポスト京都で説得力なき日本、代案急げ(4/6)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080405AS1K0500105042008.html
 京都議定書に続く2013年以降の地球温暖化防止の枠組みを話し合う国連の作業部会が09年末までの作業計画に合意した。先進国と発展途上国の溝が浮き彫りになるなかで、会議ではっきりしたのは日本案の説得力のなさである。途上国の拒否反応は強く、議論は今夏以降に後回しにされた。交渉主導は見込み薄であり、戦略転換が急務である。

 次期枠組みで最大の課題は、京都議定書を離脱した米国と温暖化ガスの大排出国の中国やインドなどに排出削減・抑制の目標を課すことだ。米国は次期大統領の有力候補すべてが排出削減には前向きで、ブッシュ政権後に政策転換は確実とみられている。このため、日欧が当面、全力を挙げるべきは中印など途上国の説得となっている。

 日本は産業別に温暖化ガスの排出削減可能量を算出して積み上げ、国別排出総量目標に反映させる方式を提案、交渉を主導する考えを示してきた。だが、目標設定を嫌がる途上国は日本案を警戒し、協議の拒否姿勢さえ見せた。結局、議論先送りという妥協で形を繕ったが、地球温暖化防止に関する主要20カ国閣僚級会合(G20)に続き、国連の場でも流れをつくれなかったことは重く受け止めるべきである。

 日本案が説得力を欠くのは我田引水が過ぎるからだ。途上国はまず先進国が高い排出削減目標を示して温暖化防止に取り組むよう求めている。だが、日本案は排出削減に抵抗する国内産業界に気兼ねして低い削減目標で言い逃れしようとする姿勢ばかり目立ち、途上国取り込みに戦略的な発想が欠けている。

 経済産業省は長期エネルギー需給見通しで、20年の温暖化ガス排出量を1990年比で4%しか削減できないとした。欧州連合(EU)の20%に比べると削減率は5分の1にとどまる。これが積み上げ方式の実態というのでは、EUからも途上国からも見放されて当然だろう。

 途上国は資金や技術の援助をちらつかせれば取り込めるわけではない。日本が中印に排出目標を設定させるつもりなら、排出削減に本気で取り組む姿勢を見せなければならない。産業構造の転換も技術革新も織り込まず、経済や暮らしも変えないことを前提に数字を出していては日本の志が疑われ、離反を招くだけだ。

 日本が7月の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)を成功させ、枠組み交渉で主導権を取り戻すには、首相のもとで日本案を練り直すとともに、温暖化防止への固い決意が伝わる目標を示す必要がある。

つづく京都議定書 帳尻合わせでは意味がない(3月31日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080330-OYT1T00660.htm?from=any
 数字の帳尻合わせでなく、温室効果ガスの実質的な排出削減につながる政策を実施すべきだ。

 京都議定書の対象期間が4月1日から始まる。日本は2008〜12年度の平均排出量を、1990年度比で6%削減しなくてはならない。

 だが、06年度の排出量は13億4100万トンに上り、90年度比で逆に6・4%増加した。マイナス6%の達成は厳しい状況にある。

 政府が閣議決定した京都議定書の目標達成計画の改訂版に、目新しい内容はない。排出削減に特効薬はないということだろう。産業界をはじめ、各分野で省エネルギーに努め、目標達成に最大限の努力をしなければならない。

 福田首相が設置した有識者会議は、国内に排出量取引を導入するかどうかを検討する。排出量の削減に有効な制度なのか、まずは見極めることが肝要である。

 排出量の増加が著しいのは、家庭、運輸、さらに、オフィスビルや店舗などの業務部門だ。

 自家用車の利用をできるだけ控え、家電製品を省エネ型に転換していくことが大切だ。

 例えば、電球型蛍光ランプに注目したい。白熱電球に比べ価格は割高だが、寿命が長く、効率がいい。白熱電球1個を蛍光ランプに替えると、家庭の電気代が年間約1900円節約できるという。

 政府は6%の削減分のうち、1・6%について、国同士の排出量取引で賄う方針だ。5年間で約3000億円が投じられる。

 目標達成が見込める国から、余った排出枠を購入する。排出枠を売った国は、売却益を環境対策に充てることになっている。

 日本はこの方法で、ハンガリーとポーランドから排出枠を買う方針だ。ロシアなどとも交渉を始めている。これらの国は、90年以降の経済危機などで排出量が減り、排出枠に余裕があるという。

 だが、これだと、売却益が本当に環境対策に使われるかどうか、検証が難しい。具体的な検証方法を確立する必要がある。

 先進国が途上国で温室効果ガスの削減事業を行った場合、先進国の削減分として計算することも認められている。先進国同士の共同事業でも、技術支援した国は同様に削減量を加算できる。

 こうした手法の活用は、日本の省エネ技術を世界に広めることにつながるだろう。

 13年以降の「ポスト京都議定書」の枠組み作りで主導的役割を果たすためにも、日本は世界の排出量削減に技術で貢献すべきだ。
(2008年3月31日01時36分 読売新聞)

日経:
社説1 道路財源の一般化で与野党は折り合え
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080321AS1K2100121032008.html

 ガソリン税など道路特定財源をめぐる問題で自民党が民主党に協議機関の設置を申し入れたのに対し、民主党は暫定税率を廃止しない限り応じない構えだ。両党は国や地方自治体の予算執行にも配慮し、1月末に衆参両院議長のあっせんで年度末までに解決案を得ることで合意している。この合意をほごにせず早く協議に入り成案をまとめるべきである。

 2008年度の予算案は道路建設を3.0%減らすかわり、まちづくり交付金などを増やす。このため何にでも使える一般財源は国の道路財源、約3兆3000億円のうち約1900億円にとどまっている。

 最近の国会論戦などで明らかになったのは、道路財源のあきれた使い方である。「道路関係」と称する役人の慰安旅行、野球道具、カラオケ機など、およそ道路と関係のない支出が次々と明るみに出た。この種の無駄はほかにも多いに違いない。

 私たちは道路財源をすべて一般財源にせよと訴えてきた。それはまさにそうした無駄遣いをなくすのが第一点。もう一つは排ガスによる地球温暖化、交通事故や呼吸器疾患による治療、交通警察の業務など多くの「車の社会的費用」をドライバーも負担すべきだと考えるからだ。

 暫定税率については据え置くべきだと考える。道路財源の大宗を占める揮発油税(ガソリン税)の税率を下げればガソリン消費の拡大につながり、地球温暖化対策が急がれるときに世界の理解を得られまい。

 つまり自民党は道路財源を何としても確保するという姿勢を考え直すべきであり、民主党は暫定税率廃止にこだわるのを再考してほしい。

 福田康夫首相は09年度以降の税制抜本改革を話し合うなかで道路財源全体の一般財源化などもテーマとする考えを述べている。それも一つの考え方だろう。民主党が福田内閣を窮地に追い込むため暫定税率の廃止にこだわっているとすればうなずけない。踊り場に入った日本経済をさらに悪化させないためにも自民党との協議に応じ、しかるべき成案を得て道路特定財源関係法案や租税特別法案を成立させて、4月から予算を円滑に執行できるよう民主党は大人の対応を見せてほしい。

 ただし日本は車への公租公課が著しく重い国だ。国と地方合わせ5兆4000億円の道路関係の税金のほか、費用が高い車検制度や、任意保険に入っていても加入させられる自動車損害賠償責任保険の制度もある。クルマは今や地方などでは必需品化した。その費用の軽減はガソリン税の引き下げ以外でもできるはずだ。

日経:社説2 経産省の不可解な排出予測(3/21)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080320AS1K2000120032008.html
 首相の政治的な求心力が揺らいでいても、閣僚の発言が危ういほど軽くても、内閣の指揮の下にある官庁が、内閣の方針を黙殺して独走していいはずはない。

 19日に経産省が総合資源エネルギー調査会に示した長期エネルギー需給見通しでは、二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出予測とその削減費用を試算している。日本は今後52兆円を投じて省エネに務めても、2020年の段階で1990年比で4%しか温暖化ガスの排出を削減できないとする。その内容は、国会の議決や内閣の方針とそぐわない。強い違和感がある。

 まず、経産省自体が加わって、2月末にまとめた政府の方針である京都議定書目標達成計画と、大きく矛盾する。政府の計画では、2010年には増え続けるエネルギー起源のCO2排出を1990年比で1.3―2.3%増に抑え、京都議定書で日本が世界に約束した6%削減を何とか達成するとしている。

 ところが、今回のシナリオでは、省エネ技術を最大限導入したとしても、2010年時点のCO2排出は90年比で4―5%増えるという。京都議定書の目標達成など想定すらしていない。2050年には世界の排出量を半減するという安倍晋三前首相と福田康夫首相の世界への提案もまた、全く反映されていない。

 これ以上のスピードで省エネを進めるなら、消費者への省エネ商品購入の義務づけ、強制買い替えなどの強権的な措置が必要というのも、理解に苦しむ。国民への脅しともとれる表現はきわめて不穏当だ。業界への規制を嫌って排出量取引という世界で主流の経済的手段すら拒否してきた官庁が、消費者向けには平気で強制を口にするのが気になる。

 今の延長上に削減可能量を積み上げる日本方式は役に立たない。そのことを今回、経産省が自ら証明した。経済や暮らしのシステム転換の意志も示さず「削減可能なのは欧州連合(EU)の5分の1」と言っても、日本の主張に誰がうなずくのか。

 7月に北海道・洞爺湖で開く主要国首脳会議(G8サミット)で議長を務める日本の首相から交渉力を奪ってはならない。京都議定書から逃げたがる日本に世界の目は厳しい。

日経:社説1 実り薄いG20、洞爺湖への戦略立て直せ(3/17)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080316AS1K1600116032008.html

 地球温暖化に関する主要20カ国閣僚級会合(G20)は、京都議定書に続く2013年以降の次期枠組みの糸口をつかめぬまま、議論を終了した。7月の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)に向け議長国の日本は合意の道筋をつけられなかったわけで、サミットを成功に導くのなら戦略を早急に立て直す必要がある。

 会合は「グレンイーグルズ対話」と呼ばれ、3年前に発足した。先進国のほか温暖化ガスの大排出国の中国やインドなども参加、言い放しながら対話を通じて合意点を探るのが狙いだった。今回は締めくくりで、議長国の日本は取りまとめで力量を問われたと言ってよい。

 主要な議題のうち、発展途上国支援と技術移転は議論がもめることもなく、前進した。問題は次期枠組みで、日本は福田康夫首相が世界経済フォーラム(ダボス会議)で発表した提案を説明、理解を求めたが、先進国も途上国もつれない反応を示し、議論を主導できなかった。

 福田提案は主要排出国が主要産業別の削減可能量の積み上げにより国別総量目標を設定する方式の採用を求めている。目標の公平性確保を理由にしているが、排出削減に消極的な国内産業に配慮し、低い目標設定の思惑が透けて見えてもいた。

 欧州連合(EU)にはその疑心もあり、すでに2020年に20%削減を決定して各国に削減量を割り振ってもいるから産業別の積み上げ方式に否定的だった。この方式で中国やインドに総量目標をのませられるのなら評価もするだろうが、その見通しも薄いとみて後押しに熱心でない。実際に、途上国はこの方式で総量目標を押しつけられると警戒し、会合で賛意を示さなかった。途上国は先進国が高い目標を示すことが先決という立場もとっている。

 排出削減の目標は本来、温暖化をどの段階でどれくらい食い止めるかを考え、決めるべきものだ。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が昨年出した報告書はその目安として2020年には先進国に25―40%削減を求めている。

 日本は昨年のサミットで安倍晋三前首相が2050年までに世界の排出半減を提案、高く評価された。今年のサミットは中期目標設定で前進できるかが焦点だ。日本がなおも積み上げ方式を前提にした福田提案で合意を目指すつもりなら、その方式でも自らに高い目標を設定できることをまず示す必要がある。排出削減に消極的な姿勢が見えるようでは、枠組み議論を先導できないし、合意はおぼつかない。


環境有識者会議 温暖化対策の司令塔になれ(3月9日付・読売
社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080308-OYT1T00658.htm

 「ポスト京都議定書」(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください。)の枠組み作りで、日本はどうリーダーシップを発揮していくのか。その戦略を練り上げる司令塔になってもらいたい。

 福田首相が設置した有識者会議「地球温暖化問題に関する懇談会」が始動した。7月の北海道洞爺湖サミットまでに意見を集約し、サミットの議論に反映させるという。

 限られた時間の中で、官邸主導で戦略作りを進めるという首相の意向を具体化したものだろう。

 2013年以降のポスト京都(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください。)の枠組み作りで、米国や中国など、温室効果ガスの主要排出国すべてが参加する案を示す――。それがサミットで議長を務める日本にとって、最大の課題である。

 これまで、産業を育成・保護する立場の経済産業省と、温室効果ガスの排出規制を強めたい環境省の対立が、政策決定を遅らせる大きな要因となってきた。

 有識者会議には、省益にとらわれずに、実効性のある排出削減策を示す役割が求められる。

 福田首相はポスト京都(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください。)で、発電などの分野ごとに削減可能量を積み上げて、各国が削減目標を決める方式を提唱している。

 産業界には、国別の数値目標設定に、反対論が根強い。会議には電力会社などの経営者もメンバーに加わっている。業界の利害を超えた議論が必要だ。

 経済成長優先の途上国も受け入れやすい枠組みについて、議論を深める必要がある。日本の省エネルギー技術を、どのように世界に広めていくのか、具体策を考えてほしい。

 国内に排出量取引制度を導入するかどうかも、主要な課題に挙がっている。

 制度が導入されれば、排出量を削減するほど、排出枠の売却で利益を得られるため、企業が排出抑制に積極的になるという利点があるとされる。

 一方で、削減努力を怠っても、排出枠の購入で目標を達成できるため、有効な排出量削減策にはならないとの指摘もある。

 取引市場の拡大を図る欧州連合(EU)に加え、米国でも、大統領選の主要候補者が、導入に積極的な姿勢を示している。

 国内でも、導入に反対していた経産省や日本経団連が制度の研究を始めた。欧米の流れに乗り遅れるとの危機感からだろう。

 排出量削減に効果があり、日本の産業界に適した制度はどのようなものなのか、十分に検討することが必要だ。

(2008年3月9日01時42分 読売新聞)

朝日:2/28社説
排出量取引―世界標準をリードしたい
http://www.asahi.com/paper/editorial20080228.html#syasetu2

 世界共通の課題となっている脱温暖化をめぐって産業界に変化が出てきた。

 反対論が強かった二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量取引を始めるかどうか議論してもいい、と言い出したのだ。

 排出量取引とは企業などに排出枠を割り当て、枠が余れば売り、不足すれば買うことができる制度である。

 政府は、産業界の代表も交えた「地球温暖化問題に関する懇談会」をつくり、3月から会合を開く。この問題が最大の焦点となるのはまちがいない。

 産業界が方針を転換したことを歓迎したい。CO2を、ただで大量に出せる時代は終わりつつあるからだ。

 背景には、人間の活動による温暖化の深刻さを指摘した科学研究がある。昨年ノーベル平和賞を受けた「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告だ。脱温暖化は、紛争抑止と並ぶ安全保障上のテーマとなった。

 排出量取引は人間が考え出したなかなか柔軟な制度である。CO2は人が生きている限り出すことを避けられない。だから、一定の枠を超えても罰するのではなく、売買で解決しようという知恵だ。

 やり方には、さまざまある。

 一つは、排出枠を工場や発電所などの排出源に割り当てる方式だ。もう一つは、枠を燃料流通の上流である石油元売り業者などに配分する方式だ。

 割り当ての方法も、排出実績などをもとに無償で配る方法と、競売で買わせる方法がある。

 工場などへ無償配分する場合、割り当てを適正にしないと、すでに排出を減らした企業が不利になったり、削減努力なしに枠が売られたりする心配がある。

 05年に始まった欧州連合の排出量取引は排出源方式で、大半が無償割り当てだ。だが、欠点が明らかになって、13年以降は競売を大幅にふやす案が検討されている。

 排出量取引への機運が議会や州レベルで高まっている米国では、一部で上流方式をとる案が出ている。これは元栓のところで排出量に枠をはめることができるが、排出企業が枠をにらみつつ省エネに努めるという状況はつくれない。

 いま排出量取引は、欧州から世界に広がろうとしている。大切なのは、これらの長短を比べて公平で効果的な方式を見いだすことだ。

 福田首相はこの1月、日本も排出削減の数値目標を掲げることを宣言した。地球全体の排出削減目標を、国に分配することには同意したことになる。

 次は、これを産業界に分配し、それぞれの企業が目標に向けて努力する仕組みをつくるときだろう。

 どのような制度にするのか、具体的な設計は早ければ早いほどよい。それを世界標準に反映できるからだ。

 日本が脱温暖化の環境戦略で存在感を高める好機である。

日経:社説 サミットに向け日本の理念と政策を・低炭素社会への道(2/25)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080224AS1K2300123022008.html


 福田康夫首相直轄の有識者会議、「地球温暖化問題に関する懇談会」のメンバーが決まり、3月からスタートする。7月に北海道・洞爺湖で開く主要国首脳会議(サミット)で、議長として議論を主導し、世界にその成果を問うには、自ら揺るぎない理念と政策を示さねばならない。有識者懇にはその心棒を固める役割を期待する。省庁や業界の利害調整の場に終わらせては意味がない。

 利害調整に終わるな

 幸い二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出削減の総量規制や排出権取引をかたくなに拒否してきた経済産業省と日本経団連にわずかだが変化の兆しが見えてきた。経産省は局長の私的な研究会ではあるが、反対してきた欧州型のキャップ・アンド・トレードと呼ばれる排出権取引について勉強をはじめるという。経団連の御手洗冨士夫会長も排出権取引について、これまでとは少しニュアンスの違う発言をしている。

 まだ固くしこっていて、雪解けには遠いが、春の気配は感じ取れる。温暖化ガスの排出削減が、自律的に進むような経済社会、低炭素社会へのシナリオを、あらゆる選択肢を排除せずに、しっかりと議論することができれば、欧州に比べて周回遅れといわれる日本の温暖化対策にも、筋の通った背骨ができる。当面は国内排出権取引の導入を急ぐべきではないか。

 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の採択から16年、その最初の実行協定である京都議定書から11年、曲折はあったが、世界は温暖化防止に向けて、少しずつ足並みをそろえつつある。その背景に、人間活動による地球の温暖化についての科学的理解の広がりがある。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が昨年まとめた第四次統合報告書で、人為的な温暖化は科学的な事実として確定した。くすぶっていた温暖化論争は完全に決着したといっていい。異を唱える学者が一部にいることは科学としてはむしろ健全なことだが、政策選択でその異論に依拠するのは愚かである。

 低炭素社会の見取り図を議論するには、この10年間日本で流布され続け、世界には全く通じない奇妙な神話との決別が不可欠だ。第一が京都議定書が日本にとって著しく不利だという根拠のないネガティブキャンペーンである。安政以来の不平等条約、省エネが進んだ日本は乾いたタオルでもう絞れない、旧東欧を統合した欧州連合(EU)は排出削減余地が大きく日本は不利、世界の排出量の40%をしめる米中が義務を負っていないから実効性がない……。

 京都議定書の親条約、UNFCCCは産業革命以来の累積排出量や現在の国民1人当たりの排出量を勘案し先進国と途上国は「共通だが差異ある責任」を果たすと決めている。京都議定書はその第一歩。全員参加の前の「お試し期間」として、まずは先進国が責任を果たす枠組みだから中国は義務を課されていない。それは日本を含む世界が合意したことだ。米国は国益を理由に離脱した。

 EU8%、米国7%、日本6%という京都議定書の割り当ては本当に日本に不利なのか。6%のうち日本は森林が吸収する分として3.8%を認められ、海外での削減協力で1.6%まかなう。日本社会の実質削減目標はわずか0.6%なのだ。

 ドイツに認められた森林吸収はたった0.4%である。省エネ大国を自称する日本に、世界はちゃんと配慮している。

 乾いたタオルは神話

 日本が国内総生産(GDP)当たりのCO2排出量が世界一低いのは家庭と運輸部門の排出が他の先進国より抜きんでて低いからだ。温暖な気候に加え、狭い家と国土が排出源単位を抑制している。オイルショック直後は文字通り世界一の省エネを誇っていた産業部門も、少し緩んだのか今は必ずしも世界一ではない。

 排出権取引を導入し、自然エネルギーの買い取り制度を強化したドイツは森林吸収分がわずか0.4%でも1990年比で20%近い排出削減を実現し、しかも経済成長を減速させていない。メルケル首相はこれで国際社会の信頼を得、昨年のハイリゲンダム・サミットで米国の交渉復帰と中印の参加を取り付けた。

 地球的視野と日本の国益は矛盾しない。有識者懇の座長は前経団連会長の奥田碩トヨタ自動車相談役が務め、新日本製鉄の三村明夫社長、東京電力の勝俣恒久社長ら、日本の産業界を代表する識者が集う。世界を知り、ビジネスの将来を見通す経済人の見識と知恵が問われる。

 炭素銀行構想など、京都議定書の次の枠組みを巡って、世界の動きが急だ。福田首相の踏み込んだ政治決断がサミット成功のカギである。

注目の社説その5 へつづく


posted by おぐおぐ at 00:48 | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。