2008年01月24日

福田首相の世銀レポート評価に疑問

世銀レポートに関する新聞報道

中日:日本、先進国で最下位 石炭発電依存が低評価
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/earth_heat/list/200801/CK2008012002080962.html

 産経新聞でも同じ記事をアップしています。
日本の温暖化対策、先進国で最低レベル
http://sankei.jp.msn.com/life/environment/080119/env0801191814001-n1.htm


 日本共産党の市田議員による参議院での本会議質問の場でも、先日の世銀レポートに関する新聞報道が紹介されました。


”最近発表された世界銀行の調査では、日本の温暖化対策の進捗状況は先進国中最下位にランクされました。京都の名が泣いているとはおもいませんか。”

 これに対して、福田首相は答弁の中で、
” 京都議定書の6%削減目標の達成に向けた認識についてのお尋ねでございますが、ご指摘のあった世界銀行の調査は、1994年から10年間の各国の二酸化炭素排出量につきまして増減の傾向を評価したものでございまして、絶対量評価ではありません。そのため、この調査におきましては一位がウクライナであり、二位がルーマニアでございます。そういう東欧諸国が高い評価を受けた、というそういう結果になっております。我が国は省エネ、新エネ技術や公共交通機関の利用率など世界的に優れている部分を有しておりまして、他の先進国と比べ劣っているとは考えておりません。”

 福田首相、認識不足ですね。確かに総量で比較しているわけではないのですが、日本がGDP原単位で比較すれば世界一だ、という経済産業省の自画自賛がデタラメだ、ということを示しているデータなのです。

世銀の各国比較レポート「成長とCO2排出:異なる国々がどのようにやっていくのか」
Growth and CO2 Emissions:How do Different Countries Fare?
Environment Department,The World Bank
http://siteresources.worldbank.org/INTCC/214574-1192124923600/21511758/CO2DecompositionfinalOct2007.pdf

 この報告書は、排出量の大きな世界70カ国について1994年〜2004年の間の改善とその要因分析を示したものです。
 GDPは特に途上国の場合は、PPP(購買力平価)ベースとMER(実為替レート)ベースでは非常に違う数字になります。

最上部の表で紹介しましたP12の表3
Table 3: Emissions per unit of GDP and GDP per capita in 2004
を見ると、日本の「購買力平価ベースでの」GDP原単位CO2排出量はインドとほぼ横並び状態となっていますし、中国はアメリカより少し多い程度です。
 日本はこの70カ国中ではPPPベースでのGDP原単位CO2排出量(左端の「E/G PPP」の数字)の低い方から24カ国目となります。もちろん比較的良い方ではありますがダントツとは言いがたい数字ですし、EUのうちの多くの国はより低く、それらの国と比べて日本は劣っている、ということも言えます。

Wikipediaで「購買力平価説」をみると、こんなリンクもありました。
世界銀行GDP統計(購買力平価)
http://siteresources.worldbank.org/DATASTATISTICS/Resources/GDP_PPP.pdf

 購買力平価基準でみると、2006年時点ですでに日本のGDPは中国とインドに抜かれて4位になっているということのようです。

 日本の場合、実為替レートは輸出産業が強いせいでかなり大きく円高方向に歪んでいて、購買力平価の為替レートと乖離しているとみることができます。
その影響で、通常の為替レートで換算したGDPは水増しされてしまっていることから、GDP原単位のエネルギー効率が実際以上によく見えてしまう、という違いが出ているのでしょう。

 実為替レートと購買力平価のどちらを使うべきか、といえば、国際経済学の教科書の中では購買力平価が用いられています。経済産業省の言い分だけを信用していると、国際社会で恥をかきますよん。お気をおつけあそばせ。

後日記:
経産省では、こんな文書を出していますので、購買力平価基準についても気にはしているようです。この評価では、日本の原単位当たりの一次エネルギー供給量はEU27カ国とほぼ同等となります。

 以下、質疑応答の温暖化関連の全文をテープ起ししたものを貼り付けておきます。
1/23参議院本会議
市田忠義(共産)議員質問より…最後に地球温暖化問題についてです。
国連のパン事務総長はIPCCの総会で世界の科学者の知見を集めたIPCCの功績をたたえつつ、科学者は仕事をした、今度は政治指導者たちが自分たちの仕事をする番だ、今行動を起こさなくては重大な危機に直面すると、またビジネスには基本ルールが必要だとも述べました。総理はこの国連事務総長の発言をどのように受け止められていますか。
日本は京都議定書で約束した温暖化ガスの1990年比6%削減どころか、逆に6.4%も増えています。
最近発表された世界銀行の調査では、日本の温暖化対策の進捗状況は先進国中最下位にランクされました。京都の名が泣いているとはおもいませんか。

 最大の問題は何か、もちろん家庭や個人の努力、国民運動も必要である。しかし、日本のCO2排出量の8割を占めているのは企業・公共部門なのであります。この部門を日本経団連の自主行動計画まかせにしていたことが、削減どころか排出増の結果をもたらしたのであります。
今こそ政治のイニシアティブの発揮が求められています。ヨーロッパなどですでに実行されている政府と企業の間で削減協定を締結するなど、企業に社会的責任を果たさせるルールを確立することが不可欠であります。
ヨーロッパにできて日本にできない理由はなんですか、端的にお答えください。また現行のエネルギー課税を見直し、二酸化炭素の排出量を考慮した環境税を導入すべきと考えますが、総理の答弁を求めて質問を終わります。

福田総理大臣
 地球温暖化対策に関するパン国連事務総長の発言についてお尋ねがございました。IPCCは気候変動に関する最新の科学的な知見に基づき、各国政府に情報を提供することによりまして気候変動対策についての国際的議論に大きく貢献しております。昨年末のIPCCのノーベル平和賞受賞はその貢献が世界に広く認められたことを示しております。
 パン事務総長の発言はこのようなIPCCの業績を評価し、国際社会が地球温暖化防止に向けて更なる努力を行うことを求めたものと考えております。
本年G8議長国である我が国としてはこうしたIPCCの科学的知見も踏まえ、主要排出国すべてが参加する実効性のある2013年以降の枠組づくりに向けて、国際的な議論を主導してまいります。
 京都議定書の6%削減目標の達成に向けた認識についてのお尋ねでございますが、ご指摘のあった世界銀行の調査は、1994年から10年間の各国の二酸化炭素排出量につきまして増減の傾向を評価したものでございまして、絶対量評価ではありません。そのため、この調査におきましては一位がウクライナであり、二位がルーマニアでございます。そういう東欧諸国が高い評価を受けた、というそういう結果になっております。我が国は省エネ、新エネ技術や公共交通機関の利用率など世界的に優れている部分を有しておりまして、他の先進国と比べ劣っているとは考えておりません。
 他方、京都議定書目標達成計画による対策のみでは京都議定書の6%削減目標の達成はきわめて厳しい見通しでございまして、今年度中に目標達成計画を改定し、6%削減目標を確実に達成してまいります。
具体的には産業界の更なる努力に加えて温室効果ガスの排出量が増大している民生部門を含めたあらゆる分野において、既存対策の着実な推進だけではなく法制度の拡充等を通じた対策の強化など、必要な追加対策を国民の協力も得ながら強力に推進して参ります。

 企業の温室効果ガスの削減についてのお尋ねがございました。
現行の京都議定書目標達成計画において、自主行動計画は、産業・エネルギー転換部門における対策の中心的役割を果たすものであると位置づけられております。また透明性、信頼性、目標達成の蓋然性が向上されるよう、政府の関係審議会等において定期的にフォローアップを行っているところであります。
目標達成計画の見直しにあたり、自主行動計画の拡大・強化を働きかけて参りましたが、目標の引き上げやこれまで計画を策定していなかった業種における新規策定、数値目標の設定していなかった業種における目標の定量化等の促進が進められております。このように自主行動計画における目標が着実に上がっている中で、計画を公的協定とすることは現時点では考えておりませんが、今後も産業界の更なる努力を促すなど、6%削減目標の着実な達成を果たすために、あらゆる部門における対策の一層の強化を進めてまいります。

 環境税についてお尋ねがございました。地球温暖化防止のための環境税については、国民に広く負担を求めることになるため、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置づけ、その効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取り組みの現状などを踏まえて、国民、事業者などの理解と協力を得るよう努めながら真摯に総合的な検討を進めていくべき課題であると考えております。以上であります。
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後日記:
大和證券のCSRのHPに、この世銀報告書を紹介したレポートがありました。
http://www.daiwa-grp.jp/branding/publication/37.html


posted by おぐおぐ at 10:52 | TrackBack(0) | 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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