2008年02月22日

注目の社説その5

 各紙の社説を紹介します。

読売社説:100ドル原油 脱石油をさらに進めなければ(2月21日付)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080220-OYT1T00781.htm?from=any
 ニューヨーク市場の原油価格が再び1バレル=100ドル台をつけ、最高値を更新した。

 石油輸出国機構(OPEC)の動きなどを材料に投機マネーが流れ込んだ結果だ。米国のサブプライムローン問題で陰りが出た世界経済に、新たな懸念要因である。

 先進各国の政府や企業、消費者は一層の代替エネルギーの開発や省エネに取り組むべきだ。そうした努力を積み上げることで、原油100ドルの水準が恒常化したとしても対処が可能となろう。

 原油価格は、年明けの1月2日に史上初めて100ドルに乗せた。その後は90ドル前後に下落していたが、再び上昇傾向が強まってきた。

 今回の大台乗せの要因として、まずあげられるのが、OPECが3月の総会で減産を決めるのではないかとの見方が市場に流れたことだ。ベネズエラが、米石油大手のエクソンモービルへの原油供給を停止したことも影響したとされる。

 原油価格は、10年ほど前は10〜20ドルと安値安定が続いていた。だが、2001年9月の米同時テロを底に、上昇に転じた。中東での緊張が高まり、原油確保に懸念が生じたことが底流にある。

 加えて、経済発展が目覚ましい中国やインドを先頭とする途上国の石油需要が急増し、原油価格を押し上げた。サブプライム問題で、投機マネーが金融市場から石油などの現物市場に移動したことも、価格上昇に拍車をかけた。

 こうした状況から、この先、原油価格は上昇・下落を繰り返すものの、40〜50ドルを下回るような安値は望めないのではないか、とする見方が支配的だ。

 そうであれば、力を入れるべきは新規油田の開発だ。ブラジルは深海底から原油を掘り出す技術を開発し、産油国の仲間入りした。ロシアも手薄だった東シベリアでの油田開発を進めている。

 原子力や燃料電池、太陽光の利用など石油代替エネルギーの開発も重要だ。省エネでは、途上国の産業部門でエネルギー効率の改善余地が大きいだろう。

 1970年代の2度の石油危機を教訓に、日本は国を挙げて脱石油に取り組んで来た。この結果、国の一次エネルギーにおける石油依存の割合は、石油危機前の8割から5割弱に下がった。

 円高が進み、円建ての原油輸入価格は、かつてほどの痛みを感じないで済む水準にとどまっている。

 100ドル原油は、日本にとって確かに重荷ではあるが、克服できないレベルではない。冷静に受け止め、これまで以上に脱石油を進めることが、最も効果的な処方箋(せん)になる。
(2008年2月21日01時52分 読売新聞)


つづく毎日社説:間伐促進策 森林再生のてこにすべきだ
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080211ddm005070112000c.html

 森林荒廃の防止が急務になっている。治山、治水対策だけでなく、京都議定書でわが国に定められた二酸化炭素(CO2)削減を実現するには森林整備が欠かせない。課題である間伐を促進させようと、政府は特別措置法案を今国会に提出した。

 地球温暖化防止に向けて05年に発効した京都議定書で、日本は08年から12年の5カ年で90年レベルに比べて6%の温室効果ガス削減を約束している。

 ところが、06年の速報値では削減どころか6・4%増になっている。約束を履行するには12・4%削減するしかない。温室効果ガスの大半はCO2で、削減策としては排出源を減らすだけでなく、森林の吸収力アップも有効だ。

 戦中から戦後にかけて日本の森林は荒廃した。その後の国民的な植林運動で回復し、50年代の国産材のシェアは9割に達していた。だが、外材との価格競争に敗れ、最近はやや回復傾向にあるとはいえ2割程度にすぎない。資源保護、ユーロ高などの要因で外材との格差が縮小したことに加え、合板などの加工技術の発達で国産材の競争力は向上しつつある。

 人工林は、間伐をしないと木材としての商品価値が失われるばかりか、CO2の吸収力も低下する。木々が密集しすぎて、日光が地表に届かず、下草も生えにくくなる。崩れやすく、保水量も衰え、中、小規模の洪水でも、被害を招く。

 わが国における森林の所有形態は6割が私有林で、国有林は3割、自治体などが所有する公有林は1割となっている。間伐費用の5割は国費で賄われるが、残りは地方自治体と所有者が負担することになっている。林業の衰退と地方自治体の財政難で、間伐作業は進まなくなった。

 そこで、林野庁では都道府県の負担分を起債で賄う特別措置法案をまとめた。さらに、民有林であっても間伐を行う事業者が自治体、森林組合など公共性が高い団体ならば、起債は認められる。森林整備事業に積極的な市町村は国から直接、交付金を受け取れる制度も導入される。総額10億円が予算化されている。間伐作業のスピードアップが狙いだ。

 人工林は樹齢40〜50年ほどが、伐採適齢期という。それまでに3回程度の間伐が必要だ。機械化も進んでいるが、搬出費を含めると、1ヘクタール当たり約40万円かかる。わが国の間伐面積は年間約35万ヘクタールだ。京都議定書での目標に到達するには今後は毎年20万ヘクタール分を上乗せする必要がある。

 森林は治水、環境面だけでなく、水資源の保護でも、大いに貢献している。その一方で、森林事業に従事する人々の高齢化も進んでいる。戦後に植林された人工林も伐採時期を迎えつつある。森林のこれ以上の荒廃は許されない。
毎日新聞 2008年2月11日 東京朝刊

産経:【主張】道路財源審議 あるべき姿に見直す好機
2008.2.1 03:08
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080201/plc0802010308000-n1.htm
 与野党が対立していた今年度末に期限がくる揮発油(ガソリン)税など道路特定財源の暫定税率問題は、衆参両院議長斡旋(あっせん)で打開が図られ、焦点は国会審議での法案修正に移った。審議ではこれを税財政の本質から議論し、あるべき姿に見直す好機としたい。

 あるべき姿とは自動車重量税などを含めて暫定税率を維持し、すべて使途を道路整備に限定しない一般財源にすることである。危機的財政の中で5・6兆円に上る財源は極めて貴重で、それが社会保障などにも使えれば財政健全化にも大いに役立つからだ。

 政府・与党案は暫定税率は維持するものの、今後10年間の道路整備計画とリンクさせ、一般財源化を有名無実化させた。一方の民主党案は全額一般財源化するとしながら、暫定税率を廃止しガソリン1リットル当たり25円の値下げを主張している。

 双方の案は真っ向から対立しているように見える。しかし、選挙を意識した人気取り競争の色を排して双方の主張を突き合わせれば、あるべき姿の実現は決して不可能ではない。

 まず与党は、民主党がいう全額一般財源化を受け入れる。すでに道路は十分に整備された。道路族は猛反対しようが、真に必要な道路は一般財源でもつくれるのだから、福田康夫首相が指導力を発揮すればよい。

 民主党は暫定税率維持をのむことだ。「25円値下げ」を支持する世論の中には、暫定税率維持で無駄な道路をつくることへの反発がある。一般財源化なら一定の理解を得られよう。

 むしろ、あやふやな暫定税率は本則にしたらどうか。ガソリンにかかる税は英、独、仏の約半分で、小売価格も先進国の中で圧倒的に安い。それは十分な担税力を示している。

 そして、世界の潮流からみて導入が予想される環境税へ一部を組み替えることも検討する。環境問題が焦点となる北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)へ向け、他のエネルギー関連税も対象に導入の意思が表明できれば強いメッセージとなろう。

 年度末までにすべての結論を得るのが難しいなら、与野党で方向性を確認し改めて協議の場を設ければいい。経済混乱を誘発するような対立を回避し政治本来の責務を果たすべきだ。

日経社説1 議長あっせん生かし道路財源抜本改革を(1/31)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080130AS1K3000330012008.html
 衆参両院議長のあっせんにより、与野党は道路特定財源の暫定税率などについて、3月末までの年度内に一定の結論を出すことで合意した。これに伴い与党は 3月末に失効する揮発油税などの暫定税率を延長する「つなぎ法案」を取り下げる。議長あっせんで国会の混乱が回避されたことを評価したい。与野党は徹底的に議論して、道路特定財源の抜本改革に踏み込む時である。

 合意文書では、揮発油税を含む租税特別措置法改正案など税法全般について、各党間で合意したものは「立法府で修正する」と明記した。予算の裏づけとなる歳入関連法案を巡り、与野党の主張が異なるのは当然だが、衆参ねじれ国会の下では互いの歩み寄りが不可欠である。

 民主党は道路特定財源の暫定税率を全廃する方針を打ち出している。3月に暫定税率が期限切れになると、例えばガソリンの税額は1リットル当たり25円下がる。民主党は参院での法案審議を4月まで引き延ばし、一時的にガソリン価格を引き下げる戦術を描いていた。

 これに危機感を強めた与党側は、期限を2カ月延長するためのつなぎ法案を提出。30日の衆院本会議で採決されれば、国会が全面空転する恐れがあった。与野党がともに自制し、徹底審議のうえで法案修正を目指す方針に転じたのは、有権者の期待に沿う適切な選択である。

 私たちは巨額の長期債務を抱える国・地方の財政状況や地球温暖化への影響などを踏まえれば、道路特定財源の暫定税率を維持するのはやむを得ないと主張してきた。一方で地方分を含めたすべての道路特定財源を、一般財源化するという民主党の主張には理があると考える。

 昨年末に決めた道路整備計画に10年間で59兆円を計上したのに合わせて、この間は暫定税率を維持し、一般財源化を限定する政府案は問題が多い。既得権益を保護していると批判されても仕方があるまい。

 小泉、安倍両内閣は道路特定財源の一般財源化に切り込む姿勢を示したが、道路関係議員らの抵抗で、この旗印はかすんでしまった。政府・与党には民主党の主張にも耳を傾ける柔軟な姿勢を望みたい。

 「ガソリン値下げ」をアピールしてきた民主党は、再び審議引き延ばしの誘惑にかられることがあるかもしれないが、それは邪道である。国会審議などを通じ、道路特定財源についての理解は深まってきた。与党と民主党のどちらの政策に説得力があるのか。有権者が厳しく見つめていることを忘れてはならない。

読売:ダボス演説 首相の「構想」を生かすには(1月27日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080127-OYT1T00040.htm
 北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)の議長国として、気候変動の問題にどう取り組むのか。国際社会に発したメッセージの具体化へ、福田首相の政治的力量が試される。

 首相は、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の演説で、温室効果ガス排出削減について「国別総量目標」を設定する構想を示した。

 昨年12月のバリ島での国連気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)で、日本は数値目標盛り込みに消極的とみられた。このイメージを払拭(ふっしょく)し、今後の交渉で主導権をとりたい。そのためには、数値目標の設定が不可欠と、首相は判断したのだろう。

 2012年までの削減目標を定めた京都議定書は、先進国全体で1990年を基準に5%の削減をめざしている。首相は「ポスト京都議定書」(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください。)での総量目標の策定は、「公平」の観点から、各国が削減可能量を積み上げる方式を提案し、基準年も見直すよう求めた。

 不公平感が否めない京都議定書の問題点を踏まえたものといえよう。

 演説では、「国際環境協力」も打ち出した。世界のトップクラスにある日本の環境関連技術の移転を促進する。

 日本の石炭火力発電効率を米国、中国、インドの3か国に普及させると、二酸化炭素(CO2)削減効果は、日本一国の排出量に相当する13億トンになる――首相がこう例示したように、日本の優秀な環境技術やイノベーション(技術革新)の能力を、ますます、世界にアピールしていかなければならない。

 問題は、これから、首相構想をいかに実現していくかである。

 提唱した「国別総量目標」の具体化にしても今後、相当困難な作業を伴う。

 具体的な削減の数値目標を掲げている欧州連合(EU)と、これで折り合えるのかどうか。EUと対照的な立場の米国の理解は得られるか。中国、インドなどの新興国をこの手法で交渉に巻き込めるのか。いずれも難題である。

 日本は、京都議定書により、排出量を6%削減する義務を負っている。これも容易なことではない。だが、達成できなければ、首相構想も推進力を失ってしまうだろう。首相は、公約の実現へ官邸主導で国内調整に全力をあげるべきだ。

 地球温暖化対策は、各国の産業・エネルギー政策に直結する。その交渉は、先進国や新興国、途上国がそれぞれ国益をかけるパワーゲームの場でもある。

 首相は、国家間利害の調整役として、日本の国益を確保する一国の指導者として力を発揮してもらいたい。
(2008年1月27日01時34分 読売新聞)

朝日:福田環境構想―第1打席は出塁できた 2008年01月27日
http://www.asahi.com/paper/editorial20080127.html

 地球の脱温暖化をめぐって、福田首相が世界のひのき舞台で口を開いた。

 スイスのダボスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で発表された福田構想だ。

 先進国に温室効果ガスの排出削減を義務づける現行の京都議定書第1期は12年に終わる。その後も、日本は主要排出国とともに排出量の数値目標を掲げる、と宣言したのである。

 国ごとの数値目標方式には、産業界を背景に政府内でも消極論が根強くあった。米政府も反対している。こうした状況のなかで、一歩踏み込んだメッセージを世界へ発信したことになる。

 去年暮れの国連気候変動枠組み条約締約国会議は、13年以降の枠組みづくりを09年までに仕上げることで合意した。今夏の洞爺湖G8サミットでその歩みを大きく進められるかどうかは、この半年の環境外交にかかっている。

 野球でいえば「環境シリーズ」だ。その第1打席は出塁できたといえよう。

 国際世論となりつつある「50年までに世界の温室効果ガス排出を半減」という目標を達成するためには、各国に数値の縛りを課すことが欠かせない。

 縛りがあれば、それぞれの国は、社会や産業を脱温暖化型に変えざるをえなくなる。排出を抑えるほど得をする排出量取引や、環境税など、さまざまな仕掛けをつくっていくことになるだろう。

 国別の数値目標方式は欧州が強く主張しており、それをテコに排出量取引を広めようとしている。ブッシュ後をにらむ米国内でも脱温暖化の機運は高まっている。今回の宣言で「京都後」もこの方式が柱になることが現実味を帯びた。

 問題は、今は途上国扱いで義務を負っていないが、排出量の多い中国やインドをどう引き入れるかだ。今回、福田首相が「先進国とともに」ではなく「主要排出国とともに」という言葉を選んだのは、その思いの表れだろう。

 そこで課題となってくるのが、公平感のある仕組みづくりである。

 日本は今の段階で数値目標方式の旗印を鮮明にしたことで、制度設計に積極的にかかわれるようになった。国際社会にとっても、日本にとっても、納得のいく方法を見つけなくてはならない。

 中国やインドなどに対しては、経済発展のさなかにあることや人口の多さに目配りしながら、「これ以上は出さない」という目標値を見いだす余地はあるはずだ。構想には省エネ技術を外国に移転することも盛り込んでいるが、これも一助になるだろう。

 福田構想では、国内の目標づくりは、分野ごとに削減可能な量を積み上げる方式をとる。産業界などの意向をくんで目標を甘くしすぎると、海外の風圧が高まるだろう。これは、ほかの国に応分の負担を求めることを難しくする。

 出塁をどう得点につなげるか。日本は大きな責任を負うことになった。

産経:【主張】排出権取引 バスに乗る前に考えたい
2008.1.23 03:47
http://sankei.jp.msn.com/life/environment/080123/env0801230348000-n1.htm
 地球規模の気候変動を招いている二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスをどう削減するのか。今、その議論の中心に居座った感があるのが、排出権取引、中でも欧州連合(EU)が先行するキャップ・アンド・トレードだ。

 各企業が排出できるCO2の上限枠を設け、実際の排出量がこれを下回れば、余剰分を排出権として枠を上回る企業に売却できる仕組みである。

 EUは排出権の取引市場も作っており、日本でも国内企業向け排出権取引の制度化と市場創設を求める声が強い。一部には「バスに乗り遅れるな」といったムードさえある。

 この仕組みは、CO2を削減すれば自社の排出権が増え、売却益が期待でき、削減努力の動機付けになる。市場メカニズムの活用も一つの工夫だ。

 それでも、現在の排出権取引論議には危うさを覚えざるを得ない。

 EU方式は排出枠をどう設定するかが難しい。過去に削減努力をしていない企業が有利になりかねない。公平性に配慮し企業ごとの目標率に差をつければ、作業は複雑化する。枠を設定する機関は強い権限を持ち、不透明な思惑が入る可能性さえある。

 欧州委員会が加盟国の総排出枠を決めた上で、各国が自国企業に割り当てているEUでは、これを不公平とする企業の訴訟が約800件起きた。一方で排出枠設定が甘く、大量の余剰が発生、総排出量も1990年の基準年から実質増になったとの指摘もある。

 削減努力をするより排出権を買う方が安上がりと判断する企業もあろう。日本経団連は、エネルギー効率化の進んだ日本企業には不利で、国際競争力を損なうと主張している。何よりも本来のCO2削減という目的を離れ、マネーゲーム化する恐れがある。

 排出権取引はCO2削減の一手段にすぎない。特にキャップ・アンド・トレードには検討すべき課題も多い。地球温暖化防止の「切り札」であるかのような議論は危険ではないか。

 日本は昨年末の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)で取り組み姿勢が消極的と批判された。夏には北海道で主要国首脳会議(洞爺湖サミット)を控え、指導力発揮が求められる。それでも排出権取引導入には、一度立ち止まって考える必要がある。

新たな秩序へ 地球環境戦略を世界に示せ 深刻化する温暖化(1月15日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080114ig90.htm

 ◆待ったなしの対策◆

 北極海の氷の面積が過去最小を記録した。凍土が解けたシベリアでは、メタンガスが噴出している。キリマンジャロの万年雪も消滅の危機にある――。

 世界各地で温暖化の影響とみられる現象が顕在化している。巨大なハリケーンなど、頻発する異常気象も、温暖化に起因するとされる。日本では昨夏、最高気温が40・9度を記録し、74年ぶりに記録を更新した。

 地球温暖化は、未来の話ではない。各国が連携して、早急に手を打つべき差し迫った課題だ。北海道洞爺湖サミットが開かれる今年、日本はその主導的役割を果たさねばならない。

 今年は、京都議定書が先進国に温室効果ガスの削減を義務付けた5年間の始まりの年でもある。

 議定書が採択された1997年、各国が一体となって地球温暖化に立ち向かおうという機運が高まったが、国際社会の一致した取り組みにはならなかった。

 世界最大の排出国である米国は、経済への悪影響を懸念し、2001年に議定書から離脱した。米国を抜き、世界一の排出国になったとされる中国や排出量5位のインドは、途上国として、削減義務を免除されている。

 京都議定書で削減義務を負っている国の総排出量は、全世界の3割でしかない。現状では、京都議定書以外に、温暖化対策の国際的なルールはないが、大きな欠陥を有しているのも明らかだ。

 昨年、ノーベル平和賞を受賞した「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は、このまま有効な対策を講じなければ、平均気温が今世紀末に最大で6・4度上昇すると警告した。

 気温が上がるにつれて、干ばつによる農業被害や水不足、海面上昇による洪水、感染症の蔓延(まんえん)などは避けられまい。

 こうした事態を招かないために、急ぐべきは、京都議定書の対象期間が2012年に終わった後の温暖化対策のルール作りだ。京都議定書の失敗を繰り返してはならない。

 まず重要なのは、米国や中国など、すべての主要排出国が参加する枠組みにすることだ。京都議定書は、主に先進国に削減義務を課したが、新たな枠組みでは、途上国も、応分の責任を負うことが必要である。

 ◆「ポスト京都」こそ重要◆
(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください。)
 次に、どのように排出量削減を進めるのか、具体的なルールを決めなくてはならない。京都議定書と同様に、国ごとに削減目標を設けて達成を義務付けるのか、あるいは別の手法にするのか。

 昨年12月に開かれた国連の気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)は、先進国全体で排出量削減の数値目標を設けるかどうかで紛糾し、結局、目標設定は先送りされた。国別の目標設定の議論になれば、各国の利害の対立が一層、激しくなることは間違いない。

 欧州連合(EU)は、国別の削減義務付けを求めている。域内の排出量取引市場を発展させたいとの思惑がある。

 米国は、議定書を離脱した時から、一貫して義務付けに反対している。温暖化対策の国際交渉では、EU対米国という構図が定着した。

 日本は、米国を交渉のテーブルに留め置くことに腐心し、国別の義務付けなどへの態度を鮮明にしていない。産業界にも、削減義務付けへの拒否感は強い。

 各国が責任を持って排出削減に取り組むためには、やはり、国別の削減義務付けは必要であろう。今後の交渉で、何とか打開策を見いださねばならない。

 環境対策に消極的とされるブッシュ政権だが、仮に民主党政権になれば、米国の対応が大きく変わる可能性もある。

 中国の存在が、事態を複雑にしている。先進国に一層の削減努力を求める一方で、自らが削減義務を負うことは拒否している。大量排出国として応分の責任を担うよう先進国が協力して迫らねばなるまい。

 京都議定書により、日本は、排出量を90年度比で6%削減する義務を負っている。議定書に欠陥はあるとしても、批准国として、その達成に最大限の努力をしなければなるまい。

 だが、90年度当時、既に高水準の省エネルギー技術を有し、省エネを達成していた日本にとって、6%削減は容易でない。06年度の排出量は90年度を6・4%上回っている。

 ◆長期的視点の政策を◆

 環境省などは、6%に届かない分について、海外から排出枠を購入し、自国の削減分に計上する手法で賄う方針だ。これには1兆2000億円が必要との試算もある。財政難の中、削減率の帳尻合わせのために、巨額の公費を投入することに、国民の理解は得られるだろうか。

 日本は、世界全体の排出量を2050年までに半減させるという目標を提唱している。その場しのぎではなく、長期的視点に立った政策こそが必要である。

 省エネ技術の革新をなおも進め、その技術を途上国に提供することにより、日本は、世界全体の温室効果ガスの削減に今以上貢献できるはずだ。

 北海道洞爺湖サミットで成果を残せるかどうかが、「ポスト京都議定書」(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください。)の枠組み作りの行方を左右するだろう。議長国の日本は、議論をリードする確固たる戦略を示さねばならない。
(2008年1月15日1時43分 読売新聞)

注目の社説その4 へ続く


posted by おぐおぐ at 03:13 | TrackBack(0) | 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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