2008年01月12日

私たちの世界が燃えつきる前に-モンビオのHEAT本

 この本を買って読み始めています。 温暖化対策のために2030年の英国での温室効果ガス排出90%削減を訴えて具体策を考察しています。これからの温暖化対策の政策を議論するに際して必読の書の一つでしょう。

 温暖化対策と両立できる工業文明という観点から多くの分野での具体的な対策を実際に比較検討した、温暖化の緩和策についてのまとまった本となっています。

”本書では、炭素排出の九〇パーセント削減を達成する最も痛みの少ない方法を工夫しようと思っている。それは私たちが快適さや繁栄そして安らぎを求めることと、他の人々の快適さや繁栄そして安らぎを破壊しないために、私たちが自ら課さねばならない制約との調和を試みることである。”

地球を冷ませ!―私たちの世界が燃えつきる前に (いのちと環境ライブラリー)
出版社/メーカー:日本教文社
価格:¥ 2,000
ISBN/ASIN:4531015541
Rating:★★★★


【目次】
序章−善意の「他人まかせ」
第1章 ファウストの契約
第2章 産業界の拒絶反応
第3章 「炭素排出」という自由の配給
第4章 すべての住宅を断熱せよ
第5章 電気は消さずに炭素排出を削減する
第6章 再生可能エネルギーでどのくらいエネルギーを供給できるか?
第7章 エネルギー・インターネット
第8章 新交通システム
第9章 ラブ・マイルズ 人間は飛行機に乗り続けられるのか
第10章 ショッピングとセメント産業の転換
第11章 終末を遠ざける
謝辞
訳者あとがき モンビオはイギリスの左派紙ガーディアンの定期コラムニストでもあり、環境活動家、ジャーナリストです。

 モンビオについて取り上げた過去記事
ジョージ・モンビオ:2℃目標は諦めたのか?
http://sgw1.seesaa.net/article/127880375.html
(スターン報告書批判)

Youtubeに1年前のロンドンデモの映像(ニュース短信その4)
http://sgw1.seesaa.net/article/127880304.html
(アジテーターの風格があります)

だけどそれでも原発は必要じゃないbyジョージ・モンビオ
http://sgw1.seesaa.net/article/127880275.html

「私たち自身との闘い」ロンドンデモよりのメッセージ
http://sgw.blog50.fc2.com/blog-entry-160.html

規制を求めるグリーン産業と渋る政府
http://sgw1.seesaa.net/article/127880140.html


第1章 ファウストの契約
 では、物語のメタファーを使って、温暖化の科学と悪影響について紹介しています。必要な削減幅については、1年前の科学的見地に応じたものとして、2030年に英国の87%削減を紹介しています。

第2章 産業界の拒絶反応
 では、懐疑派の議論の源泉に産業界のアンチキャンペーンがあることを紹介しています。

第3章 「炭素排出」という自由の配給
 では、先進国と途上国の間のContraction & Convergence(縮小と収束)型の排出権取引に加え、個人に初期配分する「アイスキャップ」売買可能炭素割当(ディヴィッド・フレミングのTEQ)の概念を紹介しています。そして、排出権取引に反対する経済学の倫理性の無さを指摘し、近い将来にピークオイル危機が起こることも紹介しています。

第4章 すべての住宅を断熱せよ
 からは各論に入り、総体として90%削減を実現するためには、あらゆるジャンルでそれに近い規模の削減可能性を示す必要がある、として各論の多くの情報を比較検討した結果を紹介しています。
既存の住宅をすべて断熱改修するのは容易ではないという悲観的な結論から次の章に移行しています。

第5章 電気は消さずに炭素排出を削減する 
 は、発電網についての章です。原発についても書いていますが、以前の記述(だけどそれでも原発は必要じゃない)と比べて大きな変更点はありません。
ウランの低品位の鉱石ではEPRが1以下になる問題については両論併記で判断を下していません。
 全体としては原発は露天掘りの石炭を利用する火力発電所の次にエネルギー源としての優先順位が低いとしています。
 結果として暫定的な対策としてはCCSを組み込んだ天然ガス火力と、急拡大させた再生可能エネルギー(次章)で電力網の供給の50%ずつを分担する手段が妥当性があるとして勧めています。

とは言うものの、
第6章 再生可能エネルギーでどのくらいエネルギーを供給できるか?
 での論調は、再生可能エネルギー推進論者の擁護の多くは問題がある、容易ではないと批判的です。

第7章 エネルギー・インターネット
 では、分散型の熱電併給システムで大規模送電網を廃止できるかどうかの検討をしています。マイクロ風力タービンについての掛け声倒れという批判はその通りでしょう。

第8章 新交通システム
 では専用レーン付きの長距離バスの活用といった良い公共交通で自家用車への依存を減らすことを可能性あるものとしています。水素エネルギーとバイオ燃料については批判をしています。
”世界中がハイパーカー・テクノロジーや電気自動車へ転換し、速度を落とし加速性能もそこそこに抑え、さらに自動車の乗り合いや在宅勤務、自動車不要のショッピング、利用しやすい公共交通、自転車や歩行者に便利な設備が整えば、交通領域でも全体で炭素排出を90%削減できるだろう。しかし問題なのは実現可能性ではなく、政治である。”

第9章 ラブ・マイルズ 人間は飛行機に乗り続けられるのか
 での結論は、技術的には打つ手なし、航空交通の成長と気候変動への取り組みは両立しないというものです。
”人間は空を飛ぶことが可能であること、それから長距離の飛行が可能であること、そして多くの人が飛行機に乗ることが可能であること、さらに読者であるあなたも飛行機に乗ることが可能であることを納得するまでには、そのたびに想像の飛躍が必要だったのである。それには二十世紀の人びとによって、かつては存在しなかった「可能な世界」の構築が必要だった。…かつて新たな世界の構築が可能だったのだから、もう一つの新しい世界を構築することも間違いなく可能であり、その世界に適応もできるはずである。かつて(ほとんど想像もできなかった)飛行機に乗る生活に適応できたように、それは可能なはずである。”

第10章 ショッピングとセメント産業の転換
 大型ショッピングセンターの問題を、「宅配」+「倉庫」に切り替えることを提案しています。
”煌々と照らし出されるガラス張りの大型店へ環状道路をとばして行列に並ぶ権利が、かけがえのない生活の一部であり自由であり幸福を追求することである、という幻想から解放されれば、このショッピングスタイルの転換によって人間の自由が大きく低下することはないだろう。”

 セメント産業については、ジオポリメトリック・セメントという二酸化炭素をほとんど排出しないセメントに転換することを提案しています。

第11章 終末を遠ざける
”この国の「生活」もこれから三〇年の間に今とは変わってくるだろうという事は頭の中でわかっていたし、…理解できていた。ところがなぜかこうした知識があっても、それが、私自身の生活が変わるというリアルな認識にはつながらなかったのである。死と向き合ってこなかった者の性として、自分の未来は現在が繰り返し続いていくものとして片付けてもいた。世界は変わるかもしれないが、自分自身は変わらないつもりでいるのである。”

”しかしこの赤ん坊ときたら、風変わりな小さな生き物で、立派に育った大人より生態系に近く、…今の私はもう、これから三〇年間にこの国の「人々」という抽象的な存在に起きうることを書いているのではない。私はこの子について書いているのである。”

”私もこうして生物学的リアリティーを突きつけられて分かったのだが、悲惨な予測について考え、熱力学の堅固な岩盤を掘り進んでいる間でさえ、心の中ではなぜか千年王国的な救いを信じている自分がいるのである。”
そして「ピークオイル危機が救ってくれる」という考えも偽りの希望のうちの一つとして描いています。

”必要とされる炭素排出削減は難しいとはいえ、私は、技術的にも経済的にもそれが可能であることを実証できるように努めてきた。しかし政治的に可能であることは示していない。それには理由がある。政治的な可能性を示すのは私の義務ではないからだ。それは読者であるあなたの義務なのである。”

”各国政府は政治的な犠牲を最小限に抑えながら、人間への影響には目をつぶり、このまま何もしない方針をとり続けるだろう。気候変動活動家の仕事は、政府の方針では政治的犠牲がきわめて大きくなることを知らしめることにある。それには、私たちの大部分がこれまでの約10年にわたってどういうわけかはまり込んでいた心の習慣を捨て去らなければならない。私たちにかわって誰かがやってくれるという思い込みを拭い去らなければならないのである。”

”気候変動に取り組む運動は奇妙な運動である。これまでのどんな民衆的抗議運動とも異なり、豊かさを求める運動ではなく耐乏を求める運動なのである。それはさらなる自由を求めるのではなく、より小さな自由を求める運動である。そして何より風変わりなのは、この運動は他者に働きかけるだけでなく、自分自身にも向けられた運動であることである。”
posted by おぐおぐ at 21:25 | TrackBack(0) | 温暖化の政治学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。