2008年01月06日

注目の社説その4

 各紙の社説を紹介します。

●日経:社説 世界を唸らせる環境外交の構想力を・低炭素社会への道(1/8)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080107AS1K2800307012008.html

 2008年は地球温暖化対策での日本の外交力が試される年となる。自国の利益を守るだけの姿勢を見透かされれば、国際社会での発言力は弱まってしまう。世界が納得する政策協調の枠組みを、説得力を持って語らなければならない。

 福田康夫首相にはその準備ができているか。7月の主要国首脳会議(サミット)は北海道の洞爺湖で開かれる。議長国として日本が世界に存在感を示す大舞台である。

途上国と先進国を結べ

 福田首相が出席を検討している1月下旬のスイスでの世界経済フォーラム(ダボス会議)が最初の関門となる。京都議定書の次の枠組みづくりを目指す、日本の意志を示さなくてはならない。世界は厳しい目で日本の外交手腕を見極める構えだ。それは試練であると同時に、日本の国際貢献を印象づける好機でもある。

 サミット議長国の責任は重い。世界一の温暖化ガスの排出国である米国は、排出削減の義務的な数値目標に抵抗している。2位の中国は「途上国」の立場から、約束を伴う行動には腰が重い。一方、欧州連合(EU)は削減目標を誇示するように掲げ、主導権の掌握に意欲満々だ。

 こうしたにらみ合いの構図をただ眺めているだけでは、議長国の名が泣く。世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)と同様に、多国間外交では「静かに待つ」戦略は通用しない。他国に先駆けて具体案を打ち出し、主導権と発言力を確保する必要がある。

 「ポスト京都」(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください。)に向けて日本が備えるべき外交力の第一の要素は制度を構想する力だ。各国を唸(うな)らせ、うなずかせるような温暖化防止の仕組みを日本案として提示したい。洞爺湖サミットは、中国を代表とする途上国と米国が参加する新しい枠組みを築く基礎工事となる。

 そのためには諸外国に勝る日本の特質を生かした構想を練るべきだ。産業界が蓄積してきた省エネ技術や各国より高いエネルギー効率が重要な鍵となるのは間違いない。

 例えば排出権取引の公平性を確保するために、企業の省エネ努力を反映するような売買の基準を提案してはどうか。省エネが進んだ日本だからこそできる提案であるはずだ。これまで日本は排出削減の国別数値目標や排出権取引に消極的だったが、エネルギー効率が高い点など日本と共通項が多いドイツと連携して新提案を共同提出してもよい。積極的に打って出る戦略を採るべきだ。

 途上国については先進国と目標設定で差異をつけ、省エネ目標を導入するのも一案だろう。アジアの仲間である中国を説得するのは日本の責務と考えるべきだ。英国のブレア前首相は一昨年、ブッシュ米大統領の頭越しでカリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事と直接会談し温暖化対策で連携した。福田首相の積極的な首脳外交を期待したい。

 国際交渉の戦略に長じた欧州に学ぶべき点は多い。英国では97年に英産業連盟会長だったマーシャル卿が音頭を取り、いち早く環境税や排出権取引のアイデアを練った。06年には元世界銀行主席エコノミストの英国のスターン卿が地球温暖化の経済への影響を詳細に分析し、英政府に報告書を提出した。その研究成果は現在のポスト京都の議論にも、少なからぬ影響を与えている。

 メルケル独首相は昨年6月のハイリゲンダム・サミットで、ブレア前英首相と二人三脚を組んでブッシュ米大統領を説得し、主要国が一丸となって温暖化防止に取り組む首脳声明をまとめ上げた。制度設計の構想力だけでなく、首脳が自らの政治判断で機動的に動く。その意思決定の速さと躍動感こそ、EUの国際的な発言力の源泉といえる。

強力なEUの発信力

 工業基準や企業会計などでEU発の「国際標準」が増えている。ポスト京都(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください。)の議論もEUが流れを生み出そうとしている。EUの戦略に沿った制度が完全とはいえないが、批判するだけの姿勢は建設的ではない。

 米国では今年11月の大統領選で政権が交代する可能性がある。京都議定書を離脱した同国の環境政策は大きく方向転換するとみておくべきだろう。直後の 12月にポーランドで開く国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP14)で利害をぶつけ合い、翌09年末のデンマークの会議(COP15)で決着する。 2年間の環境外交を構想する必要がある。

 ポスト京都(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください。)の日本案の策定は、これまで経済官庁が主導してきた。官僚任せでは大局的判断を誤る恐れがある。福田首相は、米大統領選や中国の経済成長の行方など今後2年間の世界情勢の変化を念頭に置き、自らの判断で行動すべきだ。

 環境外交は政治の仕事である。●産経:【主張】原油急騰 世界規模で「脱石油」図れ
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/113791/

 年明け早々、ニューヨーク市場で原油先物が一時、1バレル=100ドルをつけた。海外株式市場、外国為替市場は大きく動揺した。東京証券取引所の大発会で日経平均株価は急落、1万5000円を大きく割り込んだ。

 今回の原油急騰は、産油国の政情不安、米国内の在庫不足を材料にした投機的な動きだ。米経済の先行き不安感もあり、株式やドルから原油、金などの商品に資金を移したのである。

 投機マネーは、いずれ原油から離れる。価格も落ち着きを取り戻すに違いない。ただ、忘れてはならないのは、原油価格は構造的に上昇基調にあるということである。

 石油鉱業連盟は昨年秋、平成17年末時点の見通しとして、世界の石油が枯渇するまで「あと68年」との見解を示した。それまでの「79年」から11年短縮している。主因は中国、インドなどの需要増である。これら新興国の需要は今後、増える一方だ。

 また、産油国の多くはすでに浅い油田を掘り尽くし、深い場所の原油に手を付け始めている。これもコスト高要因になる。たとえ産油国が増産に踏み切ったとしても、需要増と採掘コスト増大という状態が解消しない限り、原油価格の騰勢は続くことになろう。

 重要なのは、こうした原油高構造にどう対処するかである。世界各国が「脱石油」に本気で取り組むべき時期がきているのではないか。

 世界の石油消費量の半分は米国、日本、ドイツの先進3カ国と中国、ロシア、インドの計6カ国で占めている。これらの国の消費が抑えられれば、投機資金も原油シフトに慎重になろう。特に全体の25%を占める米国と、急成長して米国に次ぐ消費国となった中国の消費抑制は緊急課題である。

 カギは省エネ技術の開発と石油代替エネルギーの実用化だ。これまで地球温暖化との関連で代替エネルギーの利用が訴えられながら、軌道に乗らなかったのは、コスト面で石油が圧倒的に優位だったからである。

 その意味で1バレル=100ドル時代が現実味を帯びる今は、代替エネルギー活用に本気で取り組む好機だ。環境問題だけでなく、経済合理性の観点から、世界規模で石油依存体質を改める動きが活発になることを期待したい。

●日経:社説 「足元からの行動」で国を先導しよう(1/4)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080103AS1K2800503012008.html

 地球温暖化問題と向き合い、京都議定書が定めた温暖化ガスの削減目標を達成するためには地域に根差した取り組みの積み重ねが大切である。地域社会の持続可能性を維持することは自治体の責務であろう。

 東京都は2010年度に都内の大規模事業所を対象に二酸化炭素(CO2)の排出削減を義務付け、独自に排出権取引制度を創設する方針だ。政府が導入に消極的なキャップ&トレード型の経済誘導策である。

独自策打ち出す東京都

 産業界は反発しているが、石原慎太郎知事は「温暖化は人類が直面する最も深刻な問題だ」と譲る様子がない。都の推計では都内の総排出量の3分の1をオフィスなどの業務部門が占め、05年度の業務部門の排出量は1990年度比で3割強増えた。「日本の省エネ技術は進んでいるが、企業は十分に活用していない」と都はみており、削減余地は依然として大きいと主張している。

 独自の環境税の検討、消費電力が大きい白熱球を家庭からなくす運動など、その他にも都は矢継ぎ早に対策を打ち出している。消費電力の少ない家電製品の購入を促す「省エネラベル」のように、東京発で全国に広がり、国が追随して制度化したものもある。日本の社会や風土に適した対策を探るためにも自治体が先行して動く意義は大きいだろう。

 海外をみても州政府や都市が積極的だ。米国では温暖化問題に消極的なブッシュ政権を尻目に、カリフォルニア州やニューヨーク州などが排出権取引の統一市場の創設に向けて欧州連合(EU)と協力協定を結んだ。公共交通優先の都市づくりで有名なドイツのフライブルク市、化石燃料を使わない宣言をしたスウェーデンのヴェクショー市など欧州でも環境先進市が国を先導してきた。

 日本でも東京を中心に連携し、地域から政府を突き動かせばいい。大規模事業所などに温暖化ガスの削減計画を条例で求める動きは大阪や京都など全国各地に広がっている。

 日本が海外に比べて遅れているのが自然エネルギーの活用である。かつて日本は太陽光発電で世界一だったが、05年にドイツに抜かれた。風力発電でも大きな差がついた。政府は新エネルギー等電気利用法で自然エネルギーの利用目標を定めているが、電力販売量に占める比率は14年度で1.63%と欧州の主要国に比べて一ケタ小さい。

 この分野では地方都市が意欲的である。長野県南部の飯田市は公共施設や民間保育所など約50カ所に太陽光発電設備を導入し、一般家庭への普及率も2%強と高い。地元の市民団体を中心に設立した「おひさま進歩エネルギー」が集めた2億円の資金と国の補助金を使って施設にパネルを設置し、発電した電気を市などが長期契約で購入している。

 太陽光発電はコストが高く採算に合わないといわれるが、商業施設に対する省エネ支援事業と組み合わせることで出資者への配当を可能にしている。同社は新たなファンドを設けてパネル設置数を飯田市を含む県南部全体で3倍に増やし、他の事業と合わせて年間3300トンの温暖化ガスを減らす目標を掲げている。

 バイオマス(生物資源)を生かした取り組みでは岡山県真庭市が注目される。木くずを固めて作る木質ペレットを販売するために地元経営者と森林組合で設立した真庭バイオエネルギーの07年12月期の売上高は1億円強と前の期の2.5倍に増えた。今期は4億円を目指す。

バイオマスにも注目

 ペレットの価格は1キロ当たり25円程度。年明けに1バレル100ドルをつけたように最近の原油価格高騰で発熱量当たり単価がA重油や灯油を大幅に下回り、販路は北海道から九州まで拡大、韓国にも輸出した。

 真庭市では森林に放置された残材をチップにして農家の温室や工場のボイラー用燃料にする実験も進む。こうした事例を紹介する見学ツアー参加者は年間で2000人を超えた。

 「木材副産物の付加価値を徹底的に高める」(同社の長田正之総務部長)ことは森林再生にも役立つ。京都議定書では森林によるCO2吸収を温暖化ガスの削減量に算入できる。ただし、対象になるのは保安林に指定された天然林のほか、間伐や下刈りで適切に管理する森だけだ。間伐する費用は現在は国や自治体の補助金頼りだが、継続して進めるためには木材資源を残らず活用するビジネスモデルをつくる必要がある。

 温暖化問題は行政、企業、住民が一体となって取り組まなければならない課題であり、地域こそが主役だ。「地球規模で考え、足元から行動を」。92年の地球サミットを機に世界に広がったこの言葉を、今こそ日本各地で実践すべきだ。

●日経:社説 日本企業は技術で世界のリード役を・低炭素社会への道(1/3)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080102AS1K2800B02012008.html

 地球温暖化の問題を解決する上で欠かせない武器が技術革新であり、それを生み出す企業の活躍だ。二酸化炭素(CO2)の排出権取引などの制度面の取り組みと並行して、低炭素社会を実現する新技術の開発を急ぐ必要がある。

 もともと企業部門ではCO2削減について「事業活動を制約する成長阻害要因」という見方が強かった。ところが、昨年あたりから世界の潮目は変わった。

グリーンイズグリーン

 一部の先進的な企業は方針転換し「温暖化防止技術をいち早く開発すれば、大きなビジネスチャンスが生まれる」と積極姿勢を打ち出すところが増えている。

 代表例が米ゼネラル・エレクトリック(GE)だ。同社の合言葉はグリーン・イズ・グリーン。緑を生む環境技術で先行すれば、もう一つのグリーン(ドル紙幣)も生み出せる。「環境とビジネスは両立する」というのが基本的な発想だ。

 GEは環境関連の研究開発費を5年で倍増し、燃費のいいジェットエンジンや風力発電の開発に拍車をかけている。昨年秋には日本の中小企業を集めたフォーラムを東京で開き、20人以上の研究者が来日した。「日本の中小企業は環境技術の宝の山。彼らと連携して、環境対応を加速したい」とGE幹部はいう。

 日本企業の取り組みも世界をまたにかけるGEほどの派手さはないが、劣後しているわけではない。石油ショック以来の省エネ技術の蓄積がモノをいい、世界をリードできる可能性もある。

 地球全体のCO2排出量のほぼ2割を占める運輸部門で、技術競争を主導するのは日本の自動車メーカーだ。昨年9月に2台のトヨタ車が大阪府庁前から東京・お台場まで走り抜けた。ガソリン車なら当たり前の話だが、このクルマは水素で走り、「排出物は水蒸気だけ」の燃料電池車。「水素補給なしで500キロメートル以上を完走し、実用化に一歩近づいた」とトヨタ自動車幹部はいう。

 日本の運輸部門のCO2は2001年度をピークに減少に転じている。先進国の多くが同部門の排出増加に頭を痛める中で、日本の実績については海外でも評価する声がある。既存エンジンの改善に加えて、究極のエコカー(環境対応車)とされる燃料電池車でも先行すれば、日本の優位はさらに強まるだろう。

 産業部門の最大の排出源である製鉄所対策でも、期待の星は水素だ。今の製鉄法は鉄鉱石に含まれる酸素(O)分を炭素(C)を使って取り除くので、大量のCO2が発生する。炭素の代わりに水素(H)を使えば、出てくるのはH2O、すなわち水だけだ。

 水素還元と呼ばれるこの製法について、新日本製鉄など鉄鋼各社は経済産業省の支援を得て、共同開発に乗り出す。実用化の目標は2030年と先は長いが、実現すれば炭素利用を前提にした近代製鉄の常識が150年ぶりにひっくり返る。

 日本の鉄鋼業界は1970年代にも水素還元に取り組んだが、この時は実用化に至ることなく終わった。今回はアルセロール・ミタルなど欧州勢も同様の研究を進めており、世界的な開発競争が激しくなる中での再挑戦となる。

 排出したCO2を「閉じ込める」技術もある。新潟県長岡市にある帝国石油の天然ガス田で一つの実験が進んでいる。今は使われていない枯渇したガス井に、地上からCO2を送り込み、もともと天然ガスの詰まっていた地層に封じ込める試みだ。

環境は成長の加速装置

 実験を手がける地球環境産業技術研究機構は「地中の炭酸ガスは安定度が高く、大気への漏れはほとんどない」という。地下の化石資源を燃やしてできたCO2を再び地下に戻せば、大気中の濃度には影響しない。地下封入を大掛かりに実施するには、適当な地層の発見など課題が残るが、海外での先行事例もあり、今後の展開に注目したい。

 ほかにも植物からつくるバイオ燃料などCO2削減の切り札になりそうな技術の芽はいくつもある。政府や自治体には、こうした新技術の普及を促す施策を望みたい。単に研究資金を援助して終わりではなく、環境にいい技術を広げるための規制の見直しやインセンティブ(動機づけ)設計が重要な仕事である。

 企業側も「CO2削減は成長の足かせ」という一部経済界に根強い見方を改め、「環境技術によって成長を加速する」という発想が求められる。何しろ温暖化の防止は向こう半世紀に及ぶ遠大な命題だ。技術力を磨いてそれに貢献することは、競争力の強化と「地球益」の増大を同時に実現する格好のテーマである。

●日経:社説2 燃費規制とクルマの未来(12/31)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20071230AS1K2300128122007.html


 自動車の燃費について、欧米で相次いで新たな規制が導入される見通しになった。温暖化の防止が地球規模の重要命題になる中で、自動車産業にとっても、燃費向上による二酸化炭素(CO2)の排出削減は待ったなしの課題である。

 自動車メーカーに大きな衝撃をもたらしたのは、欧州連合(EU)の欧州委員会が発表した新規制案だ。2012年までに1キロメートル走行当たりのCO2 排出量を平均130グラムに抑える数値目標(現行比で2割減)を設け、達成できない場合は高額の制裁金を科す厳しい内容である。

 130グラムといっても門外漢にはピンとこない数字だが、環境技術に優れるトヨタ自動車でも、この水準を上回るのはハイブリッド車の「プリウス」などごく一部の車種にとどまる。相当に厳しいハードルだ。

 この案については欧州の自動車業界だけでなく、ドイツ政府も反対の声を上げている。最終決定までにはなお流動的な要素も残るが、それでも欧州の燃費規制が今より格段に厳しくなるのは確実だろう。

 米国でも2020年までに燃費基準を約4割改善する法案が成立した。こちらは達成期限までに時間があることもあり、業界の受け止めは比較的冷静だ。米国では各州が独自の規制を設ける動きもあり、「全米レベルでの統一的な基準のほうが望ましい」(日本車メーカー首脳)と歓迎する声も出ている。

 過去100年間、自動車の中心的な技術はガソリンエンジンだった。だが既存の技術の改良には頭打ち感もある。その中で電気モーターと組み合わせたハイブリッド車や燃費性能の高いディーゼルエンジンが脚光を浴びている。「排出物は水だけ」という燃料電池車も、長期的には有力な選択肢だ。欧米の新規制導入を機に、研究開発の加速を期待したい。

 規制強化は自動車会社にとっても必ずしも悪いことではない。ホンダのグローバル展開のきっかけは、米排ガス規制のマスキー法を他に先駆けてクリアした新型エンジンの開発だった。反対に環境に鈍感なメーカーは、淘汰の波に巻き込まれるだろう。環境技術による優勝劣敗は、21世紀の自動車産業にとって避けて通れない道である。

●朝日:技術の底力で変身しよう―脱温暖化の決意
http://www.asahi.com/paper/editorial20080103.html

 地球の発熱を食い止める。その一歩を踏み出す年が幕を開けた。

 二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出削減を先進国に義務づける京都議定書の元年である。日本はこれからの5年間、排出量を1990年より6%減らさなければならない。

 石油などの化石燃料に頼る社会からどう脱するか。その試みは京都の足もとでも始まっている。

■エネルギーの地産地消

 森の中に高さ20メートルほどのタンクが二つ並ぶ。食材のくずなどを発酵させるタンクと、できたガスをためるタンクだ。メタンガスで動かすエンジンなどで電気をつくる。バイオガス発電所である。

 原料は食品工場などから運ばれる。残りかすは乾燥後、農家の肥料にする。まさに資源循環型の発電といえる。

 ここは京都府京丹後市にある京都エコエネルギー研究センターだ。新エネルギー・産業技術総合開発機構が5年前から進める実証研究の舞台となっている。

 ねらいは、地域発の電力を電力会社の送電網と共存させることだ。ここの発電はバイオガスに太陽光や風力も組み合わせているが、地域の需要をとても賄えず、電力会社の送電も受ける。「地域発」は、つくりすぎたりすると、送電網に悪影響が出ることがある。共存には需給のバランスが求められるのだ。

 使うだけを発電する技術がほしい。そこで、市内の電力消費の一部を通信回線で刻々追跡して、それに合うように発電量を調節する実験をしている。

 「農業地帯の特徴を生かした自然エネルギーの地産地消の道が開けそうだ」と市の環境担当者は期待する。

 地球の温暖化は今、核兵器と同じように人類の脅威となっている。地球全体の温室効果ガスの排出を今世紀半ばまでに少なくとも半分にしよう、ということで世界はまとまりつつある。京都議定書の約束期間後の13年以降も、さらに大幅な排出減が必要なことは間違いない。

■分散型の街をつくる

 政府は議定書の目標を達成するため、国民運動を呼びかけ、不足分は海外から排出枠を買うつもりだ。長い目で見れば、原子力発電をふやし、火力発電によるCO2排出を抑えようとしている。

 だが、国民一人ひとりの心がけだけでは間に合うまい。

 原発への頼りすぎも避けたい。大事故があれば取り返しがつかない、という危うさがつきまとう。そこまでの事故でなくても原発が止まってしまうのは、去年東京電力柏崎刈羽原発を襲った新潟県中越沖地震で改めて思い知らされた。

 今こそ、日本社会の土台となるエネルギーの枠組みを変えるときだ。大発電所だけを頼みの綱とする集中型のエネルギー供給を、少しずつでも分散型に切りかえていかなければならない。

 屋根の太陽光発電は、文字通りの分散型だ。バイオガスや風力も、この仲間に入る。水素と酸素で発電する燃料電池は、発電で出る熱を給湯に使えるから、分散して置いてこそ威力を発揮する。

 分散型を広めるのに、京丹後の知恵は役に立つだろう。

 研究機関が集まる茨城県つくば市では、分散型の技術で街をまるごとつくり変えようという挑戦が始まった。

 去年暮れ、大学や研究所、自治体の連携体が「市内のCO2排出を30年に半減」との目標を発表したのである。

 先行するのは、燃料電池をどう使いこなすかという研究だ。すでに筑波大や産業技術総合研究所、物質・材料研究機構の研究者らが会合を重ねている。

 この科学都市の強みは、街の設計が得意な建築や土木の専門家もいることだ。新技術にふさわしい街をつくれる。

 分散型は、電力網が未発達の途上国では開発と脱温暖化の一石二鳥になる。

 「未来型の都市システムを、つくばから世界に発信したい」。この連携体のまとめ役である井上勲筑波大学教授は言う。日本の変身は、国際社会への貢献にもなるのである。

■企業の競争を促そう

 産業界も変身すべきときだ。

 脱温暖化が国際社会の目標となったいま、CO2排出を減らせば得をする、という流れがいっそう強まるだろう。

 求められているのは、これに応える技術の開発競争をどう加速させるかだ。

 大工場などの排出を減らすには排出量取引という制度がある。排出を目標以下に抑えれば、その分を枠として売れる。

 暮らしの中に省エネルギー商品を広めるには、トップランナー制度がある。

 この制度では、政府がメーカーに対して製品ごとに省エネの基準を期限を区切って課し、最も優れていた製品の性能を、次の期限には全メーカーに義務づける。達成できないとペナルティーもある。基準を大きく上回れば税金を減らしてもらえる品目もある。

 日本の自動車業界は、ガソリン乗用車の燃費を10年間で2割以上改善した。このこともあり、国内のCO2排出量で運輸部門はこの10年間、ほぼ横ばいだ。

 この制度は、エアコンや冷蔵庫にも適用され、効果を上げている。

 ノーベル平和賞を受けたアル・ゴア前米副大統領は映画「不都合な真実」で、日本の自動車メーカーを指して「世界で成功しているのは低燃費車をつくっている会社だ」と強調した。

 企業の背中を押す仕組みをうまく組み合わせて、CO2排出の少ない工場や製品をふやしていきたい。

 地域と産業を脱温暖化型に衣替えする。そのことに、日本が備えている「技術の底力」をふり向ける年である。

注目の社説その3 へつづく


posted by おぐおぐ at 19:27 | TrackBack(1) | 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【温暖化いろいろ】注目の社説その4
Excerpt: [画像はレイチェル・カーソン著『沈黙の春』。] トラバ先はSGWさんのブログ。 トヨタが政界でどのくらいの発言力を持っているのかに興味があって色々検索してみた。 『トヨタ 排ガス 規制 法案 バ..
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