2007年12月19日

光・熱ふく射のエントロピー理論について

 先日から小林ゼミのオンライン聴講生として、エコロジー/エントロピー経済ゼミに参加させていただいています。
 2回ほど話の流れを聞くのもうつろに、まあ槌田エントロピー論の意味について考えてました。

 恥ずかしながらちゃんとこれまで考えたことがなかったのですが、温室効果ガスのふく射についての理解がまともに出来ていないあの槌田氏が果たしてどこまで説得力のある物質循環のモデルを構築できているだろうか、と考えると疑問が沸々とわいて来たわけです。

 槌田氏は地球の物質循環の中で、特に水循環の果たす役割を高く評価しています。地表で太陽光により水/植物が熱を受けて水蒸気を放出し、その水蒸気がはるか何千メートルもの上空まで(はるばる)移動して、そこで(断熱膨張もしていて温度もマイナス何十度まで下がっているというのに)宇宙空間へ熱を放出して自らは再凝縮して地上に雨や雪として戻ってくる、これを循環だ、と言っているわけです。
槌田エントロピー論のこの説明におかしな表現がありましたらツッコミをよろしく。詳細に読むともっと変な主張ですね、末尾で訂正版を紹介しておきます) 最後に宇宙空間へ熱を排出するメカニズムとしては、赤外ふく射(235W/m2)しかありません(熱伝導も対流も真空中では機能しません)。
気体の形の水蒸気はそもそもふく射率はかなり低いはずで、液体や固体になっていればふく射率は高い(雲からの30W/m2分)ですがその前の上昇時の断熱膨張による冷却がなければ液体や固体にはならないともいえるでしょう。そして液体や固体になってからはすぐに地上に降りてくるわけですから滞在時間も短いわけです。
 さらに赤外ふく射はそもそも絶対温度Tの4乗に比例しますから、すでにマイナスうん十度の温度にまで下がっている対流圏最上部では赤外ふく射で出されるエネルギー(165W/m2分)は相対的に少ないです。
 つまり地球のエネルギー収支の支出側を考えると、地/水表面からの赤外ふく射(390W/m2)こそが(地/水表面からの)エネルギー放出の大半を占め(出入りを合わせた正味では赤外ふく射の寄与は小さくなり、蒸発の寄与が相対的に増えますが)、そのかなりの一部(40W/m2)は透過していきますから、(槌田エントロピー論で強調している)高層の水蒸気は熱放出に無視できるレベルの相対的に低い寄与しかもたらさないと考えられます。(追記:雲の頭頂部の固体や液体の水が宇宙空間へのふく射には寄与するため、水蒸気の物質移動は間接的な役割があるとはいえますが。)
 温室効果そのものの寄与は、対流圏の濃密な水蒸気やCO2他の温室効果ガスによって複数回の吸収と再ふく射を繰り返すことで、温度条件の異なるガスの間での熱の平準化を行うわけですから、まさにこれは内部でのエントロピー増大プロセスといえるでしょう。
 ということで、水蒸気の物質移動による熱の輸送の寄与(78W/m2)そのものも、ふく射の寄与に比べてかなり少ないことが想定されます。

とはいっても、熱ふく射のエントロピー流についての理論なんて聞いたことがないし・・・。

と思っていたのですが、さすがはインターネット。検索していると、こんな修士論文のサイトがあるのを見つけました。

Kuni's page:「光のエントロピーに関する考察」
(この中でWord文書の一括ダウンロードをお選びください)

 うーむ、目からウロコの解説となっています。あたしゃ元々理系なのですが、さすがに最後に大学の教科書に目を通したのは25年も前になりますので、式の建て方が正しいというような安請け合いはできないのですが、議論の仕方が正統的なので、まあ正しい定式化をしているのだと思います。

 この考え方を使うことで、温室効果が大きくなることによるエントロピーの増加を評価することができるような気がします。

(この項つづくかな?)

(08/1/1付記
 masudakoさんからコメントで熱収支の考え方について紹介をいただきましたが、とりあえずIPCCの第4次報告の中から熱収支の図をここにコピペしておきます。上の文章の中に赤文字で数字も加えておきます。)
0dim.png

12/24付記
 ゼミで使っているテキストの紹介をしておきます。
循環の経済学―持続可能な社会の条件(著)室田 武,槌田 敦,多辺田 政弘
循環の経済学―持続可能な社会の条件
出版社/メーカー:学陽書房
価格:¥ 2,520
ISBN/ASIN:4313814027
Rating:ZERO

 槌田氏の論をこの本のp257より引用しておきます。
−−−槌田
6.物質循環による持続可能な社会
 2太陽光の吸収と宇宙への放熱でまわる自然の物質循環
  4つの自然の循環
・・・
 自然の循環の第一は、大気の循環である。大気は地表で太陽光による平均15℃の常温熱を吸収し、軽くなって上昇気流(低気圧)となる。上昇気流は高度が上がるにつれて気圧が下がるので断熱膨張し、温度が下がる。約5000mの上空でマイナス23℃になり、このあたりで宇宙に低温熱を放出する。その結果、大気はさらに冷たくなって重くなり、下降気流(高気圧)となって地表に降下してくる。下降気流は高度が下がるにつれて気圧が上がるので断熱圧縮で温度も上がり、常温に戻る。この循環により、地球は余分の熱エントロピーを宇宙に処分している。
・・・
−−−
 さてさて、ここの第一の循環では、どうやって「宇宙に低温熱を放出する」ことができるんでしょうか??
 空気自体が赤外線を宇宙に放出していることで冷却されると主張しているんでしょうか?第二の循環として後で記述している水蒸気の方が赤外線を放出しているというのならまだ理屈が通るんですが、第二の水の循環は、第一の大気の方に熱を伝えて雨となって落ちてくる、としていますのでそういう読み方はできません。水蒸気に温室効果があるという特性(赤外線を吸収も再ふく射もすること)を槌田氏の物質循環論では取り扱っていないのです。普通の空気に赤外線のふく射特性があるから宇宙空間に熱を捨てられるのだ、という議論です。(単色の吸収率=単色のふく射率の関係がありますから、赤外線のふく射特性があるのなら普通の空気がまた高い吸収率も持つことになり、すなわち窒素や酸素が温室効果ガスとなりますが、これは事実に反します。)

−−−槌田
 自然の循環の第二は、大気の循環を補完する水の循環である。高気圧で下降してきた大気は乾いているので、水は常温熱を得て大気に蒸発する。この水蒸気は上昇気流に乗って上昇するが、大気温度の低下によって凝結し雨や雪になり、地表に降下して水循環となる。大気循環はこの水蒸気が雨や雪になってとき生ずる熱も宇宙に捨てている。地表の熱を吸収する量については、水循環のほうが大気循環より4倍も大きく、乾燥地では熱エントロピーが処分されにくいことが分かる。
−−−

 ここの「水は常温熱を得て」とは「海水や陸地の表面が太陽光を吸収して温められてそこに含まれている水が蒸発する」という意味でしょう。

「大気温度の低下によって凝結し雨や雪になり、」というのはおかしな記述でして、水蒸気も乾き蒸気の状態から断熱膨張のせいで一部凝結して水蒸気の気液混合状態に変わるわけです。
その時に大気自体も同時に断熱膨張によって相対的に低温にまで下がるので、水蒸気と大気の間で熱移動が起こるように描いてもよいわけですが。
 ということで、第二の循環についての説明の中でも、水蒸気及び雲からの赤外ふく射の意味を書いていません。
槌田氏は、上空から宇宙空間へふく射で熱を逃がすと書いているわけですので、一体なんの種類のガスがその役割を果たしているのか、まともな説明をできていません。

 …といった問題をあちこち積み上げておけば、細かい重箱の隅をつついて、とか懐疑派の人は批判するんでしょうねえ。

「「温室効果は熱力学第二法則に反するトンデモ論」説」
「CO2の温室効果は飽和する?」に続く。


posted by おぐおぐ at 01:10 | TrackBack(0) | 温室効果の理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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