2007年12月13日

注目の社説その2

新聞各紙社説
●社説:温暖化バリ会議 全員参加にプラスアルファを 毎日
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/2007/12/20071204ddm005070035000c.html
 温暖化対策は待ったなしの状況にある。来年には京都議定書の第1約束期間が始まり、12年には期限が切れる。それ以降、世界はどのような枠組みで温室効果ガスを削減していくのか。

 差し迫った課題を抱え、気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)がインドネシアのバリで開幕した。京都議定書以降(ポスト京都)(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください)の枠組みの検討が本格的に始まる重要な会議である。実りのある成果に期待したい。

 97年に京都で開かれたCOP3で京都議定書が採択されて、ちょうど10年になる。議定書は、それまで温室効果ガスを大量に排出してきた先進国に削減を義務付けた。1990年に比べて世界で5%の削減が目標で、日本は6%削減の義務を負っている。

 ところが、世界一の排出国である米国は議定書から離脱してしまった。中国やインドなどは、大量排出国でありながら、「途上国」との位置付けで削減義務を負っていない。これでは、地球全体での削減は不可能だ。ポスト京都(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください)では、これらの国々も応分の責任を果たす枠組みが欠かせない。

 今回の会議の重要課題のひとつは、そのための交渉のプロセスだ。京都議定書の約束期間の期限を考えると、交渉を09年に終わらせることは不可欠だ。その合意は、ほぼできていると思われるが、問題は交渉の進め方だ。

 日本の提案は、米国や中国なども参加している「気候変動枠組み条約」の下に新たな作業部会を設置し、次期枠組みを検討するというものだ。

 確かに、全員が参加する交渉の場を設定することは不可欠だ。米国や中国などが参加する「器」作りでは確実な合意にこぎつけなくてはならない。

 そこで留意すべきなのは、たとえ器ができても中身次第では誰も削減の義務を負わないという事態になりかねないことだ。ここは一歩踏み込んだ「プラスアルファ」を念頭に置いた合意が必要ではないか。

 日本は、今年の独ハイリゲンダム・サミットで「クールアース50(美しい星50)」構想を公表し、「2050年までに温室効果ガスを現状から半減させる」との長期目標を掲げた。サミットの合意文書にも盛り込まれた。

 削減を実現する方策のひとつとして、国別の数値目標の設定をめぐる議論がある。欧州連合(EU)は、先進国により厳しい削減義務を課す数値目標を掲げている。一方、中国など新興国には削減の義務づけを警戒する動きがある。

 日本は態度をはっきりさせていないが、各国が公平な負担を分担する道筋を探る必要がある。オーストラリアの新政権や、米国の次期政権の動きなど、世界の動向の変化にも、敏感に対応しなくてはならない。

 来年の北海道洞爺湖サミットの議長国である日本は、ポスト京都に向け全員参加の「器」を作るだけでなく、日本自身の態度と戦略をはっきりさせなければ、リーダーシップは握れない。

毎日新聞 2007年12月4日 東京朝刊

−−−●脱温暖化―科学者の発信を政治家へ 朝日
http://www.asahi.com/paper/editorial20071124.html#syasetu1

 科学者が、国際政治にこれほど強いメッセージを送ったことがあっただろうか。その発信元は「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」である。

 温暖化をめぐって、今年前半に三つの部会が報告書を出したが、それらを踏まえた統合報告書が先週出された。

 今後20〜30年にきちんと手を打てるかどうかで脱温暖化の行方が決まるとして、強力な対策を求めた。

 「世界の科学者たちが声を一つに合わせた」。報告書に対して、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が贈った言葉だ。

 科学の世界は百家争鳴こそ望ましい。「声を一つ」そのものは、ほめ言葉ではない。むしろ、長い年月をかけた議論で多様な声を一つの方向にまとめ上げたことに意味がある。今年のノーベル平和賞受賞も、それが認められたからだ。

 IPCCは88年、世界気象機関など国連機関の手で生まれた。温暖化が問題になり始めたころだ。

 90年からほぼ5年ごとに報告書をまとめてきた。いま、中心となる執筆陣は、世界の科学者ら約500人。日本からも30人が加わっている。この報告書が国連の気候変動枠組み条約や京都議定書の支えとなっている。

 執筆者は各国政府の推薦をもとに選ばれるが、出身国の方針に縛られない。

 報告書の内容を一色に染め上げることもない。たとえば、気温の予測には幅がある。不確かなことは不確かさの度合いを示すかたちで書く工夫もされている。

 報告概要のまとめ方などに政治が反映することはあるが、研究者社会の習わしを重んじた専門家集団といえる。

 意見の幅があるなかで、これまでに合意できたのが「温暖化の主犯は、人間の活動でふえた二酸化炭素などの温室効果ガスである可能性がかなり高い」という見立てだ。

 しかも、温室効果ガスの排出は70年以降も7割ほど増えている。もはや座視すべきではない。これが今回の提言だ。

 IPCCの「人間主犯説」に対してはなお疑問を投げかける科学者もいる。しかし、その立場をとるにしても、対策は不要ということにはならない。

 「予防原則」という言葉がある。因果関係が完全に立証されていなくても、引き起こされる結果が取り返しのつかないほど重大になる恐れがあれば手を打つという考え方だ。温暖化はまさに、この原則を適用すべき問題といえよう。

 京都議定書第1期後の13年以降、どんな脱温暖化の枠組みをつくるかが国際社会の課題となっている。これを話し合う気候変動枠組み条約締約国会議が来月、インドネシア・バリ島で開かれる。

 潘事務総長は世界の政治指導者に、09年までに結論を出すことで合意するよう促している。IPCCの「今後20〜30年に手を打て」に沿った督促といえる。

 次は政治家の出番だ。予防原則に立った政策をつくるときがやってきた。

●社説2 「温暖化」が問うアジア連携(11/22) 日経
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20071121AS1K2100321112007.html
 シンガポールで開いた東アジア首脳会議(サミット)は、地球温暖化対策の柱となるはずだった省エネルギーの数値目標の導入を見送った。中国やインドなど温暖化ガスの排出量が多い国々が参加する同会議で、具体的な合意ができなかったのは、極めて残念な結果である。

 数値目標にはインドが強硬に反対し、議長国シンガポールの説得に最後まで応じなかったという。気候変動に関する特別宣言を採択したものの、森林面積を2020年までに域内で1500万ヘクタール増加させる努力目標を盛り込むのがやっとだった。

 9月のシドニーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)では、省エネと森林面積の両方で数値目標を掲げることができた。これに比べて今回のサミットの結果は大幅な後退と言わざるをえない。

 東アジアサミットの創設を主導したのは日本である。東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と日中韓3カ国による「ASEAN+3」の枠組みを広げ、印、豪州、ニュージーランドを加えた16カ国で地域連携を深めるのが狙いだった。

 民主主義や市場原理などの価値観を共有する国々を仲間に入れる外交方針は、基本的に正しい。問題は参加国の多さによる合意形成の難しさだ。政治体制や経済事情が異なる16カ国が集まり、地球規模の課題で連携し合うのは容易ではない。

 ミャンマーの民主化問題でもASEAN内部の意見対立が目立った。ASEANの結束力は決して強くはない。そのASEANの内情と主催者としてのメンツに配慮しつつ、側面から支援するのは日本の責任でもあるはずだ。表舞台だけでなく舞台裏でも調整力を発揮する多国間外交の熟練度が、日本に問われる。

 アジアの舞台で外交デビューした福田康夫首相が温家宝中国首相と就任後初めて会談するとともに、日中韓首脳会談で「国際会議と切り離した3カ国独自の首脳会談開催」で一致したのは大きな成果だ。これからは日中韓が機動的に会議を開ける。

 ASEAN任せではなく、日中韓が協調して東アジアの地域連携を主導すべき局面は少なくない。ぎこちなさが残っていた3カ国が、信頼関係を深めていくことを期待する。

●【主張】アジア連携 幻想抱かず地道な努力を 産経
http://sankei.jp.msn.com/world/asia/071123/asi0711230333000-n1.htm

 福田康夫首相のアジア外交が、東南アジア諸国連合(ASEAN)を軸とした一連の会議が開かれたシンガポールでスタートした。まずは無難、順調なデビューだった。しかし、地球環境問題にせよ経済問題にせよ、総論から各論に移るにつれ、難問山積となる。

 協調や友好、東アジア共同体といった言葉に幻想を抱くことなく、また抱かせることもなく、地道に問題解決に努力していくことが重要だ。

 経済分野では、日本とASEANが経済連携協定(EPA)を結ぶことで正式合意した。来年中の署名、発効を目指す。日本が地域連合体とEPAを結ぶのは初めてで、日本と東南アジア諸国間、ASEAN域内の貿易の一層の拡大、円滑化が期待される。

 ASEANとの自由貿易協定(FTA)では、中国が一昨年7月、韓国が今年6月に発効させ、輸入関税など貿易条件面で優位に立っていたが、日本は1〜3年遅れでやっと中国、韓国に追いつくことになった。

 しかし、今回も国内政治的に敏感な日本のコメをはじめとする農産品は対象から外され、農業国の多いASEAN側に不満を残した。農業市場開放を可能にする国内農業の競争力強化を通じた協定の改善が課題だ。

 経済協定は双方、とりわけ相手側が利益を実感してこそ意味があり、わが国との信頼関係も深まる。政治、外交的にも重要な意味を持つ。

 焦点となった地球温暖化問題では、ASEAN+6カ国首脳による「第3回東アジアサミット」で、「気候変動に関するシンガポール宣言」が採択され、一定の前進をみた。京都議定書後の枠組み作りに各国が参加する意思を示した意味は小さくない。

 だが、インドの反対でエネルギー効率改善の数値目標は盛り込めず、9月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の声明より後退した。具体論での合意の難しさを見せつけた。

 安倍晋三前首相は、今年の主要国首脳会議(サミット)で日本の構想「美しい星50」を受け入れさせた。来年の洞爺湖サミットへ向けての交渉はさらに困難を増す。福田首相には安倍前首相以上の外交力、指導力が求められる。協調は大事だが、「主張しない外交」となってはならない。

●社説:東アジアサミット 日本は環境連携を引っ張れ 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20071122ddm005070069000c.html
 シンガポールで開かれていた東アジアサミットは、参加16カ国が地球温暖化防止などの環境問題に共通の課題として取り組むことで合意し、シンガポール宣言を発表して終了した。

 省エネの数値目標の導入は先送りされたものの、京都議定書以降の国際枠組み作りに積極的に参加することは表明した。温室効果ガス排出で世界2位の中国と5位のインドが入った場で、ポスト京都議定書に向け前向きな取り組みが盛り込まれた意義は大きい。

 日本は来年の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)で、地球温暖化問題を最重要テーマと位置付けている。9月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)では、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国のほか、中国、韓国や米国、オーストラリア、ロシア、チリなども含めて「30年までにエネルギー効率を25%改善」で合意した。東アジアサミットに先立って開かれたASEAN首脳会議では、環境宣言が採択された。

 経済成長に軸足を置いている東アジア諸国も持続的な発展のためには、環境問題への取り組みは不可欠と判断した。森林面積増加目標の設定はその表れだ。

 そこで、日本はどのような役割を果たしていくべきなのか。

 日本とアジア地域の経済関係はシンガポールやタイ、マレーシアなどとの経済連携協定(EPA)の発効、ASEANとのEPA締結の正式合意など緊密化している。環境協力では今年度で供与が終わる中国向けの円借款はここ数年、環境案件に限定されている。

 ただ、日本が東アジアで温暖化をはじめとする環境対策で指導力を発揮している状況にはない。エネルギー効率化やクリーンエネルギーに関する技術協力の枠組みである日本、米国、豪州、中国、韓国、インドで構成する「アジア太平洋パートナーシップ」も米国主導で始められた。

 福田康夫首相は東アジアサミットで、大気汚染や水質汚染対策として今後5年間にアジア向けに20億ドルの資金協力と500人以上の研修実施を表明した。二酸化炭素の吸収源となる植林事業や森林保全にも世界銀行の基金に最大1000万ドルの拠出を約束した。日ASEAN環境対話も提案した。

 温暖化対策は着手が早ければ早いほど、コストは安く済む。また、温暖化による異常気象や環境破壊も未然に防止できる。

 東アジア諸国ではバイオ燃料ブームで油ヤシ栽培のため熱帯林伐採が進んでいる。中国などで砂漠化も進行している。事態が悪化する前に実効性のある対策を講じなければならない。ポスト京都議定書の枠組みはその有力な手立てとなる。

 日本は主要国サミットメンバーであると同時に、東アジアの一員でもある。当面の温室効果ガス削減目標達成のみならず、東アジア地域全体の削減にも寄与する気概が必要だ。洞爺湖サミットを成功させるためにも、成長地域である東アジアでの環境連携を強めることは日本の役目だ。

毎日新聞 2007年11月22日 東京朝刊

●【主張】IPCC報告 温暖化防止へ時間はない 産経
http://sankei.jp.msn.com/life/environment/071121/env0711210332000-n1.htm
 熱帯低気圧の大型サイクロンがバングラデシュの沿岸部を襲い、多数の死者を出し、住居を破壊した。すさまじい破壊力である。

 同じころ、スペインのバレンシアでは「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の総会が開かれ、最新の科学知見に基づく「統合報告書」をまとめた。

 気象学の研究では、温暖化の進行によって、熱帯低気圧が大型化する傾向が知られている。バングラデシュの被害も気候変動のもたらした結果と考えるのが妥当であろう。

 IPCCの統合報告書は、今年2月以降、6年ぶりに開かれた3つの作業部会の成果を横断的に取りまとめたものである。

 第4次となった今年の報告の最大の成果は、地球温暖化の原因を人類の産業活動によるものと明確に認定したことにあるだろう。地球の平均気温が2〜3度上昇するだけで、世界的に悪影響が広がるということも予測した。

 IPCCは日本を含め、世界の科学者や専門家が集まった国連の組織である。この科学者集団の発したメッセージが世界の政治家の意識を変え始めた。今年のノーベル平和賞も、地球環境の回復に向けて、科学が政治と経済を動かした功績に贈られる。

 来年からは京都議定書に基づいて、5年間にわたる温室効果ガスの排出削減が始まるが、世界の動きはすでに2013年以降の「ポスト京都」(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください)の枠組み作りに向かっている。

 12月には、インドネシアのバリ島で国連の「気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)」が開催される。ここでの主題は、米国や中国など、京都議定書の削減義務の外にいる大量排出国に対する参加の説得である。

 これらの国々が排出削減を行わない限り、地球温暖化は止まらない。

 洪水や干魃(かんばつ)、砂漠化、食糧不足といった温暖化による気候変動の犠牲になるのは、バングラデシュのような貧しい途上国が先である。

 IPCCの報告は、世界がこのまま手をこまねいていれば、温暖化はあと20〜30年で、後戻りのきかない状態にまで進む可能性を示唆している。日本も今夏、74年ぶりに最高気温を更新した。危機意識を持って、統合報告書に接する姿勢が必要だ。

注目の社説 へつづく


posted by おぐおぐ at 16:06 | TrackBack(3) | 気候カタストロフィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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1日に日中経済対話、環境など協議
Excerpt:  日経ECOLOMY(-環境+経済+私-)ニュースコーナー12月1日付記事である。タイトルは、「1日に日中経済対話、環境など協議」である。タイトルにリンクを張っておくので、ニュースコーナーで報じられて..
Weblog: ウェザーコック風見鶏(VOICE FROM KOBE)
Tracked: 2007-12-01 10:25

日本、中国に環境協力・日中経済対話
Excerpt:  日経ECOLOMY(-環境+経済+私-)ニュースコーナー12月1日付記事で、閣僚レベルの日中経済対話が報じられている。タイトルは、「日本、中国に環境協力・日中経済対話」である。タイトルにリンクを張っ..
Weblog: ウェザーコック風見鶏(VOICE FROM KOBE)
Tracked: 2007-12-04 08:18

北海道の環境宣言
Excerpt: 北海道が国の二酸化炭素削減目標を上回る目標を設定した環境宣言を策定した。
Weblog: 札幌生活
Tracked: 2008-04-22 00:19
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