2007年11月23日

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新聞各紙社説


●社説2 「ポスト京都」に覚悟を決めよ(11/21) 日経
(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20071120AS1K2000120112007.html
 いま手をこまぬくと、そのツケは将来とてつもなく膨らむ。科学的見地から地球温暖化を議論してきた国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が第 4次統合報告書で言いたかったのは、この点に尽きるだろう。報告書は「今後20―30年の排出削減努力と投資がカギを握る」とし、京都議定書に続くいわゆる「ポスト京都」(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください)の枠組みが決定的に重要と説いている。温暖化防止に各国は覚悟を決めなければならない。

 第4次報告書は12月にインドネシア・バリ島での会議を皮切りに始まる次期枠組み交渉に向けたメッセージである。各国の政策決定者に向けて、温暖化の原因が人間活動とほぼ断定し、その影響を予測して後戻りできない状況になる前の対策を求めている。南極などの現状の視察後に総会に出席した国連の潘基文(バン・キムン)事務総長も「世界が足並みをそろえ対策をとる必要がある。時間を浪費してはならない」と語り、温暖化防止に消極的な米国や中国などにクギを刺した。

 地球の将来を考えれば温暖化防止をいつまでも疎んじてはいられない。消極派の代表とみられていた石油輸出国機構(OPEC)でさえも姿勢を転じ、総会での「リヤド宣言」で世界と温暖化対策で協調する考えを明確にした。温暖化が進めば凶暴な自然災害が増え、それに脆弱(ぜいじゃく)な発展途上国がもろに被害を受けるだろう。自国の利益を損なうという理由で対策を逃れることはどの国もできまい。

 翻って日本はどうか。京都議定書の目標である1990年比6%の排出削減にもメドがついておらず、バリ島の会議に向けて戦略も固まっていない。目標達成や戦略を詰める場は産業構造審議会と中央環境審議会の合同部会だが、議論は進んでいない。合同だけに委員の数が膨れあがり、意見集約はままならない。堂々巡りが続くならそれぞれの審議会が別々に結論を出し、政治判断を仰ぐ方がはるかに建設的ではないか。

 福田政権は前政権の提案「2050年までに世界の排出半減」の考え方を踏襲するという。それなら日本も覚悟を固め、この提案に恥じない説得力ある削減目標を早く示すべきである。時間の浪費は許されない。

−−−●社説:温暖化報告書 科学的データを政策に生かせ 毎日
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/2007/11/20071120ddm005070030000c.html
 地球の温暖化は疑う余地がない。しかも、最近の気温上昇は人間の活動が主たる原因で起きている。今後、温室効果ガスの濃度が安定しても、もはや避けられない影響もある。

 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」がまとめた第4次評価報告書の統合報告書は、人類が直面している温暖化の脅威を改めて指摘した。

 IPCCの作業部会は、今年に入って、観測データの評価、影響の評価、対応策の報告書を順次公表してきた。統合報告書はそれらをまとめた最終版であり、世界の科学者が3年をかけて作成した評価である。各国の政策決定に携わる人々は、報告の重要性を真摯(しんし)に受け止め、将来を見越した政策を早急に立てることが欠かせない。

 12月にはインドネシアのバリで国連の「気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)」が開かれる。来年から始まる京都議定書の第1約束期間は12年に期限が切れる。COP13は京都以降(ポスト京都)(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください)の枠組み作りに向けた国際交渉の第一歩として注目される会合だ。IPCCの第4次統合報告書は、そのための土台ともなる。

 その時に特に注目したいのは、今後20〜30年の間にどれほどの努力と投資がなされるかが、地球の将来の鍵を握る、というIPCCの指摘だ。対策をとることで、多くの影響が回避、遅延、低減できるが、排出の削減が遅れると悪影響のリスクが高まる。

 ここは全世界が覚悟を決めて、抜本策に向けてかじを切る必要がある。そのためのコストも、対策の開始が早ければ早いほど少なくて済む。

 IPCCの推計によると、気温上昇を2・0〜2・8度に抑えるために、最も厳しい排出削減策をとった場合でも、世界の国内総生産(GDP)の成長率の低下は年平均0・12%にとどまる。この程度の経済的な損失は、対策が遅れた場合の影響やコストの増減を考えれば、許容範囲だろう。

 温暖化の影響を特に受けやすい地域があることも忘れてはならない。北極やサハラ砂漠以南のアフリカ、小さな島々、大規模なデルタ地帯は、特に影響を受ける可能性が高いという。地域だけでなく、貧困など社会的弱者への影響も見逃せない。自分たちの住む地域に影響が及んでいないからといって、手をこまねいているわけにはいかない。

 削減策さえとれば万全というわけでもない。干ばつや洪水などの増加はもはや避けられないとみられ、被害を最小限に抑える対策もあわせて必要となる。

 温暖化は、資源の奪い合いや貧困の広がりなどを招き、国際紛争につながる恐れが大きい。今年のノーベル平和賞がIPCCと米前副大統領のアル・ゴア氏に授与されるのも、温暖化対策が平和維持に欠かせないからだ。

 IPCCの報告書は、専門家だけでなく、一般の人々へのメッセージでもあるはずだ。報告書のわかりやすい解説書作りも求められている。

毎日新聞 2007年11月20日 東京朝刊


●OPEC 温暖化対策に賛成した首脳会議(11月20日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071119ig91.htm
“世界の悪役”と後ろ指を指されたくなかったのだろう。

 石油輸出国機構(OPEC)の首脳会議が、地球温暖化への懸念の「共有」と、長期的な原油安定供給の約束などを盛り込んだ「リヤド宣言」を発表した。

 OPECは、原油生産枠など重要な事項は、石油相が集まって年に数回開く総会で決めている。中長期的な課題を協議する場とされる首脳会議は、1960年の創設以来3回目の開催だった。

 OPECは温暖化対策に最も消極的なグループだ。石油消費量を減らされては国の屋台骨に響く、との経済的思惑を前面に出し、二酸化炭素(CO2)の排出削減に抵抗してきた。

 しかし、宣言は「地球環境問題に対する国際社会の挑戦への支持」や「植林事業への協力」などを打ち出し、温暖化防止に賛成する姿勢を鮮明にした。

 議長国のサウジアラビアは、研究資金として3億ドルの拠出を表明した。火力発電所などの排ガスからCO2を分離し、地中に封じ込める技術などの研究開発に充てたい、という。

 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が「温暖化は主に人為的な要因によるもの」と言明し、CO2削減は全人類の課題になった。OPECとしても、これ以上、消極的な態度を続けるのは得策ではないと判断したのだろう。

 来年は京都議定書が温室効果ガスの削減実行を求めた「第一約束期間」に突入する。OPECの方針転換が、規制に基づく削減に反対する米国や中国の立場を一段と苦しくする可能性もある。

 原油の先物価格が1バレル=100ドルをうかがう今、消費国には首脳会議で増産に踏み切るのでは、との期待もあった。

 最近の原油高は、石油先物市場への投機資金の流入が最大の要因だ。世界の石油需給は、均衡が崩れたわけではない。それでも、OPECが増産すれば、投機の勢いを弱める効果はある。

 宣言は、「消費国の持続的な経済成長には石油の安定供給が不可欠」と認識していることを強調した。しかし、足元の原油高については、「産油国と消費国の双方に有害」と指摘しただけで、増産は決定しなかった。12月の総会では、増産を決めてほしい。

 中国、インドなどの経済成長で、世界の石油需要は数年後には確実に増える。しかし、その将来を見越した新規油田開発は順調とは言えない。

 産油国は原油高で十分な開発資金を手にしたが、増産による値下がりを恐れ、消極姿勢を貫いたままだ。宣言が直接この問題に触れなかったのが残念だ。
(2007年11月20日1時50分 読売新聞)


●IPCC報告 正念場を迎えた地球温暖化対策(11月18日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071117ig91.htm
 地球の温暖化が、ますます深刻化しているようだ。

 世界の科学者で作る「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が、この問題を総合的に評価した第4次統合報告書をまとめ、公表した。

 2001年の前回報告書より、事態が確実に悪化したことを強調している。

 特に、台風や干ばつなど異常気象の頻発、サンゴ礁の死滅など生態系への壊滅的な影響、気候の激変といった5項目について警鐘を鳴らした。

 環境の悪化をどこかで食い止めねばならない。温暖化対策は正念場にある。

 統合報告書は、同時に、温暖化した地球で生き延びるための「適応」策の必要性を打ち出している。

 温暖化が、すでに現実となっているという認識からだ。地球平均気温の上昇が加速している影響で、農作物が不作になったり、森林面積も縮小したりする。飲料水がなくなり、集落を移転せざるを得なくなる例もある。猛暑、豪雪などでは人命も失われる。

 二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を減らしても、この状況は、少なくとも数十年間は続く。そうした前提に立って統合報告書は、いくつもの具体的な方策を提言した。

 水利用の効率化や湿地の保護拡大、農作物の品種改良、猛暑などに対応する緊急医療サービス向上などだ。

 ただ、あくまで基本は、温室効果ガスの削減にある。それが、多くの国で進んでいないことが問題だ。

 欧州、日本などが温室効果ガスの削減目標を約束した京都議定書では、目標達成に苦労している国も多い。カナダのように達成を放棄した国もある。

 それ以上に、京都議定書では削減義務を負っていない中国、インドなどの新興国が、経済発展に伴って、排出量を爆発的に増やしている。

 国際エネルギー機関(IEA)によれば、中国のCO2排出量は今年、米国を抜いて世界一になる見通しという。こうした新興国も含めた削減策が必須だ。

 IPCCには、今年のノーベル平和賞が贈られることが決まっている。1988年に設立されて以来の活動が評価された。国際的な温暖化対策への取り組みを加速する狙いもある。

 インドネシア・バリ島では来月、京都議定書に続く約束を検討する気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)が開かれる。日本が議長国となる来夏の北海道洞爺湖サミットでも、温暖化問題は主要議題だ。日本としての戦略も、早急にまとめねばならない。
(2007年11月18日1時31分 読売新聞)

●11/8日経新聞社説1 排出権取引の導入を早く決断すべきだ(11/8)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20071107AS1K0600507112007.html
 欧州連合(EU)と米国・カナダの11州が、温暖化ガスの排出権取引の制度共通化に向けて協定を結んだ。米ブッシュ政権は排出削減の義務付けや排出権取引に消極的だが、北米とEUは実質的に将来の排出権取引の市場一体化の方向へ動き出したといえる。協定にはニュージーランドやノルウェーも加わった。EUが創設した排出権市場が域外の広い地域に広がろうとしている。排出権取引で出遅れた日本は、国際的に孤立する結果になりかねない。

 EUが米加の有力州と結んだ協定は、12月から本格化する京都議定書後の枠組み交渉への強烈な一手である。排出権取引は排出削減の義務付けがあってこそ成り立つ制度だ。次期枠組みでも削減義務付けを主張するEUは、削減義務付けで一歩も譲らないとのメッセージを、米国政府に発した形である。

 ブッシュ政権が方針を変えないなら次期政権までポスト京都の枠組みの合意を持ち越すという、EUのけん制の意味もあるだろう。

 米議会には大幅な排出削減目標と排出権取引の導入を盛り込んだ法案がいくつも提出されており、上院の環境・公共事業小委員会は1日、その一つを可決した。EUは2009年に発足する米国の次期政権が温暖化防止で現政権より前向きになると判断して、とりあえず米国内の制度整備に協力し、米国産業界が近寄ってくるのを促している。

 温暖化防止では、二酸化炭素(CO2)などの排出削減にインセンティブを与える制度づくりが重要だ。排出削減に経済的価値を持たせる排出権取引はその有力な手段になる。日本では経済産業省や日本経団連が自主行動計画にこだわり、削減義務を伴う排出権取引を拒んできた。その結果、国内排出権市場の制度設計が放置され、削減の取り組みが十分に広がらないままになっている。

 京都議定書の目標達成の道のりが険しくなるなかで、産業界では約20業種が自主行動計画の削減目標を積み増した。背後に経産省の行政指導がちらつくが、排出権取引の方が透明性が高く合理的ではないか。目標達成が危うい業界は中国などで排出権獲得に奔走している。海外の排出権に頼るぐらいなら、国内で排出権市場を整備する方が賢明だろう。

 米国では産業界も、努力した企業が報われる排出権取引の重要性を認め、有力企業が制度発足に動いている。欧米の連携が進み、市場が一体化するようなら参加国は増える。日本も世界の流れを見据え、早急に排出権取引導入を決断すべきだ。


posted by おぐおぐ at 13:02 | TrackBack(0) | 排出枠/排出権取引 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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