2007年05月04日

ジョージ・モンビオ:2℃目標は諦めたのか?

「2℃の温暖化目標を諦めたのか」
Giving Up On Two Degrees
http://www.monbiot.com/archives/2007/05/01/1058/

を無断で翻訳しておきます。

危険な気候変動を防ぐ試みを私たちはもう放棄してしまったのか?
ジョージ・モンビオ、ガーディアン紙5/1付け記事より
Have we already abandoned our attempts to prevent dangerous climate change?
By George Monbiot. Published in the Guardian, 1st May 2007


 気候変動を止めようとしている豊かな国々の共通点とは−「嘘つき」だ。
 先週ガーディアン紙にリークされたIPCCの最新の報告書にはそう書かれてはいなかったが、数字の意味が理解できれば分かることだ。地球温暖化に立ち向かおうと誠実に努力している政府が、間違っていると分かっている数字を使っているのだ。
英国政府も欧州連合も国連も、「危険な」気候変動を予防しようとしていると主張している。どんなレベルの気候変動も誰かにとっては危険なものだが、この言葉の意味については広いコンセンサスがある。産業革命前のレベルから2℃の昇温だ。
(たとえばグリーンランドの氷床の不可逆的な融解をもたらしたり(1)アマゾンの熱帯林の崩壊をもたらすなど人びとと地域への直接の悪影響があるがゆえに(2)、そしてさらにそれは自然からの温室効果ガス排出が誘発され、更なる加速を引き起こすがゆえに危険なのだ。
2℃以上の昇温を予防するという目標は国連(3)と欧州連合(4)が公然と採択しており、英国、ドイツ、スウェーデン政府も暗黙に認めている。
彼らは皆2℃昇温を防ぐことができる大気中の温室効果ガス濃度に制限することを期待している。そして彼らは皆時代遅れの科学に基づいた間違った目標を設定したことを知っているのだ。
政治的な悪影響を恐れたため、新たな研究が求めるレベルに補正をすることができないでいるのだ。
  数字を追いかけることは単純ではないかもしれないが、耳を貸してほしい。
地球平均気温は大気中の各種温室効果ガス濃度の影響を受ける。この濃度は通常、「CO2換算」として表現される。厳密な科学ではないのだが、確率の表現を使ってこの関係は論じられている。
 昨年マルテ・マインスハウゼンが示した論文(5)によれば、CO2換算で550ppmvの温室効果ガス濃度に達すると、2℃以上の昇温となる確率は63-99%(平均82%)に達するという。
475ppmvでは平均64%となる。400ppmv以下に抑えて初めて、2℃を超える確率を28%にまで低く抑えることができる。

 IPCC報告書の草稿にも似たグラフ(SPM-1)がある。510ppmでは33%以上の確率で2℃を防ぐことができるが590ppmでは10%の確率しか防げる可能性がない。
 さて、現在の大気中の温室効果ガスの濃度が(IPCCの式を使って)459ppmであることを知れば、あなたはようやく必要とされる挑戦の大きさが分かるだろう。私たちはすでに2℃以下の安全圏を越えてしまったのだ。(注:スターンレビューでは現在のCO2換算濃度を430ppmとしています。)

 危険な気候変動を防ぐ機会のためには、大気中の温室効果ガス濃度を現状の大気中濃度以下に抑えるほどの劇的な対策が必要なのだ。早ければ早いほど、2℃昇温を防ぐチャンスは大きくなる。

 しかしどの国の政府もこの作業を行おうとしていない。欧州連合とスウェーデン政府は世界でもっとも厳しい目標を設定した。しかしそれは550ppmであり、間違いなく2℃昇温を超えてしまう。
英国政府は賢い手品でごまかしている。その目標値はCO2単独についての550ppmなのだ。他の温室効果ガスを含めればCO2換算で666ppmにもなる。
 スターン報告書(10)によれば、650ppmでは60-95%の確率で3℃の昇温を引き起こす。つまり、われらが政府の目標値は、非常に危険なレベルの気候変動を約束するものなのだ。

 英国政府は少なくとも4年前には間違った目標を設定したことに気づいていた。2003年には、環境省は、「550ppmの大気中CO2濃度では2〜5℃の昇温が予測される」と述べている(11)。昨年3月には「2℃の安定化目標を果たすためには450ppmかそれ以下の目標値がより適切である」と認めている(12)
しかしそれでも目標値は変更されなかった。昨年10月に私はBBC4チャネルのニュース放送でこの点をデビット・ミリバンド環境大臣に問い詰めたが、彼はまるでそれが初耳であるかのように振舞った。

 欧州連合もまた、間違った数字を使っていることに気が付いている。2005年には、「地球温暖化を2℃以内に抑える合理的なチャンスのためには、CO2換算で550ppm以下の安定化濃度目標が必要である」と分かっていたが、その目標も変更されていない。

 労働党政府と私のような左派にとって困惑させられるのだが、この問題を認識している政治党派は英国保守党である。二週間前に公表された文書(14)では保守党はCO2換算で400-450ppmの安定化濃度目標を要求している。これは政策になるのだろうか、キャメロン氏はアドバイザーがすべきと言ったことを実行する勇気を持っているのだろうか?。

 私の著書「ヒート」の中では、2℃の昇温を避けるためには、2030年までに人口一人当たり60%の排出量削減が必要であると推計している。英国では87%の削減にあたる。英国政府の目標値は2050年までに60%削減に過ぎない。しかしどうやらこれも過少な目標だったようだ。

 最近「Climatic Change」誌に掲載された論文では、気候感度がいまだに不確実であることに注目しているが、平均値を使えば2℃以下の確率50%を狙うためには、全世界で2050年までに80%削減が必要であるとしている。
これは総量の削減であり、1人頭ではないが、人口が2050年に90億人になると仮定すれば、人口一人当たり87%の削減が必要となる。
排出許容量を公正に分配するとすれば、大汚染国が大きな削減を求められ、英国のような豊かな国は実に一人当たり、91%の排出削減を必要とする。

 だがわれらが政府は危険な気候変動を防ぐという目的をこっそり放棄しようとしているのだ。それは数百万人への死を宣告する行為である。IPCC報告書が示しているのは、気候変動を緊急な課題として取り扱うのではなく、国際的な緊急事態として取り扱わなければならないということだ。

 私たちは今年11月までに世界最大の排出国となろうとしている中国と緊急に交渉を始める必要がある。それはひとつには中国が私たちの消費財の多くを製造しているからだ。いくら費用を掛ければ中国の成長する経済を脱炭素化することができるかを調べ、支払いを助ける必要がある。

 私たちは米国を相手に、かつて1941年に行った(第二次大戦への参戦への働きかけの)外交を超える外交攻勢を掛けて、経済の重みをちっぽけなものにする??必要がある。

 しかし、とりわけ、私たちは自分が気候変動と真剣に戦うつもりがあることを示すために、科学がもとめる目標値を設定することが必要である。

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「安倍ブッシュ会談の結果−共同宣言」でも書きましたが、日米の先日の対話では、 「我々は、大気中の温室効果ガスの濃度を、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において安定化させるという究極的な目的に引き続きコミットし、この目的のために前進する途をさらに検討する。」というダブル・スピークを臆面もなく声明として出しています。

スターンレポートに出ていた、マインツハウゼン論文における、CO2換算で550ppmに抑えるための排出経路のグラフを末尾に転記しておきます。いかに厳しい削減が必要か、を示した図になっていますが、それでもより早期に取り掛かれば取り掛かるほど、最も厳しい削減を行う時期の年ごとの削減の傾きをより緩やかにできることが示されています。
Stern3.JPG

参考:
マーク・ライナスによるスターン卿報告書の読み方
http://sgw1.seesaa.net/article/127880311.html
ではこの記事と同じく2℃目標をあきらめたのか、問題を紹介しています。
posted by おぐおぐ at 09:41 | TrackBack(0) | 温暖化の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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