2007年04月28日

温暖化対策に関する日本政府の現在の姿勢

 Climateメーリングリストより、民主党の村井宗明議員から日本政府向けに気候変動問題に関する質問趣意書が出ており、日本政府の公式解答も掲載されているという紹介をいただきましたので紹介します。

質問答弁経過情報

 こういう質問趣意書をタイムリーに出してもらえると、論点整理が出来てありがたいですね。

以下、質問の各本文と回答、それに対するコメントの順に紹介していきます。

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気候変動対策に関する質問主意書

 京都議定書の約束期間の開始される二〇〇八年が目前に迫っているが、CO2排出量が二〇〇五年に一九九〇年比八・一%増加となっている状況をみると、政府が本気で京都議定書を達成しようとしているとは思えない。企業や個人の自主的取組による効果も見られるが、自主的取組のみではこれ以上の温室効果ガス削減には限度があり、京都議定書の目標達成は不確実かつ難しい。よって、京都議定書目標の確実な達成のためには、平成十九年度中に効果的な国内対策の制度導入が必要と考えられる。

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第四次報告書にて、気候変動の原因が人為的起源の温室効果ガスであるとほぼ断定された報告がなされ、米国が気候変動対策に対し積極的になったことで、世界はまさに低炭素社会への移行を本格的に模索し始めた。この機会に、京都議定書を確実に達成できる制度を導入し、積極的な姿勢を見せていかないとポスト京都(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください)への発言力は失われると思われる。わが国が京都の名前を冠した議定書の目標を達成できなければ、わが国の国際的な発言力が完全に失われるほか、世界の低炭素経済への移行に遅れを取り、結果としてわが国の経済が競争力を失うことになる。

 地球温暖化は、気候変動による我々人類への脅威はもとより、わが国にとって、財政、外交、経済の観点からも、現在最も大きな問題であると認識している。このような問題意識から、以下、質問をする。
 Q1. 京都議定書目標達成計画において、京都メカニズムによる削減は、九〇年排出量に対して一・六%とされている。京都議定書目標達成計画では、二〇一〇年度のCO2排出量が九〇年比六%増であることを前提とした計画であるが、実際には、二〇〇五年度のCO2排出量は、九〇年比八・一%増となった。仮に、二〇〇五年度までの想定外の増加分二・一%をすべて京都メカニズムでまかなうとした場合、三・七%分の排出権を京都メカニズムにより取得することが必要となる。三・七%分を排出権取引により取得するとした場合、二〇〇八年から二〇一二年までの五年間で費用が総額いくら必要になるか示されたい。(CO2の取引価格など、計算の前提として、仮定しなければならない数値があれば、適宜仮定をおき、その仮定を明らかにした上で示されたい。)

A1. 京都議定書目標達成計画(平成十七年四月二十八日閣議決定)においては、気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(以下「京都議定書」という。)の目標を達成するため、国内温室効果ガスの排出削減対策及び国内吸収源対策を基本として、国民各界各層が最大限努力し、それでもなお京都議定書の目標の達成に不足する差分として見込まれる基準年総排出量比一・六パーセント分について、温室効果ガス排出削減量等に係る国際的な取引の仕組みである京都メカニズムを活用したクレジットの取得により対応することとしており、現時点において、これ以上のクレジットを取得することは想定していない。
 また、京都メカニズムを活用したクレジットについては、その需給動向等により将来にわたり価格が変動することから、今後のクレジットの取得に要する費用を具体的にお示しすることは困難である。

コメント:シミュレーションが出来ないって、財務省さん大丈夫?
いざと言うときには踏み倒す覚悟を持っているということでないのならば、価格変動があるとしても予算のメドとして、クレジット購入のための支出をこれだけ分(おおむね想定される1.6%分)は確保できる、と回答する義務があると思いますが。



Q2. 問一においては、京都議定書目標達成計画の計画どおりに削減されることを前提としたが、仮に今後もほとんど削減できずに、二〇〇五年時点における九〇年比一四・一%増加分のうち、森林吸収の三・八%を除く、一〇・三%のすべてを京都メカニズムにより取得するとした場合、問一と同様にいくら必要になるか示されたい。

A2.同上

Q3. 問一や問二のような財政負担が、十分にありえる状況であるが、このような財政負担のリスクについて政府はどのように考えているのか認識を示されたい。仮に、京都議定書の目標達成のために、現在政府が予定している量よりも多くの排出権を購入しなければならなくなった場合、そのための財源を措置する準備はできているのか政府の見解を示されたい。

A3.同上

コメント:回答になっていないものです。一括してQ1〜Q3までの回答としていますが、実際にはQ1〜Q2までについてしか答えていません。まずは現在予定の規模(1.6%分)については措置する準備が出来ているのでしょうか?
 現在想定していない、ということは何も決まっていないと言っているのにすぎませんが、京都議定書は遵守すべきである、そのための費用は必要なものは出す、というのが国家としての決定方針ではないのですか?


Q4. 京都議定書目標達成計画において産業部門の二〇一〇年の排出量は、九〇年比でマイナス八・六%とあるが、産業界の自主行動計画の目標はプラス・マイナス〇%以下に抑制することになっている。なぜこのようなギャップがあるのか、このギャップの削減量不足分はどこで削減される計画なのか示されたい。

A4. 社団法人日本経済団体連合会(以下「経団連」という。)の環境自主行動計画における目標は、製造業、鉱業及び建設業並びにエネルギー転換部門に属する業種のうち同計画に参加している三十五業種を対象としているのに対して、京都議定書目標達成計画における産業部門の目安としての目標は、農林水産業並びに製造業、鉱業及び建設業に属する業種のうち経団連の環境自主行動計画に参加していないものも対象としている一方、エネルギー転換部門を対象としていないことなどから、これらの目標を単純に比較することは適当でない。
 また、京都議定書目標達成計画における産業部門の目安としての目標は、産業部門の各業種について、経団連の環境自主行動計画に基づく対策に加えて、それ以外の対策を進めること等により、基準年に比べ八・六パーセントの削減を見込んでいるものである。

コメント:単純に比較することは適当ではない、のはその通りです。ですが、経団連自主行動計画に参加していないジャンルの企業と産業部門については、なんら包括的な宣言する主体がない以上は、行動計画に参加している企業と産業部門以上に深堀りした削減を実行することが可能だという仮定はおよそ成り立ちません。
つまり、参加している企業の側が平均の八・六パーセント削減以上の深堀りを宣言していない限り、全体としての八・六パーセント削減は担保されようがありません。
しかし宣言している企業が平均で「プラス・マイナス〇%以下に抑制」では未達成のギャップがあることは確実です。
 エネルギー転換部門(電力会社)がこのギャップを埋める目標を持っているわけでもありません。
 従って、「なぜこのようなギャップがあるのか、このギャップの削減量不足分はどこで削減される計画なのか」という質問はまだ活きています。



Q5. わが国が京都の名前を冠した議定書の順守ができない場合、わが国の外交的な発言力にもマイナスの影響があると考えるが、これについての政府の認識を示されたい。また、米国が離脱している上に、仮にわが国が京都議定書の目標を達成できない場合、今後の協調した国際的取組が破綻する可能性もあると考えているか、これについての政府の認識を示されたい。

A5. 我が国が締結している京都議定書は、これを誠実に遵守する必要がある。また、我が国としては、二千十三年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みについて、米国、中国及びインドを含む主要な温室効果ガスの排出国が参加する実効性のある枠組みの構築に向けて主導的な役割を果たしていく考えであり、そのためにも、我が国自身が京都議定書の目標の確実な達成に向けて、全力を挙げて取り組んでいく考えである。

コメント:全力でやっても、新規政策がない状態なんですが?われらが政府は無能ですという告白をしているように聞こえます。


Q6. EUでは、EU−ETS(排出量取引制度)で排出量取引市場が整備され、取引が盛んに始まっており、アメリカでも一部の地域で排出量取引市場が整備された。わが国で排出量取引市場が整備されず、世界の炭素取引市場から遅れをとった場合、わが国が世界の経済の流れに遅れをとり、わが国の経済にマイナスの影響が考えられるが、政府の認識を示されたい。

A6. 我が国においては、平成十八年度から、効率的な二酸化炭素の排出量の削減、二酸化炭素の排出枠の取引等に係る知見や経験の蓄積を図るため、自ら削減目標を定めた企業に対して当該削減目標に相当する二酸化炭素の排出枠を割り当てるとともに、経済的なインセンティブを与え、当該企業が自らの削減努力や排出枠の取引の活用により削減目標を達成することを促す自主参加型の国内排出量取引を実施している。
 また、温室効果ガスの排出枠の交付総量を設定した上でその排出枠を個々の主体に配分するとともに、他の主体との排出枠の取引や京都メカニズムの活用を認めること等を内容とする国内排出量取引制度については、温室効果ガスの排出削減を進めるための他の手法との比較、当該制度の効果、産業活動や国民経済に与える影響等の幅広い論点について、総合的に検討していくべき課題であると考える。

コメント:ベースライン&クレジット方式の排出量取引を試してみても20社程度しか自主的に参加していません。しかるにそれで大企業に対して強制的に課すキャップ&トレード方式の排出量取引が類推できるという姿勢では、排出権取引の制度導入のコストと時間を甘く見ていると言わざるを得ません。
トライ&エラーなんだから、同じ方式で小さい市場で試してみないと意味がありません。



Q7. 将来的には、現在の世界のCO2排出量を五〇%以上削減する必要があると言われている。わが国においては、将来、いつ頃にどの程度削減する計画になっているのか、不明確になっており、積極的に取り組んでいる企業においても、将来見込みが立たず不安の中で対策が実施されている。逆に言えば、企業としては、将来的に削減しなければならないことは、すでに明らかであり、その削減プロセスを早期に示されないことが、企業が対策に二の足を踏む原因になっているという意見がある。わが国において、中長期的な削減目標が立たないことが企業の積極的な対策を阻害しているという意見について、政府の認識を示されたい。

A7. 産業界においては、現時点では、製造業等の多くの企業が自主行動計画に基づく対策等に積極的に取り組んでいるものの、革新的な温暖化対策技術の開発や実用化には長時間を要することから、京都議定書のような短期的な目標の下では持続的な温室効果ガスの排出削減効果を得ることが難しく、また、温暖化対策に取り組む上で投資サイクルと削減目標の達成に係る期間との整合性の確保が懸念されるといった意見があると承知している。我が国としては、「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させる」という気候変動に関する国際連合枠組条約(以下「条約」という。)の究極的な目的を実現すべく、従来から、条約の締約国会議等の場において、温室効果ガスの排出量と吸収量を同等のレベルとして地球上の炭素循環を均衡させるための長期目標とそれを達成する道筋に関する合意に向けた議論を行っていく必要があると主張してきたところである。

コメント:「わが国において、中長期的な削減目標が立たないことが企業の積極的な対策を阻害しているという意見について」政府の認識は同じとみてよいようです。

Q8. EUでは、二〇二〇年にマイナス二〇%という大きな目標が決定された。問七にも述べたとおり、早期に中長期的な削減量を掲げることが必要と考えているが、その必要性に対する政府の見解を示されたい。

A8.条約の究極的な目的を達成するための我が国における中長期的な目標の策定については、今後検討してまいりたい。

コメント:質問がちょっと甘いですが。「EUでは、国際合意が取れれば二〇二〇年にマイナス三〇%の目標も目指す、としているが、日本政府は同様の野心的な目標を掲げることで温暖化対策の機運を加速する気はないのか、またEUでは、EU単独でも二〇二〇年にマイナス二〇%とする目標を掲げたが、同じ数字が他国にも最低限の目標として課せられたという認識にはならないか」と聞いてくださいよ。

Q9. 今年のドイツG8では、各国が低炭素社会に向けた姿勢や取組の計画をアピールしてくる可能性があると考えられる。そこで、ドイツG8において日本が世界に示す姿勢や取組の計画について、現状検討されている段階での政府の見解を示されたい。

A9. 地球温暖化の問題は、ドイツで本年に開催される主要国首脳会議(G8サミット)においても取り上げられることとされており、我が国としては、G8サミットの場を含め、主要な温室効果ガスの排出国が参加する実効性のある国際的な枠組み作りに向けた主導的な役割を果たしていく考えである。

コメント:安倍首相のブッシュ会談の様子を見ると、米国に追随すること=主導的な役割の意味のようです。

Q10. 企業の自主的取組と、普及啓発によるライフスタイルの推進は重要な取組ではあるが、実績としてCO2排出量が増加している。これは、積極的に取り組んでも何も得しない骨折り損の状況にあるからで、誰もが低炭素なエネルギーや製品を選択するためには、経済的インセンティブが有効であると考えられる。経済的インセンティブに係る施策の導入については、環境省が提案しているが他省の反対に遭うなど、導入が実現できていない。これについて内閣総理大臣のリーダーシップが必要と考える。経済的インセンティブに係る政策導入について内閣総理大臣の見解を示されたい。

A10. 経済的なインセンティブを用いたいわゆる経済的手法は、市場メカニズムを前提とし、経済的インセンティブの付与を介して各主体の経済合理性に沿った排出抑制等の行動を誘導するものであり、地球温暖化対策の経済的支援策としての有効性も期待されているところである。その活用に際しては、あらゆる政策手法を総動員してそれらの特徴をいかしながらこれを有機的に組み合わせるといういわゆるポリシーミックスの考え方に沿って効果の最大化を図りつつ、国民負担や行財政コストを極力小さくすることが重要であると考えている。とりわけ、財政的支援に当たっては、費用対効果にも配慮し、予算の効率的な活用等に努めてまいりたい。

コメント:内閣総理大臣のリーダーシップが必要と考える、という質問に対して、官僚が従来してきた答弁だけを返すのでは、官僚=リーダーだと認めたことになります。


posted by おぐおぐ at 15:17 | TrackBack(0) | 温暖化の政治学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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