2007年02月12日

「正統」派の論点整理と論拠

 「温暖化の結果CO2増加が起こっている説」では説明できない現実その1からその4
にかけて頂いたぬりさんからの精力的なコメントに応えて、「正統」派の人為的温暖化説についての論点の組み立て方とそれぞれの論拠をざっと書いてみました。
(付記:2/9に気象庁により暫定的に翻訳された最新のIPCC第4次報告書の要約部分から関連のある文言も引用しておきます。)


 ひとまずは、ちゃうぞおかしいぞ、という「正統」派の方からのつっこみを歓迎します。
 懐疑派の方からのつっこみもどうぞ。


論点0.地球は近年温暖化している。

論拠 各種観測データより

(IPCCAR4WG1SPM気象庁暫定訳より)「気候システムの温暖化には疑う余地がない。このことは、大気や海洋の世界平均温度の上昇、雪氷の広範囲にわたる融解、世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である(図SPM-3 参照)。{3.2、4.2、5.5}」


論点1.二酸化炭素などの温室効果ガスには温室効果がある論拠 分光(波長別の)吸収率などの実測データより、光学的には大気中濃度に依存する(灰色なはずはないですね)半透明体とモデル化。
吸収と再ふく射については、ウィーンの法則やらキルヒホッフの法則やら(あとなんでしたっけ)が成立する。


論点2.間氷期−氷期間の十数万年周期の気温の変化は自然の変化である(地球軌道のふくらみと地軸の歳差運動との重複によるとするミランコビッチ説を多くの者は原因と想定)。

論拠 南極のアイスコアより得られた気温データに関する、ミランコビッチ説との周期の一致。


論点3.この間氷期−氷期間の二酸化炭素濃度の変動は気温変動と相関関係にある。

論拠 南極のアイスコアより得られたおのおのの同時期データより
 氷に含有されているCO2濃度は世界のCO2濃度を代表した数値と仮定。 ← 近年の多地点大気中濃度測定が傍証。
 南極の気温は、変動が時間遅れを持って現れるものの、世界平均温度と同じ方向で比例した変化をしていると仮定。 ← 近年の南極観測。


論点4.論点3により、気温と二酸化炭素濃度は正のフィードバックループを構成していることが確認された。つまり(水蒸気もメタンも同じく、これらの)温室効果ガスは十数万年単位の気温変動の増幅(というか発振)要因となっている。

論拠 
 論点1により二酸化炭素→表面温度(地表面温度/海水温度)への因果関係があることがわかる。
 逆向きの表面温度→二酸化炭素の因果関係もさまざまな要因により成立する。(但しヘンリーの法則のみに非ず)
 論点3により、これらの両方向の因果関係が成立し、正のフィードバックループが構成されていることがわかる。
そしてそれが、正弦波的な周期的連続的な変化論点2のミランコビッチ説のみによればこう想定される)ではなく、二つの安定期の間の周期的なしかし不連続な遷移(Flip-Flop)として現れている原因となっていると推測される。


論点5.温室効果そのものには経年変化はなく、タイムスケールによらず安定して効果を発揮している。すなわち、今後の温室効果ガスの変化による気候系への影響については、論点4のフィードバックループとしての過去データを実績値として推測に利用できる。

論拠 なし(物理特性についての常識レベルの想定)


論点6.過去1000年間程度の時間スケールで現れていた短期的な自然の気候変動により、大気中CO2濃度の変動はほとんどなかった。

論拠 このグラフのうちの近年200年間を除いた800年間については、大気中CO2濃度はきわめて安定しており、ネットで勘定したグローバルカーボンサイクルの収支はほぼゼロとなっていた。
 つまりグロスで勘定した一年の内の大気と海の間や、大気と陸上生態系の間の吸収、排出は全体として100%キャンセルしあっていた。
 この期間の(平均的だっただろう)火山活動によるCO2排出も無視できる規模に過ぎなかった。

(IPCCAR4WG1SPM気象庁暫定訳より)「2005 年における大気中二酸化炭素濃度は、氷床コアから決定された、過去約65 万年間の自然変動の範囲(180〜300ppm)をはるかに上回っている。」


論点7.過去200年間のCO2上昇の原因は人間活動による化石燃料の燃焼消費+森林伐採、農地化。

論拠
 ベースラインとしての論点6(大気と海の間や、大気と陸上生態系の間の自然の吸収、排出は全体として100%キャンセルしあっている)はその前800年間と同様に成り立つはずだが、人為的な攪乱条件としてのCO2排出量は化石燃料消費統計及び土地利用(森林減少・回復)についての統計から。
 また近年の大気中CO2直接測定においても年次排出量の平均58%が毎年大気中に残留すると想定すると、大気中のCO2濃度増加をわずかな摂動要因以外は説明できる。わずかな摂動要因とは、気温→CO2濃度方向へのフィードバック分(槌田の議論)。

のこりの42%の吸収源の割り振りを陸と海にどう分けるべきか、陸と海の積み上げ加算式による推計とはあわないじゃないか、というのが「ミッシングシンクはどこだ」問題であり、これはすでに解決済み。

(IPCCAR4WG1SPM気象庁暫定訳より)「世界の二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素の大気中濃度は、1750 年以降の人間活動の結果、大きく増加してきており、氷床コアから決定された、工業化以前何千年にもわたる期間の値をはるかに超えている(図SPM-1 参照)。」
(IPCCAR4WG1SPM気象庁暫定訳より)「工業化以後における大気中の二酸化炭素濃度上昇の主要な原因は化石燃料の使用であり、土地利用の変化も重要ではあるがその影響は小さい。」
(IPCCAR4WG1SPM気象庁暫定訳より)「世界的な二酸化炭素濃度の増加は、第一に化石燃料の使用及び土地利用の変化に起因する一方、メタンと一酸化二窒素については、農業による排出が主な要因である。{2.3、6.4、7.3}」
(IPCCAR4WG1SPM気象庁暫定訳より)「観測されたメタンの増加は主として農業や化石燃料の使用といった人間活動による可能性がかなり高い6が、さまざまな排出源の相対的な寄与についてはよくわかっていない。{2.3、7.4}」


論点8.論点1〜論点7より温室効果を含めた気候モデルを開発したことにより、過去100年間の気候変化をシミュレートできた。

論拠 気候モデルによる再現実験
  実際にはメタンは排出されてから数年以内に酸化されてCO2に変わっていく、あるいは水蒸気はすぐに降雨や雪氷などとなって高層大気からは排除されるなど、瞬時的な放射強制力だけでなく100年間の平均をとったGWPを構成する大気中寿命などの関連情報も入っているわけですが。

(IPCCAR4WG1SPM気象庁暫定訳より)「過去50 年にわたって、南極大陸を除く各大陸において、大陸平均すると、人為起源の顕著な温暖化が起こった可能性が高い(図SPM-4 参照)。観測された温暖化の分布(海上よりも陸域の昇温の方が大きい)やその時間的な変化は、人為起源の強制力を取り入れたモデルによってのみ再現される。結合気候モデルが、観測された昇温を六大陸それぞれについて再現できたことから、第3 次評価報告書よりも気候に人為的影響が及んでいることをより強く示すこととなった。{3.2、9.4}」

論点9.論点8より、将来予測も行える。その結果によれば・・・。

というところかと思います。

 その他は、寄せられた懐疑派からの指摘に対する反論という、枝論になるのではないでしょうか。

●ホッケースティック論争についての評価
(IPCCAR4WG1SPM気象庁暫定訳より)「20 世紀後半の北半球の平均気温は、過去500 年間の内のどの50 年間よりも高かった可能性がかなり高く、少なくとも過去1300 年間の内で最も高温であった可能性が高い。最近の研究の中には、特に12〜14 世紀、17 世紀、19 世紀の寒冷な期間において、北半球の気温の変動は、第3 次評価報告書で示唆されたものより大きかったことを示すものがある。20世紀より前の温暖な期間は、第3 次評価報告書で示された不確実性の範囲に収まっている。{6.6}」

 ここでは、実質的にマンらによるホッケースティック型の気温データが間違っていた、と否定されていますが、その修正は主に19世紀以前の寒冷な期間がより下に凸な形であった点についてのものということです。つまり中世の高温期についてはホッケースティックの誤差の範囲内に収まっていたのだという評価です。

●太陽活動の変化
(IPCCAR4WG1SPM気象庁暫定訳より)「1750 年以降の太陽放射量の変化は、+0.12[+0.06〜+0.30] W/m2 の放射強制力を引き起こしたと推定されている。その大きさは第3 次評価報告書の見積もりの半分以下である。{2.7}」
 ということで、最近の分析では、太陽活動の増加ではますます説明がつかない、となっています。


 枝論の続きをもう少し。
●気候をモデル化してシミュレーションをすることへの批判も多いのですが、そもそも懐疑派はあれやこれや、の影響を考慮していないという批判の方も得意としていたはずです。「正統」派はそれらの要因を無視しているわけではなく、それらの要因をすべて含んで計算するようにすれば、結果的に数理モデルを組み立てるという形のブラックボックス化していくのは当然ですから、まるで「あれやこれやの影響を全部言葉だけで解説しろ」と無理難題を吹っかけているというものです。
 槌田説の論者が、単一のメカ二ズムで全てが説明がつくかのような主張をしていることこそ、「あれやこれやの影響を考慮していない」という批判に値します。


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posted by おぐおぐ at 04:50 | TrackBack(5) | 温暖化懐疑派・否定論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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