2007年01月13日

ハインバーグ:ピークオイルと気候変動の運動に橋を掛ける

 こりゃ、一人時間差アタックとでも呼びたいですね。

Bridging Peak Oil and Climate Change Activism
http://www.energybulletin.net/24529.html
by Richard Heinberg

を抄訳で仮訳しておきます。

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 気候変動とピークオイル問題はどちらも社会が化石燃料に依存していることが原因だ。しかし、この二つの問題が互いにどんな影響を及ぼすか、そしてそれぞれの対策がどこが重なりどこが異なるかという問いについては、これまできちんと議論がされてこなかった。

 密接に関わりがあるものの、この二つの問題は多くの点で似ていない。気候変動は二酸化炭素の排出とその効果の問題であり、海面上昇や長い干ばつ、異常気象や生態系の被害などの悪影響に関わる。
これに対してピークオイルは社会がますます依存するようになった燃料の供給不足に関わる問題であり、間違いなく石油と関連製品の高騰に、そしておそらくは経済を揺るがしさらなる石油戦争とつながる。
このように、前者は環境と直接関わりがあるが、後者は人間社会と、特にその依存と脆弱性と関わりがある。
表面的に言えば、気候変動はエンドオブ(排気)パイプ問題であり、一方ピークオイルは燃料タンクの根元問題である。

 主眼点が著しく離れているため、一方の問題を学ぶグループの人びとは他方のグループとはしばしば異なる優先順位を持ち異なる訓練を受けている。
ピークオイル概念を提唱する人びと(いわゆるディプリーショニスト(以下ピーク論者))の大半はエネルギー専門家や経済学者、ジャーナリスト、都市プランナー、石油産業から退職した者(地質学者やエンジニア)などである。
気候問題の研究者、活動家の陣営では、大半が環境保護派でありエネルギー専門家はより少なく、石油産業退職者は遥かに少ない。私の経験ではこれらの二つのグループは同じ部屋に入れられると、互いに相手側を無視する。

 私自身の出自は環境保護派である。私は大学で人間エコロジーのコースを教えており、15年以上環境問題の著述をしてきた。また同時に、私は自分がなによりも3冊の本と300回ほどの講演をしてきたピークオイル問題の活動家として知られていると分かっている。
どちらの問題が真に重要であるのかについての二つのグループの間での頭突きのような角突き合わせた議論は、私たちがみな重要とわかっている環境と人類の破局を食い止めるための努力を妨げるだけであり、私にとってはまるで風変わりな地獄のようなものだ。
それにもかかわらず、両者は論点の重大性について大衆の関心を引く上で互いに競争しているという理由から、すでに不一致と誤解が現れつつある。
(後日記:カナダ発のグリーンな首相候補ディオン氏についての紹介
http://canada.theoildrum.com/story/2006/12/3/121020/783

ここの12/4付けのコメント当たりから、ピーク論者と温暖化派の
頭付きのような(→角突き合わせた)議論がされていますね。)

 このような競合的な不一致は、究極的には我々のより幅広い集団的な利益を害するため、各グループにとっての優先順位と視点、そして同様に問題自身の相違点と類似点をおおっぴらに議論しようと努力することは重要だろう。
 このエッセイは学術的というより解説的、描写的なものとすることにした。仮定したのは、問題は語られないままでいるよりも明示され議論した方がより良いということだ。私の命題は、両グループは本質的にはどちらも社会の化石燃料の消費削減に向けた活動をしており、二つのグループの間での協力は実質的に議論を補強し、政策決定者を説得する力になるだろうということだ。


 異なる展望 【抄訳】それぞれの陣営の中でも他方の問題についての知識のばらつきは大きく、特に楽観派と悲観派の違いによって問題の影響は異なる。過度に一般化することは避けたい。
ピーク論者のうちの少数派は、温暖化がひどくなるほどの石油は存在しないと考えており、温暖化派の警戒を招いている。
温暖化派の多くは石油ピークは温暖化に比べれば大した問題ではなく石炭などへの転換が起こると考えている。温暖化対策として進める省エネはピークオイル問題への回答にもなると考えている。
大半のピーク論者は気候変動よりもピークによる政治経済的なカオスの方が間近であり、国際社会の崩壊により温暖化対策も不可能になるため優先して取り組むべき課題であると考えている。
 ピーク論者の大半は自分や家族、コミュニティの生存問題として捉えているだろう。これと比べて多くの温暖化派にとっては将来世代や全生物種に対する倫理の問題であるが、長期的な問題であり緊急性を削がれている。
社会が自主的に対策に動くようにするために、脅威の種である化石燃料埋蔵量を大きく見せたがる傾向がある。米国のEIAやCERA、エクソンなどの楽天的な予測を(公式のものでもあり)採用する。
 ピーク論者自身も悲観に傾く傾向があるだろうが、過去の権威による楽天予測の誤りがひどいという実績が多くあるため正当化できる。


 異なる処方箋

【抄訳】温暖化派は、政治家にアピールしやすい、石炭から天然ガスへの燃料転換に期待を寄せ、ガスの楽天予測を使うが、ガスはすでに現在、トラブルを抱えており、ピーク論者にとってはガスは問題の一部である。
適応戦略の一部として石炭を除外しづらいため石炭も論議を呼んでいる。温暖化派の一部はクリーンコールを解決として売り込むが、危機時にはCO2の回収と貯留に割増しの費用を払う政府はいないとピーク論者は考える。
CTL(石炭液化)を解決の一部だと考えるピーク論者もいるが、温暖化派にとっては悪夢だ。
石炭の供給予測もピークが近いと分析するピーク論者もいる。
タールサンドやオイルシェール、重質油も問題である。これらも回収と貯留を行えば、ただでさえ低いエネルギー収支比が更に下がってしまう。多くのピーク論者はこれらには未来はないと考えている。


 供給側、需要側(対策)

【抄訳】気候変動とピークオイルの二つの問題が組み合わさると難問が増える傾向にある。どちらも問題はエネルギー問題に収斂する。代替エネルギーを探すことと省エネルギーの2種類しか解決はない。

 それぞれの問題を解決するためにいつまでにどれだけの量の変化が必要か?
 温暖化の観点からは2℃の気温上昇限度を守るためには2030年までに全世界のCO2排出量の60%削減が必要という試算もある。
 ピーク論者は年率2%ずつの削減を唱えており、25年間で25%以上の削減を予期している。
 残念ながら再生可能エネルギーの普及のみでは(ハーシュのクサビを構成する)量と転換スピードを得られないだろう。
 特に輸送用燃料については、バイオ燃料は両グループとも皆が支持するわけではない。エネルギー収支比が低いことと食糧生産とのバッティングがあるためだ。
 両グループの一部には原発を支持する者もいるが、これもピークウラン問題とバックエンドのエネルギーコスト問題を抱えている。
 国際政治の上では公平性の問題も重要だ。途上国を巻き込まない議論は実質的な削減には結びつかないだろうが途上国側は遅れて来た分、成長する権利を留保するだろう。

 軒並み悲観論を採用してみると、今後25年間で60%のCO2排出削減が必要であり、天然ガスが十分に使えず、「クリーン」コールも大して助けにならず、CTLも普及(さ)せず、自然エネルギーも原発も助けにならない場合、政治的な苦痛の大きい省エネの政策に向き合わなければならない。
 個人単位に排出枠を付与し、特に途上国に初期割当を多く割り当てて途上国に資金が流れるようにすることが必要になる。公正さの観点からは過去の責任を負う先進国では60%よりも大きな削減をする、ということも避けられない。
しかしこのような犠牲を政治家に売り込むことが可能だろうか、大衆はそのような政治家を支持できるだろうか。


共通の立脚点

 ここまで見てきたように、互いに相手の議論を無視したがるだけの理由がある。片一方の問題だけを解くのは遥かに易しいが、私たちは現実を取り扱わなければならない。
現実とは複雑なもので、ピークオイルと気候変動以外にも水不足や過剰人口、過剰漁獲、公害、戦争、と世界には問題が山積みだ。
 まずは、化石燃料の年率5%ずつの一律消費削減をグローバルに行い、かつ自然エネルギーの途上国支援を大々的に行えれば出だしとしては上々だろうが、これが政治的に受け入れられる目はない。

 現実的には、京都議定書や石油減耗議定書、排出権、輸出入割当、炭素税、キャップ&トレード排出枠取引といった、それぞれのグループで提案されてきたこれまでの処方箋を提案し続けていくしかないだろう。
そして別の政策目標をそれぞれ追求していくことが現実的には避けられないだろう。
しかし、互いに相手の情報を共有し合い、出来るところで協力することは有益だ。

 ピーク論者にとっては、すでに国際政治のアジェンダに乗っている気候変動問題から助けを得られれば得になるだろうことは明らかだ。

 では温暖化派にとっての利点は何だ−「モチベーション」だ。ピークオイル問題はより緊急な自己防衛上の懸念である。緊急にそして劇的に化石燃料への依存を下げる上で必要な個人的、社会的な犠牲を行うためには、強い動機付けが必要だ。
 豊かな社会で持続可能性と倫理のみを人びとに求めるのは難しいが、燃料不足と高騰で困難に直面している人びとからは、幅広い教育とキャンペーンで支持を集めることができるだろう。

 両者をあわせれば、気候変動とピークオイルはほとんど水も漏らさぬ論理を構成できる。私たちは将来世代と生物圏のために化石燃料への依存を減らさなければならないが、たとえ費用が高くてそれは選びたくなくとも、化石燃料の内でもっとも重要なものが稀少になり高騰するため、自己満足はまるでオプションとはならないのだ。

 両グループの協力関係はどのようにすべきだろう。まずは互いが他方の文献を研究するのにもっと時間を費やすことだ。合同の会合や会議を設定することでより深い議論もできるだろう。
両グループは共同で、大っぴらに、政策による化石燃料の消費の積極的な削減を推進することができるだろう。
 温暖化派は議論に際して、楽天的な石油埋蔵量予測を真に受けるのを止める必要があるだろう。
ピーク論者は、気候科学をもっとよく学び、提案する対策が温暖化を加速しないようにする必要があるだろう。

 おそらく大衆を動機付ける力があるため、両者は、聞きたくない真実、つまりほとんど確実に世界中で両方の問題への対応として省エネ(効率向上と削減)をしなければならないという真実を、語る勇気を政治家に持たせられるだろう。

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 以前、処方箋編:部分的な取組みのススメ で書いたことは結構いい線を行っているかもしれません。

 しかしまあ、日本にはほとんどピーク論者っていうか運動がないのが現状だとは思いますから協力もへったくれもない…。
 温暖化問題に取り組む人たちがピーク論を自分たちのものにして独占すれば、運動間のバッティングも起こりようがないですね。


追記:
リチャード・ハインバーグがどんな本を書いたかは、こちらで紹介しています。
posted by おぐおぐ at 21:35| ピークオイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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