2006年12月15日

「割引率」再々論−どうして夏休みの宿題はどたばたで仕上げるのか

 割引率再論または先延ばしの効用 からの続きです。

こんな本を読みました。
「誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか」(ジョージ・エインズリー著 山形浩生訳)
 どうしてでしょう。1/10も理解していない本の書評を書きたいと思うなんて。
マクロ経済学→ミクロ経済学→ピコ経済学という、人間心理(鳩まで含む動物の心理でもあるようです)に踏み込んだ経済学という新たな分野を開いた著者の唯一翻訳された解説書のようです。
 あやまちと自由意志の起源についての新たな論です。

末尾の訳者解説より

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c-1.動物は未来の出来事を双曲的に割り引くのだ!

 人は同じものをもらうなら来月もらうより今もらったほうがいいのを知っている。・・・
要するに、1万円が人にとって持つ価値は、それがいつもらえるのかという時間に応じて目減りする。そしてこれまでの普通の理論では、一定時間ごとに一定割合ずつつまり指数関数的に割り引かれて目減りすると想定されていた。(SGW注:経済学に云う経済的合理人としての割引率仮説ですね)
ところが、人間で実際にいろいろ実験をしてみると、どうもそんなふうな価値評価はしていない。どうもこれまでの理論とはちがう。目先ではその割引は大きいけれど、ずっと先の話だとほとんど割り引かれない。…この割引は双曲線で示されるものと似ている。そして本書の著者たちがすごいのは、ハトやラットで同じような実験をしてそれを実証的に裏付けたことだ。…どうも動物は進化の過程でこの双曲関数に基づく割引を身に着けたらしい。これが双曲割引だ。そして、この双曲割引のおかげで、小さい短期的な誘惑は近くにくると急に大きく見え、まだ遠くにあるもっと大きい長期的な見返りよりも、一時的に魅力的に見えてしまう。…これが人が誘惑に負けるメカニズムだ。事前の決意が直前にゆらぐのはまさにこのせいだ。

c-2.誘惑に勝つための「意志」−各種のできごとを加算してグループで判断しよう!
c-3.意志はなぜ自由=予測不能か
c-4.意志の副作用
(と続きます。自我の異時点間交渉の結果としての自由意志といった話であり、心理の葛藤についての経済なのでピコ経済学なのだそうです。)


g.双曲割引関数の可能性

 さらにこの『行動経済学』で各種批判が紹介されるときでも、「双曲型割引は、最近の経済学界ではほとんど疑問の余地なく成立するように論じられたり、それを前提にしてさまざまな理論的・政策的含意が語られることが多いが」(238頁)という前置きがついている。すでに一部の世界では、もはや疑問の余地がないとすらみなされているほど確立された理論であるわけだ。・・・

 一方、これはすでに欧米では応用例がある話だが、この双曲割引は環境問題などにも大きな意味を持ってくる。地球温暖化の影響を考えるとき、通常使われる指数割引では100年後の被害など現在価値ではほとんどないに等しくなってしまう。このため、環境問題を重視した環境団体などは、割引率が高すぎる、もっと将来の被害が大きくなるように割引率を減らせ、と言い出す。しかし、割引率というのは人びとの価値評価から導くべきものであって、自分の欲しい結果にあわせて勝手にいじる性質のものではない。だが、人びとが双曲割引をしているなら、出てくる結果もかなり違ってくる。そしてもう少し実感にもあい、また我田引水な数字のお遊びでもないきちんとした環境問題への応用も可能になるはずだ。もっとも、これはこれでまた別の問題を引き起こすのだが。
−−−

 訳者は、技術ですべてうまくいく、経済なんだよお馬鹿さん論者のロンボルグ本『環境危機をあおってはいけない』の翻訳者でもあります。こちらの本を読んで宗旨替えをしたのかな?
誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか(著)ジョージ・エインズリー,山形 浩生
誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか
出版社/メーカー:NTT出版
価格:¥ 2,940
ISBN/ASIN:4757160119
Rating:★★★★★
【タイトル】誘惑される意志
【サ  ブ】人はなぜ自滅的行動をするのか
【シリーズ】 
【著  者】ジョージ・エインズリー 山形浩生訳
【発  行】NTT出版
【発行年月】2006年9月15日 
【ページ数】380 
【判  型】
【定  価】2800円+税
【ISBN】ISBN4-7571-6011-9
【種  別】実験行動学、ピコ経済学
【分  野】
【検索キー】自由意志、双曲割引
【目  次】 
T 意志を分解してみると−アクラシアの謎
第1章 はじめに 人の選択を決めるのは欲望か判断か?
第2章 意志決定の科学の根底にある二律背反 人の選択を司るのは欲望か判断か?
第3章 人の未来評価にはギャップがある
第4章 そのギャップが自発的でない行動を生み出す 痛み、渇望、感情

U 意志を分解してみると−異時点間取引の構成要素
第5章 利益の基本的な相互作用
第6章 内的利益同士の高度な交渉
第7章 異時点間の交渉を主観的に体験する
第8章 非線形動機システムの証拠

V 最終的な意志の分解−成功は最大の失敗
第9章 意志力が裏目に出るとき
第10章 効率の高い意志は欲求をつぶす
第11章 欲求を維持する必要性が意志を圧倒する
第12章 結論

後日記:えいやっで作った表題と同じ記述があるブログがありました。
「大竹文雄のブログ」夏休みの宿題
http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2005/08/post_cf04.html
posted by おぐおぐ at 07:07| 温暖化の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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