2006年05月17日

プルサーマルはエネルギー支出を正当化できるのか

高速増殖炉の未来のなさ、原発のピークウラン問題という制約について続けて見てきました。今度は、現在進行形の「プルサーマル」自体のエネルギー収支比について考えてみましょう。

プルサーマルとは、要は、使用済み核燃料の中から再処理でプルトニウムを取り出して、再度原発の燃料に混ぜて使うという仕組みです。
つまりワンス・スルー方式で、再処理をせず、使用済み核燃料を単に冷却・保管し続ける場合と比べて、プルサーマル方式では本当にネット(正味)のエネルギーが得られるのかどうかという評価になります。

●各地の動き
今年の3月末を区切りとして、六ヶ所村の使用済み核燃料の再処理工場の実質稼動と共にプルサーマル導入についても各地で地元の同意や国の事業申請許可があるなど大きな動きがありました。

九州電力玄海原発…地元自治体首長と県知事による同意
 →今後MOX燃料の製造を海外に発注して、数年後から装荷・運転開始へ

四国電力伊方原発…国が電力会社から出していた申請書の安全審査を終え、認可
 →今後、地元自治体と県知事による同意の予定

中国電力島根原発…中国電力が申請?

中部電力浜岡原発…中部電力が方針を発表

この六ヶ所村の工場と各地のプルサーマルの2つの関係は分かったようでよく分からない、誰にも説明できない状態が続いています(なので、「戦艦大和」と呼ばれるわけですが)。

六ヶ所村工場で取り出されたプルトニウムを使って発電しましょう、というのなら話は分かりやすいのですが、なぜか過去に海外の再処理工場で再処理、保管されていたプルトニウムを使って英仏ベルギーあたりでMOX燃料を作ってもらい、それを輸入してきて使うことが当面計画されています。
(ほな、なんで六ヶ所村の再処理工場を動かすねん、というツッコミは当然のことですが。)原因と結果という観点からはプルサーマルを動かすためという名目で再処理工場が動き始めたわけなので、そこのエネルギー消費を使用済み燃料中のプルトニウムで賄えるのかというエネルギー収支比の観点からみるべきとも言えるわけです。
ですが、実際には全く整合性のない施設群であるため、六ヶ所村再処理工場の消費エネルギーをプルサーマルのエネルギーで賄って余裕はどうか、と言う試算は合理的でない(当面の地元首長の承認がとれている玄海原発プルサーマルの見込み量で、動き始めた六ヶ所村の施設全体の消費エネルギーをオフセットするのは到底不可能です)ので、ちょっと別な評価を考えてみます。

いわば、六ヶ所村にある現在の再処理工場、ウラン濃縮工場、将来のMOX燃料工場の稼動に必要な「政治的(エネルギー)コスト」を全部プルサーマルに負担させるべきという考え方も当然ありますが、それは上乗せしないで、本来の「エネルギーコスト」だけで評価してあげましょう、というものです。


元京大原子炉実験所の小林圭二氏は以下のように主張しています。(レジュメより要約)

−−−
2.プルサーマルはウラン資源の節約ないし有効利用にはならない
(1)プルサーマルに資源上のメリットがないことは原子力界の常識だった
軽水炉でのプルトニウムリサイクルは無限回数繰返したとしても、ウラン利用率はワンススルーの場合の0.5%から1%に徐々に近づくだけであり、1回かぎりのリサイクルでは0.5%の方にむしろ近い。
プルトニウムの利用は高速増殖炉によってはじめて意味を持つもの。

(2)減損ウランの利用はプルサーマルと関係ない
推進側の説明の図の中で、MOX燃料としては使うわけではない回収ウラン燃料の分130kgは、実際には減損ウランを濃縮するプロセスで大きなエネルギーが必要なのであり、再処理工場で分離しただけで得られるわけではない。濃縮が必要なのは通常のウラン燃料に等しく、プルサーマル自体のプルトニウムの節約効果とは全く別の話である。

(3)節約は実際に燃えた量で比較すべき
推進側の説明の図の中で、実際に利用するプルトニウムは10kg分だけ。MOX燃料に混ぜる減損ウランの重さを節約された量として勘定しても、燃えないウランなので意味はない。
実際に節約される量は
@使用前核燃料のウラン1トン分の中にできるプルトニウム量が10kg、そのうち7割が核分裂性プルトニウム。
A燃料加工中のロス率を1割と仮定(国は5%以下と主張するが目標値にすぎない)
B4年程度の燃焼では、ウラン燃料と同様の燃え残り率を仮定してプルトニウムの1/5が燃え残る。
C総合して、 10kg*0.7*0.9*0.8=5kgが一回のプルサーマルで燃焼するプルトニウムである(5kgのプルトニウムは5kgの放射性核種(死の灰)に転換される)。
これと比べて、最初のウラン燃料1トンでは放射性核種への転換量は50kgなので、一回のリサイクルにより得られた再生エネルギー量の比率は10%にすぎない。
(つまり一回のプルサーマルではワンススルーの場合の0.5%から0.55%にまでウラン利用率は増加したといえる。)

(4)投入されたエネルギーを差し引かねばならない
 10%はわずかなものですが、それさえ正味の節約分ではありません。そこから再処理をはじめ、MOX燃料の加工、輸送、貯蔵、使用済みMOX燃料の処理処分など各段階に投入されるエネルギーを差し引かねばなりません。
信頼できるデータは存在しませんが、その量が膨大になると予想され、プルサーマルに節約効果があるのか極めて疑問です。
−−−


ということで最後の海外工場での加工に関する投入エネルギーの部分は宿題となってしまいますがご容赦を。

またこの文章からは、プルサーマルがピークウラン問題に対する量的な節約にはほとんどならないことも見て取れます。

追記:とはいえ、逆説的にピークウランの文脈の中では、再処理で減損ウランを再度燃料化することの方に意義はある、という理解になりますね。


次は再処理工場のエネルギー消費量問題へ続く、かな?

後日記:
こんな記事がありました。
刈羽村プルサーマル住民投票は、なぜ「大事件」か
”要は、あくまでワンポイント・リリーフとして「プルトニウム利用」という荒れ玉ピッチャーを登板させるかさせないか、という選択になる。しかし、いずれ原子力から別のエネルギー資源に切り替えていくという課題に直面せざるをえないのだから、早くに手を打った国あるいは企業が国際的な経済競争において主導権を握ることになるだろう。逆に、原子力に拘泥し、そこに資力と人材を投入しすぎた国は、その分、エネルギー交代の流れに乗り遅れ、21世紀半ばを待たずして経済的に失速していくことになろう。”
このメッセージは結構クルものがありますね。


posted by おぐおぐ at 05:59| 核エネルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。