2006年05月02日

新・国家エネルギー戦略はお蔵入りすべき

”もちろん、真っ先につぶし合いテストを受けるべきなのは、Bauのハードエネルギー路線であるのですが。”と書いた続きになります。

この5月にも正式決定しようかという日本の「新・国家エネルギー戦略」の時代錯誤には哂えます、もう出来の良いジョークの域に達しています。

本文(24ページもの)
要約版(21ページもの)

本文の中には一部石油ピーク論についての言及もありますが、それは後日においておいて、まずはプレスリリースの文章の各段落を見ていきましょう。
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平成18年3月30日
経 済 産 業 省
資源エネルギー庁


「新・国家エネルギー戦略 中間とりまとめ」について

原油価格の高騰はじめ世界の厳しいエネルギー情勢を踏まえ、エネルギー安全保障を核とした「新・国家エネルギー戦略」の検討を進めてまいりました。今般、中間とりまとめを行いましたので、公表いたします。
1.「新・国家エネルギー戦略」策定の経緯と今後のスケジュール
経済産業省では、昨今の厳しいエネルギー情勢にかんがみ、総合資源エネルギー調査会総合部会(部会長・黒田昌裕 内閣府経済社会総合研究所所長)における議論も踏まえつつ、エネルギー安全保障を核とした「新・国家エネルギー戦略の策定を進めているところです。
このたび、中間とりまとめを行い、3月29日に行われた経済財政諮問会議においても紹介をしました。
今後は、戦略項目の具体的な内容をとりまとめ、「新・国家エネルギー戦略」として、本年5月を目途に最終とりまとめを行う予定です。


コメント:3月末までの状況と4月に入ってからの原油価格高騰の状況の違いを考えただけでも、抜本的な見直しが今必要であることがわかります。

東京工業品取引所原油先物の最終決済価格(数ヶ月前の先物予想の収束した金額) のページより
http://www.tocom.or.jp/jp/souba/crude_oil/kessai.html
(円の為替レートも含めて乱高下しそうな雰囲気ですのでドル換算と円換算と両方を書いておきます。)
    バーレル当りドル kl当り円
05年1月 38.553     25,040
  2月 40.472     26,710
  3月 46.528     30,820
  4月 47.698     32,240
  5月 45.902     30,870
  6月 51.515     35,210
  7月 53.146     37,420
  8月 57.060     39,760
  9月 57.445     40,140
  10月 54.595     39,460
  11月 51.957     38,700
05年12月 53.696     40,090
06年1月 58.848     42,740
  2月 58.109     43,110
  3月 58.503     43,180
  4月 64.843     47,790
  5月 65650     46120
  6月 65694     47360
  7月 69690     50730


日本経済は円高なので原油高が効かなくなっている、なんて一体誰が勘違いをしているのでしょう。円換算でもこの4月の原油価格は5年1月時点の価格の2倍近い数字になっています。
今回の戦略はどの時点で数値を練ったものでしょうか。2月頃でも4月に比べて1割ほど過小評価の下で計算しているのでしょう。

(7月分までの延長グラフはこちら)
oilprice


2.「新・国家エネルギー戦略 中間取りまとめ」の概要
戦略によって実現を目指す目標は、@国民に信頼されるエネルギー安全保障の確立、Aエネルギー問題と環境問題の一体的解決による持続可能な成長基盤の確立、Bアジア・世界のエネルギー需給問題克服への積極的貢献の3点となります。

これを達成するために、@国内における強靱なエネルギー需給構造の実現、A対外関係・国際貢献の強化、B緊急時対応策の充実を基本的視点とし、また、官民をあげて軸のぶれない取組を行うに当たり、官民が共有すべき長期的な方向性として、以下の数値目標を設定しております。

(1)省エネルギー目標
今後、2030年までに更に30%の効率改善を目指す。


コメント:24年間で30%という数字は、従来からの省エネ法における個別事業所が改善すべき目安値の年率1%改善よりも強化するものですが、企業の総数が増加するという前提ならば、より達成は厳しくなりますから、省エネ法の年率1%改善目安を2,3倍に強化する必要が出てきます。しかしそもそも90年台の10年間では単位GDP当りのエネルギー消費は悪化している(参考:気候ネットワーク資料より)のに、どうやって改善させられるのでしょう。

(2)石油依存度低減目標
今後、2030年までに、40%を下回る水準を目指す。


コメント:だから、何で代替することで低減するのかが明らかではありません。以下に特記されていないガスあるいは石炭へ転換するのでしょうか?

(3)運輸部門における石油依存度低減目標
今後、2030年までに、80%程度とすることを目指す。


コメント:だから、なんで低減するのかが明らかではありません。以下に特記されていないガスあるいは石炭へ転換するのでしょうか?

(4)原子力発電目標
2030年以降においても、原子力発電の比率を30〜40%程度、もしくはそれ以上することを目指す。


コメント:これは単に電力全体の中でのシェアの数字を示したものですが、電力の比率をどの程度にするのか、すら明確ではありません。どうしてここは一次エネルギー比で数字を出そうとしないのでしょうか。

(5)海外での資源開発目標
今後、更に拡大し、2030年までに40%程度を目指す。


コメント:だーかーら、何を探すんでしょう。過去の石油ショック以来の石油探査は失敗し続け、石油公団はすでに解体されています。現状の15%程度からどうやって40%を目指すのでしょう??
新規油田を探査・開発するのなら、その成功率はますます下がっているという、明々白々なことが書かれていません。

(本発表資料のお問い合わせ先)
資源エネルギー庁長官官房総合政策課
担当者:高橋企画調査官、安田、武尾、吉川
電 話:03−3501−1511(内線 4471〜3)
03−3501−2669(直通)


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総評:全体として、ほんとうにどうしようもない作文です。30年先について言えばどんな楽観論者でもピークオイルになっていると判断しているだろうに、ピークオイル論を無視した楽天的で具体性のない目標数字を並べることにはなんの意味もありません、ましてやピークオイル問題は明日の問題「かもしれない」のに。

これはつまり日本政府はピークオイル問題に対しては直面できない、全くのお手上げであることを意味しています。審議会委員はオルタナティブな道筋を複数個示さないという点で、クビものです。
資源エネ庁の役人は税金泥棒だとして、まず同庁を解体すべきです。

後日記:
国家エネルギー戦略本文・現状分析編を読む
でも詳細検討しています。

●いただいたコメントを以下に追加していきます。
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まったく同感です。
右肩上がりの時代の終焉の混乱の一幕を示す貴重な文書ですね。
ピークを直視する政治的なリーダーがそろそろ、日本でも登場していいころ。
これは「保守」でも「革新」でもなく、生存の問題なのに。
まあ、役人や政治家に期待しても仕方ないので、
ここで、ひとつひとつ「対案」など紹介したり、討論したりしていくってのはいかがでしょう。
まずは、時代認識。ですね。歴史的に自分達はどんな場所にいるのか。
あと、エネルギー理解。人間にはエネルギーを獲得、消費したり転換するこ
とはできても、作り出すことはできない。

などなど。
Posted by rita at 2006-05-03 09:09:55

ritaさんどうも。
話し合う場、大事そうですね。
やっぱり討論用のブログをも一つ作りましょうか。せっかくのゴールデンウィークなので。
Posted by SGW at 2006-05-03 13:41:34

この話題、人気もあるようですし、よろしくお願いします。
ニュースや記事の提供など協力は惜しまないつもりです。
お休みのところ、すみませんが。
Posted by rita at 2006-05-03 16:55:20

姉妹ブログ「ピークオイル時代を語ろう」
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/forum2/
を作りましたのでご参加ください。
Posted by SGW at 2006-05-03 17:31:52

SGWさんはかなりインサイダーな方とお見受けしました。
私も石油開発業界に籍を置く身ですが、業界団体のアンケートで、自主開発原油40%の目標をどう思うかとの質問に対しては、資金的には十分可能と答えておきました。
業界の誰しも探鉱の成功で確保することは考えておらず、開発・生産アセットの買収で確保するという戦略です。ただし、これも落とし穴があって、いくらお金を積んでも油が手に入らなくなる可能性には目をつぶっています。また、自主開発原油の本来の定義はいざ油断のときに自国に持ち込める原油の確保でしたが、これではとうてい目標は達成できないので、世界中どこの油でも権益を買収して40%を確保できればよいという本当にいざ油断のときに役に立つか疑問の政策です。この辺をマスコミは全く指摘していませんね。もちろん報告書にもその辺はぼかして書いてあり、一般にわかりにくい書き方になっていますが。
Posted by 魚讃人 at 2006-05-08 22:38:25

魚讃人さんこんばんわ。ははー、そういう重要な情報を全然知りませんでした。
日本政府は石油公団をどうしてつぶしたのか、公団の打率や目星はどうだったのか、ピークオイル仮説についての内部の評価はどうだったのか、とか、二回の石油ショックを経ての「油断」のシナリオプランニングはどんな実績だったのか、というあたりのことを知っている人が本当のインサイダーなんだろうと思います。(当方、トップページのプロフィールに偽りもなにもありません)
Posted by SGW at 2006-05-09 00:27:19

みなさんこんにちわ!

魚讃人さんいらっしゃいましたね。こちらと「ピークオイル時代を語ろう」も皆さんにご紹介いたしました。中でも、産経外信部のみかりんさんは現在、「フェローシップで、エネルギー政策、代替エネルギーで、来週(4月)28日から米国のほうにまいります。いくのはサクラメント、ヒューストン、ルイジアナ・・・」との事で帰国は5/28だそうです。5/26の石井先生の講演でお会いしたかったのですが。

みかりん見てますか〜?頑張って下さい!!
Posted by Y at 2006-05-10 12:52:05

Yさん、ご紹介をありがとうございます。
石井さんの講演会の記事も「語ろう」の方に作りましたので、そちらでオフの話題などもどうぞ。
Posted by SGW at 2006-05-10 18:14:24


posted by おぐおぐ at 18:26| ピークオイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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