2006年04月27日

「パーム油は環境にやさしい」と言わないでby地球・人間環境フォーラム

「パーム油は環境にやさしい」と言わないで
ライオン「新トップ」のCMに関する要請書を提出

というホームページがあります。

「パーム油を使用しているから環境にやさしい」というライオン社のCMの表現は正しいのでしょうか。

ライオン社からの返事もあったようで、それについてのコメントを募集していましたので、下記のようなコメントを作って送りました。

 実際のところ、バイオ燃料としてマレーシアがパーム油からのBDF(バイオディーゼル燃料)を大々的に開発しようとしている点の方がもっと問題だとは思っています。

ブログ:サステナ・ラボにこの関連記事があります。
「パーム油は環境に優しいと言わないで」
BDFにご用心!

後日記:
・国際環境NGO FoEJapanのプレスリリース
「エコ燃料(バイオマス燃料)の持続可能性について要請」
では、日本政府がブラジル等からバイオエタノールを輸入しようとしていることに対して基準を求めるメッセージを3団体共同で出しています。こちらもご覧下さい、激しく賛同ですっ!

「日経エコロジー」6月号で「バイオ燃料」に関するシステム思考的考察を紹介(チェンジ・エージェント)


パーム油のブリーフィング・ノート(背景説明資料)by地球・人間環境フォーラム−−−−ここからは送付した文章(に一部改変を加えています)

 ライオン社の「植物原料の使用は大気中のCO2増加抑制に貢献する」という主張に関連して、京都議定書の国際交渉をウォッチしていた元環境NGOスタッフとしての視点から、温暖化対策としてのバイオマス資源の取り扱いについてコメントします。


1.温暖化対策についての「京都議定書」の中では、第3条3項のARD活動(土地利用変化(LUC)活動)と、第3条4項の継続中の森林・農地での(LU)活動の2つに関して取り扱いに区別を置いています。(左上の英文の表を参照のこと、太字が第3条3項活動)
現在は途上国は議定書の削減義務を負う国になっていないため除外されていますが、特に途上国で温暖化の原因となっている森林破壊問題については、次期(以降の)約束期間に途上国が削減義務を負うようになった場合、この各条項が途上国の森林でも適用されます。

このように森林を切り開いてオイルパーム農園を作る活動は京都議定書の下で総量規制を受けるD(eforestation)活動=森林減少活動とみなされるべきものです。
 つまり、産物であるパームが、継続中の農地からの採取物であるのか、新たに森林を切り開いて作られるのかで、取り扱いは180度違うということをライオン社さんは認識して、消費者に対して情報開示をしていただく必要があります。
(もちろん、従来は荒地であった場所にオイルパーム農園を作った場合には、(見かけは森のように見えても)議定書上では森林(すなわちAR活動)とみなされることはないですが、オイルパームという植物の成長量のバイオマスの量だけを吸収とみることは可能です。但しそのような、元が森林ではない荒地を開発したプランテーションの実例がほとんどないことはライオン社さんはご存知でしょう。)


2.ちなみに、第3条4項の中にある「継続中の農地」での吸収量は、農作物ではなく土壌中の有機物の増加のみを勘定することとされていますので、継続中のプランテーションから得られるパーム油自身も「吸収」の産物とは呼べないことになります。「カーボンニュートラル」という言葉は、この間接効果をブランド化するために民間で名づけられた呼び名にしかすぎません。
(この状況は現在のところ農産物系バイオマスでも林産物系バイオマスでも変わりはありません。)


3.COP11/COPMOP1における国際交渉の中でも、新たに熱帯林途上国連合(CRN)から、クリーン開発メカニズム(CDM)の範疇の活動として、途上国の国内の森林減少総量(ベースライン量)に対して森林減少防止活動の効果を評価してクレジットを掛けることが提案され、議題として取上げられることが決まりました。上記(1.)の議論を更に一歩進める仕組みになるかもしれません。


4.もちろん、石油由来の原料から植物成分由来に変えたことにより石油の消費量が減るという間接的な効果はあるはずでしょうが、それらは元々明示して評価はされていません。
というのは、今年4月に始まったばかりの、工場からの二酸化炭素排出量の算定・報告・公表制度においては、製品原料としての石油半製品を購入したものは排出量計算の対象に含めていないはずだからです。
この点からも、宣伝の中身は誇大宣伝であると言わざるを得ません。


5.世界の森林破壊問題は、それ自身も一つの地球環境問題です
図1.森林関連の論理の対立点と京都議定書の論理(全国地球温暖化防止活動推進センターのレポートより)
http://www.jccca.org/about/zenkoku/1999/350_1.pdf#page=2

後日記:
リンク先が切れてしまっていますので、代わりに図をアップしています。
 1.の概念とも重なりますが、この表の中で、「拡大造林型の植林(つまり天然林を伐採して跡地を人工林/プランテーション化すること)をずっと続けることができる」とする産業側のビジネスアズユージュアル(Bau)の考え方と、継続中の森林での「持続可能な森林管理(SFM)の効果を勘定」や「天然林伐採の代替としての人工林の活用」を求める保全派の論理との対立が現在起っていることなのだと思います。
 このそれぞれの論理の接続や論理の対立点の現状を、きちんとライオン社の側は理解できているのか、を問いかけたいと思います。


6.最後に、CMを出す企業は、それ自身としては意図せざる波及的なCMの悪影響に配慮すべきだと考えます。
 ライオン社の宣伝のおかげで大衆に良い印象が植え付けられることでパーム油の消費が増えれば、他企業や他国での需要にも火をつけ、それが波及して、更に途上国でプランテーションの乱開発が進むこと、そしてその一方でそれを食い止めるべき法規制もインドネシアなどの途上国では名目的なものであり実質的には機能していません。途上国で活動を行う限りこのようなリスクは存在します。
 ですからライオンさんが善意でやっていて、本当に環境によい活動を行っていたと思っていてもこれは宣伝するべきではないのではないでしょうか。
たとえは悪いかもしれませんが、消費者金融各社だって、中には良心的な企業が居るとしても業界各社のCMはどんどん過剰債務の危険性を訴えるものに後退せざるをえなくなっています。そのような配慮が必要なジャンルの問題であると考えます。
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posted by おぐおぐ at 11:00| バイオ燃料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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