2006年04月21日

「不確実な未来をどう扱うか」

NHKなどで紹介されてきた気候シミュレーションを見ていて思うことですが、ともすれば辿れる路線があまりにも少ない、という誤解をさせる危険性があるのではないかと思います。

ちょっとはその中和薬になればと思い書いてみます。

日経サイエンス誌の2005年7月号に、「不確実な未来をどう扱うか」という記事が載っていました。
アメリカのランド研究所のポパー、レンパート、バンクスらの論文で、「緊急の課題に比べて、正確な予測が難しい気候変動のような長期的な問題の解決は先送りされがちだ だが予測できない未来に対応する方法があるはずだ」
とあります。

四角の枠に囲んだ要約として
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 不確実な未来に取り組む
■科学は政府や企業での意思決定に不可欠だが、費用便益分析をはじめとする意思決定の枠組みは、不確実性があるために正しく機能しないことがある。結局人間は何もしないことを選んだり、長期的展望を悪化させるような行動を取ったりすることも多い。
■著者たちは柔軟性に重点を置いた新しい枠組みを開発した。これは何がおきても十分に機能する政策を示し、テストを行い、それを実行するというものだ。
■状況に合わせて変更できるような仕組みを備えた政策が考えられる。温暖化防止に関するこのような仕組みの一つが「安全弁」方式で、確実に排出量を削減しながら費用が高くなりすぎないようにする。
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としています。ピークオイルあり、急激な気候変動ありの、まさに「危」「機」の時代の意思決定をどう支援するかというのが問題意識なのでしょう。

後日記:
 1.気候モデルはどこまで信用できるか/信頼できるか
 2.不確実な科学の現状で何を想定するか
 3.実験による確認は可能か
 4.予防原則とノーリグレット対策
のそれぞれの記事もご覧下さい。 著者たちは、温暖化対策の有効性についての懐疑派の代表ともいえるビョルン・ロンボルグが主催した「コペンハーゲン・コンセンサス」という、経済学者が地球の優先課題の順位付けをするプロセスについても述べていて、「だがその過程で、最新技術をもってしても「未来は不確実である」という単純な事実に対処できないことが明らかになった。」そこで、「この問題に対処するために、綿密で体系的な方法を構築した。」としています。

----以下、抜粋。

・基本的な考え方は、「正確な未来予測」というないものねだりから脱却することだ。その代わり、起こりうる未来を非常に広い範囲にわたって想定し、そのどれででもうまく働く戦略をコンピューターを用いて構築する。

・意思決定者は起こりうるさまざまなシナリオを比較検討できるので、「私たちにとって最も望ましい未来を作るには、今どんな行動をとればよいのか」というより現実に即した疑問としてとらえ直すことができる。

・一つの予測にかけるのではなく、未来の複数の可能性について検討する「シナリオプランニング」のような手法が注目されるようになった。

・問題は残る。未来にはさまざまな可能性が考えられるのに、検討されるのはほんの一部分だ。さらに、最悪のケースに注目するべきか、それとも専門家が一番可能性が高いと考えるものにすべきだろうか。

・費用便益分析などの従来手法はまず未来を予測する必要がある。…まずどのようなモデルや仮説を支持するかすべての人が合意しなければならないため、社会が直面している最も重要な議論の多くは解決できない。


・そこで私たちは「最善な戦略」ではなく「頑健な戦略」を探すことにした。
想定どおりの事態でも、予想もしない事態でも、そこそこの結果が得られるはずだ。

・不確実性に対処するには、コンピューターの処理能力を上げるだけでは不十分だ。コンピューターの使い方自体を変える必要がある。

・頑健な政策決定法では、推論の過程でコンピューターを活用する。コンピューターを使って、候補となっている戦略のどれがうまく機能するかテストを行い、それに耐えうるような信頼性のあるシナリオを探すのだ。

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人間が主体となって、ありうべき未来を数多くのシナリオとして構想し、その実行可能性をコンピュータの力で評価するのが冴えたやり方なのだといっています。
正直言ってこのやり方は効果が上がるのかわかりませんが、出てくる成果で判断すべきでしょう。

 もし現代の危機が想像力の危機なのであれば、なすべきことは明らかです。
頑健ではない戦略はつぶさなければなりません。皆でまずありとあらゆる「偽りの希望」を出し合い、それらをしらみつぶしにつぶし尽くせば、生き残ったものが「頑健な戦略」です。一つも生き残らなければ、更に考え出し続けなければなりません。


もう10年ほどまえになりますが、幸田シャーミンがエイモリー・ロビンズにインタビューをした記事から引用をしておきます。
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(幸田) ロビンズさんは将来に対して楽観派ですか。それとも悲観的ですか?

(ロビンズ) ジェイムズ・ブランチ・カベルという人が「楽観主義者は、自分たちは望み得る最高の世界に住んでいると言い、悲観主義者はこれでも最高なんだと嘆く」と述べています。私は両者は運命に屈していることのコインの裏表だと思います。未来は運命ではなく、選択するものだと私は考えています。私たちは、知恵を絞って、責任を持って道を選択をしなければならないのです。

−−−


追記:
独立行政法人国立環境研究所の「脱温暖化2050プロジェクト」のページより。
”テレビ放送のお知らせ
2006年2月16日に開催された「脱温暖化社会に向けた挑戦−京都議定書発効から1年−」のパネルディスカッションの様子がNHK教育「土曜フォーラム」(4月29日23時30分から)で放送される予定です。”とのことです。

この日のパネルディスカッションは、
パネリスト:西岡秀三 (独)国立環境研究所 理事
       Jim Skea 英国エネルギーセンター 理事
       産業界の有識者 シャープ(株)
       枝廣淳子 NGO「Japan for Sustainability」 共同代表
       花木啓祐 東京大学大学院工学系研究科 教授
司会進行: 好本恵 フリーアナウンサー
というメンバーでした。

ここの別ページには当日のシンポでの研究者の講演資料などもありますので覗いてみてください。

さて、ここのHPの題目である2050年からのバックキャスティングプロジェクトは日英共同プロジェクトになったとのことですが、果たしてそれが「頑健な戦略」かどうかのつぶし合いテストをやったりするんでしょうか。

もちろん、真っ先につぶし合いテストを受けるべきなのは、Bauのハードエネルギー路線であるのですが。
新・国家エネルギー戦略はお蔵入りすべき


posted by おぐおぐ at 21:01| 環境哲学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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