2006年04月13日

ソフトエネルギーパスとは何か?

もう二十何年も前になりますが、大学では太陽エネルギーの利用を課題に上げる研究室に所属していたことから、総論についても勉強したことがあるはずですが、どんな習い方をしたかはもう覚えていません。
太陽熱浄水器やソーラーポンド(太陽熱を蓄熱する機能を持った池)、水素吸蔵合金を使った蓄熱装置などの目新しい文献を読んだことくらいは覚えていますが、実際に役に立ったものって何もないのが悲しい話です。石油ショック後の一時的流行だったのでしょうか。

●本「ソフト・エネルギー・パス」(末尾に紹介)

古くはその当時から、エイリー・ロビンズが本「ソフト・エネルギー・パス」で示していたように、問題を技術で克服するというハード路線と、そのエネルギーが持っている特性にあった活用をするというソフト路線の違いは明確化されていました。
後日記:
(日本人では訳者の槌屋治紀氏が「エネルギー耕作型文明−エネルギー自立へのシナリオ」(末尾に紹介)を書いてソフト・エネルギー・パス普及の立役者になっていました。この本にはまさに今のピークオイル問題も温暖化問題も包含していて、今になっても役立つ本ですねー、古典の一冊といえます。この本がアマゾンの古本屋で100円の値札がついているとは(号泣)。今のうちに買い占めてしまおうか。)

従来の化石燃料発電や原子力発電などはもちろんハードエネルギーパスそのものなわけですから、それらをひたすら推進する「需要を賄うための供給力増強」路線を批判して、需要端管理(DSM)の重要さを明確にしたことがこの本の中心論題だったわけです。(実際に石油ショック後、2000年頃までの米国*のエネルギー供給-需要実績は、このロビンズのソフトエネルギーパス路線で予測されたそのままの推移をしてきたことはあまり知られていませんが重要なことです。)
(*後日注:記憶が薄れていますが、米国全体ではなく、カリフォルニア州についての分析が当っていたのだったかもしれません。

ですが現在一般的にはソフトエネルギーパスの代表選手と思われている自然エネルギーの中でも、実はハードとソフトの2路線は存在していました。(本の中にもあったはずです。)
前回書きました自然エネルギーの分類の中の、分散型と集中型の間に横たわっている違いの多くは、このハード路線とソフト路線の違いに関わるものでしょう。

●自然エネルギーの中のハードパス自然エネルギーが持つ「間欠性」や「稀薄性」といった欠点(とされるもの)に対して、このハードな路線とソフトな路線ではそれぞれ以下の違う設計思想で対応が行われていることになります。太陽光発電を例に考えてみると、

A.間欠性=時間変動がある
 ↓
 変動の大きい供給エネルギーをどうやって必要な時点のエネルギー需要に適合するよう調節するか。
 ↓
・ハード路線 蓄電/蓄熱システム付きの大規模な容量のものにする
・ソフト路線 目標とするある需要に供給規模を合わせた(その他の時には)補助的なエネルギー源とする or 過大な供給エネルギーはシステム外に輸出する(売電/売熱)ことで安定化を図る

B.稀薄性
 ↓
広い面積の太陽光などを受ける土地が必要となる/コスト問題をどうするか。
 ↓
・ハード路線 遠隔地(海外の砂漠など)に大面積を確保できる場所に発電所を建てる
・ソフト路線 需要端(住宅の屋根)に必要最小限度のシステムを作る

あるいは、建築系ではソーラーハウス(太陽熱(冷)暖房住宅)の設計における、アクティブソーラーハウスとパッシブソーラーハウスの違いも、このハード路線かソフト路線かの分類に類似した違いのように思えます。


●従来型システムとの接続か分離か

ではここで、既存の、従来型の集中エネルギー供給システムとの関係をどう考えるか、どの程度切り離して独立したものとしうるか、という観点から同じ問題を見ていきましょう。

上の二つの問題ともソフト路線を採用すれば、自然エネルギー自身は補助的な用途に用い、それでは足りないバックアップ/余剰分のはけ口を電力会社などの系統ネットワークに頼るシステムを構築することができます。その逆にハード路線を採用してシステムの完璧さを求めるのであれば、必然的に過大容量の、蓄電システムなどを完備したものにせざるをえません。

つまりこの接続か分離かは、一般的なイメージのハード路線とソフト路線とは正反対の現れ方をすることになります。ハード路線の方が分離が可能である一方で、ソフト路線は集中型の従来システムとの相性が良い=移行がより簡単ということになります。

すでに電力系統が張り巡らされておりエネルギーサービスの供給者と消費者の意識の分化が進んでいる先進国では、系統連携にしないハード路線はかなり導入費用が割り増しになると思われます。とはいえ、電力ネットワークが崩壊するような時期(ピークオイル後の一時期の大混乱を想定していますが)には、ハード路線の自然エネルギーはその採用者はとても良い意義があるでしょう。

後日注:
”この論争の中で特によく取上げられているのがソフト・パスとハード・パスとは技術的には両立するが、社会的・文化的・政治的には排他的であるとした点である。
ロビンスによれば、ハードパスを中止しないかぎり人的資源、資金、時間が奪われて、ソフト・パスへの移行が困難になる。(槌屋)”
ということで少なくとも当時のロビンス自身は組み合わせを想定していないようですが。

後日注:
そういえば、両者の妥協だか整合性を図るというような意味のホロニック・パスという言葉の本も昔ありましたが、ここの中身と合っているのかどうか覚えていませんので、ちょっと使いたくない言葉ではあります。

この議論が重要なのは、電力会社にしろ、ガス会社にしろ従来型システムのサービス供給者にとって大きな利害関係があることは明らかだからです。
自然エネルギー普及のための各種政策は、これら電力会社とガス会社の商売に手を突っ込む問題であるということについて共通認識を作り上げ、しかもなお現状からの変化への合意を取り付けることが重要な政治課題になります。

より多くの消費者がハードな自然エネルギーへの道を歩むようになれば、従来のエネルギー供給者は単なるルーザーになります。ハードな道という選択肢があってむしろソフトな道を選べるのなら、電力会社にも生き残るすべを見つけさせられるでしょう。

今の日本では単に電力会社が、Bau以外のものを拒否しているというのが現状でしょう。

思い出してみると、「ソフトエネルギーパス」の本の中でもっとも目新しかったのは、必要なのは工学的な技術にあるのではなく、DSMのような社会的なシステムを作り上げる政治的な技術なのだ、という概念だったように思います。そしてそれは、いまだに今日的な課題として横たわっているのです。

後日記:
エイモリーロビンズの10年前のインタビューがありました。



ソフト・エネルギー・パス―永続的平和への道(著)エイモリー・ロビンズ,室田 泰弘,槌屋 治紀
ソフト・エネルギー・パス―永続的平和への道
出版社/メーカー:時事通信社
価格:¥ 1,890
ISBN/ASIN:4788779145
Rating:ZERO

エネルギー耕作型文明―エネルギー自立へのシナリオ
出版社/メーカー:東洋経済新報社
価格:¥ 1,365
ISBN/ASIN:4492800042
Rating:ZERO
posted by おぐおぐ at 17:34| 再生可能エネルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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