2006年03月30日

今世紀末に氷河融解で海面数メートル上昇「か??」

3月24日付けの米サイエンス誌では、世界の氷床に何が起っているかの特集をしています。
Climate Change -- Breaking the Ice

(サイエンス誌というのはネイチャー誌と並んで、総合的な科学論文の発表場所としては一番権威があるところですね。
たしか月刊の「日経サイエンス」は別の総合科学雑誌であるサイエンティフィック・アメリカンからの記事利用だったかと思います。)

これを受けて、ちょっと人騒がせな記事が出ています。

朝日:今世紀末、氷河融解で海面数メートル上昇
ってこりゃ、表題そのものは誤報じゃないすか?

 ”地球温暖化でグリーンランドなどの気温が上昇、21世紀末に、現在より海面が数メートル高かった13万年前と同じ状況になる”という文言を誤読したのかもしれません。記事本文の中では紛らわしい表現ですが、いつ海面が数メートル上昇するかの明言は注意深く避けています。
朝日新聞の表題を付けるデスクも質が落ちた「か?」。
(スポーツ紙の表題のようにこの表題にも「か?」を付けておかなくちゃ。)

どうも他の英文記事を見ると研究者当人は別のインタビュー記事の中でそれに近い発言をしていたようですが、実際に掲載されている数字はseveral(つまり5〜6)世紀の間に3メートル分という数字です。

つまり、言いたいことは、あと100年でグリーンランド付近の局地温度が2.7℃程度上昇してしまったら、もう不可逆的に3メートル以上の上昇まで進んでしまうことを止められないという、エクセター会議本の議論の続きなのでしょう。・また、地震ならぬ「氷河」震が増えているという論文も掲載されています。
Global warming doubles glacial quakes
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2006/03/24/wflood124.xml&sSheet=/news/2006/03/24/ixhome.html
すべる際にマグニチュード5くらいのものになるそうな、こういうメカニズムがあると、氷河の海中への進み方がどう加速するかわからないという気にもなります。


 古気候学がどう将来予測に適用できるかについて、サイエンス誌のエディトリアルの記事「Ice and History」に紹介がありましたので簡単な要約をしてみました。
http://www.sciencemag.org/cgi/content/summary/311/5768/1673
−−−ここから
気候変動の論争は最近数百年間の出来事(いわゆるホッケースティック論争)に時間を取り過ぎてきた。
5千万年前の海水面は現在より50メートルも高く、CO2濃度は1000ppmにもなっていた。それから海洋のプランクトンの死骸が深海へ沈み込むポンプ作用でCO2を除去することにより次第に気温が低下し、3,4千万年前から南極大陸に氷床が出来始めた。
3,4百万年前からはCO2濃度はおそらく290ppm以下となり、北半球にも恒久的な氷床が現れ始めた。それ以降の氷期−間氷期サイクルの間は、気温とCO2濃度は緊密にリンクしている。
氷期には氷床が成長し海水面は現在より100メートルほども低下した。間氷期には海水面も氷床も上に上がり、安定した温暖期となった。
つまり少なくとも1千万年前までの間は、大気中のCO2濃度は現在の濃度の380ppmにまで達したことはなかった。Miocene/中新世(約2300万年前〜520万年前)のうちの1千万年前の時期にはグリーンランドには大きな氷床はなく、気温は現在より数度高く、海面は数メートル高かった。

一方、今回掲載の2つの論文ではEemian/最終間氷期(13万年前〜12万年前)との比較を行っている。この時期はHolocene/完新世(=現在の間氷期、1万年前から今日)と同様に暖かく、海水面は数メートル高かったが、一方CO2濃度は現在のレベルよりもだいぶ低かった。
2つの論文はグリーンランドと南極の氷床の減少が加速することを新たなストーリーとして示している。

これら2種類の過去記録を将来の温暖化評価の対象として用いることができる。過去1万年間は気候は安定していたが、我々はその重要なパラメータを変えつつある。
急激なCO2濃度の上昇により、他のものが変化することが想定される。それは中新世への変化だろうか、それとも最終間氷期への変化だろうか?
いずれにしても”平衡状態”の気候モデルは比較対象とはならない。今は動的なシステムの変化の真っ只中にあるのであり、完新世の安定が続くことを期待できる根拠はない。

 政治的な論争の目的がリスクに備えるためであるなら、過去の歴史記録から読み取れる急激な気候の変化が起った状況とその規模についての問いにこそ注目することが重要である。
それはつまり、氷河の融解の加速と海面上昇といった出来事を起りうる問題とみなすべきであることを意味する。

−−−ここまで

コメント:
ということで古気候学の定常的な状態とのアナロジーがどれほど取れるのかは疑問ですが、収束点がどことどこの間になりそうか、という目安くらいにはなると言いたいのでしょう。

目を通せていないですが以下、英語圏の関連記事を付けておきます。

Ice Sheets Melting at a Worrisome Rate
http://www.climateark.org/articles/reader.asp?linkid=54321

Little time to avoid big thaw, scientists warn
http://www.csmonitor.com/2006/0324/p01s03-sten.html

Scientists Predict Faster Sea Level Rise
http://www.voanews.com/english/2006-03-23-voa57.cfm

Sea rise could be 'catastrophic'
http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/4834806.stm

Melting polar ice poses global changes
http://www.contracostatimes.com/mld/cctimes/living/science/14175988.htm

Oceans Rising Fast, New Studies Find
http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?file=/c/a/2006/03/24/MNG22HTITV1.DTL

Mr. President, Greenland is melting
http://www.statesmanexaminer.com/articles/2006/03/22/columns/col02.txt

All Hands To The Pumps! Here Comes The Sea

Global warming trend on course to submerge coasts, researchers say

New York, London, Hong Kong business hubs to submerge by 2100?

Scientists issue dramatic polar ice warning

Melting Ice Sheets Could Spur Oceans' Rise - Study

Global Warming Might Sink America's Coasts


posted by おぐおぐ at 02:38| 気候カタストロフィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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