2006年01月07日

南太平洋の環境難民受け入れ論議

 ブッシュが燃え、論争も燃え広がるオーストラリア
の続きとも言えるでしょうか、オーストラリアでの議論を新聞記事から抜粋で紹介します。

Surging seas force islanders to pack their bags
 Ben Bohane記者はバヌアツのテグア島を訪れた。チーフ・ルーベンは子供時代の住居を放棄したことを語り、今では高潮と大潮が重なり年1回はロテウ村を襲うと語った。モントリオール気候会議でも代表がそう語った。この村の内陸部への移住と雨水集めの設備の資金をカナダ政府が南太平洋地域環境プログラムに対して拠出することを決めた。

Rising sea levels threaten Pacific islands
 オーストラリア野党労働党は今日、「環境難民」を受け入れる政策を発表する。以前政府は2050年までに温暖化により上昇する海面に飲み込まれるだろうツバルからの移住の依頼を拒否していた。労働党環境担当のALBANESE氏は、気候変動と戦う戦略の一環として、気候変動難民の問題にも対処しなければならないと語った。
 インタビュアーにバングラデシュからの難民受け入れの必要性を突っ込まれて、彼は太平洋の島国に対しては特別な責任をオーストラリアは負っていると答えた。新しい環境に適応するための準備も必要であり、難民受け入れは容易なことではないが、周りの問題を無視することはできないと語った。
Australia: Labor bid to accept climate change refugees
同上
 オーストラリアは特に他の環太平洋諸国と相談して正当な比率の環境難民の受け入れをすべきだ、と語った。Fatalism concern on climate change
 グリーンピースは労働党のこの発表が宿命論に流されることに警鐘を鳴らした。環境難民を受け入れることは歓迎すべきことだが、温室効果ガス排出の努力を諦める事になっては問題だと。
 環境グループは、来週行われるAP6パートナーシップのことを、”石炭協定”と呼んでおり、オーストラリアと米国からのウランと石炭の輸出拡大を目指したものだとしている。
 
Australia: Ministers remain unmoved by threat of rising sea levels
 オーストラリア連邦政府は、温暖化のせいで島国の人々が緊急に立ち退く必要があるとの証拠はないと否定して、キャンベル環境相はばかげた提案だと語った。ダウナー外相はしかし長期的な問題であり現在評価するのは尚早とし、海面上昇の計測記録により適切に判断する、と語った。
 環境シンクタンクは、近い将来英連邦ゲーム参加国は54から51に減少すると語った。緑の党は、2ヶ月前に環境難民を認めるよう求める同党からの決議案に労働党が反対していたことを思い出させた。
 
Australia: 'No room' for ALP's climate refugees
 オーストラリアの現在の一人当たり排出量は非常に高いので、受け入れた難民の人数分だけCO2排出量が増えてしまう、だからオーストラリアには受け入れるべきではない、と著名な経済学者Warwick McKibbinは語った。
そして賠償の責任は、主要な排出国欧州とアメリカが担うべきだとする。
そして、環境難民に対する国境開放政策は、現政府が温暖化問題を否定する方針に追いやられていると感じる原因となっていると指摘した。

Get ready for climate change refugees, Australia told
 同上

P.S.
 最後に一つ、毛色は違いますが長期気温目標の論議も出てきています。
20 years left to achieve climate stability - scientist
 オーストラリアの著名な科学者ティム・フラナリーは、地球の気候が不可逆的に変化するまで、今後20年間の内に、経済大国主要国は劇的な温暖化対策を採る必要があると語った。平均気温を2℃昇温以下に抑えられるか気候安定化に失敗したのかを知るには20年間しかない、と。
 オーストラリア国立大学のWill Steffen教授は、それは最悪ケースシナリオだが、ありえなくはないと語った。

コメントをいただきました。
Posted by rita at 2006-01-07 18:38:2
Tim Flanneryは温暖化について、いろいろなベストセラーも書いていますが、原発の利用もやむを得ないと言う意見の持ち主です。
温暖化をとめるためには原発をってな議論が最近高まってきており、その意味では警戒しなければならない論客のひとりではないかと思います。
それでなくとも、原子力体制に突き進んでいる国ですから。

Posted by SGW at 2006-01-07 19:43:58
 ritaさん、僕自身も結構環境保護派としては厳しい状況に追い込まれつつあると思います。
温暖化対策としての原発のリバイバル?
をお読みいただければ。
まあそういう論客ともちゃんと議論をしていかないといけないと思います。
 「長期気温目標の設定」はある意味、このブログのテーマでもありますので、とりあえずはオーストラリアにも「長期気温目標」を提示してマスコミに伝える科学者が居るというのはありがたいことです。

Posted by rita at 2006-01-08 05:10:52
sgwさま、
オーストラリアにも「長期気温目標」を提示してマスコミに伝える科学者が居るということ自体、すごいたいせつなことです。

でも、そこで、「じゃあ、どうしたらいいの」ということになります。
フラナリーのような人物が危険なのは、説得力があるだけに「原発もしかたがない」とする意見が原発推進の御墨付き、免罪符に使われてしまうからです。
しかも、「原発」は目に見えるので、何かやっている気になる。
彼自身が「温暖化か原発か」というふうに問題を矮小化しているわけではないとしても、「原発」が解決策のひとつであるような幻想を与えています。

フラナリーも、マスコミを中心とした原発のグリーンウォッシュに利用されているところがあり、その文脈でとても危険だと思います。


Posted by SGW at 2006-01-08 12:41:51
ritaさん (さま付けはやめてくださいまし)
 2℃の上限ははっきり言ってむちゃくちゃ厳しい条件です。
(誤解で始まるWait and See:バスタブの概念の基礎
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/stopglobalwarming/1268.html
をご覧ください)
 ので、原発を推進すれば解決できるという規模とスピードではありえません。

 英国などでラブロックがあからさまに原発推進の旗を振ったり、ブレアが原発新設に方針転換するというあたりまではいやおうなしに出てくるバックラッシュだと思っています。
 その上で、20年間で決着が付いてしまうのなら、核融合ももちろん、高速増殖炉をはじめとする核燃料サイクルの開発が温暖化対策の役には立たないこともはっきりします。
 不要不急の再処理云々をストップして他の短期対策にお金を振り向けることを目指すことができるでしょう。
その対策の大半は大幅な省エネでしょうがそればかりではなく産業構造の転換にまで及ぶことになります。自動車産業と鉄鋼産業、セメント産業の再編新戦略を経済産業省は立てることになります。
 そういう変革が起こってくれば、日本特有の立地条件としての大地震が起こるというのもリスク管理の想定の一つとして織り込まれるようになり、日本国内での原発問題についてはおのずから結論が出るのではないかと思います。

 というあたりが夢物語になるとしても不思議ではないですが、それでも夢は持ち続けていたいですね。

Posted by rita at 2006-01-08 14:59:45
sgwさん(すんません、癖です)

スピードと規模をともなう対策が今すぐ要求されてる、切羽詰まっているって時に、「原発」なんての持ち出されたら、論破すればいいのに、「うーん、ごにょごにょ、それも必要かなあ」なんていうからフラナリー、困っちゃいます。
フラナリーの原発幻想は、9月とか10月に開かれた世界有機農の集まりでも、ホルムグレンにそのあたり突っ込まれたそうです。
原発なんてノンオプションに時間や金を使っている場合じゃないのにって、そこがわかっていないようです。

個人的には自動車や航空運賃にめちゃくちゃな課税する。そして自転車産業と、公共交通に莫大なお金を今すぐ使う。
なんてのが夢。でも、それじゃ、間に合わないか?

Posted by SGW at 2006-01-08 17:00:29
ritaさん、
 いやー、そもそもの話に戻りますが、フラナリーの記事はアイリッシュイグザミナーというところが出していて、オーストラリアのメディアじゃないんですよね、残念なことに。

 同じ藁にもすがる思いということであれば、欧州では原発よりもむしろCCS(二酸化炭素の回収・貯留)を一気に進めそうに思います。実はこれはオイルピーク、石油減耗対策としてのEORでの媒体に使えるので、たくさん石油を採掘した後、油田に封じ込めるというのが一石二鳥となりますので。
 同様の仕組みとして、炭層メタンガスCBMの採掘もかねて二酸化炭素を石炭層に貯蔵するというECBMが新たな資源採集法としても実験されています。
 もし、地下に埋蔵された石炭を長い未来にわたって封印するというような合意が取れるのであれば、ECBMは対象にする価値があるかもしれません。そうでなければいずれ掘り出される炭層には溜められる期間が短いことになるので意味がないですが。

ただ、資源採掘に役立たないタイプのCCSでは、まるで金をドブに捨てるようなものだ、と進まないと思いますが。

Posted by rita at 2006-01-09 06:55:28
そういう時代認識が重要で、その上で、何をしなけりゃならないのか、政策をきめてかなけりゃいけない。
のに、この国(日本もそうですが)の政治家ときたら目先の選挙のことしか考えてない。
んで、そういう国政レベルの政策にロビイングしてくこともとても重要なんですが、やはり個人個人、できることからやってかなければならない。そんな気がします。
オイルピーク関連ですが、アイルランドの町が世界で初めて「オイル以後への下り方」を盛り込んだ長期計画を作成しました。
温暖化対策でも下のほうからも、自発的に突き上げていかないと、だめなんじゃないか、そんな気もします。

それはさておき。
うちの技術担当からトラバに関して返事がありまして、
「基本的に、こちらの受側には問題がないような感じがするの
です...もしかして、そのブログサイトのトラックバックPINGの設定ではないでしょうか...
と思うのですが。も1度試していただけますか」
とのこと。すんませんが、もいちどためしていただけますか。
よろしく。

Posted by SGW at 2006-01-09 22:41:28
 ritaさん、
 オイルピーク問題、パニックを起こすような出来事になるまでは部分部分が痛みを吸収しようとする姉歯建築士状態なのかもしれません。

 TBはやはりうまくいかない(のではなくて成功と表示されて、そちらには反応なし)です。Cocologにはいつもスパムと判断されて送れないですし、ブログのシステムを提供するほうも結構大変なようで。


posted by おぐおぐ at 16:52| 適応策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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