2005年12月03日

規制を求めるグリーン産業と渋る政府

 まるで出し遅れの証文になってしまいそうでした。

 土曜日のデモでも参加する有名人として名前が挙がっていたジョージ・モンビオの9月の記事を以前仮訳していたのでした。

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あべこべの世界では(A World Turned Upside Down)
企業が規制を望み、政府がそれを課すことを拒んでいる
By George Monbiot 英国ガーディアン紙 2005年9月20日
http://www.monbiot.com/archives/2005/09/20/a-world-turned-upside-down/#more-951

 気候変動を否認する理屈は4つの段階を通して働いている。
化石燃料ロビイストはまずは、地球温暖化は神話であり現実ではないと言った。
 次に温暖化が起っていることは認めたが温暖化は良いことだと主張しだした、
北海沿岸でワインをつくり地中海の休日を楽しめると。
 それからは悪影響が良い点を凌駕すると認めたが、問題に取り組む方がただ耐えるよりも金が掛かると主張した。
 今や彼らは第4段階に到達した。
無視するよりも問題に取り組む方が安価であることには同意したが、今や取り組むのが遅すぎるというのだ。こいつは一番説得力がある。
 コロラド雪氷データセンターの気候学者達は北極海の海氷の衛星調査結果を今日発表するという(1)。今月の海氷の被覆率は記録に残る少なさだ。北極はすでに温暖化が不可逆的になるティッピングポイントに達したかのようだ、と彼らは警告する(2)。白い氷がなくなるにつれ、海の表面は黒くなりより多くの太陽熱を吸収するようになる。するとより氷が出来にくくなり、海はさらに黒くなり、その傾向が続いてゆく。
 昨月のこと、ニューサイエンティスト誌は似たことがシベリアで起りつつあると報告している。記録上初めて西シベリアの永久凍土が融けている(3)。土が融けるにつれ、ピートの中に閉じ込められていたメタンが放出される。メタンはCO2の20倍の温室効果を持っている。ピートが放出するメタンが増えるにつれて、世界は暖かくなり、さらに永久凍土が融け始める。

 2週間前のこと、クランフィールド大学の科学者はイギリスの土壌に含まれる炭素が減っていることを報告した。気温が上るにつれて土壌の中の有機物が分解しやすくなり温暖化の原因となり、さらに分解が進む。すでにわが国の土壌は、90年以降の私達のCO2排出削減努力に匹敵する量のCO2を放出してきた(4)。

 これらは『正のフィードバック』、つまり一端始まったら止めにくい自己増殖効果の例である。これらはそうと気が付く前から働き始めている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は地球の気温がどのくらい上昇するかの予測をしているが、これらの要因を計算に含めることができていない。”今世紀中に1.4℃〜5.8℃上昇”との現在の予測はほぼ間違いなく低すぎるだろう。

 これが一週間前であれば、もしもう間に合わないのなら、とりわけ非難すべきは大企業が経済政策に及ぼす影響力だ、と私は言っていたことだろう。政府が効果的に市場に介入することを妨害することで、企業はわれわれが地球が茹だるのに手をこまねさせているのだと。
 しかしこの水曜日、私はことがそれほど単純ではないことを知った。建物調査組織(BRE)が開いた会議でのこと、企業はより厳しい規制を望んでおり政府がその実行を拒んでいるのを私は目撃したのだ(5)。

 英国タバコ社と、ウェイトローズ社を保有するジョンルイス社の環境管理者たちは、みんなが従う必要がある厳しい基準がなければ、かれらの会社はグリーンになろうとすることで不利をこうむると批判した。ジョンルイス社の担当者は「いつも議論になるのはコストコスト、コストのことばかりだ」と言った。(訳注:姉歯建築士の発言ではありません。)
エコな照明を彼が買う一方で、競合他社が買わなければ彼は競争に負けるのだ。
結論として彼は、「小売業者が真剣にこの問題に取り組むようになるので、EUの建物エネルギー効率指令を歓迎する」と言った(6)。そう、私は欧州指令を歓迎する企業重役の声、ユニコーンの(たぐいまれな)鳴き声を聞いたのだ。

 そして政府からは?何もない。気候変動大臣のエリオット・モーレーはうまくいっている間はできるだけ何もしないと語っている。産業貿易省の役人は、これらスーツ姿の苦しむ声に対し「いくつかの企業が求めている措置は市場への不要な介入になる」と主張している。

 言葉にできないほど不満が溜まる。産業界は本当にこの地球を救えるような技術を開発しつつあるのに。
 アトリエ・テンの建築家たちは蟻塚の通廊の原理による冷房システムを設計した。メルボルンのアートセンターに作ったように、基礎部にコンクリートの迷路をつくることで、暑い土地でも大きな建物の温度をエアコンなしで制御できる(7)。必要なのは冷気を上階に押し出すファンの動力だけで、通常の冷房の10%ほどで済む。
 PBバワー社からは、バーキング・ガス火力発電所がテームズ河に捨てている4000kWの廃熱を使えば、周辺の住宅をどれだけ暖房できるかの説明があった。
 XCO2という会社は全く騒音のない風力発電機を設計したが、これは物干し台のように、垂直軸から吊り下げるもので、都市の真ん中ででも取り付けることができる(8)。
 この3種の技術だけでも、生活の質を落とすことなく何百万トンものCO2の排出を削減できる。他の何百もの技術と同様、これらはすぐに、ほとんどどこででも普及させられる。
しかし、それらは政府が動き出さないと使えるようにならないだろう。企業にとっては昔の技術を使う方が安いのだ。そして政府は、それが「市場への不要な介入になる」からには動き出すことはない。

 今知ったことだが、これは企業が規制を求めた最初の事例ではない。
この1月にはシェルのオックスバーグ議長は「先進国政府はCO2排出のコストを増加させるため…税金や規制や計画を導入する必要がある」と主張していた(9)。
彼は化石燃料を代替するために必要な技術を数え上げ、「市場に任せていただけでは、これらの転換のどれも起らないだろう」と強調した。
 この8月には、合同電力社やブリティッシュガス、スコットランド電力、全国配電社のトップが環境NGOの『地球の友』と『グリーンピース』に加わり、「環境を形作るためのより厳しい規制」を求めていた(10)。

 これまでシンクタンクはずーっと「政府が産業界の側に立つのを止めるよう」求めてきた。新技術を開発したい企業はどこも新しい厳しい規則を求めている。新市場を作るための規制なのだ。

 ではなぜ、政府は動かないのか?なぜなら、政府はクリーンな産業ではなく汚染産業の側に立っているからだ。
 規制緩和は政府の真価を問う試験となってきた、政府が経済計画を策定してきた古き悪しき時代の印である。ブレア首相が任命した"より良き規制特命委員会"のデビッド・アーキュラス卿は英国産業連盟の副議長もしている。彼は市場を社会の上に置くことの必要性を最も声高に叫ぶ代表だ。これ以上露骨な利害相反は考えられない。


 私は、もう遅すぎて気候変動を減らせないわけではないと信じている。

 ほとんどの根拠によれば、我々はまだ生態系がメルトダウンすることを止めることができるが、それは温室効果ガスの排出を2030年までに80%ほども削減した場合に限られる。(EUの2℃安定化長期目標のことでしょう。)
どのように政治を動かし、どのような技術を使ってそれを達成できるかについて今私は本を書いている。
 しかし、その障害は市場ではなく政府であることが、今私には明らかになっている。その政府は世界中が忘れてしまった経済論戦のどれかについてのページを折った学術論文を振り回しているのだ。

http://www.monbiot.com

参考文献:

1. インディペンデント紙9月16日付け、Steve Connorの記事「Global warming‘past the point of no return’」より。
しかしセンター発表によると、論文発表は今月末に延びるとのこと。
 http://nsidc.org/news/

2. Steve Connor, 同上

3. Fred Pearce, 11 August 2005. 「Climate warning as Siberia melts.」New Scientist誌

4. John Pickrell, 7th September 2005. 「Soil may spoil UK’s climate efforts.」 New Scientist誌

5. 出典:‘05, 13th-15th September 2005. BRE, Watford.の会合

6. Bill Wright氏発言, energy and environment manager, John Lewis Partnership.

7. ホームページhttp://www.atelierten.com/ourwork/profiles/0513-federation-square.pdf
を参照のこと。

8. 「Quiet Revolution 6kW.」 XCO2のリーフレット Offord St, London.
http://www.xco2.com/quietrevolution

9. Lord Oxburgh, 27th January 2005.
 グリーンピースのプレスリリース「Shell Chair urges government to act now on climate change. 」よりの引用:
http://www.greenpeace.org.uk/climate/climate.cfm?ucidparam=20050210110220

10. Tony Juniper 他, 1st August 2005.
マーガレットベケット環境大臣と他の大臣宛の手紙、地球の友に資料請求のこと。


posted by おぐおぐ at 16:27| 温暖化の政治学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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