2005年12月03日

回避すべき被害についての最近のまとめ


 これまで本ブログの中で、IPCCの第三次報告の中身について何度か紹介してきましたが、温暖化の影響評価についてはほとんどIPCCの報告書を示していませんでした。
 最近の国際的な研究内容を紹介することで、2007年発行の第四次報告に入ってきそうな中身を予想する方が良いように思いましたので。

 以下、国の中央環境審議会の地球環境部会・気候変動に関する国際戦略専門委員会での今年4月の討議資料を紹介することで代えたいと思います。

1枚目「影響閾値のタイプ分け」
http://www.env.go.jp/council/06earth/y064-09/mat01-02.pdf#page=2というまとめがあります。
 ここでは、温暖化によるさまざまな悪影響を2種類に分けて、主に可逆的な変化に伴う影響をタイプ1とし、不可逆的な変化に伴う影響をタイプ2と称しているように見えます。
つまり、過去に当ブログの中で4種類ほど説明してきた気候カタストロフィは、すべてタイプ2のしきい値を持つ問題群であるといえます。
 ここで注意してほしいのは、タイプ1の説明の中でだけ、”被害などの経済コスト算定、適応策により被害軽減が可能。”とされていることです。

 タイプ2については、さらっと”発生した場合の影響については知見がない。”なんて書いています。まあなんてペダンティックな表現なんでしょう。ですが、ここで実際に示しているのは、「被害などの経済的なコスト評価」にはなじまない災害であるということなのです。
 ずぇーったいに避けなければならないという点で、対策費用との損益計算をして選んではならない「マスト」な対策をすべきという条件があてはまるのがタイプ2の問題なのです。


 タイプ1の実例としては、
2枚目(水不足リスク、マラリアリスク、飢餓リスク、沿岸洪水リスクの評価)
というグラフが有名です。
 この中で、他の問題と異なり水不足は、安定化気温の目標値が上がるにつれて急激に被害人口が増加していくことが見て取れます。つまりこの反応曲線そのものは非線形なのですが、この水不足リスクは上記のタイプ2としては分類されていません。非線形的に被害が増えるとしても、水不足の問題は温暖化対策費用との間で費用対効果の評価をして決めるべき、というジャンルに入れているのです。

 ということで、複数のリスクの評価を縦横を逆転させて並列的に示したのが、これまた有名なこのグラフです。
3枚目「どの影響分野を「危険判断」の対象として取り扱うか」

 左半分を占めている線グラフは、21世紀の間の各社会経済シナリオに応じた全球平均気温の結果を示しています。(1.4℃〜5.8℃という有名な予測幅がそれぞれ上限と下限になっています。)
 右半分を占めている棒グラフは、その21世紀末の上昇気温に応じて、各種の影響評価がどう変わるかについての定性的な指標を示したものです。
(但し要注意なのですが、これは工業化前を基準としたものではないため、すでに工業化前から実績として0.6℃上昇していることを考えれば、2℃上昇限度以下で食い止めるべき、というNGOsや欧州の主張は、このグラフの中では、1.4℃上昇あたりで線引きしようという主張となります。)

 上で紹介してきたタイプ2の悪影響は全部、この棒グラフの一番右端の1本、「破局的事象」に対応しています。

 これらの評価を受けて、結論として示しているのが、
4枚目「気温上昇幅の違いによる予測される影響の整理」
のまとめです。

 ここでは、3番目の段落では”気温上昇幅が3℃を越えると、気候システムの安定性を保つレベル(typeIIの閾値)を越え”る可能性があり、タイプ2の災害を避けるためにはおそらく3℃以下という要件がずぇーったいに必要としています。

 2番目の段落では、タイプ1のしきい値の中でも、おそらくは非線形な被害人口の増加をもたらす水不足リスクを主要な判断材料にして、2℃以下であることが必要というロジックとなっています。
 悪影響を受ける人口増加の勾配が一番急なところつまり水不足対策として行う温暖化対策がもっとも費用効果的なところでは、およそ0.1℃分あたり6億人が水不足を回避できる(0.5℃あたり30億人)という規模になります。

 最初の段落は、どんなにやっても1℃以下にするのは不可能という現実を述べたものです。(温暖化の因果関係の論理に完全な穴が開いていたのでない限りは)いくつかの脆弱な生態系への被害はもう避けられない、というつらい認識をしておかないといけないということです。
(そのいくつかは5枚目「気温上昇幅の違いによる予測される影響の整理」に紹介されています。)

 ですが、最後の結論としては
”以上のような科学的知見を踏まえれば、気温上昇の抑制幅を2℃とする考え方は、長期目標の検討の出発点となりうると考えられる。”というなんとも歯切れの悪い表現となっています。

 ぐわっ、これが2℃よりも低い気温上限目標が必要ということであれば良いのですが。

「気温上昇幅の目標に慎重 温暖化対策で経産省」in共同通信
という政府の中の分裂状況は、現在どこまで変わったのでしょうか。
 第2週は閣僚級会合も始まりクライマックスに向かいます、政治は明確なメッセージを出すべきです。

 英国シンクタンクの戦略文書「長期気候目標の設定」 もお読みください。
posted by おぐおぐ at 16:25| 気候カタストロフィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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