2005年11月12日

炭素税は国際競争力を阻害するのか?

または、【本の紹介】経済対立は誰が起こすのか

【コメント】
「私は、通産省の「産業政策」なるものは、わたしの言う「業界保護主義」、すなわち業界と官僚の連携による権益維持を、「政策」なる言葉によって粉飾したものであったと考えている。それは日本経済にとっては、多くの場合に意味のないものであり、時には有害なものであった。」P.200より
「なぜなら、「比較優位」の考え方によれば、特定の産業を「優位」にすれば、別の産業は「劣位」になるのだから、ある産業を優遇してその「国際競争力を強化する」ことは、別の産業の「国際競争力を弱体化させる」ことに他ならないからである。つまりそれは、単に一国の比較優位構造を歪めるだけにすぎない。」P.202より

 つまり、国内の(現在の)輸出企業の国際競争力という定義すらされていないものを守るためには、炭素税を掛けるなどの政府の介入はできないのだ、という日本経団連の会長の主張はトンデモ本の世界観であり、そんなものを支持する(まともな)経済学者などどこにもいないのだ、と言っていることになります。

 さしずめ、いつぞや紹介した「円デフレ」 の本などはトンデモ話の最先端だ、とばっさり斬って捨てられるところでしょう。
「経済学史をひもとけば、貿易黒字や赤字に関する誤った観念を批判することは、ヒューム、アダムスミス、リカードら古典派経済学者たちの最も重要なテーマの一つであったことが分かる。彼らは、貿易黒字を稼ぐことが一国にとっての利益であるという重商主義の考え方を、一国の生産物こそが一国の富であるという観点から批判した」(「経済セミナー」2005年5月号の記事「長期停滞を生んだ政策割当の歪み−前川レポート的パラダイムの成立」(野口旭))
 この象牙の塔にこもった学者さんである著者は、前川レポート的パラダイムに対する批判の中で批判の前提に古典派経済学による重商主義批判を自明のものとして置いていますが、現実の日本の政財界はまさにこの重商主義パラダイムに従って動いています。
(そうでなければ、85年のプラザ合意以降も累計200兆円の貿易黒字ストックを米商務省債券としてドルの形で溜め込み続けることや、また輸出超過の構造を維持するためだけのために、円高を阻止しようと単年度で30兆円という巨額のドル買い為替介入を当局が行うことが、個別企業の経営的に、あるいは一国の政治的に容認されるはずがありません。)

 私たちが抱えている本当の問題は、それじゃあどうしてそのたぐいのトンデモ話をする日本経団連の会長が政府の支持を受けて、炭素税の導入への重要な反対だと認定されてしまうのか、有権者はどうして意味のないドル買い為替介入をすることに批判をしないのか、という点なんですが。
 象牙の塔の学者さんだけあって、彼の考える「真実」を教えることで現実を変えることができるという単純思考しか言っていません、現実の認識を変えるためにはどうすればいいか、を教えてくれる人というのはどこかにいないものでしょうか。
経済対立は誰が起こすのか―国際経済学の正しい使い方(著)野口 旭

出版社/メーカー:筑摩書房
価格:¥ 693
ISBN/ASIN:4480057412
Rating:★★★★

【タイトル】経済対立は誰が起こすのか
【サ  ブ】国際経済学の正しい使い方
【シリーズ】ちくま新書
【著  者】野口旭
【発  行】筑摩書房
【発行年月】1998年1月20日 
【ページ数】
【判  型】
【定  価】660円+税
【ISBN】ISBN4-480-05741-2
【種  別】学術
【分  野】国際経済論
【検索キー】重商主義、一般均衡分析
【目  次】 
 序章 トンデモ国際経済論を超えて
 第1章 攻撃的対日通商政策をめぐる聖と俗
 第2章 国際収支の良い見方と悪い見方
 第3章 貿易の本当の意義とは何か
 第4章 国際弱肉強食主義の幻想
 第5章 日本の何が問題なのか


posted by おぐおぐ at 16:04| 炭素税/環境税 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。