2005年10月24日

本の紹介:「新・環境倫理学のすすめ」

 「沸騰!環境ビジネス」のブロガーふぁるこんさんが紹介してくれたことで、この本を読んでみました。

 あとがきより。「京都議定書のような国際協調体制が生まれることを同時代人に向かって期待しながら書いた前著と、京都議定書が誕生すると同時に傷だらけになっている現状で書いた本書との間には気分的に大きな違いがある。さらに深刻になる環境問題に直面する若い世代に向けて、重い課題を投げ出さないで引き受けて欲しいと願う気持ちで執筆したのが本書である。」

 以前僕も紹介しましたが、ピーター・シンガーの倫理学からの公正な大気の割り当ての根拠付けの中で、功利主義理由に基づく視点として紹介していますが、元のシンガーの論理はちょっと違う4種の中での相対比較を行っており、それらと比べて穏当な理由付けだから支持するとしていることを見落として評価を行っているようです。シンガーの論点は加藤氏の話の進め方と比べると政治的な存在感を重視している政治文書のように思います。
まあ、発刊までの最終の局面で急いで読んで加えたものとのことですのでしょうがないとは思いますが。 正直言って、11章の先進国の未来像の章はもっとも違和感が残る読後感でして、もちろん現在の研究の先端を組み合わせるとそういう次世代産業社会となっていくという物の見方に異論を唱える材料を持っているわけではないのですが、ジャナカシャバをどういう風にめざしていくのかという構想が一番問われているのはやはり先進国の中の仕組みなんだとも感じました。
 全体として、前の本「環境倫理学のすすめ」で偉い先生という印象が残っているせいか、やはり反論しづらい、重たい本だとは思いましたが、これくらい乗り越えられなくてどうする、と叱咤、激励されているような気もします。
 永くは待たずして、南北間の論争の中でこのstate of artを乗り超える議論が出てきて、国際交渉を席巻することを期待して。


【タイトル】新・環境倫理学のすすめ
【サ  ブ】
【シリーズ】丸善ライブラリー
【著  者】加藤尚武
【発  行】丸善株式会社
【発行年月】2005年8月31日 
【ページ数】215
【判  型】
【定  価】780円+税
【ISBN】ISBN4-621-05373-6
【種  別】学術
【分  野】環境倫理学
【検索キー】持続可能性、自然保護、開発と経済
【目  次】(特に温暖化と関係の深い章についてくわしく書いています)
第1章 京都議定書の意義と限界
 温暖化問題の社会的認識/冷戦後の世界秩序/温暖化問題の複雑さ/ポスト京都の条件(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください)/全世界的炭素税の提案(クライン論文)
第2章 持続可能性とは何か
 ブルントランド委員会報告から/ロックの但し書き/ヴッパータールから/デイリーの持続可能な発展のための三つの条件/枯渇型資源の使い回し/平和的未来戦略
第3章 石油が枯渇する日
 女性と石油/人口と資源消費量(スループット)/石油資源の予測構造/石油利用技術の向上/石油の枯渇
第4章 保全保存論争
第5章 自然保護と生物多様性
第6章 生物学と環境倫理学
第7章 ペンタゴン・レポート
 「温暖化=ゆっくりした変化」ではない/二一世紀のキイワードは「環境難民」/ヨーロッパに北からの難民と南からの難民/アジアの危機/アメリカは自国中心主義の強化/予防原則への疑問
第8章 自由市場と平等
 市場経済のサンクション機能/カール・マルクスの困惑/世界は燃えている/センのロールズ批判/ロールズの言い訳
第9章 国際化
 ピーター・シンガーの四方式/排出権の均等割りは功利的であるか/一日1ドル以下しか消費できない人々と国家/過去の排出に対する責任/過去と現在をつなぐもの/グローバリズム/アンソニー・ギデンズ「第三の道」
第10章 リスクの科学と決定の倫理
第11章 先進国の未来像
第12章 戦争による環境破壊


posted by おぐおぐ at 15:52| 環境哲学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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