2005年10月15日

2億5千万年前の大絶滅:3番目の懸念

 10月12日付けの
The Heat Death of American Dreams (「昨月のハリケーンズで覆い隠されてしまったのは、地球温暖化が以前の推測よりも速く加速しそうなこと、そしてすでにそれが始まっていることだ。」)の中で紹介されていたことを読んで愕然としたので、以下に解説しておきます。

 以前、「「氷に刻まれた地球11万年の記憶」本の紹介」 の中で、懸念される気候カタストロフィの3番目として、永久凍土の下に蓄えられているメタンハイドレートが暴走温室効果を起こすことを紹介しました。

 また、「北極圏の温暖化4題噺」 の中でも2題目に、アラスカの永久凍土が溶けるという研究の記事を紹介しました。

 実は今年の8月11日にも、同様の報告が出ていました。(気がつかなかったことですんません)
Spiegel:Siberian Super-Melt Sparks Climate Fears
 ニューサイエンティスト誌で発表された記事によると、西シベリアでは100万平方キロに渡って永久凍土が溶け始め、ピートの沼から700億トンのメタンガスが放出されることが懸念されている。「ここで起こっていることは生態学的な地すべりだ」

これもおなじものです。
Guardian:Warming hits 'tipping point'
 東アングリア大の研究者は報告を聞いて、この要因はIPCCの第三次報告書の気候モデルでは考慮されていないと語った。
 溜まったメタンガスが100年間掛けてじわじわと放出されるとすれば、年間7億トン程度のCO2カーボン(ここではメタンガスの炭素換算量の意)が追加で放出されたのに相当する。環境NGO地球の友は、「もし今すぐ対策を採らなければ、コントロールできない暴走温室効果により、環境的、社会的、経済的な被害を全世界が受けることになる」と語った。

ということで、この規模が深刻であること、そしてこの気候カタストロフィの恐れは、今ようやく定量化され始めているのだということが分かります。 さて、以前、
「なぜ私たちは温暖化を否認するのか(その1)」
の中で、2003年12月の英ジャーナリストの論説を紹介しました。

−−−引用
 しかしIPCCの予測の上限側にこそより大きなリスクが潜んでいる。2億5千万年前の地球温暖化エピソードはすべての種の95%を絶滅させてしまった。
このカタストロフィの引き金を引いた昇温はわずか6℃であり、古気候学者が、「黙示録の後の温室」と呼ぶできごとである。
IPCCの現在の最悪のシナリオは5.8℃であり、これ以上悪い数字はもう想像できない。
−−−引用ここまで
という箇所を覚えている人もいるかと思います。
 この時はほんとかどうか疑問に思ったので、ネットで調べて、
(訳注:このペルム紀の大量絶滅事件の原因としては他の説がいろいろあるようです。「語る科学」大量絶滅 生物進化の加速装置
 など参照のこと。)と注釈をつけたのでしたが、これに関しては、2003年5月発表の下の研究報告が、上の、地球温暖化がペルム紀/三畳紀間の大量絶滅事件の原因だという主張の根拠になっていました。

・Trends in Ecology & Evolution Volume 18, Issue 7
Michael J. Benton and Richard J. Twitchett
"How to kill (almost) all life: the end-Permian extinction event"

要約の翻訳
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 過去6億年間で最大の大量絶滅事件であった2億5100万年前のペルム紀末の事象では、地球上の種のうちの95%ほどが失われた証拠がある。生物学者にとっての主要な疑問点は、どんな環境の変化の組み合わせがこのような規模とパターンでの種の喪失と回復を引き起こしえたかということだ。
 時期の同定と、同時代の火山活動、そして環境危機の解剖についての新たな研究によってわれわれのものの見方は過去5年間で劇的に変わった。
隕石の衝突によるのか大規模噴火によるのか、因果関係上の証拠も不確かではあるが、大規模噴火が起こったものと推測される。絶滅を説明するモデルには、6℃の地球温暖化と、噴火に伴う大規模な炭素の大気−海洋系への放出、さらに正のフィードバックによる暴走温室効果をもたらすガスハイドレートが含まれる。
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付記:
 この時期の大量絶滅が隕石の衝突によるものだとする説に対する異論は「研究報告「2.5億年前の大絶滅は隕石衝突が原因ではない」」にあります。

そして、さらにもう一つ、今年9月の研究です。

Geology: Vol. 33, No. 9, pp. 757-760.
Jeffrey T. Kiehl and Christine A. Shields
"Climate simulation of the latest Permian: Implications for mass extinction"

要約の翻訳
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 2億5100万年前のペルム紀/三畳紀境界時の生命は、地球の歴史上最も大きな撹乱を経験した。古気候のデータは、地球が現在よりも著しく暖かく、ある期間は海洋の多くが酸素が欠乏していたことを示している。この時期の古地理学を用いて初めて完全に結合した包括気候系モデルを作ったその結果を示す。結合気候系モデルはCO2濃度の上昇に伴う高緯度の表面気温の上昇と深海の低酸素濃度を示す古気候データに一致する海洋循環の停止をシミュレートできた。
これはこの時期の観察を説明できる最初の気候シミュレーションである。
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 そして、その際の追加の気温上昇幅は10から30℃だったということです。

 つまり当初はCO2濃度が増加したために6℃程度昇温すると、それによって、メタンの大量放出が起こり、10〜30℃という大量絶滅を引き起こすほどの暴走温室効果が働く、というシナリオがきれいにシミュレートできるわけです。


●さすがはNHK
 なにをいまさら、と笑われそうですが、昨年のNHKの「『地球大進化』第四集 大量絶滅 巨大噴火がほ乳類を生んだ」 が、このシナリオを分かりやすく解説しています。確かに僕は昨年このTVシリーズを見ていたはずでしたが、見れども見えず、何を言っているのかも関心を持てずに聞き逃してしまっていたのでした。
−−−引用ここから
2億5000万年前、生物の95%が死滅した大量絶滅が起こった。最も被害を受けたのは、私たちの直系の祖先であるほ乳類型爬虫類だった。スーパープルームによる史上最大級の火山噴火で、二酸化炭素が増加。海底のメタンハイドレート融解で発生した膨大なメタンガスが、温暖化と低酸素状態を引き起こした。呼吸効率の改善のために横隔膜を進化させた私たちの祖先は、胎生で子どもを生み、母乳で育てるほ乳類独自のシステムを作り出す。
−−−引用ここまで

 科学はここまで警告を出しています。
「なぜ私たちは温暖化を否認するのか(その1)」の論述はまったく正当なものであった、と今となっては言うことができます。

 私たちはこの警告を聞いて、そしてさらに北極が温暖化しつつあるという観測を前にして、いったいいつまでWait & Seeを続けているのでしょうか。

http://blog.livedoor.jp/as_1980sekiko/archives/50221025.html
よりトラックバックをいただきました。


posted by おぐおぐ at 15:46| 気候カタストロフィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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