2005年10月10日

本の紹介:『グローバリゼーションの倫理学』

 二つ前の本の紹介の中で、高村氏によるゾルレン(べきである)とザイン(である)の2つの方向のアプローチをどう統合するかが重要だ、というメッセージを紹介しました。また、田中氏の考え方は、まずはポスト2012(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください)の交渉の最初の獲得目標として、グローバルな長期目標の設定を進めるべきという考え方でした。
 もう一つの大問題の、分配の公正さについて倫理学のゾルレンの視点を分かり易く示した本として、今日紹介する本の第2章「一つの大気」がお薦めです。(もっとも「一つの共同体」あたりまでは一気に全体を読んでしまわないと、著者の言わんとするところが腑に落ちないかもしれません、ポスト9.11時代の国際関係論としても重要な教科書になると思います。)
 著者のピーター・シンガー氏は痛みの感覚を持つかどうかに着目した動物解放論で有名な人のようで、「闘う」倫理学者のようなスタンスの人のようです。
(ちなみに、フレッド・シンガー氏と いうのは長年の温暖化懐疑論者、フレッド・ピアス氏というのはニューサイエンティスト誌の記者だか編集者だか、で温暖化問題をよく取り上げている人です。)


グローバリゼーションの倫理学(著)ピーター シンガー,Peter Singer,山内 友三郎,樫 則章
グローバリゼーションの倫理学
出版社/メーカー:昭和堂
価格:¥ 2,415
ISBN/ASIN:4812205212
Rating:ZERO
【タイトル】グローバリゼーションの倫理学"One World: the ethics of globalization"
【サ  ブ】
【シリーズ】
【著  者】ピーター・シンガー
【発  行】昭和堂
【発行年月】2005年7月25日
【ページ数】275
【判  型】
【定  価】2300円+税
【ISBN】ISBN4-8122-0521-2
【種  別】学術
【分  野】倫理学
【検索キー】グローバリゼーション
【目  次】 
第1章 変化する世界
第2章 一つの大気
  問題
  リオと京都
  平等な分配とは何か
  公正さ−一つの提案
  高見の見物、とはいかない?
第3章 一つの経済
第4章 一つの法
第5章 一つの共同体
第6章 よりよい世界?
監訳者あとがき
監訳者解説
原注
【コメント】 
 以下、反則と思われるほどの量になりますが、本文より引用しておきます。
「本書で論じられるのは、世界の諸国家が貿易・気候変動・正義・貧困といったグローバルな(すなわち、地球規模の)問題に協力して取り組むには、国家の指導者が国益を超えたより広い視野を持つ必要がある、ということである。」
「私たちは非常に長い間、主権国家という観念を受け入れてきた。そのため、主権国家は外交や公共政策の背景の一部となっているだけでなく、道徳の背景の一部にもなっている。従来の「国際化」という言葉とは違って「グローバリゼーション」という言葉に含まれているのは、国家と国家の結びつきを強める時代が終わって、ネイションステイト(国民国家)という既存の概念を超えたものが本気で考えられ始めているということである。しかし、この変化は、私達の思考のあらゆるレベル、特に倫理に関する私達の思考に反映される必要がある。」
「私たちが自分の所属する集団の他のメンバーに対して自分の行動を正当化するために推論能力を使い始めたとき、道徳は、人間に最も近い動物の中に観察されうるどんなものとも、全く異なるものとなった。私たちが自分の行動を正当化しなければならない集団が部族であれば、私達の道徳は部族主義的なものとなり、それが国家であれば、国家主義的なものとなるだろう。だが、コミュニケーションの革命がグローバルな聴衆を作り出したのなら、私たちは全世界に対して自分の行動を正当化する必要性を感じるかもしれない。この変化は新たな道徳のための物質的な土台をつくりだした。この新しい道徳は、従来の倫理がいくらレトリックを多用しても達成できなかった仕方で、この惑星に住むすべての人々の利益に奉仕するだろう。」

 第2章 一つの大気 へつづく

追記:
JANJAN記事「国境を越えた倫理が求められる」
でも書評がされています。


posted by おぐおぐ at 15:43| 環境哲学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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