2005年10月08日

ブレアの心と秋の空?

 さてさて、11月末からのモントリオール気候変動会議を前にして、未確認情報も含め、さまざまな動きが海外では起こりつつあるようです。

 9月も下旬になってから、英ブレア首相がKyoto2(京都議定書の延長路線)での合意に達することをあきらめたとの記事が英米の新聞を飛び交いました。
 これは英国やアメリカの環境派にとっては大きなショックだったようで、英国はそもそも今年後半のEUの議長国も勤めていますし、グレンイーグルスサミットでも米国ブッシュ大統領をテーブルに着かせ、何がしかの前向きな発言を引き出したそぶりもあったから、そのブレアがなぜよりによって今断念を言うのか、という不審の声や、疲れちゃったんだよ、という弁護の声やを向こうのブログで読みました。

 以前紹介した、クリントン前大統領が作ったClinton Global Initiative(CGI)の9月15日全体会合の場で、米クリントン前大統領/ヨルダンアブダラ国王/英ブレア首相/米ライス国務長官の4者でパネルディスカッションをした際の発言だそうです。
発言メモ全文はこちら。
http://www.clintonglobalinitiative.org/pdf/transcripts/plenary/cgi_09_15_05_plenary_1.pdf このメモの14ページが元発言の箇所です。環境産業で雇用創出を狙うのがいいんだ、とのクリントンのレトリックに答える形で、「現実を見ればどの国も真剣に削減をしようとしていないじゃないか」と英ブレア首相が発言し、さらに米ライス長官が原発推進の弁を述べ、途上国の排出量が増えることを問題視したのに対して、クリントンが米国が一番の大消費国だとたしなめて終わるというやりとりでした。

 ブレア発言の全文の仮訳は末尾に添付しておきますが、一言で言って、小泉首相が言っていてもおかしくない内容であって、このブレアの主張をもって京都議定書が死んだと主張するなら、日本政府はすでに京都議定書を殺す気満々だったということになります。英国が日本のランクにまで下がってきたことをもって他国の首相であるブレアを裏切り者、とは呼びにくいと思ってしまいます。
 とはいえ、前に進もうという「政治的意思」が見えないというのは国際交渉において深刻な状況であることには変わりないのですが。

後日記:
・World needs Kyoto climate pact: scientist
http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/SP302734.htm
 英国の科学顧問キング卿はポストキョウト交渉での京都路線堅持を訴えています。

・「より持続が可能な世界に向けた明確で着実なステップに」英ブレア首相
で示されたように、ブレア首相の政治的意思は失われていなかったのでしょう。

各紙報道より
The Sunday Times: Blair signals he's cooling towards Kyoto
http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2087-1796800,00.html
「ブレア首相は、温室効果ガスの排出削減が経済的に高すぎるため、英国はキョウト気候協定の後継協定を作る試みから手を引くだろうとほのめかした。」

Observer: Blair is accused of Kyoto U-turn
http://politics.guardian.co.uk/green/story/0,9061,1578037,00.html
「ブレア首相は考えを変えた、と告白したことについて非難を受けた。「いくつかの国はキョウトに参加し、いくつかの国は拒否した。ここからポストキョウトの合意をどうやって取っていけばいいんだろう」…官邸の報道官は「彼が言ったのは目標か科学技術かのどちらかだけ、という態度は取れないんだということだ」と弁明した。」

Xinhua:Blair falls into line with Bush on global warming: paper
http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-09/25/content_480688.htm
「ブレアは経済成長や消費を減らす環境協定をどの国も結ぼうとしない、と心変わりを正当化した。このユーターンは過去2年間の約束を反故にし、この夏のG8サミットで心血をそそいだ合意を掘り崩し、オタワで開かれる準備会合を壊すものだとインディペンデント紙は結んでいる。」


WebIndia(UPI電):Blair says nations won't cut fossil fuels
http://news.webindia123.com/news/showdetails.asp?id=120747&cat=World
「ブレアのコメントは15日の会合では注目されなかったが、全文の議事録が出てきて明らかになった。」


 よく調べて見ると日本の英字紙にも載っていました。海外からの参加者ばかりがたくさんコメントをつけています。
The death of the Kyoto Protocol
http://japantoday.com/e/?content=comment&id=845
 これはカナダ在住の温暖化対策懐疑論者が載せたもののようです。
 表題が刺激的ですが、どうしてKyoto2の合意ができそうにないとしてもそのことが、すでに発効ずみの京都議定書の死につながるのかは理解に苦しみます。筆者はNPT条約に明日はないことが明らかになったから、今日NPT条約の公約を破ってもいいとでも思っているのでしょうか。


ロイター: UK sees no major accord at Montreal climate talks
http://ca.today.reuters.com/news/newsArticle.aspx?type=domesticNews&storyID=2005-10-05T150820Z_01_FOR551748_RTRIDST_0_CANADA-ENVIRONMENT-CLIMATE-COL.XML&archived=False
 さらに、最新の英国政府の見解としてベケット環境大臣の発言で、モントリオール会議での進展を期待していないとの発言も出てきています。このままずるずると「会議は踊る」になってしまうんでしょうか。


◆ブレア首相:(9/15発言)
 私が思うに…3点を明らかにしておきたい。まず、私は、地球温暖化への懸念によるものであれ、エネルギー供給への安全保障の懸念によるものであれ、この(クリーンエネルギーの開発による雇用創出)問題はある重要なやり方で持ち上がったといえる。これは目の前にある問題であり、それは喜ばしいことだ。私はこれを非常に重要な問題であると思う。
 しかし2つ目に、私は、この問題を過去2,3年間考えるうちに考えを変えようとしているというべきだろう。私は、もしこの問題で行動を起こすのなら、これをどう扱うべきかの政治学に乱暴だが誠実に向き合うことからはじめるべきだと思う。

 現実には、どの国も長期的な環境問題の観点に照らして、成長を削減したり実質的に消費を削減したりしようとはしていない。各国が準備しているのは、有益なように科学技術を発展させるのを許す形で、この問題を協力して解決するために共に働こうというのだ。

今私は、ただ科学技術を発展させることだけにすべての答えがあると考えているのではなく、解決のための科学技術を発展させなければ問題に取り組むこともできなくなると思っているのだ。

 そして3番目の点としてまさにあなたが言っているように、科学技術を発展させるよう人々を動かす力をどうやって作り出すかが焦点なのだ。
あなた方はどうやって市場を作り、この技術の研究開発を行い、燃料電池技術やら核融合やらの技術開発や、風力や太陽光発電のコストダウンを、今後25年も30年も私たちが待つことなしで導入することができるだろう。
 どうやってやるか、これは国際社会が決めるべき問題だ。私たちはグレンイーグルスで試みたが、何人かはキョウトに署名し、何人かは署名していない、そうだ、意見の相違がある。それは解決しそうにない。しかしどうやって前に進み、ポストキョウトで合意を得ようと試みることを確かにすればよいのか?
 わたしは、大多数のプレイヤーが共に歩み、われわれが持続可能に成長することができるやり方を見つけるために資源や情報や科学技術を引き出す道を見つけることでしかできないと思う。

 この11月1日には、G8会合参加のインド、中国、ブラジル、南ア、メキシコが参加する会合を開催する。この会合が、国際協定の交渉をし始めるのではなく、科学技術を発展させる日程表を短くし、中国やインドのような国々が成長することを保証するすべについての、ぜひとも必要な対話の始まりとなることを期待している。

 そして先進世界のわれわれが振り返ってこう言うのを聞けば途上国の彼らは満足はしないだろう。「われわれは成長してきた。あなた方も成長している、だからわれわれは持続可能ではなかったが、あなた方には持続的に成長することを望む」と。
だからこそ、わたしの見るところ、彼らはなすべき仕事から共通の利益を得られるようにわれわれの技術を共有し移転できるようにする、なんらかのプロセスをわれわれに要求しているのだ。

 そして正直言って本当の問題は、少なくとも短期的には人々がキョウトのような大きなもう一つの協定を交渉し始めようとしているとは思っていないので、本当の問題は、公共部門と同様に民間企業が、「これこそが政策が進もうとしている方向性であり、この方向性を進めよう」と言えるように、どうやってこれらのインセンティブをシステムに組み込めるかだ。これが最重要な問題だ。


posted by おぐおぐ at 15:42| 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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