2005年10月08日

5.京都議定書の次のステップは何だろう

 姉妹ブログの題と紛らわしい表題のつけ方ですみません。

 話の流れとしては、【本】『地球温暖化防止の課題と展望』の紹介の続きです。
後日記:
4.予防原則とノーリグレット対策からの続きでもあります。


 国際交渉のための論理の整理のためには、第2章1の高村ゆかり氏のまとめは秀逸です。
「諸提案を大きく二分している対立軸は、科学的知見にもとづいて温暖化防止に必要とされる量と速度で削減を確実に行うためにいかに制度を構築するかという「トップダウンアプローチ」をとるか、あるいは、アメリカや途上国の参加を確保するという合意可能性の観点からいかに制度を構築するかという「ボトム・アップアプローチ」をとるかのちがいである。
…問題は、これらの2つのアプローチ、すなわち地球温暖化防止という目的の達成にてらした科学的要請と国家の合意可能性をいかに組み合わせ、いかに2つをつなぐのかと言う点である。これまで出されている諸提案では、この問題に明確には取り扱われていないように思われる。」として、課題を挙げています。

 ですが、ここで特に紹介したいのは、第2章3の田中雄三氏の中長期目標の必要性についての考察です。 田中氏は「2007年末までの期間の早い段階で長期目標をめぐる国際的な相互理解が進むことが何より有益なはずである」との問題意識の下で、
 T長期気候目標とその設定形態
 では、長期気候目標を決めることの意義を明確にし、排出/濃度/人間活動/気温/影響の内のどれを目標の指標とするかについて議論を整理しています。そして、
 Uブッシュ政権の気候変動政策
 では昨年末までのブッシュ政権の態度を元に、現状の米国の対策がいかに議定書の水準とかけ離れているかを紹介しています。そして、
 V長期気候目標をめぐる国際的合意への代替策
 の中で、これまでに世界の研究者から出された長期気候目標に代わる、ボトム・アップ(現状にもとづく)アプローチ側の代替案を評価して、いずれもが満足のいくものではないことを示し、さらにもう一度ひねって、政治学の中では沈黙こそが雄弁にすべてを物語っているという知恵を紹介しています。
 「中・長期目標は、現在すでにいくつかの国の公式、準公式な見解として示されている。けれども…アメリカからインドまでの「排出5大国」(米、印+中国、ロシア、日本)はこの問題にそろって沈黙を守っている。その状況は、まるでこれらの国々が意図的に「黙秘カルテル」を形成しているかのようである。…長期気候目標に関して奇妙で看過しがたいのは、国際合意の不在ではなく、排出5大国が沈黙を守り、すでに表明されているEU諸国の公式見解・提案を否定も肯定もせずに無視し続けていることであり、そうした状況を世界の世論が許していることである。」 ということです。

 そこで日本がこの黙秘カルテルの一角を打ち破れば、「現存するバランスが大きく変わることを意味する。他の国々が同様な公式見解の表明に踏み切ることとなれば、地球環境容量についてあくまで沈黙を守り続ける一部大国の態度が世界的に注目され、厳しい批判にさらされることとなるだろう。…」としています。


 「長期目標」はすでに環境省の審議会では中身がオーソライズされたものがあります。これを日本政府の方針として、モントリオールCOP/MOP1に提示をする、との「政治的意思」を働かせてください。「黙秘カルテル」が本当にあるのなら、それを打ち破って他の4カ国に働きかけてください。それが、日本が真に京都議定書を生かすための次のステップです。
 (Political Will(政治的意思)という言葉を
米国版のGoogleニュース
で検索すると69500件ヒットしますが、同じくGoogleニュース日本版で「政治的意思」を検索すると9件しかありません(「政治決断」では12件、「政治」&「決断」を検索すると97件ヒットしますからこちらが訳の意味は近いかも)。悲しいことに日本の新聞では使われない言葉ですが、あえてここでは使っておきます。)

 長期目標を表に出すかどうかの経済産業省との綱引きの現状については、以前書きました、「気温上昇幅の目標に慎重 温暖化対策で経産省」in共同通信

を参照してください。
 環境NGOの主張については、こちらを。

後日記:
日本科学者会議京都支部ではJSA-ACTというWebサイトを開設しています。

後日記:
英国シンクタンクの戦略文書「長期気候目標の設定」 へつづく
posted by おぐおぐ at 15:38| 温暖化の政治学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。