2005年10月04日

誤解で始まるWait and See:バスタブの概念の基礎

 「バスタブの概念」と言っても、あんまりゆっくり加熱されるので気もちが良すぎて出られなくなってしまったゆでカエルの寓話ではありません。

 オープンデモクラシー.orgの
「Why “wait-and-see” won’t do」
http://www.opendemocracy.net/debates/article-6-129-2455.jsp#
に出されていた議論より、コラムになっている部分を仮訳し、紹介しておきます。

---引用ここから
Bathtub Basics
バスタブの概念の基礎

 なぜ人々は温室効果ガス排出に対する気候の反応の遅れ時間を過小評価するのだろう? この疑問を確かめるため大学過程を学んでいる高等教育を受けた成人に、過去の温室効果ガス排出量と大気中CO2濃度、それに地球平均気温のグラフを示した。そして出した課題は、人為的なCO2の排出量を変えたときに、CO2のレベルと地球平均気温の変化を予測してもらうことだった。
数学は使わず、データはIPCCの2001年報告書の技術的ではないレポートから取った。

 すると、非常に多くの人々が気候変動のダイナミクスを誤解していることが分かった。
 実に回答の2/3が、地球気温はCO2排出量のわずかな、あるいは大幅な変化に対して即座に反応して下がると信じていた。さらにより多くが、現状に近い削減率の排出で気候が安定化すると信じていた。
しかし実際には、この場合は排出量は吸収量を上回り続け大気中濃度と放射強制力(訳注:瞬時の温室効果の指数)を増加させるのだ。

 このような信念は現在の日和見(Wait and See)の政策を完全に論理的だと見なす根拠になりうるが、科学の基本原理である物質の保存則に違反している。
 つまり、高いディスカウント率(これは未来におけるものの価値を低く見せる)や気候変動のリスクの不確実さが理由なのではなく、気候のダイナミクスに関する誤解こそが排出削減政策への支持が低い理由であるのだろう。

 もしわれわれが一般大衆に気候変動のダイナミクスをよりよく理解させることにより多くの労力を使っていけば、現在と将来の気候政策の提案を市民と政治家が評価する際に、より信頼できる基盤となるだろう。

 「Understanding Public Complacency About Climate Change」を参照のこと。
(こちらが完全な論文です。)
---引用ここまで

 皆さんもこの大学生たちに挑戦してみませんか?
http://web.mit.edu/jsterman/www/StermanSweeney.pdf#page=22
この図1B.の曲線を、えいやっで将来に向けて伸ばして書けばよいのです。
上側の図に示しているように大気中CO2濃度を400ppmで安定化させるためには、人為的な排出量と自然の吸収量にどのような曲線を描かせればよいのでしょう。

 さて、この問題を解く鍵は、こちらの図の中にあります。
http://www.env.go.jp/council/06earth/y064-01/mat_04.pdf#page=29
自分の赤ちゃんをベビーバスの中でおぼれさせないためにはどうすればよいのでしょうか。
これがバスタブの概念です。

 この発見は大変だぁ、国会議員の1年生にこのクイズを出してみませんかぁ>テレビ局の皆さん、アンケートをとってみませんかぁ>新聞社の皆さん。


2008年追記
Nature誌のブログでもこの追試が紹介されていました。
http://blogs.nature.com/climatefeedback/2008/10/the_missing_climate.html
posted by おぐおぐ at 15:34| 温暖化の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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