2005年10月03日

フロン規制の教訓

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第24回会合が9月28日までモントリオールで開催されていました。
先日のIPCC会合では、もう一つのオゾン層破壊(代替フロン)問題とのかかわりについての特別報告書もフルペーパーが公開されました。これはモントリオール議定書の「技術経済評価パネル」との共著ですね。
『オゾン層と地球気候系を保護する:HFC類とPFC類』
http://www.ipcc.ch/activity/specialrprt05/IPCC_low_en.pdf

 この中の33ページの右側の図TS-9(フロン/代替フロン類の排出量推計(英文)) を眺めてアッと驚く人もいるかもしれません。フロン類は1989年の排出量ピークに比べて最新年では排出量を実に約1/3にまで(66%)削減できています。
 やればできるは魔法の合言葉〜♪、とどこかの高校野球の校歌にもありましたが、温室効果ガスの排出ってぐいっと減らせるものだったんだ、という実例がここにはあります。
 もっともそれは別の環境問題に対する別の環境規制の副産物として、でした。 オゾン層を破壊するCFC類、HCFC類はまた、大きな温室効果も持っているのですが、すでにモントリオール議定書(1987年成立)で規制(段階的に生産全廃と)されていたため、二重規制とならないよう京都議定書の規制対象ガスには含まれていません。
 その代わり、この二種のフロンの代わり(なので「代替フロン」と呼ばれています)として生産拡大を始めていたHFC類とPFC類を京都議定書の規制対象ガスにしたのです。


 月日の経つのは早いもので、僕が地球温暖化に最初に関心を持つようになったのはフロンガス問題との関係でした。
 僕が大学を出てから10年ほど勤めた会社はフロンガスメーカー兼エアコンメーカーでしたが、入社した当時からすでに同期の中には、フロンガス問題での会社の対応はどうなのか、と新入社員研修で企業の業績に直結する問題として問いただしていたツワモノもいました。

 85年にUNFCCCにあたる、「オゾン層保護に関するウィーン条約」が枠組み条約として成立したころ、南極のオゾンホールが発見されました。
ちょうど86年創刊でしたか硬派の写真誌「デイズ・ジャパン」などのメディアを通じて、地球環境問題と原発問題が一かたまりの問題群として話題に上がり始めていた頃でした。自分の会社の製品、フロンガスとエアコン(中に冷媒としてフロンガスが含まれている)によるオゾン層破壊問題の特集を見ながら、一体これからどうなるんだろう、と不安に思っていた時期もありました。(たまたまその当時は担当外でしたが。)

 このオゾンホールの発見はサプライズでした。オゾン層破壊問題が単なる環境汚染の恐れのある問題なのではなく、何か大変なことが現実に起こっており科学者たちは過少評価の誤りを犯していたのかもしれない、という危機意識も起こしたのです。
87年のモントリオール議定書で決まったのは段階的全廃には程遠いゆるい規制でしたが、科学者の集まりオゾントレンドパネルの場でオゾン層破壊のメカニズムと将来予測がオーソライズされてきたのに並行して、89年、91年、92年と度重なる国際交渉と議定書改正が行われたことで、フロン類の段階的全廃が定まっていったのでした。

 「もちろん企業としては、表向き規制には絶対反対と表明しつつも、ほんとに規制がかかる場合のためにいろいろ対策の手を打っていたはずだ」と皆さんは思うことでしょう。ですが原因企業の側から見ていると驚くほど危機意識は少なかったですね。代わりにユーザー企業が先に対策に走っていたのですが、そのへんはまた今度。


 粗い計算をすると、80年代の日本のフロンガス生産の世界の中のシェアは15%ほどでした(製造業中心の国なのでじゃぶじゃぶ洗浄などに使っていた)。これに対してCO2排出の世界の中のシェアは5%ほどでした。最初に示した図TS-9を見ると、80年代の温室効果ガスの中のCO2対フロンの比率は3対1以上とみなせますから、日本が責任を負うCO2の総温室効果とフロンガスの総温室効果は同じ規模か、フロンガスの方が多かったとみなせます。今では先進国はCFC類は全廃していますから、もう日本は80年代と比べて温室効果ガスの半減に成功している、とみなすこともできるのです。
なんだ、残り50%を更に1/4か1/5くらいに減らすなんて簡単じゃーん(オイオイ)。


 フロン規制で得られた教訓を二つ書いてみます。

「浪費的な消費の用途には限りがない=需要予測は伸び縮みするもの。アホな使い方をつぶすのは非常に安いコストでできる削減機会であり、フロンの用途では沢山あった。だが、それでも探してみないとどんな削減機会があるかは分からない。」

「各企業がいざオゾン層保護に手間を掛けてみれば、対策による経済への悪影響を計算したがる経済学者なんていなかったし、環境問題のとばっちりで倒産した企業も見つからない。」

さあ、これが教訓であるというのはほんとでしょうか?いまだにちゃんとフロン規制の教訓は検証されていないといえますから、勝手に提案しているものです。

…ということで本当の教訓とは「(扉を)叩け、さらば開かれん。求めよ、さらば与えられん。」ということでしょう。Just Do It!

後日記:
オゾン層破壊についても紹介しているブログを、探してリンクしておきます。
恐怖 オゾン層の破壊


posted by おぐおぐ at 15:33| 環境哲学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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