2005年08月29日

「地球温暖化問題の歪曲(前編)」in田中宇の国際ニュース解説についてその1

◆田中宇:地球温暖化問題の歪曲(前編)
http://tanakanews.com/f0827warming.htm

の記事が温暖化懐疑論へのヨイショ記事になっているのでここで批判をしておきます。
(よそのHPの批判なんてどうなることやら。)

以下、コメント部分を★印をつけて紹介します。上の元文も参照しながらお読みください。



1.記事のスタンス自体の問題
 欧米のマスコミの多くは、今では、人為的な温暖化が起きているという説を支持する勢力となっている。「温暖化は起きていない」「起きているとしても、人類が放出した二酸化炭素のせいだという根拠がない」「京都議定書に基づいて二酸化炭素の排出を減らせば効果があると考える根拠もない」と主張し、温暖化説を否定し続けている勢力は、タカ派のウォールストリート・ジャーナルぐらいである。(関連記事)

 同紙と並んでタカ派系の週刊誌エコノミスト(The Economist)は、以前は温暖化説に懐疑的だったが、一昨年ぐらいに「温暖化説を補強する科学的証明が増えてきた」として、支持派に転じている。今や温暖化説は、専門家の間では世界的な「コンセンサス」あるいは「通説・通念」になっており、反論は無効だ、というのが世界的なマスコミの論調である。(関連記事)
 
と本文では記述していながら、最初の導入部では、

「地球温暖化問題」をめぐり、その説を支持する勢力と、否定する勢力との対立が、最近また欧米で激しくなっている。

と説明しています。
 英米のマスコミで温暖化懐疑論が出てこなくなっているのなら、一体どこで、誰と誰の間の「対立が最近また欧米で激しくなっている」と田中氏は判断したんでしょうか? まさに出てこなくなったからでしょうか?
 後で出てくるように、田中氏本人が温暖化論に納得していないことが執筆動機のようですから、対立がフレームアップしているという形を示して興味をそそらせるライターの手法がのっけからミスリーディングです。



2.温暖化の科学についての主張の間違いとミスリード

 田中氏は、
 だが私自身は、温暖化説の支持派と否定派の両方の主張を読み、自分なりに理解しようとすると、どうも温暖化説をめぐっては「通説」の方が間違っているのではないか、と思うに至っている。「人類が排出した二酸化炭素のせいで地球が異常に温暖化し、大惨事が近づいている」と断言することは、どう考えても無理がある、というのが私の結論である。

 と書き、その根拠として、
・ホッケーの棒理論をめぐる論争
・1週間後の天気予報も当たらないのに・・・
・イラクの大量破壊兵器問題の歪曲と似ている
の3項目を本文の中で紹介しています。

 以下、順に反論をしていきます。

2−1.▼ホッケーの棒理論をめぐる論争について

これについては、ホッケースティック論争後の最新のデータ整理のグラフが、
本『温暖化の<発見>とは何か』 (著者はアメリカ物理学協会の物理学史センター所長)の英文版資料のページで紹介されています。
http://www.aip.org/history/climate/xmillenia.htm
 マンらの研究の後、今年までいろいろデータが追加されていますが、
> Even such critics agreed with Mann and Jones's conclusion that "late 20th century warmth
> is unprecedented," and that the recent rapid rise (black at far right) could not be
> explained without taking into account the unprecedented accumulation of greenhouse gases.
となっていて、IPCC第三次報告書の文言を否定する事態にはなっていません。

 その間のホッケースティック論争の経緯と詳細については、上の本の翻訳者、増田耕一氏の「ホッケースティック論争」 についてのまとめが文献にあたるうえでは役に立ちます。

後日記:
THE WALL STREET JOURNAL October 26:Global-Warming Skeptics Under Fire
の中でも、懐疑論の主張にこそ問題あり、という論文が2件出ていることが紹介されています。


 が、その論争の中身の話以前に、田中氏の紹介の仕方がここでも非常にミスリーディングです。

(マンら)3人の学者は、古い測候データ、木の年輪、さんご礁、極地の氷から得ら
れる昔の温度データ、歴史的な記録などを集め、過去1000年間の北半球の気温変化
をグラフにしてみた。その結果、平均値をとると、紀元1000年から1900年ごろ
までは、温度はだいたい一定していたのに、1900年以後の100年間は急上昇して
いた。グラフにすると、ホッケーの棒を横にしたような形になる。(関連記事)

 3人はこの結果をもとに「過去100年間の気温上昇は、人類が産業化を進め、二
酸化炭素の排出量が増えた結果に違いない」★と主張している。この理論は、温暖化
対策を推進する国連組織「気候変動に関する政府間パネル」が2001年にまとめた
報告書の中で、最近の異常な気温上昇を示す主な根拠として使われている★。


 ★:この2箇所の記述は間違いです。
 上記3人のホッケースティックの結論は、過去100年間の気温上昇の根拠としては使われていません。 「主な根拠として使われている」という上の田中氏の一文はインチキです。

 ホッケースティックのグラフ自体はそもそも「北」半球の気温にかかわりのある個別地点の間接証拠から再構成したものにすぎないものです。
 一方IPCCが第三次報告書の中で100年間の温暖化の実績の根拠として使っているのは「全」球の気温データでこれとは別のデータです。
3人だって別のデータなのにその100年間の根拠だなんて言うはずがありませんし、二酸化炭素との関連を主張する根拠になってもいないのにその根拠だなんて言うはずがありません。

 「過去100年間の気温上昇は、人類が産業化を進め、二酸化炭素の排出量が増えた結果に違いない」という箇所の根拠は気象庁のIPCC翻訳ページでは http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc_tar/spm/fig4.htm に説明されていますが、1861年以降の各地での気象観測データがメインの主張のデータであり、その中で自然の変動のみでは説明できない要因として近年50年間の温暖化が人為的なCO2の影響だとしているものです。

 仮にマンらのホッケースティックの分析が間違っていたとしても、その場合にIPCC報告書の記述が変わるのは、”過去1000年の間で90年代の10年間は最も熱い10年だった”、という文言に「可能性がかなり高い」がつくとか、過去「500」年間で、に変わるとかという程度の問題です。


 温暖化対策が必要だと主張する欧州や日本などの政府や市民運動も、この理論を使っ
て温暖化問題を説明することが多い。(関連記事)


 ★政府や市民運動が、IPCCの第三次報告書を無視できると考えるほうがどうかしています。
 IPCCは、そもそも88年頃の設立当初から、サミットなどからも要請され、気候変動に関する科学的な共通認識を提供してもらうことを目的に、科学者同士で論文のピア・レビューをしてきた機関ですので、機関の意味自体も認識していない表現です。

 以下、続く。


posted by おぐおぐ at 13:05| 温暖化懐疑派・否定論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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