2005年08月08日

なぜ私たちは温暖化を否認するのか(その2)

その1から続く

(巻き添えの否認ないし認識の不調和)

 それでもあたかも我々は並行宇宙にいるかのように、いつもどおりのビジネス(Bau)の下で計画が練られ、急速な経済成長が続くことが予測され、それらは化石燃料エネルギーで動かされるものとされる:石油の消費量は今後20年間で50%増加するだろう。途上国のみから排出される温室効果ガスだけでも、今後10年で「安全排出回廊(大きな気候の悪影響を抑えられる経路)」を突破してしまうという計算もある。

 これらの危険なトレンドは、ほとんど全く挑戦を受けていない。なぜか?
 なぜなら我々は災害をもたらす集団的な否認、例えば南アフリカのアパルトヘイトやドイツのナチズムのような大規模かつ組織的な人権侵害に見られたものを経験しつつあるから、のように見える。
そこでは、おのおのの個人は問題の現実性を理解するかもしれないが、そのことの意味を受け入れることを拒否してしまうのだ。
 社会学者スタンレー・コーヘンは、本「否認の存在」の中でこの状態を「巻き添えの否認」と呼び、人類が道徳的に考えられない状況に直面したときに採用しがちな自然の防衛本能であるとしている。
この状態はお隣の心理学から用語を借りてくるなら、大衆と政治家との間の「認識の不調和」を引き起こす。
 ほとんど誰もが、地球温暖化の問題を気に掛けていると公言する一方で同時に問題を悪化させる行動パターンを続けようとしている。


(ブレアの例) トニー・ブレア首相はこのことをよく示している。
 昨年ヨハネスブルグの第二回地球サミットで彼は語った:「気候変動が停止しなければ、世界中が被害を受けることを我々は知っている。破壊される地域もあるだろう。疑いも無く(温暖化は)最も緊急な環境面の挑戦であり続ける」と。
 しかし同時に英国政府は、道路交通の増加を逆転させるためにも空港の拡張計画に対しても何もせず海外での石油開発を促進している。
その上ブレアは世界で二番目に大きな石油の貯蔵庫であるイラクを、最も危険な否認国である米国の手中に入れさせる手伝いをした。
 著名な気候学者であるジョン・ホートン卿はそのことを、最近ガーディアン紙にこう書いている、「私は(気候変動を)「大量破壊兵器」と呼ぶことに躊躇しない」と。

 これほどひどく言うこととすることの分裂を示しながらも、ブレアは狂っているわけではない。
彼の態度は人間的すぎるのだ。
 英国の大衆は世論調査では85%もが気候変動を懸念していると答える。
しかし国内のエネルギー消費は未だに年率2%で増加し続け、大きな車が売れ続け、人々は始めて行った遠いリゾート地への旅行を自慢する。
 ブレアは我々と同じく否認状態なのだ。

(進歩的グループの例)

 進歩的な運動やグループですら、つぎはぎだらけの懸念を示しているにすぎない。
労働組合と左派社会主義者は全体として雇用と成長に反するおそれのある政策には懐疑的である。
米国では、組合はキリスト教右翼と肩を並べて京都議定書に反対しており、英国では開発NGOと援助機関は彼らの活動の成果すべてかほとんどを破壊しかねない問題に直面しているのに不思議と声を挙げない。
 主なグループの中ではクリスチャン・エイドだけが気候変動に対して強い政治行動を公に要求している。
(訳注:米国の労働組合でもAFL-CIOがいくつかのNGOと共同声明を出していたりしますし、1年後のCOP10では英国の開発NGOはいくつもがジョイントで、途上国の適応問題にしっかり取り組むよう、ロビーのためのサイドイベントを数多く掛けていましたから、話半分で聞いておいた方が良いと思います。)

(未来学者の例)

 おなじく奇妙なことに、未来を研究することに一生を費やしてきた学者たちも自分たちの鼻先を見ることができない。
 ケンブリッジ大の宇宙論者マーチン・リーズは本「われらが最後の世紀」の中で、関心がないのかわずか5ページ半だけを気候変動に費やしており、残りのほとんどはバイオ兵器戦争や遺伝子工学、ナノロボットの反乱などに費やしている。
 地球の農業を扱った本の中で、コリン・ツッジは、3ページで気候を書き上げ、その最後に比喩的に「お手上げ、幸運を祈る」とした。
影響が「恐るべき」ものであることを認めて彼は地球温暖化を「束の中のジョーカー」と見なした。
しかし、それはジョーカーではない、それ一つで持続可能な農業に関する彼の予測すべてをひっくり返す切り札なのだ。

     (続く)
なぜ私たちは温暖化を否認するのか(その3)
posted by おぐおぐ at 11:39| 環境哲学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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