2005年07月28日

「氷に刻まれた地球11万年の記憶」本の紹介

「温暖化を描いた映画」の中で紹介した、ディ・アフター・トゥモローのネタ本になったと思われるのが、2000年に原著が発行されたこの本です。

サブタイトル「温暖化は氷河期を招く」
「グリーンランドの氷の歴史を読み解くと、過去11万年間の大半、地球の気候は絶えず急激な変動を繰り返してきたことがわかる。むしろ『いきなり激変する』のが気候の『正常な』姿だといえよう。それに問題は、温室効果による温暖化である。温暖化は極北の降雨を増加させ、グリーンランドや周辺の氷床を融かす。そして大量の真水が北大西洋に流れ込むと、それが引き金となって、地球はたちまち冷え込む。過去の氷河期は、こうしたパターンで繰り返し出現していて、温暖化は予測を超えた巨大変動を招く危険がある……」「気候変動のメカニズムを解き明かした活目の書」帯より。

  実際にどうやって氷を測るのか、といった紹介から始まって、ヤンガードライアス期やその前の1000年周期のスイッチ切り替えのような異常気象の証拠を紹介してこう書いてます。
「われわれにとって決定的な問いは、これだ。自然、あるいは人類は、現在(2000年間)の「変則的」安定よりも、めちゃくちゃな跳躍が「正常な」状態だった昔に気候を戻すだろうか?そして、そのような回帰が起きそうになったら、何かわれわれにできることはあるのだろうか?」

 また、経済学でいう割引率の問題にも触れていて、温暖化の被害は100年先に向けて除々に確率が高くなったり起こっていくものとみなしていた通常のシナリオではなく、近い将来であっても急激な不可逆的変化を起こしうるというシナリオは、遠い未来の価値を大きく割引くことで問題を見ないで済ませてきた経済学者の意見も変える可能性があることを指摘しています。
 つまり温暖化(というより異常気象へのジャンプ)を食い止めるために取りうる「オプション」が、とある年を境に消えてしまう想定でのリスク評価は、可逆的な対策−反応を前提とする経済合理的な長期計画とは全然変わってくるという意味です。

 もちろん2001年報告のIPCCの第三次報告書の中では、この本で指摘されている熱塩循環が完全に停止して欧州が氷河期に逆戻りするような事象は21世紀中には起こらない(だろう)、と結論づけていますが、部分的な停止状態だけでも「めちゃくちゃな跳躍」と言えるものでしょう。そして最近の新たな気候モデルシミュレーションでは21世紀中にも起こる場合も計算結果が出てきているそうです。517X03C179L._SL500_AA240_.jpg氷に刻まれた地球11万年の記憶

【タイトル】氷に刻まれた地球11万年の記憶
【サ  ブ】温暖化は氷河期を招く
【シリーズ】 
【著  者】リチャード・B・アレイ 山崎淳訳
【発  行】ソニーマガジンズ
【発行年月】2004年5月29日 
【ページ数】239 
【判  型】B6
【定  価】1800円+税
【ISBN】ISBN4−7897−2283
【種  別】学術
【分  野】古気候学
【検索キー】熱塩循環、古気候、アイスコア
【目  次】
 第一部 なぜグリーンランドか
  1 類のない11万年分のデータ
  2 過去を知るための手がかり

 第二部 氷に書かれた記録を読む
  3 氷点下三〇度でのプロジェクトX
  4 氷の古文書館 氷床と氷河
  5 氷芯の年代決定法
  6 昔の寒さを知るための「温度計」
  7 風の中の塵が語る大気の歴史
  8 氷の中の泡はガスの宝庫

 第三部 めちゃくちゃな気候
  9 千鳥足でふらつく酔っ払い
  10 太陽システムの揺らぎ
  11 地球軌道にあわせて踊る
  12 急激な温暖化が起きた謎

 第四部 不気味な鳴動
  13 鍵を握る北大西洋の海水
  14 海洋コンベヤーが停止すると
  15 破局をもたらす決定的要因は何か

 第五部 「狂乱の時代」がやってくる?
  16 温室効果ガスは激変を招く
  17 「不意打ち」を食らう確率
  18 氷芯が語る人類の未来
 訳者あとがき

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 ペンタゴンの研究レポートとして報道されている"An Abrupt Climate Change Scenario and Its Implications for United States National Security
も、この大西洋の熱塩循環停止が2010年代にも起きて、欧州が氷河期に入ることが米国の安全保障に影響を与えることをシナリオプランニングとして評価したものです。2010年代というのはいかにもありそうにない時期ですが、シナリオプランニングでは起こりうる確率よりもイベントの規模を重視しているので、近未来という設定にしているのでしょう。


 これが気候カタストロフィとして懸念されているもののうちの一つです。二つ目は世界の森林火災によるCO2や他の温室効果ガス放出が加速するという仕組み、三つ目は永久凍土の下のメタンハイドレートが融け出て来るという仕組みあたりでしょうか。
 あるいは南極の西南大陸部の氷床の融解というのはもっとでかい話ですがこれこそ気候カタストロフと言えることでしょうか。

後日記:
・おなじ本の紹介をしているブログがありました。地球温暖化が原因で寒冷化 ― デイ・アフター・トッモローは本当か(リンク切れ)

・熱塩循環の崩壊の過去の実例について、ブロッカー教授の講演録がありました。
「1996年度ブループラネット賞受賞記念講演録」


posted by おぐおぐ at 10:39| 気候カタストロフィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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