2008年10月30日

グリーン・ニューディールの出番だ!

The Green New Deal グリーンニューディール
リチャード・ハインバーグ
http://www.postcarbon.org/green_new_deal
の仮訳を送ります。

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 先週末の「バ」イオニア会議での会話や電子メールでの話題は一つの主題で占められていた。米国の新政権が、金融危機とエネルギー転換の両者を共に扱う首尾一貫した政策を直ちに取る必要があることについてだ。
 失敗し続けている金融機関を支える代わりに、新たな大統領は、化石燃料の必要性を劇的に削減し全廃するための広範だが緊密に協調されたプロジェクト、すなわち再生可能エネルギー設備や鉄道、公共交通機関、数百万の住宅の断熱と代替熱源の採用、国内食料の地産化などのプロジェクトを行うことにより投資を実経済へ注入するべきだ。

 明らかに、次期政権は経済の出血を食い止めるために何か劇的なことを実行する必要があるだろう。なぜグリーンニューディール以外の経済刺激パッケージではいけないのだろう?。これは他のビジネス界や、国防、中産階級、銀行界からの要望とバランスを取りつつ重視するべき、単なる一つの有権者層からの要望に過ぎないものだろうか。

 答えは明々白々で決定的なものに違いない。この経済停滞ないし不況は、まさにカオス的な人類社会の崩壊を食い止めるために化石燃料への依存を終わらせる行動が必要なその歴史的瞬間に現れたのだ。
 ピークオイルと気候変動は、人間社会に前例のない規模の脅威であり命令となっている。国内の(そして究極的には世界中の)運輸、食料、製造システムの脱炭素化改造という政策を取り上げることによって政治家たちは、環境悪化、資源減耗、エネルギーを支配する地政学的競争、失業、貿易赤字、栄養失調、食物関連の病気などなど、多くの危機に同時に対処することができるのだ。

 もし我々(つまり究極的には人類)がこの行動コースを実施することに合意できないなら、我々はほとんど集団としてのサバイバルの最後の機会を失うことだろう。人口を安定化させ減少に向かわせること、経済システムを持続可能な成長パラダイムから定常状態で運営するよう改造することなど、さらに追加の政策は必要だろう。しかし、この救出プロセスは、まず社会を脱化石燃料に向かわせる計画から始めなければならないのだ。

 まずは次期政権に、そしてアメリカの人々に売り込めるよう、この計画は包括的で人を動かすものでなければならない。まもなく、普通の市民に何が問題なのか、そしていかなる犠牲を払えばよりよい世界を後に築けるか、について理解するのを助けるための大規模な公的教育が必要になるだろう。

 この計画は、単なる良いアイデアを含むウイッシュリストであってはならず、難しいが現実的な目標と適切な投資に基づく優先順位を付けられ段階を踏んだプログラムでなけばならない。

 今こそ、その計画の要素を構築するべきときだ。そうすれば選挙に続いて直ちに公式な提案をできる。また、今こそが、エネルギーや食料、気候問題のリーダーたちからのインプットを集めるべきときだ。

 行動の時は今すぐであり、短い間しかない。今朝、ベン・バーナンキFRB議長は新しい景気刺激パッケージを要求し、そのようなパッケージは政権交代の前に、願わくば次期政権チームのインプットを受けてつぎはぎで作られるべきだと指摘したところだ。(10月20日記)
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 オリジナルの概念については、
「トリプル・クランチを解決するためのグリーンニューディール」
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/forum2/15514.html
をどうぞ。

ハインバーグは、後に政策提言書
ポストカーボン研究所提案の”リアル・ニューディール”
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/stopglobalwarming/16520.html
を発表しています。
posted by おぐおぐ at 12:16 | TrackBack(0) | 温暖化の政治学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月27日

イベント案内:10/30,31「異常気象と長期変動」研究集会

 以前聞きに行った研究発表会の関連ですが転載しておきます。
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第6回「異常気象と長期変動」研究集会開催のご案内

向川@京大・防災研 です.

今年も,京都大学宇治キャンパスにて第6回「異常気象と長期変動」研究集会を開催させて頂きます.

本研究集会は,異常気象の実態把握,そのメカニズムや予測可能性の解明,さらに地球温暖化や気候変動と異常気象との関連を明らかにすることなどを目的として毎年開催しています.本年も多数のご参加をお願い致します.

 日時: 2008年10月30日(木)午後,31日(金)全日

 場所: 京都大学宇治キャンパス 木質ホール3階セミナー室
(JR奈良線黄檗駅下車,徒歩約7分)

主催: 中村 尚(東京大学大学院理学研究科: 研究代表者),
共催: 木本 昌秀 (東京大学気候システム研究センター),
余田 成男 (京都大学大学院理学研究科),
   向川 均 (京都大学防災研究所)

●プログラムなどの情報は
http://www.dpac.dpri.kyoto-u.ac.jp/mukou/meeting.html
をご覧下さい(昨年までの研究会での発表内容も見ることができます).

●宇治キャンパスは耐震改修工事中のため,キャンパス内の通路が大変複雑になっていますのでご注意ください.宇治キャンパス南門(車両入構門)よりお入り頂くと,会場へは容易にたどりつくことができます.
(http://www.dpac.dpri.kyoto-u.ac.jp/mukou/kaijyo_map.jpg).

●聴講のみの参加は自由ですので(事前登録も不要),お気軽においで下さい.

●懇親会への参加も当日会場で申し込みできます.

この研究集会は,防災研究所特定研究集会(20K-01)「異常気象と気候変動─メカニズムと予測可能性─」,21世紀気候変動予測革新プログラム「高解像度気候モデルによる近未来気候変動予測に関する研究」(木本),科研費基盤研究(A) 「最新の全球大気再解析データを活用した対流圏循環の形成と変動に関する総合的研究」(中村),科研費基盤研究(A)「気候変化における成層圏の影響の評価および力学的役割の解明」(余田)の補助を受けて行われます.

Hitoshi Mukougawa (Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University)
e-mail: mukouアットマークdpac.dpri.kyoto-u.ac.jp Fax:+81-774-38-4153 Tel:+81-774-38-4151
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 まあ、正直頭がついて行かない状態なのですが、京都はもう秋の紅葉がはじまってるかしらん、ということで出かけてきたいですね。
posted by おぐおぐ at 23:00 | TrackBack(0) | 温暖化の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月23日

日本の省エネは脆弱なシステムを作り上げてしまったのでは?

姉妹ブログ『ん!-ピークオイル時代を語ろう-』の中で紹介したものをそのまま、こちらにも転載しておきます。
日本でもEUなどで行われている政治のリーダーシップがないとどうなるか、ということを省エネを題材に説明したものとなっているでしょう。

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なぜ市場に任せるのではなく需要側政策が必要か(完結編)

2008-10-14

 (初出10月4日)

オイルドラムより
「需要の崩壊で、より脆弱になるシステム」という記事がありました。
Oil Demand Destruction & Brittle Systems
http://www.theoildrum.com/node/4411
 から全体を無断仮訳しておきます。
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 昨年米国は日産数十万バレル分もの需要を削減させたのだから、我々は今や供給量の中断にそれほど敏感ではなくなっていると、オイルドラムや他所で多くのコメントを私は受け取ってきた。

 一般的には、自分自身が効率を上げ「浪費的な」石油消費を止めることによって、石油供給の中断や、信頼できない海外の石油に依存することから自分自身を切り離すことが可能だ、という感覚を人々はもっている。

 私の意見ではこれは逆だ。この記事では、自由市場経済の中では需要の中でも最も削減しやすい需要がまず崩壊するため、結果として需要側はより弾力性がなくなり、より脆弱になり、より供給の中断によるシステミックな(組織的、系統的)ショックを受けやすくなるのだ、ということを議論しよう。

 まずは、システムをレジリエント(回復力がある)にしたりブリトル(脆弱)にするものは何なのか、を議論しよう。そしてなぜ、市場に導かれる需要崩壊ではシステムがより脆弱になってしまうのかを説明しよう。

そしてエネルギー供給が減少する近未来における、エネルギーで動く我らの経済の回復力をどうやって増やせるかについての考察を最後に述べよう。

demand_elasticity.png
図1.需要崩壊の後の、各要素の弾性値
 市場主導の需要崩壊の理論モデル 最も高い弾性値の需要がまず崩壊するという理論を示したもの。
残る需要が全体としてより弾性的ではなくなっていく結果となる。Eの値は、相対的な弾性率であり、実際の需要に対する価格弾性値の意味ではない。

何がシステムをレジリエント(回復力がある)にしたりブリトル(脆弱)にするのか?

 ショックを効果的に吸収できないなら、そのシステムは脆弱である。トランポリンの網と窓の板ガラスを比べてみよう。板ガラスは動かないままで、かなりのショックを受け止めることができるが、ある点でもう吸収できなくなり割れる。これは脆弱という。
 これに比べトランポリンの網はもっと小さな衝撃でも動くが、変形して伸びることで、ガラスが破壊するよりもはるかに強い応力がかかるまでは壊れ(裂け)ない。トランポリンは回復力がある。この「脆弱」と「回復力」は経済と金融市場にも同じように当てはまる。

脆弱なシステムの問題

 経済や金融のシステムが脆弱なときには、ショックや続く応力、つまり例えば地政学的な石油供給の中断や地質学的なピークオイルという圧迫する問題の衝撃を吸収できる度合いは少ない。
 システムに回復力があるときには、そのような衝撃を吸収し、下位のシステムに応力を緩和したり、なくすための再編のための時間を稼ぐことができる。
 しかしシステムが脆弱なときは、元の形に跳ね返る点を越え、粉々になりやすい。経済システムが粉々になるとき、「崩壊」と呼ばれるが、システムは不況と分解の下方螺旋に入る。これは脆弱なグローバル経済システムに圧力をかけ、結果として経済や社会の崩壊にすらつながりかねない、その触媒となるピークオイルの悪影響についての「最悪ケースシナリオ」の一つである。

 このため、何が我々の経済システムを脆弱にしたり回復力があるようにするのか、そしてどのようにすれば個人の経済選択や政治/政策選択がシステムの性格に影響を与えることができるかを理解することは重要である。
 この記事では、特にどのように原油の需要崩壊がシステムの石油需要の弾性値を変えるか、そしてどのようにそれが我々の経済システムをより脆弱にしていくかを見ていこう。

なぜ需要の崩壊がより脆弱なシステムを作り上げてしまうのか

 この理論の基本的なメカニズムは、石油の消費の削減を強いられたとき、個人と集団としての市場は最も自由裁量の効く需要から削減するということだ。その結果、個人と企業、経済にとって、一単位の石油で生み出されるGDPや生活の質で測った時により価値があるものが残った消費になるだろう。
 この残った需要はより非弾性的である。家庭であれ産業であれ、国であれ、その石油の需要がより非弾性的になるにつれ、より供給の中断にさらされやすくなる。

 例えば、アメリカ経済は2007年に約2千万バレル/日を消費したが、例えば(イラン戦争のような)地政学的な5百万バレル/日の一時的な減少に対しては、需要崩壊により1千万バレル/日しか消費しなくなった未来のアメリカ経済よりも脆弱ではないのだ。
 そのわけは、未来のアメリカ経済はもっとも価値が低くもっとも自由裁量が効く1千万バレル/日分の消費を削減してしまっており、残りの1千万バレル/日分の需要はより減らしにくいからだ。

(以下、追加部分)続きを読む
posted by おぐおぐ at 20:53 | TrackBack(0) | 省エネルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月22日

自主行動計画を取引化するバカ

 いわゆる日本型の排出権取引「試行」が、制度の失敗を確認するためのテスト期間となったことについて、環境NGOからの失望の声が出ています。

どうしてこう後追いでの制度導入すら失敗するんでしょうね。

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                           2008年10月21日
                     浅岡美恵 気候ネットワーク代表

「経団連自主行動計画の取引化」ではなく、
国際社会に通用する国内排出量取引の制度議論を直ちに開始すべき

何のための試行か

 政府は21日、地球温暖化対策推進本部において、「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」を決定し、参加企業の募集を開始した。6月に福田ビジョンにおいて提起され、7月29日の低炭素社会づくり行動計画で10月を目途に試行的実施を開始するとされたものである。これをもって「国際的なルールづくりの場でのリーダーシップの発揮につなげる」としている。
しかしながら、本試行は排出削減を目的とせず、また削減を約束するものでもない。取引制度の必要性を否定する経団連の主張をそのまま受け入れ、自主行動計画の名前を「取引」と言い変えたに過ぎない。しかも、これを2012年まで継続させることで第1約束期間に国際標準のキャップ&トレード型の排出量取引制度の導入を阻止しようとするものである。これでは、日本が温暖化対策でますます世界から取り残されるだけでなく、世界に日本への失望感をさらに高めるであろう。このような「試行」に時間を浪費するのではなく、直ちに真に世界に通用する本格的国内排出量取引制度の制度設計のための議論を広く行うべきである。

取引制度の目的は総量での大幅かつ確実な排出削減

2005年に取引制度を導入したEUに加えて、米国の北東部の州で今年から実施段階に入り、オーストラリアでも2010年の実施に向けての制度準備が進められている。いずれも、2020年の大幅削減の準備、さらには2050年までに世界で半減し、先進国がそれ以上の大幅削減を行っていくために、国内での総量での大幅排出削減の中核的制度として導入しているものであって、政府がCO2など温室効果ガスの排出主体に、直接排出による総量での排出上限枠を定めて行うキャップ&トレード型排出量取引制度である。
しかし、わが国がようやくこれから行おうとする本試行では、中心をなす大口排出事業者についても参加を義務付けるものでなく、間接排出によるもので、原単位目標の選択も可とし、かつ目標数値自体を企業が任意に設定することを可としており、経団連自主行動計画と大差ない。その条件といえば、指標を任意に選ばせて単に「直近の実績以上」というだけであって、現状維持でよく、結果として排出を削減させようとするものではない。基準年も目標年も2012年まで任意に設定し、中小企業や農林業、民生部門まで拡大して目標達成に利用できるクレジットを認めようというものであるから、経団連自主行動計画よりも企業に甘い仕組みと解することもでき、自主行動計画の目標達成を免れようとするものにもなりかねない。
この目標の妥当性について、「政府が審査・確認の上、関係審議会等において評価・検証を行う」とするが、あくまで原単位目標であれ総量目標であれ、排出を削減させる保証もなく、現状を上回らなければよいとするものであるから、実質的な審査はなきに等しい。業界団体での参加も排除しておらず、鉄鋼連盟の参加などが取り沙汰されている。検証、目標達成の確認も従来の自主行動計画のままであり、自主行動計画参加の企業は排出枠の売却の場合のみ第三者機関の検証を必要とするもので、本試行による自己内で達成できる目標を設定し、野心的な目標を設定した上で削減が不足した時の「売買」は基本的に期待していないことを示唆したものである。自主行動計画の目標達成を助けるための"ノーキャップ&微トレード"のスキームが、排出量取引の試行との名のもとに行われようとしている。これではマネーゲームになりようがなく、排出削減とは無縁の証書ゲームというほかない。

フォローアップすべきは、本来の取引制度に不可欠の要素

 本試行の実施のフォローアップにおける項目・スケジュールとして掲げるところは、本試行の目的や目標設定などにみられる根本の欠陥を見直す意思がないことを示している。本試行を通して本来の取引制度導入を阻止しようとするものといわざるをえない。「技術とモノづくり」には削減義務化で省エネ投資の抜本強化を促すことこそが有効で、対策先送りは日本の「技術とモノづくり」の障害になりかねない。いずれ、わが国においても、国際社会に通用する取引制度の導入は不可避である。2012年までこのような試行的実施を前提としているが、大口排出企業が直接排出量について総量での削減目標を政府が設定して行う国際標準のキャップ&トレード型の取引制度の導入に不可欠の排出枠の設定や検証システムなどの実施のための議論や試行を先送りさせ、結局、米国も含めた国際社会の取引制度の流れのなかで日本に真に必要な試行の機会を失わせることになる。

科学の要請に応える中期目標の設定が出発点

 2009年末のCOP15(コペンハーゲン)での次期枠組み合意に貢献し、国内排出量取引制度の制度設計議論を加速するためにも、日本の中期目標の設定がまず必要である。中期目標設定には、英国の気候変動委員会のように専門的委員によって構成され、バリ合意のもとで、日本がどう役割分担をしていくのかが検討されるべき第一の課題である。政府は20日、来年のしかるべき時期に目標を決定するための「中期目標検討委員会」を地球温暖化問題に関する懇談会の下に設置した。しかし、検討事項に挙げられた日本版セクター別積み上げ方式は、産業構造や燃料転換に踏み込んでおらず、現状技術の最大普及を目指すものでもなく、それをもって中期目標を定められるものではない。中期目標の設定は透明なプロセスにおいて、その削減ポテンシャルの試算を公表し、あわせて科学からの要請を受け止め、対策実施によるエネルギーコストの削減額はもとより、省エネ産業や再生可能エネルギー産業による経済成長と雇用の拡大も総合して、2020年の目標を1990年比25〜40%削減の幅で、野心的に設定するべきである。

問い合わせ:気候ネットワーク TEL:090-2114-4551(浅岡携帯)
TEL:03-3263-9210、FAX:03-3263-9463(東京事務所)
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平成20年10月21日(火) 地球温暖化対策推進本部(第22回)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ondanka/kaisai/081021/gijisidai.html

※1:「低炭素社会・日本」を目指して
http://www.kantei.go.jp/jp/hukudaspeech/2008/06/09speech.html
※2:低炭素社会づくり行動計画
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ondanka/kaisai/080729/honbun.pdf
※3:排出量取引の国内統合市場の試行的実施について
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ondanka/2008/1021.pdf続きを読む
posted by おぐおぐ at 23:50 | TrackBack(0) | 排出枠/排出権取引 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月14日

赤祖父氏の「自然の温暖化がメイン」論

赤祖父氏の「自然の温暖化がメイン」論は原因究明に踏み込んでいないものです。

「正しく知る地球温暖化」赤祖父俊一誠文堂新光社

を購入して読んでみました。

 この本は、いろいろなグラフ、地理的な温暖化の現状再現シミュレーションと観測値との比較などを受けて、20世紀の北極圏の温暖化のかなりの部分はそれ以前からの200年間ほどの温暖化傾向の延長線上である、ということを主張している本です。

・1/6の根拠は何?

「気候学者の中には、自然変動の原因として火山活動、太陽自身のエネルギーの出力の変化、宇宙空間ガスの影響などを提唱してきた者があったが、IPCCのコンピュータの計算によると炭酸ガスの温室効果に比較してその効果は薄いとされている。これはまだ議論の段階であるが、問題は上述の程度の発言ではIPCCと報道に圧倒されてしまうことである。
 そこで、筆者はまだ究明されていない自然現象の原因について論じ、尽きない議論に巻き込まれることを避け、多くの専門科学雑誌や報告に発表された(すなわち、厳密な審査を受けた)数々のデータによって、小氷河期が実在したこと、そして現在はそれから回復中(すなわち温暖)である証拠を示す。これは一般の自然科学者の漠然とした発言と異なり、きわめて具体的な証拠を提出したことになる。
これが第四章の目的でもあり、この本の最も重要な目的である。筆者は、回復が1800年、それ以前から始まっており、しかも気温の上昇率は当時から現在まであまり変わっていない(直線的)ことを示す。…
 このように自然変動を同定し、現在進行中の温暖化からそれを差し引くことによって、人間活動による炭酸ガスによる温暖化率を推定した。そして現在の温暖化の6分の5が自然変動によるもの、すなわち炭酸ガスによる温室効果はわずか6分の1であることを証明した。」
(P.71)

 この1/6というのは、20世紀の100年間で0.6℃の昇温が観測されているが、19世紀も同様の昇温速度だったので人為的温暖化が効いているとしてもせいぜい0.1℃だろうというとても大雑把な提案のようです。

 (IPCC第三次報告書に示されていた)マンらによるホッケースティックの気温変動の記述が違っていた、温暖化はもっと以前から進んでいた自然現象ではないか、過去数百年間の自然の温暖化の原因を太陽とも、宇宙線を介した雲の変化とも特定はしていない(原因を示していないにも関わらず)、自然の変動が大半である、と確言しています。

 特に注意すべきなのは、マンらによるホッケースティック状の変動も、第4次報告書のより深堀りされた記述も、どちらも北半球の温度変化の過去データ分析なので、全球平均気温ではありません。
全球平均気温を示すためには南半球のこの千年紀の気温データが新たに必要です。
全球平均気温については、20世紀初頭19世紀後半からの過去100150年間余りの記録があるだけです。
(後日記:記憶で書いて失礼しました、グラフを再確認してみると19世紀後半も含んでいますね。なので、そもそも19世紀後半が気温が上昇を続けていた、という主張への第一の反論はこの時期の全球平均気温データが横ばいであったというIPCCのデータです。)

その注意をした上で反論を試みてみましょう。以前の記事でも紹介しましたが、類似の過去データ
http://www.aip.org/history/climate/xmillenia.htm
ipcc_6_10.png
を見ていただくと、1900年から温暖化が始まったという言い方もできますし、1800年から温暖化が始まったと言えるデータもある、という玉虫色の状況です。
 IPCCが紹介している気候モデル研究(図4.13)によれば、1975年以降の昇温の大半が人為的な影響であるとして、100年間で0.4,5℃の昇温となっています。一方、自然の要因分は0.1℃程度とわずかな寄与になっていますが、75年以降のの時期についてはマイナス側の寄与となっています。100年間について言えば、2/3以上が人為的な温室効果ガスの要因となっている、但し、それは一部自然の変動要因で後半下降側に変わったからであり、前半の昇温は自然のものということになります。つまりIPCCとしては、1800年ないし1900年から始まった昇温は、20世紀前半で「終わっている」という評価をしていると言えます。したがって、過去の小氷河期の原因もまた、太陽活動他の自然要因で説明できるはず、ただ過去データが足りないためシミュレーションには組み込めないという立場だと言えるでしょう。

 さて、これでは議論がかみ合いそうにありません。メカニズムが分からないため気候モデルに入っていない要因が、見積もれない自然の変動になっているに違いない(そしてそれが小氷河期である)、という赤祖父氏の主張は、気候モデルの研究者には反論不可能です。

 現在の所、
1.その分からない要因の19世紀&20世紀の実データ
2.19世紀の北半球の精度の高い過去気温データ
3.19世紀の南半球の精度の高い過去気温データ
 を調べようがないというところで不可知論になるというものでしょう。

 言いたくなるのは「あんたがその未知のメカニズムを提案してみせてよ」or「ほんとに19世紀の全球気温データが20世紀のデータと同じく直線的な上昇だったというのを確かめてみせてよ」というとこでしょうが赤祖父氏はやらないでしょう。2,3が課題として残っているということは赤祖父氏の後者の主張には根拠がないということそのものを意味しているのですが。

 なのでIPCCに関わる気候モデル家が、可能な限りの過去データを(恣意的にだろうがなんだろうが)使って19世紀の再現実験をやってみるしかないようです。
 過去200年間の自然要因の変動の中で、火山は再現可能でしょう。問題は太陽活動の程度ですが、こちらも数世紀前のものまでは出てきそうです。
南半球の影響については、なんらかの仮定をおくのでしょう。

そうやって、作ってみた結果は、・・・当然懐疑派からは、「気候モデルならパラメータをイジればなんでもやれるハズ」という批判が出てきて、たとえ整合性がある結果が出ていても受け入れられないでしょう。

 ということで、赤祖父氏の主張の前には千日手状況のような気もします。

 19世紀を仮にクリアしたとして、さらにもう数世紀過去まで遡って実証しろ、と言われれば実施不可能でしょう。

 とりあえず精度の比較的高いデータがある過去の期間(つまり20世紀)については、現状の気候モデルで各要因が適合する、というところまでで、モデルの詳細を確認した後、目を瞑ってもらえませんでしょうか。>懐疑派の方続きを読む
posted by おぐおぐ at 15:47 | TrackBack(1) | 温暖化懐疑派・否定論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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