読売社説:100ドル原油 脱石油をさらに進めなければ(2月21日付)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080220-OYT1T00781.htm?from=any
ニューヨーク市場の原油価格が再び1バレル=100ドル台をつけ、最高値を更新した。
石油輸出国機構(OPEC)の動きなどを材料に投機マネーが流れ込んだ結果だ。米国のサブプライムローン問題で陰りが出た世界経済に、新たな懸念要因である。
先進各国の政府や企業、消費者は一層の代替エネルギーの開発や省エネに取り組むべきだ。そうした努力を積み上げることで、原油100ドルの水準が恒常化したとしても対処が可能となろう。
原油価格は、年明けの1月2日に史上初めて100ドルに乗せた。その後は90ドル前後に下落していたが、再び上昇傾向が強まってきた。
今回の大台乗せの要因として、まずあげられるのが、OPECが3月の総会で減産を決めるのではないかとの見方が市場に流れたことだ。ベネズエラが、米石油大手のエクソンモービルへの原油供給を停止したことも影響したとされる。
原油価格は、10年ほど前は10〜20ドルと安値安定が続いていた。だが、2001年9月の米同時テロを底に、上昇に転じた。中東での緊張が高まり、原油確保に懸念が生じたことが底流にある。
加えて、経済発展が目覚ましい中国やインドを先頭とする途上国の石油需要が急増し、原油価格を押し上げた。サブプライム問題で、投機マネーが金融市場から石油などの現物市場に移動したことも、価格上昇に拍車をかけた。
こうした状況から、この先、原油価格は上昇・下落を繰り返すものの、40〜50ドルを下回るような安値は望めないのではないか、とする見方が支配的だ。
そうであれば、力を入れるべきは新規油田の開発だ。ブラジルは深海底から原油を掘り出す技術を開発し、産油国の仲間入りした。ロシアも手薄だった東シベリアでの油田開発を進めている。
原子力や燃料電池、太陽光の利用など石油代替エネルギーの開発も重要だ。省エネでは、途上国の産業部門でエネルギー効率の改善余地が大きいだろう。
1970年代の2度の石油危機を教訓に、日本は国を挙げて脱石油に取り組んで来た。この結果、国の一次エネルギーにおける石油依存の割合は、石油危機前の8割から5割弱に下がった。
円高が進み、円建ての原油輸入価格は、かつてほどの痛みを感じないで済む水準にとどまっている。
100ドル原油は、日本にとって確かに重荷ではあるが、克服できないレベルではない。冷静に受け止め、これまで以上に脱石油を進めることが、最も効果的な処方箋(せん)になる。
(2008年2月21日01時52分 読売新聞)
つづく続きを読む