2008年01月29日

マーク・ライナス:バリ島発コペンハーゲン行き

 マーク・ライナスのエッセイを翻訳しておきます。
http://www.marklynas.org/2008/1/7/from-bali-to-copenhagen

From Bali to Copenhagen バリ島発コペンハーゲン行き

07 January 08

−−−
 バリ会議で私は、新たな段階のキョウトに合意することが、気候変動の安定化のための最も重要な目的物であると確信した。

初出:ニューステイツマン紙08/1/3

 ツーリストガイドが云うようにバリ島が美しいかどうか私は知らない。ヌサ・デアのリゾート地で開かれた国連気候変動会議に集まった11,000人の交渉担当者やジャーナリスト、ロビイスト、キャンペイナーの大半と同様に、私がこの神の島で見たのは、国際コンベンションセンターの内側だけだった。
これは皮肉屋が言うような、大集会が巨大な時間(と二酸化炭素)のムダであるということではない。逆に、バリ会合は、新たな段階のキョウトに合意することが、気候変動の安定化のための最も重要な目的物であると私に確信させた。

ほとんどのコメンテイターは今や、キョウトの第一フェーズは最善でもある種の成功にしか過ぎず、測定可能なほどの温室効果ガスの排出削減にはつながらないと語っている。
しかしキョウトは1997年に合意され、それは非常に異なった日々だった。
今回は、EUと他の多くの締約国は、10から15年以内に地球全体の排出ピークに加え、先進国の2020年までの25-40%削減、そして世界全体での2050年までの半減という科学が主導した議題を議論するためにバリ会合にやってきた。これらは驚くほど野心的な目標値であるが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、長期的な気温上昇を産業革命前のレベルから2℃以上に上げないためにはこれらの数字が必要であると述べている。
初めて、国連の気候会合の議題が、みんなが政治的に可能だと考えるものによって決められるのではなく、科学者が地球にとって必要と提案するものによって設定されている。これは国際気候政策における地殻変動だ。

 この変化は3つの原因によって起こった。続きを読む
posted by おぐおぐ at 01:13 | TrackBack(0) | 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月27日

福田首相はどんな気温安定化目標を想定しているのか?

福田首相のダボス会議(世界経済フォーラム)での発言
朝日:福田首相の特別講演全文〈3〉より

 ”昨年ノーベル平和賞を受賞した科学者たちの会議IPCCは、破局を避けるためには地球全体の温室効果ガスが次の10年から20年の間にピークアウトし、2050年には少なくとも半減しなければならないと警告を発しています。
 私は国連にピークアウトと温室効果ガス排出半減の方策を至急検討するように要請します。”

 一方、IPCCの元の文書はこちらです。
 ここの表SPM.6によれば、カテゴリーIという最も厳しい温暖化対策を行うためにはピークアウトする年は2000〜2015年、つまり今年から7年先までにしなければなりません。また2050年に2000年比-85 〜 -50%排出量を減らすとしています。
「最悪7年先にピークを打ち、2050年には2000年比50%以上削減」よりも緩く遅い削減目標では、カテゴリーII以上の昇温を許容するものとなってしまいます。

 そして福田首相がIPCCの推奨として示した数字「次の10年から20年の間にピークアウトし、2050年には少なくとも半減」は、カテゴリーIIとカテゴリーIIIの折衷案のような数字でありこんな数字をIPCCが実際に推奨しているわけではありません。

 とはいえ福田首相がこの数字を出すからには、最も厳しい対策であるカテゴリーIを目指していないことは明らかです。

 日本政府は、産業革命以降からの温度上昇幅2.4-2.8℃での安定化(カテゴリーII)ないし2.8-3.2℃での安定化(カテゴリーIII)程度を提案したものと言わざるを得ません。EUが主張してきた2℃未満安定化という主張からは大きく後退した遅れた気温安定化目標を想定しているものと言えるでしょう。続きを読む
posted by おぐおぐ at 10:06 | TrackBack(2) | 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月24日

福田首相の世銀レポート評価に疑問

世銀レポートに関する新聞報道

中日:日本、先進国で最下位 石炭発電依存が低評価
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/earth_heat/list/200801/CK2008012002080962.html

 産経新聞でも同じ記事をアップしています。
日本の温暖化対策、先進国で最低レベル
http://sankei.jp.msn.com/life/environment/080119/env0801191814001-n1.htm


 日本共産党の市田議員による参議院での本会議質問の場でも、先日の世銀レポートに関する新聞報道が紹介されました。


”最近発表された世界銀行の調査では、日本の温暖化対策の進捗状況は先進国中最下位にランクされました。京都の名が泣いているとはおもいませんか。”

 これに対して、福田首相は答弁の中で、
” 京都議定書の6%削減目標の達成に向けた認識についてのお尋ねでございますが、ご指摘のあった世界銀行の調査は、1994年から10年間の各国の二酸化炭素排出量につきまして増減の傾向を評価したものでございまして、絶対量評価ではありません。そのため、この調査におきましては一位がウクライナであり、二位がルーマニアでございます。そういう東欧諸国が高い評価を受けた、というそういう結果になっております。我が国は省エネ、新エネ技術や公共交通機関の利用率など世界的に優れている部分を有しておりまして、他の先進国と比べ劣っているとは考えておりません。”

 福田首相、認識不足ですね。確かに総量で比較しているわけではないのですが、日本がGDP原単位で比較すれば世界一だ、という経済産業省の自画自賛がデタラメだ、ということを示しているデータなのです。

世銀の各国比較レポート「成長とCO2排出:異なる国々がどのようにやっていくのか」
Growth and CO2 Emissions:How do Different Countries Fare?
Environment Department,The World Bank
http://siteresources.worldbank.org/INTCC/214574-1192124923600/21511758/CO2DecompositionfinalOct2007.pdf

 この報告書は、排出量の大きな世界70カ国について1994年〜2004年の間の改善とその要因分析を示したものです。
 GDPは特に途上国の場合は、PPP(購買力平価)ベースとMER(実為替レート)ベースでは非常に違う数字になります。

最上部の表で紹介しましたP12の表3
Table 3: Emissions per unit of GDP and GDP per capita in 2004
を見ると、日本の「購買力平価ベースでの」GDP原単位CO2排出量はインドとほぼ横並び状態となっていますし、中国はアメリカより少し多い程度です。
 日本はこの70カ国中ではPPPベースでのGDP原単位CO2排出量(左端の「E/G PPP」の数字)の低い方から24カ国目となります。もちろん比較的良い方ではありますがダントツとは言いがたい数字ですし、EUのうちの多くの国はより低く、それらの国と比べて日本は劣っている、ということも言えます。

Wikipediaで「購買力平価説」をみると、こんなリンクもありました。
世界銀行GDP統計(購買力平価)
http://siteresources.worldbank.org/DATASTATISTICS/Resources/GDP_PPP.pdf

 購買力平価基準でみると、2006年時点ですでに日本のGDPは中国とインドに抜かれて4位になっているということのようです。

 日本の場合、実為替レートは輸出産業が強いせいでかなり大きく円高方向に歪んでいて、購買力平価の為替レートと乖離しているとみることができます。
その影響で、通常の為替レートで換算したGDPは水増しされてしまっていることから、GDP原単位のエネルギー効率が実際以上によく見えてしまう、という違いが出ているのでしょう。

 実為替レートと購買力平価のどちらを使うべきか、といえば、国際経済学の教科書の中では購買力平価が用いられています。経済産業省の言い分だけを信用していると、国際社会で恥をかきますよん。お気をおつけあそばせ。

後日記:
経産省では、こんな文書を出していますので、購買力平価基準についても気にはしているようです。この評価では、日本の原単位当たりの一次エネルギー供給量はEU27カ国とほぼ同等となります。

 以下、質疑応答の温暖化関連の全文をテープ起ししたものを貼り付けておきます。
1/23参議院本会議
市田忠義(共産)議員質問より続きを読む
posted by おぐおぐ at 10:52 | TrackBack(0) | 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月19日

本日の甘利経済産業大臣発言録・温暖化編その2

甘利経済産業大臣の閣議後大臣記者会見の概要
http://www.meti.go.jp/speeches/index.html
 から、最近の発言を逆順に掲載しておきます。

●平成20年1月18日(金)
10:08〜10:28
於:記者会見室
【地球温暖化対策】
Q: 先日、5閣僚の中で、地球温暖化に向けた削減目標について議論があったかと思うのですが、政府内では、洞爺湖サミットまでに日本独自の削減目標を掲げるべきではないかという意見もあるようですが、大臣としては、その点についてはどのようにお考えですか。

A: 何度も申し上げていますけれども、主要排出国が脱落しないように、このハードルを上げていくということが大事なのですね。そのために、どういうアプローチが必要かと、いろいろな知恵があると思います。その知恵を、手法をうまく組み合わせていって、洞爺湖サミットに結びつけ、そして翌年のCOP15で皆揃って実効性の上がる仕組みができ上がるということが大事だと思います。いまから、特に私から各論について、詳細な決め打ちはしない方がいいと思います。総理ご自身がこれからいろいろな機会で、日本の考え方を発信していかれると思います。


Q: いまの関係で、政府内でこれまでの検討の結果、各セクターごとにボトムアップで積み上げていったもの、その結果を一つ、数値を込めた目標として、掲げるのが妥当ではないかということで、意見が収れんしつつあるというように聞き及んではいるのですけれども、こういう考え方につきましては、いかがでしょうか。

A: そういう報道がされたというのは、私も承知しておりますが、いま最終調整中ですから、どういう方向に決まったということではありませんで、ダボスで総理がどうおっしゃるか、ぜひ楽しみにしていただきたいと思います。

【暫定税率】
Q: この間も伺いました暫定税率の件で改めてなのですけれども、民主党はガソリン国会と銘打って、この問題をやろうとしていますが、大臣ご自身のお考えとして、既に世の中の間では、3月31日から4月1日にかけて、3月から4月にかけて、需給の大きな振れができるのではないか、また4月1日は相当ガソリンスタンドに行列ができて、行ってみたものの、蔵出しが3月中だったために、下がってないので何だとか、相当なトラブルが起きるのではないかという懸念も消費者内で出ていますけれども、大臣ご自身、この問題についての見解をお願いします。

A: 暫定税率を維持するという法案は、この国会に出るわけです。要するに、成立が間に合うかどうかという話になるわけです。そうしますと、仮に成立が間に合わない場合は、一時の間だけの世の中の混乱が起きるわけでありますから、それについては無用な混乱が極力起こらない方がいいと思います。道路も当然必要なわけですし、自動車ユーザーに資するような使い方にも、いろいろと道路関連で使われるわけですから、いずれにしても穴が開いた部分について、必要な部分は他の予算を使って埋めなければならないという事態になりますから、そうしますと、他の予算、他の政策執行がその分だけ滞ることになるわけでありますから、それはいかがなものかなと思います。

 租税特別措置の法改正は、一括として提出をされるはずですから、いずれにしても中小企業対策とか、いろいろな部分が同様なことになってしまうということも懸念をしております。

つづく続きを読む
posted by おぐおぐ at 12:50 | TrackBack(0) | 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月18日

福田首相への環境NGOからのメッセージ

 ダボス会議の場で福田首相がどんな発言をするのか、は今年の最初の国際的な働きかけに関わる戦略問題です。

環境NGOsよりのメッセージが出ていますので、コメントがてら転載をしておきます。

 2008年1月18日
ダボス会議での総量削減目標設定の決意表明を要請
〜日本のNGOと国際NGO、それぞれが福田首相へ書簡〜

 気候変動に取り組む日本のNGO7団体と、世界各地の約400団体で組織する国際NGO「気候行動ネットワーク・インターナショナル(CAN)」を代表して米国CANのディレクターのそれぞれが、福田首相に宛てて書簡を送付しました。

 書簡では、福田首相に対し、23日からスイスのダボスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)において、日本が2020年の総量削減目標を掲げる方針を表明することを要請しています。

 現在政府内で、ダボス会議に向けて日本の削減目標表明をどのように行うかについて最終調整段階にあるとのことですが、日本国内のNGO、そして世界各国のNGOは、総量での削減目標設定の方針を発表すれば、G8洞爺湖サミットの成功のカギを握る重要な日本の動きになると、大変大きな注目をしています。

英語(PDFファイル 105KB)

日本語(html)

以下、日本語部分を。
−−−続きを読む
posted by おぐおぐ at 21:03 | TrackBack(0) | 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月17日

騙された〜クッソー製紙会社め

 TBSの取材チームが日本製紙の内部告発メールを期に始めた調査で分かった、再生紙はがきの偽装(40%古紙混合との契約が実態は1%ほど)はショッキングでしたが、それに留まらず、古紙100%と表示されているコピー用紙が最大11〜59%程度しか古紙を混入していなかった、という衝撃的な事実が明らかになっています。

 エコ偽装、環境偽装という表現が出てきていますがほんとうにそうだと思います。
温暖化対策という観点からも、製紙業界は4大エネルギー消費産業でありながら、精一杯の対策を行っている、というアピールが、高い古紙の再利用率として示されていました。
ですが、古紙100%のコピー用紙なんて満足できる品質のものが作れないんだ、という告白を社長がしてしまうというと・・・。

 某武田教授のPETボトル批判と同じように、ほんとうに古紙のリサイクルが単なるムダであり、紙の消費量自体の大幅削減を目指すべきだったのではないか、と改めて検証しなおすべきでしょう。
 昔々JATAN(熱帯林行動ネットワーク)のスタッフをしていて、紙問題に少し少なからず首を突っ込んだ身としては・・・企業の言い分をもっと疑ってみるべきでした、甘ちゃんでした、スンマセン。
 製紙業界の統計全部が信用できなくなったように思ってしまいます。続きを読む
posted by おぐおぐ at 11:46 | TrackBack(2) | 省エネルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月16日

道路特定財源問題に関する見解

 道路建設のための特別会計の財源となっている自動車関係税の減税話が、政治の議題に乗ってきているようです。昨夜は少なくとも3つの民放テレビ番組で紹介していました。

 分野としては3つの次元での対立軸がそれぞれ別に起こっているかと思います。

●1.暫定税率廃止←×→維持

 原油高騰もあり、30年以上も続いてきた揮発油税の中の暫定税率を廃止することが第一の論点となっています。(もともと期限付き立法だったので、来年3月末の期限切れを前に延長の法律改正を可決・成立させなれば廃止となるため)

 民主党のチラシによるとこれでガソリン価格が25円安くなるはずとしています。
TBS調べの世論調査では
 ガソリン価格高騰を重視しやめるべき…79%
 税収不足を重視し続けるべき    …19%
です。特に、総計の中で98%もの人が回答した、つまり「分からない」と答えた人の少なさは重視すべきです。
 世論の意思はそれぞれ堅いと見るべきでしょう。

 ガソリン高騰の折、一回限りの自動車ユーザー向けにアメをあげよう(とはいえ今後取立てをしないだけですが)という提案です。

・廃止派
 民主党が政治論争を仕掛けるために廃止を提案して、キャンペーンも始めました。

・維持派
 自民党は道路(土木建設)族と財務族の声が高く、自動車族の声はかき消された感があります。3月末までに予算関連法案を通すことを決定しています。
 民主党の中の土木業界とつながりのある議員は造反覚悟で維持を主張するつもりのようです。

 さて、実際に3月までの国会で議論されるかどうかは別にして、以下の二つの論点も以前から根強くありました。続きを読む
posted by おぐおぐ at 00:20 | TrackBack(3) | 交通政策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月14日

南極の氷床は成長するのか減少するのか論争

 南極の氷床の減少は1996年から2006年の10年間で2倍近くになっているという新たな包括的なデータ評価が出てきました。

追記:
共同通信でも今朝から出ていましたね。
南極の氷、減少速まる 10年で1・75倍に http://www.47news.jp/CN/200801/CN2008011401000005.html

AFP:Ice loss surges by 75 per cent
http://www.news.com.au/heraldsun/story/0,21985,23047155-663,00.html
2006年には、南極半島の氷の融ける量は600億トン、西南極氷床は1320億トン、併せて1920億トンになっていた。

Times:Antarctic is losing ice 'nearly twice as fast as ten years ago'
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/environment/article3181944.ece ”この国際プロジェクトに参加したブリストル大Jonathan Bamber教授は「私たちの観測により、氷床の全体にわたって重要で劇的な変化が示されているということが分かった。このことは気候系の変化が南極氷床の健康状態に急激な影響を与えうることを示している。」
そして、「これは世界中で起こっている傾向を確認したもう一つの観測だ。同じものが山岳の氷河やグリーンランドで、パタゴニアで、アラスカで見られている。場所がどこでも同じものを見ているのだ」と語った。”


 カナダのグローブアンドメール紙がまとまった解説となる記事を書いています。続きを読む
posted by おぐおぐ at 11:45 | TrackBack(0) | 温暖化の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。