2007年12月28日

ワシントンポスト紙でビル・マッキベンが350ppmを力説

 Remember This: 350 Parts Per Million
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/12/27/AR2007122701942.html

”しかし、最も重要な進展となるだろう出来事はほとんど気付かれずに起こった。それはサンフランシスコの学術秘密会議で起こった。ジェームズ・ハンセンという名のNASAの科学者は、単純で明瞭で、恍惚とさせる、地球にとってのボトムラインを「大気中の二酸化炭素濃度350ppm」と示したのだ。これはワシントンとバリで起こった出来事を奇妙で、ほとんど的外れな出来事にするものだ。それは私たちの未来を定義するかもしれない数字だ。”

 本当に気が重くなりますが、事実は事実として伝えなければならないということだと思います。

 今年の二酸化炭素の大気中濃度は平均して383ppmですし、総温室効果ガスと寒冷化効果のある硫酸エーロゾルを含めてCO2等価濃度で計算しても二酸化炭素単独とほぼ同じ濃度となっていますから、33ppmほどすでに超えており、オーバーシュートして350ppmに戻すためには年率2ppm程度の吸収超過とするとして15年掛ける、という驚くべき対策が必要となることになります。

 これまでEUでは産業革命前と比べて2℃未満の昇温を想定して、450ppmでの安定化が必要だという目標を設定していましたが、IPCCの新たな第4次報告書によれば、450ppm安定化では2℃台前半となってしまうことが分かっています。
さらに、IPCCの中では触れられていなかった北極の海氷の夏季の消滅予測が2012年にまで早まったという議論もありました。
海洋の吸収量が近年低下している、あるいは森林の吸収能力も低下しているという研究報告も出されています。
 また今回マッキベンが記事の中で紹介している、10万年前の前回間氷期の最盛期には気温が現在より2、3℃高かったため海水面も今より10メートル高くなっていた、という古気候学の新たな知見もあり、これまでの2℃目標では本当に安全ではない、より厳しい目標の目安として350ppmという主張に、ハンセンが新たに踏み込んだという経緯なのでしょう。

 そのための手法としてハンセンが強調しているのは、サプライサイドの制限です。
”Hansen called for an immediate ban on new coal-fired power plants that don't capture carbon, the phaseout of old coal-fired generators, and a tax on carbon high enough to make sure that we leave tar sands and oil shale in the ground.”
 これはピークオイル危機をも問題解決の補助として活用することを想定しているのでしょう。(ジム・ハンセンの説くOver the Rainbow戦略その1 を参照のこと。)


 当然ながら、オーバーシュートした状態から350ppmに近づけるための基本的な要素である大幅な吸収を近い将来に実現するためには、バイオマス発電所とCCS(二酸化炭素の回収・貯留)を組み合わせたものを最大の吸収源としてどんどん実現させていくことを想定しているものと思われます。
posted by おぐおぐ at 23:50 | TrackBack(1) | 温暖化の科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月24日

「石炭などを原料とする巨大火力発電所の建設中止を」求める声明

 不手際で公開が遅くなってしまいました。この場を借りてお詫びいたします。

 以前にも一度「火力発電所問題全国交流集会」
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/stopglobalwarming/402.html
で、集会案内を紹介したことがありました。
その会のメーリングリスト経由で、10月に開かれた年次集会で作られたアピール文をいただきました。
上のグラフはそこに添付されていたものです。

”データは資源エネルギー庁のHPにある総合エネルギー統計の中にある炭素簡易表、その中で、事業用発電の経年変化をみました。燃料別の割合は、石炭(青色)57% LNG(クリーム色)30% 石油(紫色)13%となり、石炭が60%近くになっています。”
 という説明をいただきました。

 90年の京都議定書の基準年以降、もっともCO2排出原単位の大きな石炭火力での発電が、近年に到るまで増加し続けていることが分かります。このザマで電力会社が温暖化対策に取り組んでいるなどとは、片腹痛いと言えるでしょう。

−−−転載。
 アピール文は、10電力会社本社及び石炭火力の建設計画がある発電所とその所在地の県知事、市町村長、環境省、経済産業省、内閣総理大臣に送付しました。

 石炭火力は、能代、常陸那珂、磯子新、松島、舞鶴、大崎、三隅の計画が残っています。

 中国電力と関西電力本社へは、直接申し入れを計画中です。状況が刻々変化していますので、申し入れ内容は少し変わるかもしれません。
−−−
ということでした。(秋田県、茨城県、千葉県、宮城県、京都府、広島県、島根県の各地で計画が残っているとのこと。)

 今回の京都議定書目標達成計画の中で、抜本改正をすべき第一は、これから新設の石炭火力発電所を建設する計画を中止させることだと言えます。

 以下、アピール文書の本文を転載しておきます。
「石炭などを原料とする巨大火力発電所の建設中止を求めます」続きを読む
posted by おぐおぐ at 11:26 | TrackBack(0) | 運動論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月23日

コミュニティ・ソリューションズのDVD

「ん!」の方で書きましたが、
 第4回ピークオイル&コミュニティ・ソリューションの講演会のDVDを観ていますが、思っていた以上に、講演者たちはグラスルーツの温暖化対策キャンペイナーとして活動しているようです。

 Jitneyというオンデマンド相乗りタクシー?のシステム提案であったり、住宅の断熱省エネシステムのコンサルタントであったりです。

 彼らが提唱するいわゆる(プランBではない)プランCは、ハインバーグが分類した救命ボート建設戦略と似ており、コミュニティができることをやって乗り切ろう、産業部門はピークオイル問題でどのみち潰れる、というストラテジーなのでしょう、これまでの3回の年次総会で十分議論して出てきた方向性なのかもしれません。

 手近な温暖化対策としてラディカルなものを検討している方にお勧めです。(もちろん全部英語ですが)
posted by おぐおぐ at 23:38 | TrackBack(0) | 省エネルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月22日

来年から京都議定書の第一約束期間に入るというのに

 気候ネットワークより、特別なコメントが発表されています。

2007年12月21日

中央環境審議会地球環境部会・産業構造審議会環境部会地球環境小委員会合同会合最終報告に際してのコメント

浅岡美恵(中環審委員、気候ネットワーク代表)
明日香壽川(合同部会意見陳述人、東北大学教授)
飯田哲也(中環審臨時委員、環境エネルギー政策研究所所長)
植田和弘(中環審臨時委員・産構審委員、京都大学教授)
桝井成夫(中環審臨時委員、前読売新聞論説委員)
三橋規宏(中環審臨時委員、千葉商科大学教授)
諸富徹(合同部会意見陳述人、京都大学準教授)
横山裕道(中環審臨時委員、淑徳大学教授)

1 最終報告案について
IPCC第4次評価報告書が出され、2007年12月にインドネシア・バリで開かれた会議(COP13/COPMOP3)において、2050年までに世界で半減し、今後10〜15年までに排出のピークを迎え、2020年までに先進国は25〜40%削減といった方向が示された。地球温暖化も温暖化に対する世界の取り組みも加速的に進行しているなかで、本報告案は危機意識に欠ける。
このままでは、世界の動きに取り残されることが懸念される。

2 本報告書の問題
(1)追加対策とされる「自主行動計画の拡大・強化」で1800万トン、「国民運動」で678〜1050万トンなどの対策は、
@その数字は、根拠が明らかでなく、計測・報告・検証のできないものが大半である。
A削減量の追加性がほとんどない(自主行動計画について別紙)
B他の追加対策やこれまでの対策との重複が少なくない(自主行動計画の拡大・強化、国民運動)。

(2)発電所や大規模工場についての自主行動計画の問題点は既に指摘したとおり。自主行動計画の目標の妥当性等について十分な検証がなされないまま、「自主行動計画の拡大・強化」とその継続を掲げ、他方で、EUのみならず米国や豪州で準備されているキャップ&トレード型国内排出量取引の導入やその具体策の評価・検討も、大幅に先送りさせようとするものとなっている。

(3)環境税(炭素税)の記述は実質的にないに等しい。

(4)自然エネルギーの追加政策は実質的には何もなく、むしろ後退している。

(5)このように、追加対策のほとんどが実効性のない数字あわせというほかない対策を羅列であるだけでなく、そのことによって、排出量取引などの実効性のある新しい政策の導入を阻む言い訳として使われているといわざるをえない。

(6)裏付けのない発言などが放置され、それが「両論併記」の根拠として利用される一方で、浮かび上がった論点が真面目に詰められてこなかった。また、報告案の内容は実質的には各省間の折衝にゆだねられ、合同会議が委員間の真摯な議論が反映される場となってこなかった。

(7)計画の毎年の進捗管理に言及しているものの、目標達成計画の評価・見直しを行うことは担保されていない。第1約束期間においても、毎年の進捗管理において、あわせて評価・見直しを行い、国内排出量取引・環境税・政府と産業界との協定化・自然エネルギー固定価格買取制度など、必要なあらゆる政策を検討することとすべき。

−−−
ということで、環境省の下で開かれている中央環境審議会・地球環境部会と経済産業省の下で開かれている産業構造審議会環境部会地球環境小委員会との委員が合同で行っていた「京都議定書目標達成計画」の見直しでは、およそ意味のないつじつまあわせが行われていて、目標達成もおぼつかない、ということです。

 経済産業省の官僚の意に沿った委員ばかりが入っている?ためか、産業構造審議会側の委員はこのコメントに参加していません。続きを読む
posted by おぐおぐ at 18:43 | TrackBack(1) | 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月19日

光・熱ふく射のエントロピー理論について

 先日から小林ゼミのオンライン聴講生として、エコロジー/エントロピー経済ゼミに参加させていただいています。
 2回ほど話の流れを聞くのもうつろに、まあ槌田エントロピー論の意味について考えてました。

 恥ずかしながらちゃんとこれまで考えたことがなかったのですが、温室効果ガスのふく射についての理解がまともに出来ていないあの槌田氏が果たしてどこまで説得力のある物質循環のモデルを構築できているだろうか、と考えると疑問が沸々とわいて来たわけです。

 槌田氏は地球の物質循環の中で、特に水循環の果たす役割を高く評価しています。地表で太陽光により水/植物が熱を受けて水蒸気を放出し、その水蒸気がはるか何千メートルもの上空まで(はるばる)移動して、そこで(断熱膨張もしていて温度もマイナス何十度まで下がっているというのに)宇宙空間へ熱を放出して自らは再凝縮して地上に雨や雪として戻ってくる、これを循環だ、と言っているわけです。
槌田エントロピー論のこの説明におかしな表現がありましたらツッコミをよろしく。詳細に読むともっと変な主張ですね、末尾で訂正版を紹介しておきます)続きを読む
posted by おぐおぐ at 01:10 | TrackBack(0) | 温室効果の理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月16日

バリCOP13会合関連記事

 姉妹ブログ『京都議定書の次のステップはなんだろう』の方で書いた過去記事のリンクを紹介します。

COPMOP3バリ会合が始まりました
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/11978.html

中国提案の登場:読売
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/11984.html

気候ネットワークの日本提案批判
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/12001.html

日本政府の方針、本日の化石賞の1,2,3位を受賞
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/12016.html

科学者たちのバリ宣言
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/12032.html

雑記
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/12046.html

第一週の「Eco」
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/12054.html

バリロードマップの議長案へのNGO提案
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/12073.html

第ニ週の「Eco」
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/12119.html

15日朝8時からのCOP13,AWG会合も待ち続けています
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/12158.html

バリロードマップとは
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/12163.html

海外の論調
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/12177.html
posted by おぐおぐ at 19:00 | TrackBack(0) | 温暖化の政治・動向 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月13日

注目の社説その2

新聞各紙社説
●社説:温暖化バリ会議 全員参加にプラスアルファを 毎日
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/2007/12/20071204ddm005070035000c.html
 温暖化対策は待ったなしの状況にある。来年には京都議定書の第1約束期間が始まり、12年には期限が切れる。それ以降、世界はどのような枠組みで温室効果ガスを削減していくのか。

 差し迫った課題を抱え、気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)がインドネシアのバリで開幕した。京都議定書以降(ポスト京都)(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください)の枠組みの検討が本格的に始まる重要な会議である。実りのある成果に期待したい。

 97年に京都で開かれたCOP3で京都議定書が採択されて、ちょうど10年になる。議定書は、それまで温室効果ガスを大量に排出してきた先進国に削減を義務付けた。1990年に比べて世界で5%の削減が目標で、日本は6%削減の義務を負っている。

 ところが、世界一の排出国である米国は議定書から離脱してしまった。中国やインドなどは、大量排出国でありながら、「途上国」との位置付けで削減義務を負っていない。これでは、地球全体での削減は不可能だ。ポスト京都(注:「ポスト京都」→「次期枠組」と読み替えてください)では、これらの国々も応分の責任を果たす枠組みが欠かせない。

 今回の会議の重要課題のひとつは、そのための交渉のプロセスだ。京都議定書の約束期間の期限を考えると、交渉を09年に終わらせることは不可欠だ。その合意は、ほぼできていると思われるが、問題は交渉の進め方だ。

 日本の提案は、米国や中国なども参加している「気候変動枠組み条約」の下に新たな作業部会を設置し、次期枠組みを検討するというものだ。

 確かに、全員が参加する交渉の場を設定することは不可欠だ。米国や中国などが参加する「器」作りでは確実な合意にこぎつけなくてはならない。

 そこで留意すべきなのは、たとえ器ができても中身次第では誰も削減の義務を負わないという事態になりかねないことだ。ここは一歩踏み込んだ「プラスアルファ」を念頭に置いた合意が必要ではないか。

 日本は、今年の独ハイリゲンダム・サミットで「クールアース50(美しい星50)」構想を公表し、「2050年までに温室効果ガスを現状から半減させる」との長期目標を掲げた。サミットの合意文書にも盛り込まれた。

 削減を実現する方策のひとつとして、国別の数値目標の設定をめぐる議論がある。欧州連合(EU)は、先進国により厳しい削減義務を課す数値目標を掲げている。一方、中国など新興国には削減の義務づけを警戒する動きがある。

 日本は態度をはっきりさせていないが、各国が公平な負担を分担する道筋を探る必要がある。オーストラリアの新政権や、米国の次期政権の動きなど、世界の動向の変化にも、敏感に対応しなくてはならない。

 来年の北海道洞爺湖サミットの議長国である日本は、ポスト京都に向け全員参加の「器」を作るだけでなく、日本自身の態度と戦略をはっきりさせなければ、リーダーシップは握れない。

毎日新聞 2007年12月4日 東京朝刊

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posted by おぐおぐ at 16:06 | TrackBack(3) | 気候カタストロフィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「もうカナリアは死んでしまった、炭坑から逃げ出すときだ」

「”北極はしばしば気候温暖化版の炭坑のカナリアに喩えられる。今や、気候温暖化の印として、カナリアは死んでしまった。炭坑から逃げ出し始めるときだ”とZwally氏は語った。」

 COP13バリ会合の熱気を一気に冷ましてしまう、寒気を催す発言です。


イギリスのヘラルド紙より
AP:Summer ice in Arctic ‘will be gone in under five years’
http://www.theherald.co.uk/news/news/display.var.1901193.0.Summer_ice_in_Arctic_will_be_gone_in_under_five_years.php

−−−抄訳を以下に。

 北極海の海氷が2040年の夏にはなくなってしまうだろうと二人の科学者が予測して仲間を驚かしたのは昨年のことだ。
 今週、最新の観測データを評価して、NASAの気候学者Jay Zwallyは「この割合でいくと、以前の予測よりもずっと速く、北極海は2012年の夏までにほとんど氷がなくなるかもしれない。」と語った。

(最初の段落がここに入ります。)続きを読む
posted by おぐおぐ at 15:23 | TrackBack(0) | 気候カタストロフィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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